人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

「サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン」フィナーレ・コンサートを聴く~ベートーヴェン「七重奏曲」,ショスタコーヴィチ「ピアノ三重奏曲第1番」他

2017年09月25日 07時57分44秒 | 日記

25日(月).わが家に来てから今日で1090日目を迎え,アメリカのトランプ大統領と北朝鮮の金正恩委員長が誹謗中傷合戦を繰り広げている というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      現在の口先合戦が実力行使に移る時はお前の出番だ R2-D2  なに? 型が古いって?

 

                                           

 

昨日,サントリーホール「ブルーローズ」で「サントリーホール  チェンバーミュージック・ガーデン」フィナーレ・コンサートを聴きました   プログラムは①カステルヌオーヴォ・テデスコ「フィガロ 」~ ロッシーニのオペラ『セビリャの理髪師』より,②モーツアルト「オーボエ四重奏曲ヘ長調K.370」から第1楽章,③シューベルト「五重奏曲イ長調”ます”」から第4・5楽章,④ショスタコーヴィチ「ピアノ三重奏曲第1番ハ短調」,⑤ラヴェル「序奏とアレグロ」,⑥プーランク「ピアノと木管五重奏のための六重奏曲」から第1楽章,⑦ベートーヴェン「七重奏曲変ホ長調」です

出演は,ヴァイオリン=池田菊衛,竹澤恭子,渡辺玲子,ヴィオラ=磯村和英,川本嘉子,チェロ=堤剛.毛利伯郎,コントラバス=吉田秀(N響首席),ハープ=吉野直子,ピアノ三重奏=へーデンボルク・トリオ,木管五重奏&ピアノ:東京六人組【フルート=上野由恵,オーボエ=荒絵理子(東響首席),クラリネット=亀井良信(金子平の代演),ファゴットー福士マリ子(東響首席),ホルン=福川伸陽(N響首席),ピアノ=三浦友理枝】,レイア・トリオ(ヴァイオリン=小川響子,チェロ=加藤陽子,ピアノ=稲生亜沙紀)です

 

     

 

自席はC7列12番,センターブロック右通路側席です.会場は9割方埋まっているでしょうか

1曲目は「『フィガロ』~ ロッシーニのオペラ『セビリャの理髪師』より~」です   カステルヌオーヴォ・テデスコ(1895-1968)はイタリア生まれのピアニスト・作曲家です   この曲はチェロの巨匠ピアティゴルスキーに捧げられたコンサート・ピースで,ロッシーニのオペラ「セヴィリアの理髪師」第1幕で歌われるフィガロのアリア「俺は町の何でも屋」に基づく曲です

チェロのへーデンボルク・直樹とともにピアノの三浦友理枝が淡いベージュの衣装で登場し,さっそく演奏に入ります   演奏を聴く限りチェロの超絶技巧曲ですが,かなり速いパッセージなので,むしろヴァイオリンやヴィオラで演奏した方が効果的ではないかと思いました   チェロのための曲なのは分かっていますが 

2曲目はモーツアルト「オーボエ四重奏曲ヘ長調K.370」から第1楽章です   この曲はモーツアルト(1756-1791)がミュンヘンに滞在していた1781年に,その当時最高と言われた名オーボエ奏者フリードリヒ・ラムを念頭に書かれた作品です

オーボエの荒絵理子さんがピンクの,ヴァイオリンの渡辺玲子さんが黒が基調の,ヴィオラの川本嘉子さんも黒を基調とした衣装で,チェロの毛利伯郎氏とともに登場し配置に着きます   メンバーを見る限り現在望み得る最高レベルのアーティストの揃い踏みです   荒絵理子さんの演奏は軽快そのもので,愉悦感に満ちています   彼女を支える3人の演奏者はあくまでもソリストを立てて,強く自己主張をするところがありません   したがって心地よいアンサンブルが聴けました   これだけの名演,全楽章を同じメンバーで聴きたかった

3曲目はシューベルト「五重奏曲イ長調”ます”」から第4・5楽章です   この作品は鉱山経営者でアマチュア演奏家でもあったジルヴェスター・パウムガルトナーの依頼により1819年に作曲されました   第4楽章が歌曲「ます」の旋律を元にした変奏曲になっていることから「ます」の愛称で呼ばれています   この曲の楽器編成上の大きな特徴はコントラバスが入ることです

