8日(金)。わが家に来てから649日目を迎え、ジャンプで巨大マスターボールを超えた ウサギ跳びが得意のモコタロです
こんなの超えるのわけないぜ! このあと 着地に成功すればね!
閑話休題
昨日、夕食に「麻婆ナス」と「生野菜とサーモンのサラダ」を作りました 「麻婆ナス」はひき肉ではなく豚バラ肉を使いました
も一度、閑話休題
神楽坂のギンレイホールで、ロン・ハワード監督「白鯨との闘い」を観ました これは2015年アメリカ映画です
時は1819年、一等航海士オーウェンたちは鯨油を入手するため捕鯨船エセックス号で太平洋を目指していた しかし、沖合で巨大な白鯨に襲われ、死闘の末、船は沈没しクルーたちは小さなボートで漂流することになってしまう
救助が来るまでの間、いったい何があったのか
この映画は、メルビルが小説「白鯨」を書くために、難破した捕鯨船エセックス号の最後の生き残りから真実を聞き出すという形を取っています この映画では、巨大な白鯨に襲われて難破した船の生存者たちは、水と食料が底をつき、最後には死者の人肉を食料にするところまで追いつめられます
この映画は、人間は生き残るためには何でもする、しなければ生き残れない、ということを語っています
も一度、閑話休題
昨夕、大手町の日経ホールで第450回日経ミューズサロン~ライナー・キュッヒル 七夕 ヴァイオリン・リサイタル」を聴きました 今回は日経ミューズサロン45周年と第450回を祝う「七夕コンサート」です
そのお祝いに相応しいゲストを迎えることになったわけです
ライナー・キュッヒル氏は1950年オーストリアのワイドホーフェン・アン・デア・イプス市生まれで、11歳からヴァイオリンを始め、14歳でウィーン国立音楽アカデミーに入学しました その後、1971年(21歳
)にウィーン・フィルとウィーン国立歌劇場管弦楽団のコンサートマスターに就任、今年8月31日に退団するまでの45年間、重責を果たすことになりました
これで45周年、450回、45年間という3つの数字が揃ったわけです
この日のプログラムは①モーツアルト「ヴァイオリン・ソナタ第42番K.526」、②ベートーヴェン「ヴァイオリン・ソナタ第5番”春”」、③R.シュトラウス「歌劇”ばらの騎士”からワルツ」、④クライスラー「プーニャのスタイルによる前奏曲とアレグロ」、⑤サン=サーンス「ハバネラ」、⑥サラサーテ「カルメン幻想曲」です ピアノ演奏は菊池洋子です
自席はR列8番、左ブロック右通路側です。会場入口の当日券売り場には「完売御礼」の表示が出ています サラリーマンらしき男性が「当日券売り切れちゃったの?」と訊いています。「ウィーン・フィルのコンマスの現役最後のリサイタルだよ、当日券が残ってるわけないじゃん
」とアテンダントが答えたかどうか分かりませんが、私は入口のもぎりの女性に小さな声で言いました。「もぎりよ 今夜も ありがとう
」
さて、1曲目はモーツアルト「ヴァイオリン・ソナタ第42番イ長調K.526」です この曲はケッヘル番号でいうと、K.525の「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」とK.527の「オペラ”ドン・ジョヴァンニ」の間に位置しています
この年の1月にはモーツアルトは父親を亡くしていますが、それが信じられないほど明るく軽快な曲です
モーツアルトにとっては生まれてからこの方、常に自分の人生を支配してきた父レオポルトは大きなプレッシャーだったのでしょう。その父親が死去したので、プレッシャーから解放されたと感じたのでしょうか
もっとも、みんなが悲しみ泣いている時には、モーツアルトはもう笑っているわけですから、気持ちの時差の問題かもしれません
ステージの照明が落とされ、キュッヒル氏と黒のシックなドレスの菊池洋子が登場します 菊池洋子は2002年の第8回モーツアルト国際コンクールで日本人で初めて優勝した人気のピアニストです
キュッヒル氏の場合は、ステージに出てきてからチューニングはありません。楽屋ですべての準備を整えてからステージに上がるのが”一流の証”とでも言うかのようです。立派です
この曲は第1楽章「モルト・アレグロ」、第2楽章「アンダンテ」、第3楽章「プレスト」の3つの楽章から成ります。モーツアルトの時代の「ヴァイオリン・ソナタ」は あくまでもピアノが主体で、「ヴァイオリンの伴奏付きピアノ・ソナタ」とでも言うべき音楽でしたが、後期のこのソナタは、ほとんど「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ」という”対等の”性格が強くなっています それを反映してか、キュッヒル氏の素晴らしい演奏に負けず劣らず菊池洋子のピアノがほとんど対等に対峙します
