明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

東北地方太平洋沖地震について( 9 )

2011年03月14日 23時55分00秒 | 東北地方太平洋沖地震3月12~31日
守田です。(20110314 23:55)

福島第一原発1号機、3号機に続いて、2号機が極めてシビアな
事態にひとたび立ち入り、今、すこしずつ回復しつつある状態で
あることが報告されています。

この炉は、地震当初は、冷却装置がもっていたものの、次第に
作動しなくなり、今日の午後に完全に止まってしまいました。
これに対して、東電はここでも原子炉への海水注入という
非常手段に踏み切りました。

ところが午後6時頃になって、水面がどんどん下がり、ひとたび
4メートルの燃料棒が完全に水面から上に露出して、いわゆる
「からだき」状態になっていることが確認されました。原因は
作業員が、ポンプの燃料漏れを見逃したことにあるそうです。

一部のマスコミからこれへの避難の声があがっており、東電は
謝罪をしましたが、いろいろな受け取り方はあるとは思うものの、
僕は組織としての東電は批判されるべきでも、現場の作業員
の方を責める気にはなれないです。

相次ぐ危機と直面しつつ、しかも被曝の危険や爆発の危険に
眼前にさらされながらおそらくは不眠不休で活動しているだろう
からです。しかもすべては想定外のことで、初めての経験でしょう。

そもそもプラントの安全性は、人間がヒューマンエラーを起こし
うることを前提に作られねばなりません。ところが今は、その
設計にないことを作業員はやらねばならなくなっています。

ミスは構造的な問題です。願わくば、人員を増強し、疲れ切った
作業員の交代を頻繁にして欲しいです。人間はそう長くは
極度の緊張を維持することができないのだからです。


さて炉がどうなったのかを述べます。燃料棒4メートルがすべて
露出してしまうのは、1号機でも3号機でもなかったことであり、
少なくともこの時点では、今までで最も危険な状態が現出しました。

ところがその後、8時頃からようやく注水が再開され、10時半ぐらい
に2メートルまで水位が回復したと発表されています。少なくとも
空だきによる核暴走という惨事の手前からは脱しています。

ただし高熱によって、燃料棒の一部が損壊した可能性があると
言われています。溶融が起こったのです。このことで、再び被覆の
ジルコニウムが溶けて水素が発生している可能性があります。

また被覆の中には、ウランとプルトニウムのペレットが詰まって
おり、そのうちの一部はすでに核分裂を終えて、セシウム、
ヨウ素、ストロンチウム(いずれも放射性)などに分解しています。

これを閉じこめておくのがペレットと被覆管の役目ですので、
この死の灰が漏れ出してしまっている可能性があります。これらは
再びベントを開いて圧力を逃がすので、大気中に出てしまいます。

さてその先ですが、2号機でも1号機、3号機と同じように水素爆発が
起こるでしょうか。この点では、3号機の爆発のときに破片が
2号機に穴をあけたそうで、そこから抜けるのではとの推測があります。

ただこれらのことも、まったく想定外で起こっていることですので、
どうなるかは分からないです。現時点ではっきりしているのは2号機は、
空だきまで行き、燃料の一部が損壊したが水位は回復中ということです。

一方で少し安心させてくれる情報として、福島第二原発1号機と2号機で
真水の注入により冷却が進み、炉内が100度を下回って安定して
きたということがあります。このまま安定してくれれば良いのですが。


さてみなさん。
僕とやりとりをしている山形在住の友人から質問が寄せられ、僕なりに
考えた答えを送りました。少しでも役に立つことをと思って知恵を
絞ったので参照になるかと思い、転載します。

なお僕の意見が間違っているのではないか、あるいは訂正する
必要があるのではないかという場合、ぜひお知らせ下さい。
今はとにかくみんなで知恵をしぼりあっていく必要があります。


******

A君からの質問
貴重な情報をありがとうございます。
質問があるのですが、可能な範囲で教えてもらえると助かります。

すでに、福島原発からは爆発によって、
放射能を含む煙や蒸気などがかなり放出されているようです。
また、格納容器まで破損や爆発?するようなことがあれば、
大大大惨事になりますよね?
その場合に近県への影響とその対策について、
いろんな情報を教えていただいているのですが、

①放射能が流れてくるかどうかは風向きがかなり影響すると言いますが、
風向きをリアルタイムで知るための方法がいまいち分かりません。
気象庁などのホームページをみると良いのでしょうか?
それにしても、風向きから推測するしかないのですね?


②雨に気をつけるとのことですが、
それは、福島原発方面からやってくる雨雲に注意するということなのでしょうか?
例えば、すでに仙台には放射能が到達しているとのことで、
同様に山形にも到達している可能性があるわけですが、

仙台方面からの雨雲やひょっとしたらどこからかに関わらず、
今後、山形に降る雨、雪には気を付ける必要があるのでしょうか?
いわゆる原発事故による放射能雲でなければ、気にする必要はないのでしょうか?


③すでに福島から、避難者が山形にも来ています。
障害を持つ方の施設に勤めている関係で、
福島から逃れたいと言う障害を持つ方たちからも問い合わせがあります。

しかし、今山形は他県からの物資輸送が滞っていて
特にガソリンの供給がかなり制限されていること、
近県が被災していて交通状況が悪いこと
(東の宮城、南の 福島には行けず移動方角が制限されている)、
等からいったん山形に入ってしまうと、身動きとれない可能性が高いです。

むしろ、新潟や関東方面の方が、
その後の移動や物資の調達などの利点が大きいと考えますが、どう思われますか?
ご意見を聞かせて下さい。

以上のようなことが分かりません。教えてもらえませんか?


以下は守田の回答です。

A君
今回の事故に関しては、データーが十分に公開されていません。
またおそらく、政府や東電も十分につかめていない面があるように
思えます。そのためどうしても僕の持てる力を尽くしての推論になります。
まずはこの点を踏まえてください。

その上で、
1,風向きについては、やはり気象庁のホームページなど
からデータをとるのがよいと思いますが、わりと分かりやすくて、
僕が普段つかっているものにヤフーの天気予報があります。
これを見るとこれから6時間の雲の流れの予想がアニメーションで
示されています。
山形付近について調べたページをコピーしますので、参照してみてください。
http://weather.yahoo.co.jp/weather/raincloud/tohoku.html?c=anime

2,雨雲については、放射能雲がもっとも危険です。ただし放射能雲と
いう形があるわけではありません。上空に飛散した放射性物質が
雲に付着して運ばれているのが放射能雲です。そして雨となって
落ちるところを激しく汚染しますが、雨が降らなくとも降下物はあるので
注意が必要です。その意味では晴天でも放射性物質は飛散し、
やがて落下します。
雨となっての降下が最も激しいと考えてください。

どれぐらい危険なのかは、どれぐらいの放射能が飛散するかによる
ので、事実上、誰にもにわかに判別することはできません。現時点
でも、放射能漏れが政府が伝えているよりは多く起こっていると
思いますが、量は分かりません。ただ惨事から比べればかなり
少ないとは言えます。
その点を踏まえて、今は、予行演習の意味もかねて、仙台方面からの
雲にも注意を払うといいのではないでしょか。少量でも被曝しないに
超したことはないし、練習を行っておくと、いざというときに落ち着き
がますかもしれません。

大事故が起こった場合は、先ほどのページなどで雲の様子をモニター
してください。(ただし、アクセスが集中してみれなくなる可能性がある
ので他のページもさがしてみてください。僕も試みてみます)
ここでも日本海側からのものは基本的に心配はいりません。やはり
福島方面からのものがもっとも要注意です。
そして福島方面から雲が流れてきたことが確認できる場合は、雲が
来る前に合羽などを着用して外での仕事をすませ、雨の間は部屋に
こもることです。

雨が降った後は、水道水も危険になるので、その前に、家の中の
あらゆる容器に水をためておくとよいです。とにかくその後はできるだけ
家の中にいた方が有利なので、たてこもれる準備をしておくといいです。
水をためるのは事故を確認してからでいいのではないかと思います。

3,避難について、この季節の風は大きくは西から東、ないしは北東か
北西に向かう可能性が高いので、事故の前なら、より西かつ南に逃れた
方が有利さはましますから、新潟・関東方面の方が確かにいいです。
ただし風は常に向きが変わるので、実際の移動に際しては、
モニタリングしながら、危険のないことを確認してください。
またそちらの方が移動や物資の調達の面でも有利というのも
その通りだと思います。

その場合、向かうべき方向の自治体に今から連絡をとってみては
どうでしょうか。そうして安全地帯の自治体に、受け入れる体制を
取る必要があることに気づいてもらうのも良いのではないかと
思います。
またこうしたことを山形の行政にも相談してみてはどうでしょうか。
ともあれ多くの人が、避難と助け合いをわがこととして考えるように
促していくことが、自らを、さらにはよりたくさんの人を救うことに
なると思えます・・・。

******


転載は以上です。


さてその後に各地の放射能のモニタリングを紹介している
サイトを教えてくれた方がいました。
以下に示すので見てみて下さい。
さすがに東海原発のある茨城県や、柏崎原発周辺は
充実していて、各地のリアルタイムでの風向や風力なども
示されています。

