“なによ。新婚なのに、武蔵ったら。ほんとなら、新婚旅行中の筈よ。
それを出張だなんて。そんなこと、ひと言も言ってなかったわ。
そうと分かっていれば、武蔵と一緒に帰ったわよ。
なにか、具合の悪いことでもあったのかしら。 . . . 本文を読む
途方にくれた小夜子、立ち竦んでしまった小夜子。
見知らぬ人ばかりで、声を掛けることができない。
否、これまでの小夜子では、誰かしらが進んで助けてくれていた。
しかし今乗客全員が降りきっても、一人呆然と座っている。
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怪しかった曇り空からぽつりぽつりと雨粒が落ち始めたのは、小夜子が駅の改札を出た頃だった。
着物類の大荷物は武蔵が持ち帰ってくれたものの、小夜子の母親澄江の思い出の品で、また膨らんでしまった。 . . . 本文を読む
昨日土曜日は、月に一回の同人例会でした。
残念ながら、車の事故による国道の通行止めやら、腰骨を折られた方やらと、出席者八人どまりでした。
やっと新人の女子大生の入会があり、一気に若返りました。
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興奮冷めやらぬ中、運ばれてきた食事に舌鼓を打ちながら
「これって、本物だよね」
「ここも偽装を認めたんだもん、もうやらないでしょ」
「タイミングとしては、グーでしたね」
と、好き勝手なことを… . . . 本文を読む
「あらあら、社長さま」
「女将は、“あらあら”が好きだねえ」
「あらあら、申し訳ありません。
使わないようにと意識しておりましたのに、とうとう出てしまいました。
親しみを覚えます殿方には、ついつい。
お耳障りでございましたら、ご勘弁くださいまし」
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「あら、なにを仰います。こんなあたくしにお声を掛けてくださったのは、社長さまだけですわ。相当にお遊び慣れてらっしゃるのですね。社長さまこそ、何人の女将を口説き落とされたのでございますか? . . . 本文を読む