17日(日)その2.よい子は「その1」から見てね モコタロはそちらに出演しています
昨日午後6時からサントリーホールで東京交響楽団第653回定期演奏会を聴きました プログラムは①ヒンデミット:バレエ音楽「気高い幻想」,②ストラヴィンスキー「詩篇交響曲」,③シベリウス「交響曲第1番ホ短調」です ②の合唱は東響コーラス,指揮はアレクサンドル・ヴェデルニコフです
ヴェデルニコフはモスクワ生まれで,モスクワ音楽院を卒業後,モスクワ放送交響楽団(現チャイコフスキー交響楽団),ロシア・フィル(創立指揮者),ボリショイ劇場管弦楽団などの指揮者を歴任し,2009年からデンマーク・オーデンセ交響楽団の首席指揮者に就任しています
オケはいつもの配置,コンマスは水谷晃です
1曲目はパウル・ヒンデミット(1895-1963)のバレエ組曲「気高い幻想」です この曲は1937年に「アッシジの聖フランチェスコの回心」をテーマに11曲から成るバレエ音楽を作曲し,翌年のロンドンでの初演の直後に,5曲を選抜して組曲としたものです 第1楽章「導入部とロンド」,第2楽章「行進曲と牧歌」,第3楽章「パッサカリア」の3楽章から成ります
全体的に宗教的な雰囲気の曲想ですが,いかにもヒンデミットらしいな,と感じたのは第3楽章のパッサカリアです 金管楽器が輝かしいテーマを奏で,19の変奏が展開されますが 宇宙的な響きを感じます ヴェデルニコフはスケール感たっぷりに演奏を展開しました
2曲目はイーゴリ・ストラヴィンスキー(1882-1971)の「詩篇交響曲」です 演奏に先立ってステージの弦楽奏者の席が大幅に模様替えされます.ヴァイオリン,ヴィオラは退場,弦楽器で残るのは右サイドにチェロとコントラバスのみ センター左サイドにグランド・ピアノが2台並び,近くにハープがスタンバイします.後方に管楽器群と打楽器が入りますが,クラリネットがいません.P席には120人の東響コーラスのメンバーが入りますが,男声は男声と女声は女声と固まらず,男女男女と入り乱れて文字通り男女混声合唱の並びです
この曲は1930年に作曲されましたが,ラテン語による旧約聖書の「詩篇」がテキストになっています 第1楽章「前奏曲」,第2楽章「二重フーガ」,第3楽章「交響的アレグロ」の3つの楽章から成ります
プログラム冊子の中に,音楽学の池原舞さんが「ストラヴィンスキーと『詩篇交響曲』~鎧を着た戦士の戦い」という論考を寄せていますが,それによると,この曲は「『春の祭典』のストラヴィンスキーというラベルをいかにして剥がし,それが偶然の産物でなかったことを証明し続けなければならないプレッシャーにあった中,生き残りをかけた戦いの中で要になったのが『詩篇交響曲』だった」とのことです.ストラヴィンスキーは指揮者のクーセヴィツキーから ボストン交響楽団の創設50周年を記念して1930年から翌31年にかけてのシーズンで演奏する交響曲を書いて欲しいという依頼を受けて,ここがチャンスとばかりに作曲したのがこの『詩篇交響曲』だったとのことです
曲を聴きながら,「えっ,これが交響曲」と驚くエキセントリックな場面が多くありましたが,それこそがストラヴィンスキーだと思い直しました 何しろ その初演が音楽界に大混乱をもたらした『春の祭典』のストラヴィンスキーですから
プログラム後半はシベリウス「交響曲第1番ホ短調」です この曲は1898年4月から翌99年初めにかけて作曲され,1900年に改訂されました 第1楽章「アンダンテ・マ・ノン・トロッポ~アレグロ・エネルジコ」,第2楽章「アンダンテ・マ・ノン・トロッポ~レント」,第3楽章「スケルツォ:アレグロ」,第4楽章「フィナーレ:アンダンテ~アレグロ・モルト」の4つの楽章から成ります
第1楽章冒頭は,ティンパニによるトレモロで開始され,クラリネットが印象的なソロを演奏しますが,エマニュエル・ヌヴ―の演奏はしみじみとして素晴らしいものがありました ここでコケると全曲が台無しになるところでした その直後,第2ヴァイオリンに導かれて第1ヴァイオリンが第1主題を奏でますが,この部分は感動的でした 北欧の冷たい空気を感じさせる爽やかな演奏でした この第1楽章だけで,この演奏は成功だと確信したくらいです.その通り,第2楽章以降もオーボエ,フルート,クラリネット,ファゴット等の木管楽器群をはじめ,ホルン,トランペット,トロンボーンら金管楽器群,そして弦楽器群が渾身の演奏を展開しました ヴェデルニコフの指揮はスケールが大きく,いかにもロシアの大地に根を下ろした指揮者だと思いました
東京交響楽団のプログラム冊子 Symphony 9月号から,各公演のプログラムの前半と後半の間に「休憩20’」が表示されるようになりました この日の休憩時間に東京交響楽団広報本部のTさん(名札で確認)にお礼を申し上げておきました
「休憩」表示までの経緯について詳細をお知りになりたい方は,7月17日付と同22日付のtoraブログをご覧ください