福島原発については、情報の更新が遅くて、リアルタイムでは
使えません。・・・リアルタイムで更新していく余裕などないので
しょう。
ともあれ、それぞれの地域にお知り合いのいる方は、知らせて
あげると役に立つかもです。
http://www.geocities.jp/atom_moni/

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

東北地方太平洋沖地震について( 8 )

2011年03月14日 15時22分00秒 | 東北地方太平洋沖地震3月12~31日
みなさま (20110314 15:22)

守田です。

本日11時1分、福島第一原発第3号機が爆発しました。
1号機のときよりも大きな炎があがり、煙もより高くあがりました。
ただし11時15分、東電より、いち早く、原子炉格納容器は無事で
あるという声明が出されています。続いて枝野官房長官からも、
爆発は原子炉の外での水素爆発であり、ただちに大量の
放射性物質が飛散する可能性は少ないという報告がなされています。

ただ現場で作業してる方々に被害が出ているようです。
今、なされている会見では11人負傷だそうです。
一時期、7人行方不明とされていましたが、その後に全員確認された
とのことです。この7人のうち6人は自衛隊員だそうです。

現場の方たちの無事と、懸命の必死の努力が実ることを祈るばかりですが、
原発は依然、非常に厳しい危機の前におかれています。
報道でも「念のため」と断りつつも、被曝を避けるための注意を
繰り返し流しています。
それぞれで、いざというときに、放射能から身を守るための用意を
進めてください。また必要な方にお伝えください。
(すでに情報は流してきましたが、あとでもう一度、整理します)


さてみなさま。
これまで刻々とすすむ原発の危機の状況をウォッチし、今、進んでいる
危機についてのルポを発してきましたが、こうした情報をどのように
出すべきなのか、非常に悩みながら歩みを進めています。
起こりうる危機を明らかにし、対処方法を伝えなければと思ってきましたし、
それは今も変わりません。

しかし今、東日本は地震とつなみで壊滅的ともいえる被害を被って
います。そのような中で、「逃げてください」と言っても、ただちに逃げること
などできない方々も多い。また逃げるどころか、今なお救助を待っている人々も
たくさんいます。
こうした中で、どのように情報を出すのがいいのか、なかなか最良なところには
辿り着けないのですが、いくつか整理したことを書きたいと思います。


まず大きくおさえておきたいことは、今、私たちが直面しているのは、
世界的にもまれな大地震と、大津波、そして原発災害の複合的な
事態だということです。それこそ想定外のことがたくさんあります。
このことを頭に入れて、対処を考える必要があると思います。

中でも大事なのは、大地震と大津波に対する被害への救済と援助を
進めながら、原発災害に備えなければならないということです。
この点で単発の原発災害で想定していた対処法は適用できないものが
多くあります。とくに先んじて逃げることに関しては、被災地について言えば、
手段がない、お年寄りや病人がいて動けない、また逃げた先の安全が
確保できるかどうか分からないなど、場所によってはリアリティがない
ところもあると思います。

そこでここからはこの大地震、大津波、原発災害という複合的な事態に
対して、どう対処していくのかまで目配りし、その考察をも交えながら、
情報発信していきたいと思います。


まずとりかかりとして節電について考えたいと思います。
すでにご存じのように、東日本では計画節電が実施されており、政府は
国民全体に節電を呼び掛けています。僕はこれに応じることは大切だと
思います。
その場合、節電は個人の努力よりも、大きな事業所などでの節電のほうが
はるかに効果がありますが、政府は産業界にそうした交渉も始めている
そうです。これらを踏まえて個人でもできることはしようということです。

この場合、東日本とヘルツの違う西日本はどうすべきかが問題になります。
ネット上では、西の電気も東に送れるとする意見と、送れないという意見が
出ていますが、こうした場合は、ネット情報に依拠せずに、関西電力などに
確認することが大事です。
実際のところ、関西電力は次のように声明しています。

「このたびの東北地方太平洋沖地震により被害を受けられた皆様に心から
お見舞い申し上げます。
今回の震災復旧に際して、当社名でお客さまに節電に関するチェーン
メールを送ることはございませんので、ご注意ください。
当社は11日夕方から、電力各社と協力しながら最大限可能な範囲で電気の
融通を行っております。[注]
平素より皆さまには省エネ・節電にご協力を頂いておりますが、今のところ、
お客さまに更なる特別な節電をお願いするような状況にはございません。
[注]東日本と西日本では、電気の周波数が違います。従って、関西電力の
電気を東日本に送るには、周波数を変換しないといけません。この周波数
変換施設の容量には上限があります。」

ここにあるように関電は節電を呼び掛けてはいません。まずはこれをおさえ、
節電の努力といっても、東日本と西日本には有効性の違いがあることを
知っておくと良いと思います。今、西日本で節電することは、すぐに東日本の
電力の回復につながるというわけではないということです。


そしてその上で、僕は、西日本においても不必要な電気は使わないように
したほうがいいと思います。なぜなら電気を使えば何らかのエネルギーが
消耗するからであり、現在のような非常事態では、無駄は避けるにこした
ことはないからです。

それは電気以外についても言えることです。今、大事なのは、被災地を助ける
ために無傷の地域で、あらゆる物資・エネルギーを備蓄し、いつでも被災者に
供給できる体制を作っていくことです。とくに無傷の西日本は、東日本を助け、
いや助けると言うよりも苦しみを分かち合うために、多くを背負う覚悟を
する必要があると思えます。これは西日本に限らず、被災がなくて、余裕の
あるすべての地域で言えることだと思います。

その中でも大事なのは、あらゆる地域で、難民の受け入れの準備をすることで
あると思います。すでに明らかなように、今回の災害は、阪神大震災とまったく
違います。阪神大震災の時は、被災しているとはいえ、神戸市役所をはじめ、
地域の行政組織も健在であり、町全体がなくなることなどありませんでした。

ところが今回は、広範囲な海岸線で、コミュニティそのものが消滅してしまって
います。役場もなくなり、住民台帳もなくなってしまっています。膨大なデータも
失ってしまったと思います。

そのため、地域の再建にはもの凄い時間がかかります。仮設住宅を建てようにも
それを進める行政が崩壊しているし、第一、津波のリスクがあきらかになった
地域の人々に対して、どこに仮設住宅を提供するのかを考えても、大変な
困難が待ち構えていると思えます。余震の可能性などを考えてもそうです。

それらから考えると、多くの人々が今の地域よりもより広範なところに移り
住まないと、当面の生活再建ができない可能性も出てくるのではないか。
そしてそうならば無傷の市町村が、どんどん受け入れ表明をはじめると
良いのではないか。
それぞれの市町村民のためにストックしてきたものを、住民の合意のもとに
ですが、開放していくことがよいように思えます。


またささやかでもこうしたことを市民レベルでも進めて行くことも大事では
ないでしょうか。
すでに京都の友人が、不安で東から逃げてきた友人を家に泊めていますが、
こうしたことは今後、日にちを追って拡大していくように思えます。

そしてこうしたことを進めることは、原発災害が拡大した場合へのもっとも
有効な対処になるのではないかと思えます。各地が逃げ場所、ないし
移動先場所として確保されていれば、広範な地域の人々が、大量に
遠くに避難をしなければならなくなった場合の対処の助けになります。

また西日本をはじめ、被災してない地域から続々と声があがることは、被災地の
人々の傷ついた心に少しでも慰めになるのではないか。いざというときの
行き場を感じて、少しでも心がやすらぐのではないか。

こうしたことは援助、救援に入っている人々の心をいやすことにもつながると
思います。そしてそのことが、原発災害がより深刻化したときにも、それと
立ち向かうエネルギー源になりうるように思えます。


その点で、今は、私たちの潜在的ポテンシャルをいかにあげるか、
モチベーションをいかにあげるかが大事だと思います。たとえ最悪の事態に
たち至ったとしても、それに対処する私たち自身のポテンシャルをあげて、
対処していこうということです。
そのための一つとして、被災者の受け入れ準備を各地で進めるのは
どうでしょうか。

もちろん準備の仕方はさまざまで、みんなで知恵をしぼっていく必要が
あると思いますが、少なくとも、物資の備蓄はできるのではないか。
今すぐにでも、「受け入れ手があるのなら送れるもの」をまとめていくのも
有効だと思います。実際には現場が大混乱していてなかなか送れない
状態なので、とりあえずそれを備蓄していくのです。

そして現地だけでなく、新たな避難地になったところにも送れるように
しておく。もちろん、自分のところが受け入れ地になった場合は
そこで使えばいいし、使い道はたくさんあります。
実際には、これからの状況いかんできめていけばよいと思います。

ともあれこうしたことで大災害に立ち向かっていくこと。今後、さらに被害が
拡大しようとも、それに対処していく連携を生み出していくこと、アイデアを
交換し、積み上げていくこと、こうしたことに向かいたいと思います。