軽快な演奏は菊池洋子のピアノが主導しているかのようにさえ感じます。彼女はリズム感が素晴らしい
キュッヒル氏はピアノ・パートナーに菊池洋子を選んで正解でした
この曲はヒラリー・ハーンのヴァイオリンとナタリー・シューのピアノによるCDで予習しておきました。CDを買うならこれがベストです
2曲目はベートーヴェン「ヴァイオリン・ソナタ第5番ヘ長調”春”」です ベートーヴェンは1799年から1812年までの13年の間に10曲のヴァイオリン・ソナタを作曲しました。この第5番のソナタは「スプリング・ソナタ」という愛称で呼ばれていますが、これは後世の人が付けたものです
しかし、この曲を聴くと、いかにも春に相応しい心弾む(スプリング)音楽で、若き日のベートーヴェンの瑞々しい感性が現れているように感じます
この曲でも、キュッヒル氏の確かな手ごたえのある演奏を支える菊池洋子の軽快な演奏が光っていました
休憩時間にあたり「スポンサーのファンケルから、記念すべき『七夕』コンサートを祝って、座席番号7の方にファンケルの化粧品・ドリンクセットをプレゼントします」というアナウンスがありました 私は8番で「カスったか
」と残念に思いましたが、前方の7の付く席を見ると、M7、N7、O7、Q7、R7(私の隣席)が空席になっているではありませんか
後ろの列は見ませんでしたが、相当、景品が余ったのではないかと想像します
どうせ余るなら俺にくれ
なお、日経からは全員に「日経ミューズサロンの歩み」(第1回~第450回の公演リストを収録)と「東山魁夷展のチケットホルダー」がプレゼントされました ただでもらえる物なら何でも歓迎します
プログラム後半の第1曲目はリヒャルト・シュトラウス「歌劇”ばらの騎士”」から『ワルツ』です この作品の元は1909年~11年に書かれたオペラの第2幕でオックス男爵が踊るワルツの音楽です
チェコのヴァイオリニストのプシホダという人が編曲したものです
曲の冒頭はかなり表現が難しい箇所で、キュッヒル氏のヴァイオリンが少し苦しそうでした しかし、お馴染みのワルツのメロディーが出てくると、まさに”ウィーン情緒”そのものの世界が現れました
次の曲はサン=サーンス「ハバネラ」です この曲は19世紀前半のキューバに由来するゆったりとした舞曲『ハバネラ』のリズムによるエクゾチックな曲です。キュッヒル氏のヴァイオリンは色彩感豊かに響きます
拍手とともに、左方向から「ボー」という掛け声がかかりました。久しぶりに聴きました。「ブラボー」の「ブラ」がない「ボー」の掛け声
私は勝手に「ノー・ブラの某さん」と呼んでいます
何気に左方向を見ると、私と同じ列の左端の席にいらっしゃいました。同じ東響サントリーホール会員です
むこうは私を知りません。いつも目立たないように潜伏していますから
さて、最後の曲はサラサーテ「カルメン幻想曲」です ビゼーの歌劇「カルメン」は1875年にパリで初演されましたが、歌劇の中の名旋律を基にヴァイオリニストのサラサーテが1883年に作曲したもので、序奏と4つの部分から成ります
第1曲「モデラート」はカルメンがホセを挑発して歌う『ハバネラ』の旋律を主題にしています。第2曲「レント・アッサイ」は女工同士の喧嘩の後にカルメンが口ずさむ歌の旋律が使われています。第3曲「アレグロ・モデラート」はカルメンが歌う『セギディーリャ』の旋律が使われています。第4曲「モデラート」は情熱的な『ロマの歌』の旋律です
第1曲では、キュッヒル氏のヴァイオリンが微妙に外れていたように感じましたが、第2曲以降は修正されたようで、菊池洋子の確かなサポートと相まって素晴らしい演奏を展開しました とくに最後の第4曲における「ロマの歌」に基づく演奏は超絶技巧の極みで、熱演が繰り広げられました
会場いっぱいの拍手に、サラサーテの「序奏とタランテラ」を演奏、それでも鳴り止まない拍手に、チャイコフスキーの「メランコリックなセレナーデ」を演奏し、ウィーン・フィルのコンマスとしての日本での現役最後のリサイタルを締めくくりました
最初にも書いたように、今回のリサイタルの成功は、ピアノの菊池洋子の存在が非常に大きな比重を占めていたと言えると思います