15日(日).昨日の日経別刷り「プラス1」のコラム「マナーのツボ」は「観劇時の荷物・コート,どこに置く?」というテーマでした.超訳すると
「大きな荷物やコートはクロークに預けるのが常識だが,すべての劇場にクロークがあるわけではない 劇場マナーには暗黙のルールがある.コートも荷物も全て自分の席の領域内に収めること
わずかでも隣にはみ出してはいけない.膝の上,足元,座席の下が定位置.ふわふわのダウンコートなどの収納に役立つのがエコバック
ダウンコートなどを押し込んで,席の下に置いておくとよい
」
私がコンサートで通路側席にこだわる理由の一つは,終演後いち早くクロークに行ってコートや荷物を引き取れるというメリットがあるからです 通路側席がとれないときは,コンサート前に預けて 休憩時間に引き取って膝の上に置いておくこともあります
N響定期の時のように相当の混雑が予想されるときは,クロークに預けないこともあります
状況を見ながらケースバイケースというところです
ということで,わが家に来てから今日で838日目を迎え,大学センター試験が 強い寒波の影響で 各地で試験開始時間の繰り下げ措置が施されたというニュースを見て感想を述べるモコタロです
センター試験というと 大雪が降るというイメージがあるけど 気のせいかな?
閑話休題
昨日,午後3時から文京シビックホールで「響きの森クラシック・シリーズ ニューイヤー・コンサート」を,午後6時からサントリーホールで東京交響楽団第648回定期演奏会を聴きました 今日は文京シビックの「ニューイヤー・コンサート」について書きます
プログラムは①モーツアルト「歌劇”フィガロの結婚”」序曲,②同「ロンドK.373」,③ベートーヴェン「ロマンス第2番」,④J.シュトラウス2世「喜歌劇”こうもり”」序曲,⑤ドニゼッティ「歌劇”愛の妙薬”」から「人知れぬ涙」,⑥グノー「歌劇”ファウスト”」から「宝石の歌」,⑦ロッシーニ「歌劇”セヴィリアの理髪師”」から「空は微笑み」,⑧プッチーニ「歌劇”マノン・レスコー”」から間奏曲,⑨同「歌劇”蝶々夫人”」から「ある晴れた日に」です
出演は②③のヴァイオリン独奏=南紫音,⑥⑨のソプラノ独唱=佐藤しのぶ,⑤⑦のテノール独唱=錦織健,指揮=尾高忠明,管弦楽=東京フィルハーモニーです
コンマスは依田真宣です.オケを見渡したところ第2ヴァイオリン首席の戸上眞里も,ヴィオラ首席の須田祥子も,コントラバス副主席の小笠原茅乃も,姿が見えません これは,1曲目の「フィガロの結婚」序曲の軽快な演奏の後の尾高氏によるトークで理由が明かされました
「みなさん,東京フィルはオペラが優秀なんですよ もちろん他のオーケストラ曲も良いのですが
このオーケストラは日本で一番古い歴史を持っています.現在130人の団員がいます.実は,このシビックホールに居るメンバー以外のグループは現在ニューヨークで演奏しているのです
」
東京フィルの主力部隊は海外遠征中で 現在ニューヨークにいることが分かりました 尾高氏が
「ところで皆さん,オーケストラがチューニングするときにオーボエが『ラ』の音を出して,他の楽器が音程を合わせますが,なぜ『ラ』なのか分かりますか?」
と問いかけます.若きコンマス・依田くんに振ると,
「オーボエは最も音が不安定で合わせにくいので,オーボエに合わせ・・・・」
と途中まで答えると,尾高氏が
「質問の意味を取り違えていますね」
と指摘して,
「いろいろ説がありますが,人間が生まれたばかりの時のオギャーという産声の音が『ラ』だという説が有力なようです」
これには会場の聴衆も「なるほど なるほど」と感心しきりでした
ここで,2005年ロン=ティボー国際コンクールで第2位を獲得した南紫音が空色の明るい衣装で登場,モーツアルトの「ロンドK.373」,次いでベートーヴェンの「ロマンス第2番」を演奏します ヴァイオリンの美しい音色が会場の隅々まで響き渡りますが,彼女のヴァイオリンはストラディヴァリウスです
これも尾高氏のトークで明らかになりました
尾高:楽器の値段を聴くのは失礼かもしれませんが,そのストラディヴァリウス,買うと幾らくらいするのですか?