こうしたことを中心にしながら、僕としては今後も情報ウォッチを続け、原発
災害がより深刻化したときに、それを伝えて、放射能への対処ができるだけ
各地で迅速に進められることをサポートしたいと思います。

残念ながら原発については、依然、非常に厳しい危機に直面しており、場合に
よっては、この緊張した状態がまだまだ続く可能性もあります。
今の対処は想定外の非常措置ですから、危機を超えても、安定的で
安全なコントロールのもとにおくまでに、長い時間がかかると思います。
もちろん、そうではなくて、深刻な状態に陥る可能性はまだまだあります。
その可能性がどれくらいかはもう判断ができない状態だと思えます。

しかしそうであるならば、どのようになっても、あるいは危機がこのまま
おさまった場合でも、有効になることをみなさんと一緒に考え出し、準備して
ていきたいです!みなさまどうか知恵をお寄せ下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

東北地方太平洋沖地震について( 7 )

2011年03月13日 23時35分00秒 | 東北地方太平洋沖地震3月12~31日
守田です。

続報です。福島第一原発3号機、極めて深刻な状況です。
・・・こうした情報を出し続けること、受け続けること自身、なんとも
苦痛ですが、今はひたすら被害が最小限にとどまること、また
そうでない場合に、この情報がどこかで誰かの役に立つことを
ひたすら祈って、発信を続けます。

さきほど、午後8時ごろでしょうか。首相と、枝野官房長官の
会見が行われ、枝野長官より、福島第一原発3号機のその後の
情報が出されました。

それによると、さきほども書いたように、原子炉に海水の注入を
行って、水位の上昇に努めているのですが、しかしやってもやっても
水位が上がらない状態が続いているそうです。

真水の注入を止めたのは、ポンプなどにトラブルが生じたためで、
それに海水がとって代えられたのですが、そもそも海水を注入する
のは想定外で用意がなされていません。

そのため消防系統を使って注水しているようですが、しかしそもそも
原子炉内や非常に高圧になっています。(60気圧以上)これは
循環する水がより熱を奪えるように、沸騰点をあげるためなどです。

このため水温は300度ぐらいに達するのですが、消防ポンプは
こうした圧力に抗して水を入れることは当然にも想定していません
このため、水が十分に入っていってないことが考えられます。

だた実体はよく分からない。僕が分からないだけではなく、現場でも
よく分からないようです。そもそもこうした事故のとき、想定外の
ことが続くので、計器なども故障しがちだそうです。

そのため作業をしている方々は、内部で起こっていることを推論
しながら、作業を続ける以外ない状態にあるようです。極めて困難
な状態です。

もう一つ枝野長官によって明らかにされたのは、蒸気を逃がす
ベントにもまた故障が生じているという事実です。もちろん原因は
よく分からない。炉内圧力は再びあがり危険が増しています。


こうした状態に対して、夕方に原子力資料情報室の2回目の
記者会見がありました。ここでも後藤政志さんが詳しい説明を
して下さいましたが、そこで強調されたのは水素爆発の恐れでした。

これが政府が可能性を指摘している建屋上部での爆発の可能性
ではありません。そもそも水素は、高温によって燃料被覆管の
ジルコニウムが溶け出し、これと水が反応して出てくるものです。

これと酸素が出会い、火花があると爆発に至りますが、実は
スリーマイル島事故での経験の中で、炉内には窒素が封入され、
水素が発生しても爆発にいたらない工夫がなされているといいます。

ところが、炉内の圧力を逃がすために、ベントを開けていますから、
このとき発生した水素ガスとともに窒素もまた炉外に出てしまって
います。どれぐらいの割合かはもちろん分かりません。

その後に、再度、水位が下がり、燃料の一部が溶けた可能性が
あり、再び炉内に水素が発生している可能性があるのですが、
今度はその爆発を抑える窒素が抜けている可能性があります。

そうなると炉内で水素爆発が起こる恐れが生じていることになる。
もちろん、どれだけの水素が発生しているのか、どれだけの窒素が
抜けてしまったのかは測りようのないことです。

このため現在、3号機は建屋上部だけでなく、炉内での水素爆発の
リスクも抱えていることになります。本当に恐ろしい。そんなことに
ならないことを祈るばかりです。


さらにさきほど入った情報では、福島第一原発1号機でも水位が
下がっているそうです。これもどうしてだか分からない。どこからか
漏れているのかもしれない。その場合は放射能も漏れています。

さらにさらに、なんとか冷却装置が働いていた2号機までもが
水位が下がりだし、炉内の圧力が上がりだしたそうです。とうとう
冷却装置がダウンしたのです。このため2号機もベントを開けるという。

これらのために今、福島第一原発は1号機、2号機、3号機の
3つの炉が危機に瀕しています。本当に余談を許さない状態です。
・・・ともあれウォッチを続けます。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

東方地方太平洋沖地震について( 6 )

2011年03月13日 16時52分00秒 | 東北地方太平洋沖地震3月12~31日
守田です。

続報を送りますが、どうもクラクラするような事態が続いています。
原発に関しては、まだ危機をまったく脱していません。
最悪の事態へのシナリオはいまだ続いています。
危機に陥っているのは、福島第一原発1号機、2号機、3号機、
第二原発の1号機、3号機、4号機です。

しかしマスコミを見ていると、だんだん原発災害に対して、感覚が
麻痺しだしているようにも見えます。どれもこれも、これまでだったら、
それだけで何年間も騒ぎになるようなことが続いているのに、
ひとたび、原子炉崩壊か・・・というところまでいったためか、反応が
非常に弱くなっているように思えます。
それらから、一部では危機は去ったかのような報道もなされていますが
そんなことは全くないです。


まず福島第一原発1号機ですが、海水の注入が完了したと伝えられて
います。しかし周辺で放射線量が再び高まりだしているという報道が
あり、さきほどまた下がったという報告がなされました。原因は明らかに
なっていません。海水注入でも、熱の除去が十分になされていない様子です。

さらに第3号機でも昨日の1号機と同じ状態を辿っていて、ここでも
非常用のベントが開けられ、水蒸気が出されましたが、かなりの危機的な
状況を経過してきています。

さきほどなされた、枝野官房長官の説明によれば、現在、3号機の原子炉
建屋の屋根付近に、水素がたまっている可能性があり、昨日の1号機で
起こったのと同様の、水素爆発の可能性があるとのことです。大変なことです。

枝野長官は、昨日の1号機と同じように、たとえ爆発が起こっても、原子炉には
影響がないので心配いらない、避難地域も拡大しないといいましたが、しかし
そんなことは設計上の想定に入っているわけがありません。そもそも1号機も
爆発によって内向きに圧縮するエネルギー(爆縮)の影響を受けていて、その後の
安全点検がなされたわけでもない。放射線量が多くてあまり近づけないのです。


今日一日たどった経緯もまるで綱渡りのようです。3号機は1号機などと同じように
冷却水の供給ができなくなったのですが、炉心がどんどん露出し、4メートルの
燃料棒うち実に3メートルまで露出してしまったそうです。これにともない炉内の
圧力が上昇、1号機と同じように、緊急措置としてベントが開けられ、放射性物質を
含む水蒸気がだされました。これが9時5分のことです。

その後、ただちに冷却をおこなうために9時8分より真水の注水を開始しまいた。
ところが途中で、真水を供給するポンプ系統が再びトラブルに見舞われ、供給が
できなくなって、再び水位が低下。危険な状態になりました。このときだか、
9時までだかは分かりませんが、とうとう燃料棒が溶け出すメルトダウンが
ここでも始まってしまいました。

ここにいたって、真水の供給が断念され、原子炉内に海水が投入されました。
海水を投入することは、錆の問題などで今後の使用をあきらめることを意味
しますが、そんなことにかまっていられない緊急措置です。このことでようやく
水位が回復したといいます。

しかし燃料棒が溶けてしまったために、水素が発生した。これは被覆に使われ
ているジルコニウムという合金が、1400度ぐらいになると融解しはじめ、この
ときに水と接触することで水素を生成するのですが、それがかなりの量、発生
した模様です。

また真水の注入の失敗により、再び圧力があがったため、再度、原子炉の
ベントが開けられ、水蒸気を逃がす動作が行われましたが、このとき原子炉内
に発生した水素が、3号機建屋の中に逃げ出し、屋上付近にたまっている
可能性があるというわけです。

これは非常事態の中で起こっていることですから、その際、どれだけの水素が
発生したのか分かりません。昨日の1号機のときと同じレベルなのか、低いのか
あるいは圧倒的に多いのか。誰もモニタリングなどできない。そのため、水素
爆発が起こった場合、そのエネルギーが昨日並みという保証はまったくありません。


さらにさらに恐ろしいのは、この3号機には、ウランとプルトニウムを混ぜた
MOX燃料が使用されていて、プルサーマル(プルトニウムを通常の軽水炉で
燃やすこと)が行われていたことです。つまり一部メルトダウンを開始したと
思われるのは、ウラン燃料だけではなくプルトニウム燃料であり、核分裂性も
熱も、エネルギーも圧倒的に多いものだということです。

