人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

紀尾井ホール室内管弦楽団アンサンブル公演第1弾「五重奏のカレイドスコープ」を聴く~ベートーヴェン「ピアノと管楽のための五重奏曲」,レーガー「クラリネット五重奏曲」ほか

2017年09月12日 07時00分52秒 | 日記

12日(火).昨夕は,娘が飲み会で,息子が大学のゼミ合宿で,私がコンサートだったので夕食は作りませんでした たまにはこういうことがあってもいいよね 

ということで,わが家に来てから今日で1077日目を迎え,北朝鮮への制裁強化を盛り込んだ国連安全保障理事会決議採択を主導する米国に対し,北朝鮮が「わが国の自主権と生存権を完全に抹殺しようとする米国の制裁,圧力策動が極めて無謀な域に至っている.採択されれば,必ず相応の代償を払わせる」とう声明を出した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

    

     声明の冒頭を「わが金正恩一族の自主権と生存権を~」と訂正するよう求めます

 

                                           

 

昨夕,紀尾井ホールで 紀尾井ホール室内管弦楽団(旧・紀尾井シンフォニエッタ東京)によるアンサンブルコンサート第1回目「五重奏のカレイドスコープ」を聴きました   「カレイドスコープ」とは「万華鏡」のことで,今回のプログラムがスタイルの異なる3曲の五重奏曲を取り上げているところから名付けられたものです.

プログラムは①ライヒャ「変奏曲」(ファゴットと弦楽四重奏のための),②ベートーヴェン「ピアノと管楽のための五重奏曲」,③レーガー「クラリネット五重奏曲」です   演奏は,ピアノ=上原彩子,クラリネット=鈴木豊人,鈴木高通(新日本フィル),オーボエ=蠣崎耕三(読響首席),ファゴット=福士マリ子(東響首席),ホルン=丸山勉(日本フィル客員首席),ヴァイオリン=山崎貴子,今井睦子,ヴィオラ=安藤裕子(藝大フィルハーモニア首席),チェロ=中木健二(藝大准教授)です

 

     

 

自席は1階1列5番,最前列の左ブロック右通路側です.紀尾井ホールの最前列で聴くのは初めてです   会場は9割以上入っているでしょうか.よく入りました

1曲目はライヒャ「ファゴットと弦楽四重奏のための変奏曲ト長調」です   こういう楽器の組み合わせによる五重奏曲は珍しいと思います   アントン・ライヒャ(1770~1836)はベートーヴェン(1770~1827)と同じ年の生まれで,1789年には二人揃ってボン大学に入学しているほど身近な存在だったようです.1818年にはパリ音楽院の作曲家の教授となり多くの作曲理論書を著しています

演奏はファゴット=福士マリ子,第1ヴァイオリン=山崎貴子,第2ヴァイオリン=今井睦子,ヴィオラ=安藤裕子,チェロ=中木健二です   福士マリ子はローズ・レッドの鮮やかな衣装,他の4人は黒で統一しています

この曲は主題と7つの変奏とコーダから成っていますが,ト長調という調性の性格から全体的に明るく明瞭な曲想で,時に福士マリ子の超絶技巧が披露されます   彼女は東京交響楽団の定期演奏会で見たことがあるだけで,これほど身近に姿を見たのは初めてです   曲を聴いて,同じ年の生まれの作曲家でもこれほどレベルが違うのかという印象を受けました   これは演奏が優れているからこそ言えることです

2曲目はベートーヴェン「ピアノと管楽のための五重奏曲 変ホ長調」です   この曲はモーツアルトの「ピアノと管楽のための五重奏曲変ホ長調K452」に触発されて作曲されたのではないかと言われています   同じ楽器編成(ピアノ,オーボエ,クラリネット,ホルン,ファゴット),同じ調性(変ホ長調),同じ楽章構成(第3楽章=ロンド)などがその根拠になっています   第1楽章「グラーヴェ~アレグロ・マ・ノン・トロッポ」,第2楽章「アンダンテ・カンタービレ」,第3楽章「ロンド:アレグロ・マ・ノン・トロッポ」の3つの楽章から成ります

