人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

読響アンサンブル・シリーズでベートーヴェン「交響曲第8番」(弦楽五重奏版),ブラームス「弦楽六重奏曲第1番」を聴く~最高のアンサンブル!

2017年09月20日 09時24分45秒 | 日記

20日(水)その2.よい子は「その1」から見てね モコタロはそちらに出演しています

昨夕,よみうり大手町ホールで読響アンサンブル・シリーズ第15回「長原幸田太ら読響メンバーの室内楽」公演を聴きました   プログラムは①ベートーヴェン「交響曲第8番ヘ長調」(弦楽五重奏版),②ブラームス「弦楽六重奏曲第1番変ロ長調」です   出演はヴァイオリン=長原幸太(コンマス),瀧村依里(首席),ヴィオラ=鈴木康浩(ソロ・ヴィオラ),渡邉千春,チェロ=富岡廉太郎(首席/契約),高木慶太です

いつも通り,演奏に先立ってプレトークがありました   ナビゲーターの鈴木美調さんは,出てくるなり「皆さん,こんばんは.これからアフタートークを始めます」と言いました   いつ演奏終わったの?   弘法も筆の誤り,猿も木から落ちる,ですね   プレトークは 美調さんが長原氏にインタビューする形で進行しました

最初に「長原さんにとって今年の3大トピックは何ですか?」という質問から入りました.長原氏の答えは「①指揮者のスクロヴァチェフスキさんが亡くなったこと,②メシアンの大曲を演奏すること(注:歌劇「アッシジの聖フランチェスコ」),③出身地の広島カープがセ・リーグで優勝したこと,の3つを挙げました   3つめを答える時,「カープが,いや違う,広島のチームが優勝したことです」と言い直しました   このホールが入居する読売新聞東京本社ビルが読売ジャイアンツの本拠地なので”忖度”したようです.が,喜びは隠せませんでした  

次にこの日演奏する2つの曲について説明をしましたが,長原氏が「ベートーヴェンは縦に割っていくのに対して,ブラームスは横に流れていく」「ブラームスでは,どこにどういう句読点を打って演奏するかが難しい」という言い方をしていたのが面白いと思いました   さすがは読響のコンマス.表現が豊かです   さらに,弦楽六重奏曲という形態については「弦楽四重奏曲よりもバランス面で難しい」と語っていました.弦楽合奏は個性と個性のぶつかり合いなので,人数が増えればそれだけバランスを取るのが難しくなるのでしょうね

 

     

 

さて本番です.1曲目はベートーヴェン「交響曲第8番ヘ長調」の弦楽五重奏版です   第8交響曲は1811年8月から翌12年10月にかけて作曲されました   ベートーヴェンの全9曲の交響曲のうちで最も短い曲です.第1楽章「アレグロ・ヴィヴァーチェ・エ・コン・ブリオ」,第2楽章「アレグレット」,第3楽章「テンポ・ディ・メヌエット」,第4楽章「アレグロ・ヴィヴァーチェ」の4つの楽章から成ります

5人のメンバーが登場し配置に着きます.瀧村依里さんは淡いパープルの,渡邉千春さんはイエローの衣装です   長原氏のリードで第1楽章に入ります.冒頭から溌剌とした素晴らしい演奏です   良い気持ちで聴いていると,この楽章の終盤で舞台左袖の扉が開き,チェロを手にした富岡廉太郎氏が登場しました   聴衆が「何ごとが起きたのか?」と唖然として見ている中,彼はおもむろに客席に向かって一礼し,そのまま舞台袖に引っ込みました   正直に告白すると,私はチェロを弾いているのが富岡氏だとばかり思っていたのです   実際に弾いていたのは高木慶太氏だったのですが,メガネをかけた顔と全体の雰囲気ががそっくりなのです   これはフェイクか?トランプ大統領顔負けだな,と思いました  

なぜ富岡氏はわざわざ演奏中に出てきて一礼したのか? 常識的に解釈すれば,本当はチェロを弾くのは富岡氏だったのに遅刻したので高木氏が急きょ弾くことになった,ということだと思いますが,実情は分かりません   もしそうだったとしたら,急きょ代役を言いつけられても即代役が務まるということで,読響メンバーの実力が高木,もとい,高いレベルであることが証明されたことになります

第3楽章では長原氏と鈴木氏の掛け合いが楽しく聴けました   何といってもこの二人の演奏は聴きごたえがあります.長原氏はジュリアード音楽院出身でヴィエニャフスキ国際コンクール(17歳以下)第3位などの実力者,鈴木氏はベルリン・フィルの契約団員として活躍していた人ですから,二人とも相当上手いです   この5人の演奏で聴くと,もともとこの曲は弦楽五重奏で演奏するように書かれた曲ではないかと思うほど,見事なアンサンブルでした

演奏が終わると,会場いっぱいの拍手の中,”遅刻の”富岡氏も一緒に出てきて客席に一礼していました   さてさて真相はどうだったんでしょうか

 

     

 