そもそもプルトニウムは、高速増殖炉で使うために、通常の原発の使用済み
燃料を再処理して取り出されたものです。ウランよりもエネルギーが高いという
ことは、同時に制御も難しいことを意味します。そのことが高速増殖炉の開発
の難航の要因となってきたわけですが、そのために日本は膨大な余剰プルト
二ウムをかかえることになってしまった。

プルトニウムはウランよりもはるかに原爆の材料に向いていることもあって、
その備蓄をIATEなどが規制していることなどもあり、日本政府も原子力当局も
とても困ってしまった。そのため考え出されたのが、通常のウランに混ぜて
通常原発の中で燃やしてしまえという暴論です。

これはそもそもの設計思想を無視したものです。通常炉はこんなのものを
燃やすことを想定して作られていないからです。それだけにさまざまな事故の
発生が懸念されるため、多くの人々の批判を受け、なかなか実現しなかった
のですが、最近になって東電が反対の声を押し切り、プルサーマルを始めて
しまったのがこの3号機なのでした。このため危機リスクは1号機よりもさらに
高い。まさに今、その原子炉建屋の屋上に、水素ガスがたまっており、
しかも政府が、爆発の起こる可能性を示唆している現状にあります。


このほか、第2号機はなんとか冷却装置が保っていますが、バッテリー切れを
起こす可能性があり、いつなんどき、冷却不能になるか分からない状態で
あると先ほど伝えられました。
そしてこのほかに、福島第二原発1号機、2号機、4号機でも圧力が上昇しており、
第一原発1号機、3号機で行ったように、ベントを開いて水蒸気を逃がすことが
検討されているそうです。しかしここも同じ道をたどる可能性はないのだろうか。
同じように水素がたまり、爆発する可能性はないのか。十分ありうることです。


こうした状況に対して、昨日、原子力資料情報室の記者会見が行われました。
僕も足立さんが教えてくれたおかげで、ネットで観ることができましたが、この
中で、元東芝の技術者で、原子炉設計の専門家だった後藤正志さんが実に
示唆的なことをお話していました。

あくまでも僕が聞き取った内容と断っておきますが(原子力資料情報室は、個人の
意見・見解と情報室の見解の混同を起こさないことを求めています)、この
ベントは、非常用の最後の手段として設けられているものであり、設計条件を
逸脱したものであって、技術者たちに「原子炉格納容器の自殺」と呼ばれている
ものなのだそうです。

なぜなら原子炉格納容器は、内部で何が起こっても、放射能を外に逃がさないこと
を絶対的な使命にしているにもかかわらず、自らそれを覆すのが、このベント
だからだそうです。つまりこれを使うのはなりふり構わぬ非常措置であり、設計上の
安全装置がすべてダメになった場合の最後の手段だということです。

ではなぜこれを使わなければならないくなったのか。そのままでは圧力上昇で、
原子炉が破裂するからです。ではなぜ圧力上昇が起こったのか。実はこれ自身も
十分に明らかになってはいませんが、少なくとも第一原発1号機では、冷却装置
の電源がとまってしまったからであり、そのためのバックアップ電源の供給源で
ある、ディーゼルエンジン2台が緊急作動しなかったからです。

後藤さんは、この段階で既に設計上の破たんなのだといいます。非常時のための
装置が働かなかったわけですから。そしてそこからは想定外のあってはならない
ことが進行しているわけです。そのために放射能が外に出ることも承知で
ベントを開ける。すでにその段階で、綱渡りに入っているわけですが、その作業が
これから少なくとも3機の原子炉で行われようとしています。

これは設計上、想定していないことなので、どのようなことがおこるか誰も
正確につかめない。だからこそ、昨日も水素爆発が起こってしまったわけです。
すでにコントロールが失われているわけです。
政府は何よりもこのことを明らかにすべきです。枝野長官は何がおこっても
「想定内のことであり、健康上の被害の心配はない」と繰り返していますが、
そうではなくて、すでにすべての原子炉が想定外の状態になっていること、
つまり何が起こるか分からない状況になっていることを素直に明らかにすべきです。


この点で、後藤さんは、政府とトーンを合わせているマスコミの姿勢も批判して
いました。とくに「念のためとか言う言葉が多すぎる。そうではなくてもっとはっきりと
危機を伝えるべきだ」というのです。パニックを起こさせないとばかり考えている
のがみえみえだけれども、それは人々の危機管理意識を非常に低くみている
ことではないのか。人々を見下しているのではないのか・・・。僕も全く同感です。

この点で見過ごせないのは、昨日午後3時36分に爆発が起こってから、政府が
4時間近くも見解を明らかにしなかったことです。推論されるのは、実際に何が
起こったのか、現場サイドでもなかなか把握できなかったことです。反対に言えば
原子炉が崩壊してないことが確認されるまでの間、大量の放射能が拡散しつつ
ある可能性も考えられていたということです。にもかかわらず政府はそれを
明らかにしなかった。これは重大な過失です。

いやそもそもその前から多くの原発は想定外の状況に陥っていたのですから、
政府はそれを明らかにし、放射能から身を守るすべを国民に訴えるべきだった。
そしてそれをしなかったからこそ、あの爆発時に150人から190人にも上る人々が
被曝してしまったのでした。避難のためにグラウンドで待っていたときですが、なにせ
「念のための避難」などと繰り返されており、危険への対処があまりに不十分
だったと思われます。

このときに最低でも、全員が身体をすっぽり包み込める雨合羽を着て、水で
濡らしたマスクを何重にもしていたら、また集まるのなら、グラウンドではなく
庇のあるところなどにしていたら、かなりの程度、被曝は防げたのではないかと
思われます。なんとも残念というか無残な気がします。

13人の方は、身体に付着した放射性物質を除去する措置をとらねばならなかった
とも言われています。それだけ死の灰をかぶってしまったのです。にもかかわらず
枝野官房長官は、ただちに健康上の被害はないといいきる。何の検査もしていない
し、そもそも胎内被ばくはこれから始って、長い時間をかけて身体をむしばんで
いくというのに・・・。

 
さらにもう一点。福島原発から100キロ以上北東にある女川原発のモニターが
放射性物質を感知したことが公表されました。分析の結果、女川原発から
でたものではない可能性が非常に高く、そうなると、福島第一原発1号機の
爆発で飛散した放射性物質である可能性が極めて高い。
つまり1日たたずして100キロ以上北東、ないし北北東に流れたのですが、そうだと
すれば北方100キロぐらいにある仙台市にも放射性物質が飛んでいるのでは
ないか。放射線量は微量ですが、見過ごせない事態です。


これらの点から言えるのは、私たちはまだまだ本当に深刻な原発大事故の
前にたたされているということです。まだまだもの凄く危険な状態です。
そうしてそうである限り、放射能汚染から身を守るための措置を講じていく
ことが必要です。これまでいくつかマニュアルを紹介しましたが、これを
国民全体で共有する必要があります。


・・・以上、現段階での原発情報を書きましたが、今日は続けて、この状況の
中で私たちに何ができるかの考察を書きたいと思います。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

東北地方太平洋沖地震について( 5 )

2011年03月12日 23時30分00秒 | 東北地方太平洋沖地震3月12~31日
守田です。(20110312 23:30)

友人が、原子力事故が起こったとき、どのような格好で
逃げればいいのかなど、イラストで示した有効な情報を送って
くれました。貼り付けますので、ご活用下さい。


「原発で事故」「原発で放射能漏れ」と聞いたときの対処法
http://tabemono.info/report/image/ns127_genpathu3.jpg

原発事故に備えて常備しておくもの
http://tabemono.info/report/image/ns127_genpathu.jpg

原発からの距離で違う逃げ方
http://tabemono.info/report/image/ns127_genpathu2.jpg


とてもわかりやすい内容ですが、ただ1点、注意すべき点が。
ここに書かれている情報、とくに原発から10キロ、20キロ、30キロと
離れた場合の逃げ方や逃げる時期の目安は、あくまでも原発事故が
単独で起こったときを想定して書いたものだと思います。

今は、地震と津波で各地がとんでもないことになっているので、
逃げるのはより大変だと思います。道路の状況もよく分からないのでは。
なので、逃げるときはここに書いてあるよりは、もっと早めに行動した方
が良いです。この点を付け加えて、多くの人に紹介したいですね。


また原子力問題と丁寧に向き合ってこられた京大原子炉実験所の
小出弘章さんからのメールが転送されてきましたので、みなさんに
お届けします。日本の原子力行政の危険性をさまざまな場面で
指摘してこられた方です。


*******

皆様

8時の枝野長官の記者会見を聞き、
爆発は格納容器と原子炉建屋の間で起き格納容器はまだあるとのこと、ちょっとほっとしました。

もし、それが本当なら、爆発は水素爆発です。
そしてその水素は、燃料棒被覆管材料である、
ジルコニウムという金属と水との反応で生じた水素だと思います。

それが格納容器ベントを開いたことで、原子炉建屋に漏洩し、爆発に至ったと推測します。
格納容器は放射能の放出を防ぐ最後の砦で、それがまだ形として残っているということは、
せめてもの救いです。

その格納容器の中に、海水を注入するという説明でしたが、どうやって海水を送るのでしょうか?
そのためにはポンプが動かなければいけませんし、そのためには電源が必要です。
電源が失われたからこそ、事態がここまで悪化してきました。
何故、いきなり海水を送れるようになったのでしょうか?