演奏はピアノ=上原彩子,オーボエ=蠣崎耕三,クラリネット=鈴木高通,ファゴット=福士マリ子,ホルン=丸山勉です   上原彩子は白を基調とし 青と紫の花をあしらったエレガントな衣装で登場です

この曲の演奏はクラシック界を代表する演奏家による名人芸が聴けます   管楽器同士の,あるいは管楽器とピアノとの掛け合いが素晴らしく,見事なハーモニーが奏でられます   第2楽章ではタイトル通りのカンタービレが聴けます.オーボエが一瞬不安定になりましたが,すぐに持ち直しました   まさに「室内楽の極みを聴く」という見事な演奏でした

 

      

 

休憩後はレーガー「クラリネット五重奏曲イ長調」です   マックス・レーガー(1873~1916)はシェーンベルク(1874~1951)とほぼ同世代の作曲家ですが,音楽スタイルは古典回帰のような曲想です   第1楽章「モデラート・エド・アマービレ」,第2楽章「ヴィヴァーチェ」,第3楽章「ラールゴ」,第4楽章「ポコ・アレグレット」の4つの楽章から成ります

演奏はクラリネット=鈴木豊人,第1ヴァイオリン=山崎貴子,第2ヴァイオリン=今井睦子,ヴィオラ=安藤裕子,チェロ=中木健二です

第1楽章の冒頭を聴いていたら浮遊感を覚えました   どこかシェーンベルクに似た混沌とした曲想です   しかし,しばらくすると,耳が曲に慣れてきたせいか,比較的素直に音楽が耳に入ってくるようになりました   第2楽章は軽妙でユーモラスです.第3楽章はこの曲で一番美しいと思いました   クラリネットの鈴木豊人の見事な演奏を聴いていて,そういえば数年前にこの会場で聴いたモーツアルトの「グランパルティータ」は名演だったな,と思い出しました   レーガーは馴染みの薄い作曲家ですが,この曲は楽しめました

5人はアンコールにモーツアルトの「クラリネット五重奏曲イ長調K581」から第2楽章「ラルゲット」を演奏しました   第1ヴァイオリンを中心とする抑制の利いた弦楽合奏に乗せて奏でられるクラリネットは天国的で,この日の演奏の中で一番良かったのではないか,とさえ思いました   コンサートの聴き手としては,プログラムがベートーヴェン以外は馴染みの薄い作曲家の作品だっただけに,アンコールにモーツアルトの名曲を聴くことが出来て嬉しいのですが,冷静に考えると,コンサートのあり方として 果たしてこれで良いのか,という疑問が湧いてきます   つまり,モーツアルトの「ラルゲット」が直前に演奏されたレーガーを吹き飛ばしてしまったのではないか,ということです

ロシアのピアニスト,奇才アファナシエフは絶対にアンコールに応えません   それは彼が「演奏家はプログラムに乗せた曲を聴いて欲しいのだ.アンコールを演奏してその方が印象に残るとしたら本末転倒だ」と考えているからです.つまり,彼が一番恐れているのは,アンコールがプログラムに乗せた曲を駆逐してしまうことなのです

演奏家は,サービス精神からアンコールを演奏するのだと思いますが,アンコールが良ければ良いほど本来聴いて欲しい曲がすっ飛んでしまう恐れがあります   素晴らしい演奏に対して賞賛の拍手を送るのは良いことですが,アンコールが聴きたくて何度もカーテンコールを求めるのはいかがなものでしょうか  

今回の公演について言えば,「モーツアルトは最初から演奏することが決まっていた.ただプログラムに書かなかっただけだった.したがってアンコール込みで今回のコンサートを捉えれば,演奏家が本来聴いて欲しい曲は演奏したすべてだったのだから,全体としてはバランスが取れていた」と自分を納得させることにしました  こじつけがましいですが,そうしないと「本来聴いて欲しい曲がすっ飛んでしまう」という意識が拭い去れないのです   いずれにしても,アンコールのあり方について,われわれ聴衆側としても考えなくてはならないと思います

 

     

コメント
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