プログラム後半はブラームス「弦楽六重奏曲第1番変ロ長調」です   この曲は1859~60年に作曲されましたが,時にブラームスは27歳でした   第1楽章「アレグロ・マ・ノン・トロッポ」,第2楽章「アンダンテ・マ・モデラート」,第3楽章「スケルツォ:アレグロ・モルト」,第4楽章「ロンド・ポーコ・アレグレット・エ・グラツィオーソ」の4楽章から成ります

第1楽章がヴィオラとチェロにより開始されます   この冒頭の演奏を聴いて「ああ,やっぱりブラームスはいいなあ」と思いました   この曲は,つい4日前に「サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン」で往年の東京クァルテットのメンバー他による演奏で聴いたばかりですが,読響アンサンブルの方が比較にならないほど素晴らしいと思いました   コンマスの長原氏とソロ・ヴィオラの鈴木氏を中心に6人のアンサンブルは緻密で音がとても美しいと思いました   さらに,第2楽章冒頭では,ヴィオラの独奏でほの暗い情熱を込めたテーマが奏でられますが,鈴木氏の演奏は情感のこもった深みのある演奏で感動的でした   すぐに長原氏のヴァイオリンが入ってきますが,これがまた素晴らしい   二人の掛け合いがまた素晴らしい   第3楽章では,この二人に限らず,各楽器同士の会話が楽しく聴けました   そして第4楽章では流麗なアンサンブルが心地よく耳に入ってきました

この日のブラームスの演奏は,これまで聴いてきたどれよりも素晴らしい演奏だったと言っても過言ではありません

会場いっぱいの拍手にアンコールに入りました   椅子が6つあるのにコンマスの席が空いていて,瀧村さんを除く5人が一つずつ右側にずれて座り,曲名が分からない曲の演奏に入ります   「何だ,瀧村さんはアンコールに出ないのか」とがっかりしていると,舞台左袖から彼女がジプシー音楽のようなメロディーをゆっくり弾きながら登場し,コンマスの席に座りました   そして,彼女の合図で,急にテンポアップしてメイン・メロディーの演奏に入りました.ブラームスの「ハンガリー舞曲第5番」でした   これがまた集中力に満ちた素晴らしい演奏で,会場はやんややんやの喝采でした   「アンコールでそこまでやるか」と言いたくなるような凝ったショーアップに聴衆はさらに大きな拍手を送りました   こういうのが読響精神なんだろうな,と思います

ところで,このコンサートのプログラムに掲載されている演奏者の「プロフィール」は,他にない独特の内容でいつも感心しています   それぞれの演奏者の経歴の最後に,近況報告が載っているのです   例えば長原幸太氏は「趣味は野球観戦(連覇達成で気分上々?)」,瀧村依里さんは「謎の禁酒期間(10か月)を終え,再び目覚める.お気に入りはボウモア(ロック)」,渡邉千春さんは「最近は,シフォンケーキを上手に焼くことに夢中になっている」,富岡廉太郎氏は「趣味は洗濯.1か月前からダイエット中」と書かれています   こういう紹介の仕方は,演奏者を身近に感じることが出来るのでとても良いと思います ところで,瀧村さんのお気に入りの「ボウモア」ってスコッチらしいけど,どんな味わいのウィスキーか飲んでみたい  富岡氏の「趣味は洗濯」って,ほかに選択の余地はなかったのかね

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「サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン プレシャス1pm Vol.1」を聴く ~ クァルテット・エクセルシオによる弦楽四重奏曲セレクション

2017年09月20日 08時04分00秒 | 日記

20日(水)その1.わが家に来てから今日で1085日目を迎え,安倍首相が消費税を10%に引き上げた際の税収増を教育無償化などの財源に充てることを公約の柱とする方向で,28日召集の臨時国会で衆院解散に踏み切る方向となり,自民,公明公明両党は連休明けの19日午前,それぞれ幹部会合を開き,選挙準備を加速することを確認した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      確か民進党も増税を言ってたな  どっちにしても増税だ 選挙は棄権が増える?

 

                                           

 

先日,ゼミ合宿で信州に行った息子が,お土産に「金山寺味噌漬けの素」を買ってきたので,豚ロースを漬けて焼きました 肉を焼く時,油が凄く撥ねて大変でした

 

     

 

あとは「生野菜とアボカドのサラダ」「冷奴」「マグロの山掛け」「トマト,キャベツ,ミックスビーンズ,ウィンナのスープ」です

 

     

 

                                           

 

昨日,午後1時からサントリーホール「ブルーローズ」で「サントリーホール  チェンバーミュージック・ガーデン」の「プレシャス1pm  Vol.1」公演を,午後7時半から よみうり大手町ホールで「読響アンサンブル・シリーズ~長原幸太ら読響メンバーの室内楽」を聴きました   ここでは「プレシャス1pm  Vol.1」公演について書きます

 

     

 