注水できるポンプの圧力の能力はあります。原子炉圧力容器内は大変高圧になっており、
消防用のポンプ車の吐出圧力では原子炉圧力容器の中に直接水を送ることはできませんが、
格納容器の中であれば送れると思います。

それでもなお、核の容器の中に水を送る作業はもっと早くやれたはずだと私は思います。

十分な情報がない中、申し訳ありませんが、正確な判断ができません。
もし、格納容器内を海水で満たすことができるのであれば、もちろん原発は2度と使えませんが、
最悪の破局は免れることが出来ると私は思います。

格納容器内に海水にホウ素を混入させることは必要です。今直面している危機は、
原子炉が溶けてしまうこと、
そして一度は停止させたウランの核分裂反応が再び始まってしまうかもしれないことの2つです。

原子炉を溶かさないためには水を供給すること、
核分裂を再び始まらないようにするためには中性子を吸収できる物質を供給しなければいけません。
中性子を吸収する物資がホウ素です。
ですから、ホウ素を混入した海水を格納容器に注入することは有効です。

成功してくれることを願います。

政府の提供する情報は大変不十分です。
爆発前後で正門前での放射線量が、減ったなどということは、
格納容器が破壊を免れたという証明にはなりません。
単に風向きが変わった可能性の方が遥に大きいです。
今後も、あちこちからの情報に常に注意してください。

このメールは失礼ながらたくさんの人たちに一斉に送ります。
事故の対応に追われており、お許しください。

2011/3/12 小出 裕章



以下、マスコミからの続報も付け加えておきます。

一番最後に載せた東電による、福島県内の放射能測定装置が

全部ダウンしているという記事がとくに気になります。

ともあれ史上最悪の原発事故が未だ進行中です。


**************


炉心溶融の可能性、東電も認める 福島第一原発1号機

東京電力の小森明生常務は12日夜の記者会見で、
爆発があった福島第一原子力発電所1号機から放出されたとみられる
セシウムが検出されたことを認め、
「炉心そのものが通常とは違う状況になっている可能性はある」と述べた。
原子力安全・保安院が指摘した「炉心溶融の可能性」を認めた。

1号機の建屋の現状については「上の方は壁がない状況になっているのは、目視で確認できる。
下の部分は形はしっかり残っている」と説明。
「なるべ く見える範囲のものを見ようとしているが、
建物の中をくまなく見ることが難しい状況。放射線量がかなり高い」とも述べた。
今後の対処については
「まずはいろいろな形で原子炉を冷やそうと注力している」と述べるにとどめた。

一方、原子炉容器内の状態について、
高橋毅・原子力運営管理部長は「明確につかめていない」と述べた。
会見を始めた午後7時半時点での炉内の圧力や水位はわからない状態という。

(2011年3月12日20時26分 朝日新聞)


福島第一原発1号機爆発時、3人被曝 県発表

経済産業省の原子力安全・保安院は12日、
東日本大震災で被害を受けた東京電力福島第一原子力発電所1号機(福島県大熊町)で、
午後3時30分ごろに大 きな爆発音を伴う爆発が起きたことを明らかにした。

枝野幸男官房長官は同日夜会見し、爆発は何らかの理由で建屋内にたまった水素によるもので、
原子炉の安全性を保つ格納容器は損傷していないこと、
今後の損傷を防ぐため、容器を海水で満たして冷やす措置を指示したことを明らかにした。
福島県は同日、近くの高 校のグラウンドにいた3人がこの爆発で被曝(ひばく)したと発表した。

冷却にあたって、核反応が連続する臨界に達しないようにするため、ホウ素も用いる。
この措置は午後8時05分に着手したという。
枝野氏はこうした 手段について、原子力安全委員会など専門家などとも協議し、
新たなリスクはないと判断したが、「念のために、万全を期すため」、
避難を指示する対象を従来 の半径10キロから半径20キロに拡大した。

東電は12日午後、原子炉格納容器の損傷を防ぐため、
容器内の放射性物質を含む空気を外部に放出する作業に着手。
同3時30分ごろに現場敷地境界で、
1時間あたり1015マイクロシーベルトの放射線を確認した。
1015マイクロシーベルトは、
一般人の年間被曝(ひばく)線量の限度(1ミリシーベルト=1千マイクロシーベルト)を、
1時間で浴びる放射線量に該当する。
日常生活で自然から浴びている放射線は平均で1時間あたり0.05マイクロシーベルト。
放射線業務従事者は年間50ミリシーベルト
かつ5年間で100ミリシーベ ルトが被曝限度とされている。

だが、その直後の午後3時36分ごろに爆発があった後、
線量は70.5マイクロシーベルトまで落ちたという。
こうしたことから、枝野氏は放射性物質の放出に大きな変化はなく、
原子炉は制御下に置かれるとしている。
福島県によると、爆発で1号機の原子炉建屋の天井が崩落したことを確認したという。
東電社員ら4人が負傷し、病院に搬送されたという。

東電の小森明生常務は12日夜の会見で、第一原発について
「現在、原子炉の様子がつかめないが、時間ごとの(放射性物質の)放出の可能性は高い。
厳しい状況」と述べた。

放射線医学総合研究所や東電が原発敷地内で、
燃料中に含まれる核分裂生成物であるセシウムやヨウ素を確認した。
いずれも、ウランが核分裂をした後にできる物質だ。

こうしたことから、保安院、東電とも、炉心溶融の可能性が高いとしている。
想定されている原発事故の中で最悪の事態だ。
これが進むと、爆発的な反応を引き起こして広く外部に放射能をまき散らす恐れもある。

原子炉圧力容器内の水位は下がり続けており、午後5時28分の段階で、
燃料棒(長さ4メートル)の上端から1.7メートル低い位置にある。
燃料棒 の半分近くが露出した状態になっている。
消防車などを使って冷却水を注入しているが追いついていない。
このため、東電は海水も使うことを選択肢の一つとし て検討していることを明らかにした。

政府は福島第二原発(同県楢葉町、富岡町)について、
避難を指示する範囲を、半径3キロ圏から10キロ圏に拡大した。

(2011年3月12日22時2分 朝日新聞)


原子炉損壊防止へ海水で冷却開始 福島原発1号機 東電、
廃炉も視野 海水注入で炉心冷却開始 東電、1号機廃炉も視野
福島第1原発、史上最悪の事故に


東日本巨大地震で被災した東京電力福島第1原子力発電所1号機について、
経済産業省の原子力安全・保安院は12日午後、「炉心溶融が進んでいる可能性がある」と発表した。
東電は同日、原子炉に海水を注入し、炉心を冷やす作業を始めた。
海水注入でさびやすくなることから、廃炉も視野に安全対策を進めた。
原子炉周辺からは燃料の核分裂に伴うセシウムやヨウ素が原発周辺から検出。
ほぼ半世紀になる日本の原発史上で、最悪の原子力事故になった。

これに先立つ午後3時半ごろ、1号機周辺から爆発音が聞こえ、10分後に白い煙が噴き出した。
この爆発で東電の社員2人と協力会社の作業員2人がけがをし、病院に搬送された。
福島県に入った情報では原子炉がある建屋などの天井が崩落した。

枝野幸男官房長官は同日夜の記者会見で
「建屋の壁が崩壊したものであり、中の格納容器が爆発したわけではない」としたうえ
「放射性物質が大量に漏れ出すものではない」と主張した。

福島県に入った情報によると、午後4時すぎ、
敷地内の放射線量が1時間に1015マイクロシーベルトを示した。
一般人が年間に受ける放射線量の限度(1000マイクロシーベルト)に相当する値まで上がっている。

原発は万一の事故に備え、「5重の壁」と呼ばれる構造で放射性物質を閉じ込める。
今回の爆発では一番外側にあたる原子炉建屋が壊れたことが映像で確認された。
内側の防壁の状況は分かっていない。

建屋崩壊時は原子炉格納容器の圧力が高まっており、
壊れる可能性があったため内部の空気を出す作業を進めていた。
爆発が起きた原因は調査中だが、
原子炉格 納容器の圧力が何らかの理由で高まり過ぎて爆発したとすれば、
最悪の場合は内部の防壁も壊れ、放射性物質が外に出た可能性がある。

1号機は東日本巨大地震の発生で自動停止はしたものの、
緊急炉心冷却装置(ECCS)を動かすことができなくなり、
炉を十分に冷やせなくなっていた。

東電は同日午後、原子炉内の水位低下が進んでいると発表した。
午前9時に燃料の上部50センチメートルが露出していたのが、
10時30分には90センチ メートル、午後1時には1.5メートルに拡大。
午後3時半ごろに1.7メートルになった。
燃料の長さは4メートルで全体のほぼ半分が露出していたことになる。

(2011/3/12 21:53 日経新聞)


放射線の計測装置すべてダウン 東電

福島県によると、放射線を計測するために設けている約10のモニタリングポストが
すべてダウンした、との報告を東京電力から受けたという。
県もモニタリングポストを設置しており、独自に計測値を調べている。

(2011年3月12日19時37分 朝日新聞)



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

東北地方太平洋沖地震について( 4 )

2011年03月12日 21時31分00秒 | 東北地方太平洋沖地震3月12~31日
守田です。

続報です。さきほど、枝野官房長官の会見が行われ、
爆発は、原子炉格納容器の爆発ではないこと、大量の放射能の飛散は
起こっていないことが明らかにされました。
これは事実だと思います。最悪の状態はまだ起こっていないということです。
とりあえずは良かった!本当に良かった!