演奏はヴァイオリン=へーデンボルク・和樹,ヴィオラ=川本嘉子,チェロ=ヘーデンボルク・直樹,コントラバス=吉田秀,ピアノ=ヘーデンボルク・洋というメンバーです

第4楽章「テーマ・コン・ヴァリアツィオー二」が開始され,お馴染みの「ます」のメロディーが奏でられます   この5人の演奏でとくに感心したのはへーデンボルク・洋氏の抜群のバランス感覚です   ややともすると,張り切り過ぎて思い切ってピアノを打ち鳴らし,弦楽奏者の音を掻き消してしまう演奏がままある中で,彼のピアノは主張すべきところはちゃんと主張しながらも,弦楽器の音を殺してしまうことがありません.絶妙の打鍵です

第5楽章「フィナーレ:アレグロ・ジュスト」は,シューベルトらしい同じメロディーの繰り返しがあり,まるで曲が終わったかのように全休止する部分が2度ありますが,終わったと勘違いした聴衆から拍手が起こりました   ヘーデンボルク兄弟はお互いに顔を見合わせ,ニヤリとしていました   演奏は3兄弟はもちろんのこと,日本人の2人も大健闘で,素晴らしいアンサンブルでした

4曲目はショスタコーヴィチ「ピアノ三重奏曲第1番ハ短調」です   この曲はショスタコーヴィチ(1906-75)が17歳の時にペトログラードで完成した単一楽章の短い作品です

ヴァイオリンの小川響子さんが朱色の,チェロの加藤陽子さんがローズピンクの,ピアノの稲生亜沙紀さんが藍色の衣装で登場します   この3人は「レイア・トリオ」を組んでいます   私は初めてこの曲を聴きましたが,瞑想的な曲想で始まったと思うと,急に鋭角的な演奏になり,はたまたショスタコーヴィチ特有のアイロニカルな曲想に変わり,今度はロマンティックな曲想になり・・・・といった具合に,目先がクルクル変わる曲で,作曲者がいかに複雑な心境でいたかが窺がえる曲想でした   3人はめくるめくショスタコーヴィチの若き日の佳曲を,時に鋭角的に,時にロマンティックに演奏し楽しませてくれました

5曲目はラヴェル「序奏とアレグロ」(正確には「弦楽四重奏とフルートとクラリネットの伴奏を伴うハープのための序奏とアレグロ」)です   この曲は,近代的なダブルアクション・ハープの性能を生かす楽曲を作ることを目的としたエラール社の委嘱により作曲され,1907年に初演されました

演奏はフルート=上野由恵(赤の衣装),クラリネット=亀井良信,ハープ=吉野直子(白無垢の衣装),ヴァイオリン=渡辺玲子(黒を基調とした衣装),池田菊衛,ヴィオラ=磯村和英,チェロ=毛利伯郎というメンバーです   なお,クラリネットは当所,読響首席の金子平氏の予定でしたが,「体調不良」のため桐朋学園大学准教授の亀井良信氏に代わりました   (金子くん,どうした? 丼ぶりいっぱいの栗でも食べてお腹を壊したか? 恋のやまいか? それとも財布でも落として演奏どころじゃなくなったか? 結局のところ本人しか分からないな

フルートとクラリネットの二重奏によりゆるやかな曲想で開始されますが,まるで夢の世界に誘われるような感じがします   後半のアレグロの中ほどでハープのカデンツァが演奏されますが,吉野さんの演奏は華麗そのもので,美の極致をいく演奏です

プログラム前半の最後の曲はプーランク(1899-1963)の「ピアノと木管五重奏のための六重奏曲」から第1楽章です   この曲は1933年に初演されました

演奏は,フルート=上野由恵,オーボエ=荒恵理子(黒地に花模様の衣装にお色直し),クラリネット=亀井良信,ファゴット=福士マリ子(濃紺の衣装),ホルン=福川伸陽,ピアノ=三浦友理枝(濃いピンクの衣装にお色直し)で構成する「東京六人組」です

この第1楽章「アレグロ・ヴィヴァーチェ」は,文字通りスピード感に溢れた曲想ですが,大騒ぎを起こしたかと思うと,次の瞬間には躁鬱の鬱状態になったように沈み,そうかと思うと,また躁状態に戻り・・・といった具合に目先がクルクル変わります   6人の演奏はそうした変化を存分に楽しませてくれました