プログラムは①モーツアルト「弦楽四重奏曲第17番変ロ長調K458」から第1楽章,②シューベルト「弦楽四重奏曲第12番ハ短調”四重奏断章”」,③ベートーヴェン「弦楽四重奏曲第13番変ロ長調」から第5楽章”カヴァティーナ”」,④ストラヴィンスキー「弦楽四重奏のためのコンチェルティーノ」,⑤チャイコフスキー「弦楽四重奏曲第1番ニ長調」から第1楽章,⑥ラヴェル「弦楽四重奏曲ヘ長調」から第1・4楽章です   演奏はクァルテット・エクセルシオです 

自席はセンターブロック2列目右側です.会場は8割くらいの入りでしょうか

エクセルシオのメンバーが登場し配置に着きます.第1ヴァイオリン=西野ゆか,第2ヴァイオリン=山田百子,ヴィオラ=吉田有紀子,チェロ=大友肇)というメンバーです 女性陣はブルーの衣装で統一しています

この日は約1時間の間に5曲の弦楽四重奏曲の抜粋を演奏しましたが,演奏の合間にチェロの大友さんが曲目を解説する形で進められました

最初にモーツアルト「弦楽四重奏曲第17番変ロ長調K458」から第1楽章「アレグロ・ヴィヴァーチェ・アッサイ」が演奏されました   この曲はハイドンを師と仰ぐモーツアルト(1756-1791)が誰からの注文にもよらず自主的に作曲し,ハイドンに献呈した6曲の弦楽四重奏曲の一つです   1785年9月にウィーンのアルタリア社から作品10として出版されました.この曲は「狩り」というニックネームで呼ばれていますが,第1楽章冒頭が狩りのホルンを連想させることから付けられたものです   コンサートの幕開けに相応しい明るく爽やかな演奏でした

2曲目はシューベルト「弦楽四重奏曲第12番ハ短調”四重奏断章”」です   シューベルト(1797~1828)は有名な「未完成交響曲」を作曲していますが,この第12番の弦楽四重奏曲も未完成の曲の第1楽章です   注目すべきは調性の「ハ短調」です.これはベートーヴェンの第5番「運命」を想起させる劇的な調性です

アレグロ・アッサイの単一楽章ですが,曲の冒頭はデモーニッシュです   しかし,大友さんの解説にあったように,すぐに”歌”が出てきます   シューベルトの最大の特徴は”歌”です   歌の出現によって聴く側は救われるような気持ちになります   エクセルシオの演奏は,デモーニッシュな部分と歌の部分の対比が鮮やかでした

3曲目はベートーヴェン「弦楽四重奏曲第13番変ロ長調」から「第5楽章”カヴァティーナ”」です   この曲はベートーヴェン(1770-1827)がガリツィン公爵のために作曲したもので,6つの楽章から成ります   この第5楽章のあとに第6楽章として,当初「大フーガ」と呼ばれる長大な曲が置かれていたのですが,「長すぎる.重すぎる」と周囲の悪評をかい,最終的には演奏時間にして半分くらいのアレグロに差し替えられています   天下のベートーヴェンも「第九」作曲後の最晩年には,妥協すべきところは妥協するようになっていたのでしょう   エクセルシオの演奏は,ベートーヴェンが神に感謝を捧げているような慈愛に満ちた崇高なものでした

 

     

 

4曲目はストラヴィンスキー「弦楽四重奏のためのコンチェルティーノ」です   ストラヴィンスキー(1882ー1971)はロシア革命の混乱で故郷を離れ,パリ楽壇で名を馳せるようになりました.ココ・シャネルの世話になったのは有名な話です   この曲は1920年に作曲されましたが,基本はリズム中心の曲です   大友さんの話によると,ストラヴィンスキーは1959年に来日しNHK交響楽団を指揮して自作を演奏したりして約1か月滞在したそうですが,その時に彼が一番興味を持ったのはチンドン屋さんだったとのことです   クラリネットにチャンチキに大太鼓・・・・何となく分かるような気がします

5曲目はチャイコフスキー「弦楽四重奏曲第1番ニ長調」から第1楽章「モデラート・エ・センプリーチェ」です   この曲は第2楽章「アンダンテ・カンタービレ」が有名ですが,エクセルシオの演奏で聴く限り,まるでバレエ音楽のようなメルヘンチックな曲で,第2楽章に負けず劣らず魅力的な音楽です   メロディーメーカーとしてのチャイコフスキーの面目躍如といったところです

最後の6曲目はラヴェル「弦楽四重奏曲ヘ長調」から第1・4楽章です   この曲は1903年に完成しましたが,ラヴェル(1875-1937)唯一の弦楽四重奏曲です   彼がまだ28歳の時の作品で,当時ラヴェルは無名の存在でした   第1楽章はアンニュイな感じが漂います.音楽が空中に漂っている感じです   一転,第4楽章は激しい音楽で,その落差に驚きます

この日の公演は,モーツアルトの作品(1785年)からラヴェルの作品(1903年)までの弦楽四重奏曲の歴史を振り返ったような曲目編成でしたが,この118年の間にいかに音楽が変わってきたかを耳で聴いて理解するのに役立ちました   ただし,あくまでも音楽の”変遷”であって”進歩”ではありません.音楽に”進歩”という概念はないからです

 

     

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