ではどうして爆発が起こったのか。何らかの要因で発生した水素が、
格納容器と建屋の間にたまり、それが爆発したようです。
そのため、建屋が内側から粉々になりましたが、原子炉格納容器は
破壊されずに残ったとのことです。

このため、その後の放射能の計測でも数値は上がっていません。
爆発のときに生じた煙の中に、放射能が混じっていたことは間違いない
ですが、少なくとも、広大な地域が壊滅するほどのものではありません。

この時間、同時に原子力情報室の会見も行われ、東芝で格納容器を
設計していた後藤正志さんが説明をおこなって下さいましたが、そこでも
可能性として、格納容器の外での水素爆発の可能性を語られていました。
なのでこの点からもこの情報は信ぴょう性があります。
(ちなみに、格納容器内は、水素爆発が起こりにくいように、窒素を
封入してあるとのことです。)


ただし問題はその後の対処です。枝野長官は、依然、冷却装置が回復しない
ため、原子炉格納容器内を、海水で満たす非常措置をとると発表しました。
その場合、原子炉格納容器の中だけを海水で満たすのか、それとも、
その中にある原子炉の中も海水で満たすのか今一つ分かりませんが、
ともあれ水浸しにすることで、燃料の過熱を抑えるというのです。
つまり燃料の一部がとけてしまい、冷やすことができない事態はいまだ
継続中だということです。

これに対して後藤さんは、海水で水浸しにするのは、確かに最後の手段として
考えられてきたことだが、設計的に想定されていることではなく、そのための
取水口などないこと。そのため「ありとあらゆる手段を駆使して」注水することに
なると語っていました。それ以外、打つ手がまったくないが故の、想定外の
最後の一手であり、設計上の破たんの上の行為だといいます。


これが成功することを祈るしかありません。本当にこれでおさまって欲しい。
しかし同時に、おさまらないときに備えて、(まだ格納容器が破られていないことを
付け加えた上で)、放射能が発生した場合の対処を多くの人々で共有する
ことは進めた方がいいと思います。もちろん逃げられる人は少しでも遠くに
逃げた方がいいです。特に近場の人は、今なら放射能がそれほど出ていない
ので、退避に有利です。

あと僕も節電協力賛成です!被災地のあらゆる救助のために重要です。
やれそうなことはなんでもやりましょう。


さらに情報ウォッチを続けます。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

東北地方太平洋沖地震について( 3 )

2011年03月12日 19時29分00秒 | 東北地方太平洋沖地震3月12~31日
守田です。(20110312 19:29)

相当に深刻なことが進行しています。
さきほど、政府と原子力保安院が続いて会見を行いましたが、
何が起こっているかをまったく明らかにしませんでした。
あまりにひどい。これではまだ放射能を避けられる多くの人々が
逃げ遅れたり、対処ができなくなってしまう。

しかしNHKの映像で爆発のそのときが映されましたが、相当、
激しい爆発であったことは間違いありません。
報道では白い煙があがったとありますが、灰色の煙、原発の
建物よりもずっと大きい煙があがり、広範囲に破片が飛んで
いました。もの凄い爆発でした。

この事故で4人がけがをしたが、意識はあるという報道が
されていますが、あるテレビ局でコメントをしている学者さんが、
「それは遠いところにいた人のことではないか。あの場に
いた人間が、この爆発で何も被害を受けないなど考えられない」
と語っています。
あるいは現場担当者がみな爆発で吹き飛ばされてしまい、
そのために情報があがってきてないのかもしれない。

しかしそうであったとしても爆発があったのは3時36分であり、
すでに貴重な4時間が経過しています。枝野官房長官は
10キロ以内からの待避で安全は確保されると繰り返し
語っていますが、どうあってもそんなことは信じられない。
人々から待避の機会を奪う大変非道な発言ではないかと
思われます。

もちろん、これから何が起こるか。正確に想定することは
できません。しかも現場の情報が正確に出されないのだから
なおさらです。しかしそうならば、起こりうる最悪、あるいは
そこまでいかなくても、起こりうる可能性の高いことを明らかにして、
そのもとでの対処を取るべきであり、そのためには避難を拡大
させることや、放射能への構えを広範な地域で構築していく
必要があります。

しかし非常に深刻なのは、原発周辺が、地震と津波で本当に
壊滅的な打撃を受けており、逃げるどころか、多くの場所でいまだに
救助を待っている状態にあるという事実です。
逃げるどころか、まさに救助隊がどんどん入っていっているのです。

しかも恐ろしいことに、今、南から北に向かう風が吹いています。
原発から北にまっすぐ向かうと仙台があります。原発からわずか
100キロしかない。しかも原発から仙台に向かう海岸線は、
津波のもっともひどい被害を受けていて、多くの集落が壊滅している
ところです。

放射能はまずは風にのってこの地域に流れていくと思われます。
だからこれらの地域の人々は逃げた方がいい。とくに風が向かう
地域の人は早く逃げた方がいい。その場合、逃げる
方向は今後の風の方向を見極めて決める必要があります。
南にいってはいけない。しかし北に逃げるばかりでは追いつかれて
しまうかもしれない。この辺を見極めて西にも回る必要がありますが、
明日は海側から、つまり東から西に向かう風が吹くという情報もある。

さらに困難なのは、多くの人々が被災していて、とても逃げられる
状態にもないことです。また逃げた人々を受け入れるキャパも
各地が失っている。だとすれば逃げれない人に対して、早急に
放射能雲がおそってきたときの対処を知らせる必要がある。
まず今のうちに水を確保することですが、水道がストップしている
ところはそれも難しい。本当に過酷な状態です。

さらに恐怖のシナリオはまだまだ残っています。残された福島第一
原発の2号機などは大丈夫なのか。第二原発は大丈夫なのか。
もし1号機で、最先端で悲劇を止めようとしていた人たちが大変な
ダメージを受けていた場合、誰が残った原発への対処を行う
のでしょうか。しかもこれらの地域は高濃度の汚染地帯です。
そこに残り続けて、他にも残る原発の安全を確保しなければならない。
それが出来るのだろうか。続けて残りの原発が最悪の事態に
向かってしまうことはないのだろうか。本当にもの凄く深刻です。


今、この事態の中で、私たち一人一人に何ができるのか。
きわめて難しい問いですが、少なくとも、放射能雲が迫ってきた
場合にどうすればいいのかを、いろいろな手段で知人、友人に
伝えていくことではないでしょうか。

どこに逃げろとかはいいにくいし、判断もしずらいので、それぞれの
判断に任せるしかないですが、少なくともこういうことに気をつけようと
いうことを知らせることが大切だと思います。
残念ですが、夕べからの経緯を見てきたものとして、政府の
原発に関する広報は信用できないと言わざるを得ない。

流言飛語になることを気をつけなければいけませんが、相当に
深刻な事態が進行していることを伝えて、各地で放射能に対して
自分たちで防衛し、とくに子どもたちを守ってもらうことが必要だと
思います。


今、僕が調べているのは、南の側に影響はないだろうかということです。
もちろん風は回るので、すぐ南はもの凄く危険です。しかし離れて
いるところではどうでしょうか。
例えば東京は、原発から南、ないし西南方向220キロぐらいしか
離れていません。東京は大丈夫なのだろうか。少なくとも東京圏
は危険なのではないだろうか。逃げろとまではいえなくとも、
万が一、放射能が流れてきたときの対応を進め、できるだけたくさんの
水をためておいた方が良いと思います。


これを書いている今、国からの指示で、避難対象地域が半径
10キロから20キロに拡大されました。しかし理由が説明されて
いない。しかも後手後手の対応です。
おそらくすぐにこの地域は拡大します。だから20キロの外に
いる人も逃げた方がいい。

しかし、逃げろというのなら、今、どこに放射能の雲が向かって
いるのか、どのように放射能が移動しているのを明らかにすべきです。
そうしないと、逃げる途中に、死の灰の降下物の中に入って
しまうかもしれない。指示があまりに無責任です。

今、コメンテーターの学者さんが、「相変わらず昨日、危ないと言って
いた他の原子炉の話がまったく出てない」と憤っています。
避難する方々には「落ち着いて移動して下さいとしか言うことが
できません」と述べています。