この曲が終了したのは午後3時半.前半だけで1時間半かかりました   休憩時間までが長いと思います

 

     

 

プログラム後半はベートーヴェン(1770-1827)の「七重奏曲変ホ長調」です   6つの楽章から成るこの曲は1800年に初演され,王妃マリア・テレジアに献呈されました 

演奏は,ヴァイオリン=竹澤恭子(黒を基調とする衣装),ヴィオラ=川本嘉子,チェロ=堤剛,コントラバス=吉田秀,クラリネット=亀井良信,ファゴット=福士マリ子,ホルン=福川伸陽というメンバーです   コントラバスを中心として,向かって左サイドに弦楽奏者が,右サイドに管楽奏者がスタンバイします

第1ヴァイオリンの竹澤さんのリードで第1楽章「アダージョ~アレグロ・コン・ブリオ」の演奏に入ります   冒頭,ゆったりした序奏に続いて”前進あるのみ”といった推進力のあるメロディーが演奏されます.この「緩から急への落差」のある出だしが大好きです   終始,若き日のベートーヴェンらしい”元気溌剌”の音楽が展開します   第2楽章「アダージョ・カンタービレ」は,クラリネットが思いれのあるメロディーを奏で,ヴァイオリンに受け継がれていきます   全体的に瞑想的な曲想ですが,このブログで何度か書いているように,ベートーヴェンの神髄は「アダージョ」にあります

第3楽章「テンポ・ディ・メヌエット」は,ピアノ・ソナタ第20番第2楽章から転用されました   ユーモアを感じさせる行進曲風の音楽で,気軽に口ずさむことが出来るメロディーなので当時の聴衆から人気を博したようです   この楽章では,ヴァイオリン・竹澤さん+ヴィオラ・川本さんと,向かい合う位置にいるクラリネット・亀井氏+ファゴット・福士さんとの対話や,弦楽器同士,管楽器同士の対話が楽しく聴けました   第4楽章「テーマ・コン・ヴァリアツィオー二:アンダンテ」は,ベートーヴェン得意の変奏曲です   この楽章でも弦楽器群と管楽器群との対話や弦楽器同士,管楽器同士の対話が存分に聴けました

第5楽章「スケルツォ:アレグロ・モルト・エ・ヴィヴァーチェ」はホルンから入りますが,福川氏の演奏はさすがです   中間部ではチェロの堤氏のトリオが演奏されますが,これが「狭い日本,そんなに急いでどこへ行く」といった どこかで聞いたようなセリフが思い浮かぶ,ゆったりしたテンポの味わい深い演奏で感動的でした

第6楽章「アンダンテ・コン・モート・アラ・マルチア~プレスト」は,物思いに沈んだような暗い雰囲気の序奏から,一転して速いテンポによる音楽に転換します   これがまた,堪らない魅力です   終盤でヴァイオリンによるカデンツァがありますが,竹澤さんの演奏は身体全体を使った熱演で,感動的でした

この曲を聴いている最中,私は靴の中で,足の指で拍子を取っていました   終始すごく幸せな気持ちで聴いていました   「名曲名演」とはこういう演奏を言うのだろうと思いました

大きな拍手の中,コンサートが終了したのは午後4時40分頃でした   前半が約90分,休憩が約20分,後半が約50分ということで,前半が長すぎたと思います   これは前半最後のプーランクと後半のベートーヴェンの両方に出演する演奏者が複数いたことから,彼らを配慮したためだと思われますが,そうであれば,前半だけ出場のレイア・トリオのショスタコーヴィチを後半に移すなり,何らかの工夫が出来たように思います   次回は時間配分について配慮して欲しいと思います

9月15日の「オープニング・コンサート」から昨日 24日の「フィナーレ・コンサート」までの10日間に8回サントリーホール「ブルーローズ」に通いました  来年の「チェンバーミュージック・ガーデン」は6月2日(土)から同17日(日)までの16日間の日程で開催されるとのこと   N響,読響,東響,新日本フィルなどの定期公演以外のコンサートの予定を入れないようにしないとダブルブッキングの山になります.気を付けねば    

先週は「チェンバーミュージック・ガーデン」のほか読響アンサンブルとN響定期公演も含めて9つのコンサートを聴き,映画も1本観たので,いささか疲れました  今週は2回しかコンサートがないので,余裕のある予定を組みたいと思います

 

     

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