29日(水)。わが家に来てから292日目を迎え,サントリーホールの9月~10月のカレンダーを調べているモコタロです
ウィーン・フィルがまた来るんだね ご主人は行かないけど
閑話休題
昨夕、サントリーホールでバッハ・コレギウム・ジャパン(B.C.J)の「第45回サントリー音楽賞受賞記念コンサート」を聴きました 演奏曲目はJ.S.バッハ「ミサ曲ロ短調BWV232」です
自席は1階13列26番,センターブロック右から2つ入った席です.会場はB.C.J定期会員をはじめとして9割方埋まっている感じです 定期演奏会は東京オペラシティコンサートホールですが,今回の記念公演はより大きなサントリーホール
ステージの左右,1階席センター後方,2階席左右にはテレビカメラが構えています
このような大げさな態勢はNHKしか考えられません.いつか放映するのでしょう
拍手の中,オケのメンバーが入場します 向かって左サイドは,後方にトランペット3本,ティンパ二,前にヴァイオリンとヴィオラが配置され,中央にチェンバロ,その前にフラウト・トラヴェルソが構え,向かって右サイドに通奏低音(チェロ,ヴィオローネ,オルガン),オーボエ,ファゴットが配置されています
合唱団が入場すると一段と大きな拍手が起こります.世界に誇るB.C.Jの合唱団です 合唱団にはソリストが混じっています.ソプラノ1=ハンナ・モリソン,ソプラノ2=レイチェル・二コルズ,アルト=ロビン・ブレイズ,テノール=櫻田亮,バス=ドミニク・ヴェルナーです.最後に鈴木雅明氏が登場するとさらに大きな拍手が起こります
さてバッハの「ミサ曲ロ短調」は,完成された最後の作品ですが,作曲と言うよりは,むしろ過去の書かれた作品を寄せ集め,中には元曲の歌詞を変えるなどして改作した”パロディ”が多く含まれていると言われています しかし,プログラム・ノートに佐藤望さんが書いているように「ただひたすら苦悩し困難のなかを進み,自らの限界に何度も鞭打たれる.『ミサ曲ロ短調』を完成するという仕事は,バッハにとってそのような仕事であった」ようです
彼は晩年,視力障害を伴う重い病を抱えており,それが原因で失明して死に至ったわけですが,そうした困難な状況の中で最後の力を振り絞って『ミサ曲ハ短調』を作曲したのです
第1部:ミサ(キリエ・グロリア),第2部:ニケーア信経(クレド),第3部:サンクトゥス,第4部:オザンナ,ベネディクトゥス,アニュス・ディとドナ・ノビス・パーチェムの4部構成になっています 演奏は,第1部と第2部の間に休憩を取ります
第1部の冒頭,合唱が「キリエ」と歌い出します.緊張感に満ち,力強く,そして透明な歌声です B.C.Jの合唱の大きな特徴は”透明性”でしょう.そして,ドイツの批評家たちが驚いたという正確なドイツ語の発音です
ソリスト陣は全員絶好調と言っても良いでしょう 今回特に感心したのはテノールの櫻田亮です.かなり安定度が増したように思います
器楽では,いつものようにフラウト・トラヴェルソの菅きよみ,前田りり子,オーボエの三宮正満,ファゴットの堂阪清高,弦楽器ではコンマスの若松夏美,チェロの武澤秀平あたりが見事な演奏で存在感を高めていました
さて,この曲ではトランペットが活躍する場面が何か所かありますが,どんな格好をして吹いていると思いますか?例えば,その昔銭湯に行った時のことを思い出してみてください 湯上りに,両足を開いて,左手を腰に当て,右手にコーヒー牛乳を持って一気飲みするオジサンがいませんでしたか?ちょうどそんな感じです.ちょっと違うのは右足を前に出して,左手を腰に当て,右手でトランペットを掲げて一気に吹くのです
それはそれは格好良いのです
最後の四部合唱「われらに 平安を 与えたまえ」は感動的です 私は「マタイ受難曲」にしても「ヨハネ受難曲」にしても,この「ミサ曲ロ短調」にしても,バッハの大規模な宗教曲を聴く時は,「バッハの旅」に出るような気持ちになります
最後の音楽が鳴り終ると「ああ,長い旅が終わったんだなあ」と感慨深いものがあります
B.C.Jの演奏を聴くたびに思うのは,世界に通用する数少ない音楽集団だということです