「自衛隊のヘリなどで上から撮影すれば何が起こっているか、
すぐにも分かるはずだ。不安をあおらないためにもそれを早く
公表すべきだ」とも。


こうしたことを踏まえて、みなさん、できるだけ放射能から
どうやって自分たちを守るのかを知らせていきましょう。
被災地や近くでないひとにも伝えて下さい。どこからどのように
話が伝わるか分からないので。


さらにみなさん。
私たちは今、本当に大変な歴史の切れ目にいるのだと思います。
おそらく今後日本国は大きく崩壊します。世界経済にも大変な
打撃が生じます。国内でも大量の難民が発生します。
(すでに発生しています。多くの町がつなみで奪われてしまった
のですから。それに汚染が加わるということです)

この状態に対して、この大変な事態をみんなで受け止め、
現場の苦しみや悲しみ、痛みを分かち合い、私たち自身で
もの凄く深刻に傷つくであろう世の中を再建していかなければ
ならないと思います。抽象的ですが、それがなすべきことでは
ないでしょうか。


さらに情報ウォッチと、考察を続けたいと思います。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

東北地方太平洋沖地震について( 2 )放射能とは何か、被曝とは何か

2011年03月12日 17時40分00秒 | 東北地方太平洋沖地震3月12~31日

みなさま

守田です。(20110312 17:40) 

福島第一原発1号機については、一進一退の攻防を繰り返していましたが、さきほど、1号機で爆発がありました。NHKの映像では、1号機の建屋の外壁が完全に吹っ飛んでなくなってしまいました。
すでに大量の放射能が大気中に出ている可能性がきわめて高いです。
このことを踏まえて、早急に放射線と放射能について踏まえておくべきことをまとめてお知らせします。

放射能とは放射線を発する能力のことを指します。これをもった物質を放射性物質と呼びます。

放射線にはいくつかの種類があります。代表的なものはアルファー線、ベータ線、ガンマー線、X線、中性子線などです。
それぞれが原子の中の物質により構成されますが、最も粒子が大きいのがアルファー線、小さいのが中性子線です。

人体への打撃はアルファー線がもっとも高い。エネルギー量が大きく、電離作用(人体を構成する分子と分子がつながっている電子をたたいて、分子のつながりを壊してしまうこと)が強いためです。
実体としてはヘリウム原子核と同じで、粒子が大きく、飛ぶ距離はごくわずかです。数ミリか数センチぐらいでしょうか。このため紙一枚でもふせぐことができます。
ベーター線は次に打撃力を持った物で、アルファー線ほどではないものの、やはり強い電離作用を持っています。ベータ線の実体は電子です。これは1センチのプラスチック板でも防ぐことができます。

これに対して、レントゲンに使われているのが、X線です。実体は電磁波です。ガンマー線もほぼ同じ物と考えてよいかと思いますが、これは遠くまで飛びます。その場合、発生源からの距離にもよりますが、厚いコンクリートでなければ防げません。
中性子線はさらに透過力が強く、なんでも通ってしまいます。しかしエネルギー量はアルファー線に比べれば格段に小さく、電離作用もそれだけ小さいです。

放射線を避ける場合に、これら違った放射線があることを知っておく必要があります。ちなみに放射線計測器と一般にいいますが、これら全てを一つで万能に計れるわけではありません。
いわゆるガイガーカウンターは、事実上X線対策のためのものです。アルファー線やベータ線も計れはするのですが、それぞれあまり長い距離を飛ぶわけでないので、発生源に近づけなければ、感知できないからです。
つまりガイガーカウンターは、アルファー線やベータ線を放射しうる物質がどれだけ浮遊しているかを計るものではないということです。
中性子線の測定はさらに特殊な装置が必要です。JCO事故では、中性子線が発生し続けていたのですが、これを測定する機器の到着が遅れたこともあって、長らく測定できず、救急隊や報道陣がそれと知らずに現場にむかって中性子線をあびてしまっています。

さて放射線が外に漏れたという場合、実は、原子炉内から放射線が外に出ている場合と、放射性物質が外にでて、それが放射線を発生している場合とがあります。
万が一の爆発があった場合も同じですが、この場合の恐ろしさは大量の放射能(放射性物質)が出ることです。

放射能(放射性物質)はウランの核分裂によって出来た物質です。
ウランの割れ方によりいろいろな物質ができます。その中でも恐ろしいのが大量に炉心内に作らている放射性ヨウ素です。これはベーター線を発する物質の固まりと考えるとわかりやすいです。大気中に放射性ヨウ素が出た場合、物質として浮遊します。
このとき雨が降ると、水滴に混じって落下してきて人体と接触し、体内に取り込まれてしまいます。そうするとヨウ素は人体の甲状腺などに集まる性質を持っています。あるいは人体がヨウ素をここに取り込むようにできているともいえます。
そうすると甲状腺に濃縮されたヨウ素から、ものすごい高エネルギーのベーター線が、周辺をたたき続けます。このため発生するのが甲状腺がんで、チェルノブイリではたくさんの人々、とくに子どもがかかりました。

対処法としては、原発事故直後に、放射性ではないヨウ素をさきに飲んでしまい、甲状腺を埋めてしまう方法があります。
これに使えるヨウ素剤としては、ヨウ化カリウム剤を一般の薬局で購入することが出来ます。(ただしほとんど在庫はしてなくて取り寄せになるでしょう)

ただ医師達が出しているガイドラインによれば、放射性ヨウ素は若い人にほど打撃を与えます。なので非放射性ヨウ素を服用するのは子どもが優先ですが、高齢者にも害はないわけではありません。。
これについては以下のページを参照して下さい。
原子力災害時における安定ヨウ素剤予防服用の考え方について (archive.org)

このほかにもアルファー線やベーター線を発する物質はたくさんあります。
劣化ウラン弾の粉末もアルファー線を発する物質ですが、ともあれアルファー線やベータ線は、放射線として飛んできて、体の中に入ることは少なく、放射能として運ばれてきて、体内に取り込まれ、そこで周辺に壊滅的な打撃を与えるものです。

それではX線などは怖くないのかというと、そうではなくて別種の怖さがあると考えた方がよいです。
透過力は断然上で、量が多いと、レントゲンの強いヤツを何度も浴びるのと同じコトになり、当然このことでも電離作用が生じて、ガンなどが発症する可能性が生まれます。

このため、原発事故にあたっては、放射能を体内に取り込まないことが大切で、とくに雨にうたれることは絶対に避けるべきです。
そのためには大量の放射能がやってくる前に遠くに逃げることです。
しかし「場合によっては逃げるよりも屋内にいた方がいい」とも言われます。爆発がおこって放射能雲が迫ってきているのなら、とりあえず室内にこもり、窓に目張りをし、換気扇をとめて、密閉性を高めるなどして身体に浴びないことが大事です。
とはいっても福島原発は、今後、さらなる爆発を起こすかもしれませんし、その方がたくさんの放射能が出てきてしまうので、やはり優先するのは遠くに逃げることです。

このため放射能対策にあっては、物質として飛んでくる放射能と、放射線として飛んでくるものへの対処の双方が必要になります。
マスコミ報道では放射線と放射能がしばしばごちゃごちゃになりますので、とにかく放射能漏れとか放射線漏れが伝えられたときには可能な限り、発生源から離れることと、同時に雨に注意し、放射能に触れないように注意することが必要です。
この点で、放射能雲の下では、屋内の方がまだまし=被曝量が少なくなりうるというわけです。

あと全ての放射性物質には半減期というものがあります。放射線を発する能力が半分になるまでの時間です。
これらが放射能力が弱くなる一つの目安としてありますが、この時間は、エネルギー量の大きいものほど早い傾向があります。
つまり放射線のエネルギーの大きい物、人体にダメージの大きいものほど、たくさんのものを出しているので、それだけ放射能力が早く失われていくということです。

ちなみにヨウ素の半減期は8日間です。8日たつと能力が半分になり、また8日たつとその半分になりますので、時間とともに脅威が少なくなっていきます。
ちなみにチェルノブイリ事故ではこうした情報を政府が伝えなかったため、事故直後に放射線ヨウ素で汚染された牛乳が出回り、多くの子ども達が飲んでしまったと伝えられています。
この場合は、牧草→牛→人間という経路をたどったということです。

このほか、よく話題にあがるのがセシウムやストロンチウムによる土壌汚染ですが、こちらの場合の半減期は30年です。
これらは植物、昆虫、キノコ等々に取り込まれますが、そのたびに濃縮されてしまいます。
チェルノブイリの周辺の数百キロでは、土壌汚染の上に汚染されていない土をかぶせる作業が延々と続いています。100年はかかると言われています・・・・。

このように放射性物質の中には、1日のうちにも半減期に達する物質もあれば、半減期が何万年超というものもあるものの、ともあれ安全性は時間とともに高まります。
このため逃げることができずにやむをえず屋内待避をするなら、屋内の気密性を高め、とくに雨には最大の注意を払ってサバイバルすることです。