南 :これは貸与されている楽器ですが,値段としては家が一軒買えるくらいと聞いています
尾高:家と言ってもピンからキリまでありますけど・・・・
南 :高い方の家です
尾高:億の単位でしょうね?
南 :そうですね
尾高:皆さん,億ですよ 私なんかそばに近づけない(と言って楽器から遠ざかる
)
軽妙なトークで前半が終了しましたが,演奏している時間よりもトークの時間の方が長かったような気がします.きっと気のせいでしょう
休憩時間に,NPCで働いていた時に知り合ったAさんとその友達と 3人でホワイエでコーヒーを飲みました いつもはアフター・コンサートにお茶するのですが,私は次のコンサートが控えているので休憩時になりました.Aさんの幼馴染みのTさんは家の階段から落ちて骨折してしまい現在入院中とのことで,今回は代わりの方とご一緒でした
いつも感心するのは現在85歳になってもコンサートに通ってこられる その熱意です
AさんとTさんはいつも「80歳を超えると辛いものがあるんですよ
」とおっしゃっていますが,お二人は私が目標とする行動的なシニア・レディです
ムリをしない範囲で頑張っていただきたいと思います.Tさんはこのブログを毎日ご覧になっているそうです.お大事にしてください
ということで15分の休憩時間はあまりにも短く,ゆっくりお話しできなかったのが残念です
プログラム後半は「オペラの部」です.最初にヨハン・シュトラウス2世の喜歌劇「こうもり」の序曲が軽快に演奏されました そして,テノールの錦織健が登場し,ドニゼッティの歌劇「愛の妙薬」からネモリーノのアリア「人知れぬ涙」を感情を込めて歌います
ここで,尾高氏が
「たしか,錦織さんは2年前のシビックのニューイヤーコンサートの時,風邪を引いて出演できなくなってしまったんですよねぇ」
とマイクを向けると
「そうなんですよ~ あれ以来,イスラム教徒がメッカの方角を向いて拝むように,私は文京シビックの方を向いて拝んでいるんですよ~」
と 泣きマネをしながら答えていました さらに,テニスの錦織選手とよく間違えられたという話が続きました(長くなるので省略)
次にソプラノの佐藤しのぶが淡いグリーンの鮮やかな衣装で登場,グノーの歌劇「ファウスト」からマルグリートのアリア「宝石の歌」を美しいソプラノで歌いました
次いで再び錦織健がギターを持って登場,ロッシーニの歌劇「セヴィリアの理髪師」からアルマヴィーヴァ伯爵のアリア「空は微笑み」を輝くテノールで歌い上げました ギターはカニサレスほどではないものの,本人が弾きながら歌いました
ここで歌手陣の喉を休ませるため,オーケストラだけでプッチーニの歌劇「マノン・レスコー」から第2幕と第3幕との間の「間奏曲」を演奏しました 「カヴァレリア・ルスティカーナ」の間奏曲に匹敵する感動的な音楽です
最後に黒と白を基調としたシンプルな衣装に”お色直し”して登場した佐藤しのぶが,”十八番”のプッチーニの歌劇「蝶々夫人」から「ある晴れた日に」をドラマティックに歌いあげました
この後 尾高氏が,ロストロポーヴィチ(ロシアの有名なチェリスト)の夫人で歌手のヴィシネフスカヤがプッチーニの歌劇「トスカ」を歌った際に,リハーサルなしでいきなり本番を迎え,他の歌手がイタリア語で歌う中,ロシア語で歌い出して度肝を抜かれた 同じオペラでスカルピアをナイフで刺すシーンで,頭上からフォークを振り下ろしたら,相手役に笑われたので,もう一度やり直した
,スカルピアの死体の周りに燭台を立てるのだが,その火がヴィシネフスカヤの髪の毛に移ってしまい大騒ぎになった
・・・と超面白いエピソードが語られ 会場が大爆笑
に包まれた後,アンコールに移りました
曲はもちろん ニューイヤーコンサートの定番,ヴェルディの歌劇「椿姫」から「乾杯の歌」です
東京フィルのバックで二人の歌手が歌い,大きな拍手でコンサートの幕を閉じました
新春に相応しい楽しく充実したコンサートでした 指揮者・尾高忠明氏の明快な指揮ぶりとともに軽妙なトークによるところが大きいと思います
「響きの森クラシック・シリーズ」はすべて尾高氏に託しても良いのではないか,と本気で思いました