18日(月・祝).昨日は映画を観に行く予定だったのですが,台風の影響で天候が悪く,風邪も治っていないので,家で本を読んで過ごしました こういう日は身体を休めておかないと今週ある9回のコンサートを乗り切れません
ということで,わが家に来てから今日で1083日目を迎え,プロ野球パ・リーグでソフトバンクが2年ぶり18度目のリーグ優勝を決めた というニュースを見て感想を述べるモコタロです
セ・リーグは広島優勝 われらが阪神 は第2位確定 あとCS出場は横浜?巨人?
佐藤正午著「個人教授」(角川文庫)を読み終わりました 正午さんの作品は9月15日付のtoraブログで,第157回直木賞を受賞した「月の満ち欠け」をご紹介したばかりです
1955年長崎県生まれ.北海道大学文学部中退.1983年「永遠の1/2」ですばる文学賞を受賞しデビュー.2015年「鳩の撃退法」で第6回山田風太郎賞を受賞しています
この小説は,1987年9月号から11回にわたり文芸誌「月間カドカワ」に連載された作品で,1991年9月に文庫化されたものを改版し今年8月に再文庫化されたものです
正午さんが32歳の時の作品ということで興味が湧きます
1.教授が喋りぼくが聞き取る
2.夫人が決定しぼくが従う
3.探偵が居直りぼくがあわてる
・・・・というように,ぼくを主人公とした連作短編の形を取ります 「個人教授」の「教授」とは主人公がある結婚式の披露宴で隣り合わせた男のことで,大学の教授ではなく,「ぼく」にとって困った時に相談に乗ってくれる人生の指南役的な存在の男性です
新聞記者を休職中の「ぼく」(松井英彦,27歳)はある地方の総合病院の理事長である未亡人との契約で,彼女からマンションの一室を与えられ,月40万円を受け取る代りに,月に最低2回は密会しなければならない.その一方,付き合っていた28歳の西沢ふみこが妊娠しているという噂を耳にする しかし彼女は行方不明.父親は自分か,もしそうならなぜ彼女は妊娠していることを知らせないのか? 不安な気持ちを抱いた松井は探偵を雇って彼女の居所を突き止める.「その子は誰の子だ?」と訊く松井に,ふみこは「これは私の子よ」と答える
果たして誰が生ませた子か
正午さんの若い日の小説の魅力の一つは,お約束のようにバーが出てきて男女の軽妙な会話が交わされることです この小説でも,次のような会話が出てきます.このシーンは初めてバーで遭った若い女性に松井が声をかける場面です.会話だけに絞って抜き出してみると,
「どこかで会いませんでしたか」
「あたしのこと?」
「ええ」
「どこで?」
「思い出せない.でも,どうもそんな気がする.もちろん,どんな気がしようとぼくの勝手だし,あたしをほっといてってきみが言えば,ぼくは黙ってもとの席に戻るよ」
「あたしをほっといて」
「・・・・・・・・」
こんな感じですが,日本全国どこに行っても実際にありそうな夜の酒場の会話です この小説では,松井は彼女を諦めて店を引き上げて次の店に飲みに行くのですが,先ほどの彼女が彼のあとを追ってきます
実は彼女はこの物語の重要な人物だったのです.これが佐藤正午の小説です
こういう小説を読むと,ふらっと入ったバーでウィスキーでも飲んで粋なマスターと会話を楽しんでみたいものだなと思います そういう風に思わせる魅力がこの作品にはあります