こうしたサバイバルについて詳しい情報を閉めているページを上げておきます。参照してください。
とにかく今、私たちは戦後最大の危機に直面しています。
http://www.lohasworld.jp/yomimono/atomdez2.html

*****

注 この記事を書いた時の僕はまだ「とっとと逃げる」方針を確立しておらず、「場合によっては逃げるよりも屋内にいた方がいい」という判断も紹介しています。
まったく間違っているわけではないですが、しかし福島原発事故の現実を振り返るなら、この記事の後に15日に3号機を爆発がおき、漏れ出した放射能量はそれ以降の3週間の方が多くなっています。
事故が時間とともに深刻化したのです。これを踏まえるならばやはり「屋内退避」ややむを得ない場合の対処とし、とにかく遠くに逃げることを最優先にすべきです。
当時、この点を明確化できていなかったことを心からお詫びします。なおあやまりが含まれているものを放置するのはよくないので本文にはすでに訂正を加えましたが、歴史的事実を大事にするため、原文を以下に残しておきます。

このため、原発事故にあたっては、放射能を体内に取り込まないことが大切で、とくに雨にうたれることは絶対に避けるべきです。
場合によっては逃げるよりも屋内にいた方がいいというのはこうした判断に基づくものです。とくにすでに爆発がおこって、放射能雲が迫ってくるときは、一刻も早く室内にこもり、窓に目張りをし、換気扇をとめて、密閉性を高めた方が良いです。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

東北地方太平洋沖地震について( 1 )福島原発が危機に

2011年03月12日 13時24分00秒 | 東北地方太平洋沖地震3月12~31日

みなさま

守田です。

今、私たちの国は大変な災害に見舞われています。
私たちの国の豊かさや平和が足許から崩れつつあります。

まだ被害の全貌は明らかになっていませんが、福島県から岩手県にかけての海岸線で、壊滅的な被害が出ていることが報告されています。昨夜には、宮城県仙台市荒浜若林区荒浜だけで、200人から300人が溺れて亡くなっていることが確認されました。
村落ごと、津波に流されてしまった村落も大変多いようです。非常にたくさんの人々が行方不明になっています。
気仙沼市でものすごい大火災がおこり、千葉県市原市のコスモ石油の精製施設や、住友金属鹿島製鉄所など、多くのプラントでも火事がおこったようです。

これらの中で、最も深刻であり、徹底した注目が必要なのが福島第一原発の冷却水の低下問題です。
すでに昨夜午後9時過ぎに政府によって、半径3キロ以内の住民への避難勧告が出されましたが、時間を追って深刻さが増し、避難勧告は半径10キロ以内に拡大しました。
さらに同原発から10キロ強南にある福島第二原発も深刻な状態になり、ここでも半径3キロ以内の避難が勧告されました。これは、ものすごく、大変なことです。
現地にいる方がいたら、ぜひ可能な限り遠くに避難してください。

冷却ができない状態が続くとどういうことが起こりうるのか。
原子炉はそもそも連続的な核分裂が起こっている場です。その際出る熱が冷却水を熱し、それが循環して、二次冷却水を暖め、それが蒸気を発生させて、タービンを回して発電にいたるのが原発の仕組みです。

ところがこの冷却ができなくなっている。原発そのものは、すでに停止してはいますが、燃料棒はまだまだかなりの熱をもっています。
そのため常に冷却水を張っておく必要があるのですが、この水が冷やされないとどんどん蒸発してしまい、水位が低くなって燃料棒が水面から頭を出してしまいます。

そうなると燃料棒が徐々に温度が高くなり、次第に燃料をつめている被覆を溶かして熔解を初めます。そうして燃料が集中すると、暴走的な核分裂が始まってしまいます。これがメルトダウン炉心溶解です。

そうなると、原子炉内はどんどん高温になり、残った冷却水が一気に蒸気化して、水蒸気爆発が起こる可能性があります。この場合、原子炉の蓋が開いてしまう可能性が高いです。
そうなると原子炉から水蒸気にのって大量の放射能が大気中にでます。確実に数百キロが被曝します。これはチェルノブイリで実際に起こったことです。
また燃料棒の被覆の金属が大量に溶け、これが冷却水と接するなかで大量の水素が発生し、水素爆発が起こってしまう可能性もあります。

しかしこれは最悪の事態のレベル1です。さらに、それでも集中した燃料棒の暴走が止まらなかった場合、原子炉そのものがどろどろに溶け、原子炉格納容器を破って潜っていきます。これだと、原子炉の中にある放射能のすべてが大気中に出てしまいます。こ

の状態でさらに水素爆発などが重なると、もう本当に最悪の状態になります。今、進行中なのは、こうしたことになりうることもある事態です。
万が一、こうしたことが起こるとどうなるか。想像するのはイヤですが、とにかく莫大な人々が被曝します。さらに膨大な地域が、人が住めない地区になります。チェルノブイリでは、半径数百キロが廃村になりました。炉心が炉内に残ったにも関わらずです。

そうなると私たちの国には、膨大な数の難民が発生します。さらに首都圏が麻痺し、経済が崩壊し、ほとんど国家崩壊の状態になります。
さらに連動して日本発の世界大恐慌が勃発するでしょう。そうなると投機屋がすぐに食料・燃料を押さえてしまうでしょうから、それらの価格が高騰し、世界的な飢餓が広がる可能性すらあります。
原発一発の事故で世界が大混乱にいたるわけですが、その可能性が今、福島で進行中です。

現在的には、福島第一原発第1号機において、原子炉内の水蒸気気圧の上昇のために、放射能が外に出るのもやむなしと考えて、手動で原子炉の弁をあけて、圧力を外に逃がす作業が行われているところです。
このままでは大爆発必至ととらえて、原子炉格納容器を開けるという、およそ原子力行政にとっては、あってはならない選択に踏み込んでいます。
しかしそれでも冷却水の蒸発が止まらず、水位がどんどん下がってとうとう燃料棒の一部が冷却水の上に頭を出してしまっているとのこと。そうなると高温化して、燃料棒が溶けて崩壊し、炉心にたまっていく可能性がますます高いです。
できることは、冷却がうまくいくことを祈るのみですが、同時に万が一のときに、非被災地の側は、発生する難民を受け入れる準備を始めるべきだと思います。少なくとも僕はそんな気持ちで情報を調べています。

とにかくこの被災は現段階でも確実に阪神大震災を上回っています。本当に大変です。それに原発の暴走が加わったら、第二次世界大戦以来、最悪の状態に私たちの国はおかれるでしょう。
それは他国にも深刻な影響を与えるでしょう。本当にそうならないことを祈るばかりです。

福島原発の現場がどうなっているかは分かりませんが、暴走を食い止めようとしている人々は、ほとんど特攻隊のような状態で奮闘しているようです。
さきほども、このままでは作業員の被曝が必至ということで、作業方法の検討が行われているという報道もなされました。

チェルノブイリでもたくさんの消防士が、原子炉の蓋があいた原発に突入していき、その後に多くが本当に深刻に被曝して苦しんで、亡くなっていきました。
今、日本中から、多くの医師達、医療スタッフ、消防スタッフ、その他の救助隊の方達が、続々と被災地に入っており、その中には、今まさに原発に近づいている人々もいるでしょう。
なんとか冷却が復活して、事態が収まって欲しい。本当に祈るばかりです。

ともあれ今は情報ウォッチを進めます。

****************************

(1)への付記(20110404)

タイトルを見やすくするために、
「福島原発が危機に」に直します。

なお、この連載初期の記述には幾つかの間違いがあります。

一つには「原子炉はそもそも連続的な核分裂が起こっている場です。その際出る熱が冷却水を熱し、それが循環して、二次冷却水を暖め、それが蒸気を発生させて、タービンを回して発電にいたるのが原発の仕組みです」と書いてあること。
これは関西電力などに使われている加圧水型原発の構造です。FUKUSHIMAは、沸騰水型と言って、炉心を回っている水がそのままタービンを回してます。これに接する二次冷却水を海から引き込んでおり、ここに熱を移して海に捨てています。

二つに
「そうなると燃料棒が徐々に温度が高くなり、次第に燃料をつめている被覆を溶かして熔解を初めます。そうして燃料が集中すると、暴走的な核分裂が始まってしまいます。これがメルトダウン炉心溶解です。」と書いていますが誤りがあります。
メルトダウンは、冷やせなくなった燃料が溶けだして塊になり、下に落ちて行くこと、炉を突き破ってしまうことを指します。
この際、暴走的な核分裂は伴いません。冷却できないといわゆる「崩壊熱」によって、高温になり、やがて自分で溶けていくのです。

この場合に、核分裂が始まり、(再臨界)、暴走していくと、燃料は溶けるより、核爆発を起こしてしまう可能性があります。
この可能性は非常に低いとされていますが、ゼロとは言えません。

ともあれここの記事では、燃料が高温になって溶けていき、炉を破ってしまうこと(メルトダウン)と、燃料が固まった際に核分裂(再臨界)がはじまることが、十分に分けて考察されていません。

この点をお詫びして訂正します。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする