人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

「戦前日本のモダニズム~忘れられた作曲家,大澤壽人」公演を聴く~サントリー サマーフェスティバル

2017年09月04日 08時00分03秒 | 日記

4日(月).わが家に来てから今日で1069日目を迎え,北朝鮮は3日 昨年9月以来6度目となる核実験を実施,朝鮮中央テレビは,大陸間弾道ミサイル(ICBM)搭載用の水爆実験に「完全に成功した」と発表した というニュースを見て「スターウォーズ」のR2 D2に相談を持ち掛けるモコタロです

 

     

     北朝鮮のミサイルで北朝鮮の核を破壊するプログラムを組めるハッカーいない?

 

                                           

 

昨日,サントリーホールで「片山杜秀がひらく日本再発見 戦前日本のモダニズム~忘れられた作曲家,大澤壽人」公演を聴きました   プログラムは大澤壽人(おおさわ・ひさと)の①コントラバス協奏曲(世界初演),②ピアノ協奏曲第3番”神風協奏曲”」,③交響曲第1番(世界初演)です   ①のコントラバス独奏=佐野央子,②のピアノ独奏=福間洸太朗,管弦楽=日本フィル,指揮=山田和樹です

大澤壽人は,1906年に神戸で生まれ,1930年からボストンに留学,1934年にパリに移りデュカスとナディア・ブーランジェに師事し,自作自演のオーケストラ作品発表会を開いてオネゲルやイベールに賞賛されて帰国しました   この日のコンサートは,作曲以来80年以上埋もれていた2つの作品の世界初演と,朝日新聞社所有の飛行機「神風号」の東京からロンドンまでの日英親善飛行に捧げられたピアノ協奏曲を取り上げたもので,1930年代の日本の作曲家のモダニズムの一つの到達点を確認しようとする意欲的な企画です

 

     

 

自席は1階20列15番,左ブロック右通路側です.渋いプログラムの割には1階席を中心に結構埋まっています   オーケストラのメンバーが配置に着きます.弦は左から第1ヴァイオリン,第2ヴァイオリン,チェロ,ヴィオラ,その後ろにコントラバスという並びです

大澤壽人(1906~53)の創作期は,①留学前(22~29年),②ボストン・パリ留学期(30~35年),③帰国~終戦期(36~45年),⑤戦後~晩年期(45~53年)の4期に区分されます

1曲目の「コントラバス協奏曲」は②のボストン留学時の1934年4月18日に完成した作品で,ボストン交響楽団の指揮者クーセヴィツキーに献呈されています   5楽章から構成されていますが,大澤は全体を3部として,1=第1楽章,Ⅱ=第2・3楽章,Ⅲ=第4・5楽章と示しています

指揮者・山田和樹とともにコントラバス奏者・佐野央子(さの・なかこ:都響)が登場し,山田のタクトで演奏が始まります   コントラバス協奏曲自体が,先に挙げたクーセヴィツキーの作品くらいしか名の知れた作品がないので,比べようがないのですが,曲想としては独特のものがあります   時々日本らしい曲想が顔を出すのが特徴と言えば特徴です   聴いていて,コントラバスの弾く曲としてはかなり技巧を要する曲だと思いました   ソリストの佐野央子さんに惜しみない拍手が送られました

 

     

 

2曲目は「ピアノ協奏曲第3番変イ長調”神風協奏曲”」です   この曲は1938年5月に完成していますが,「神風協奏曲」という愛称の由来は,決して「神風特攻隊」の神風ではなく,前述の通り,朝日新聞社所有の飛行機「神風号」を指しており,同機の東京からロンドンまでの日英親善飛行を記念して作曲されたピアノ協奏曲という意味合いがあります

ソリストの福間洸太郎が山田和樹とともに登場し,ピアノに対峙します   福間は紙の楽譜ではなく電子譜面を使用します   タップ一つでページが変わります   この曲は3つの楽章から成りますが,曲を通して聴く限り,大澤がフランスに留学していたことを裏付けるような曲想で,とくに第2楽章「アンダンテ・カンタービレ」の抒情性はラヴェルの「ピアノ協奏曲ト長調」の第2楽章によく似ています   第3楽章「アレグロ・モデラート」ではジャズ風の曲想が現れますが,これもラヴェルのピアノ協奏曲と似ています   福間洸太郎による軽快でスピード感あふれる演奏を聴いていると,古さを感じないばかりか,スピードが求められる現代にピッタリの音楽であると感じます   この曲がいつしか忘れられてしまったのは,あまりにも先進的過ぎて当時の人々に受け入れられなかったせいではないかと思います   その意味では,今まさに大澤壽人の時代の再来と言えます

あまりにも良い曲なので,休憩時間にロビーのCD売り場でNAXOSのCD(「ピアノ協奏曲第3番」と「交響曲第3番」のカップリング:1500円)を買い求めました   エカテリーナ・サランツェヴァのピアノ,ドミトリ・ヤブロンスキー指揮ロシア・フィルハーモニー管弦楽団による演奏です   ついでに,次に演奏される「交響曲第1番」のCDはないかと聞いてみたら,「ありません.本日初演ですから」とあっさりと言われてしまいました.聞かなければよかった

 

     

 

休憩後は「交響曲第1番」です   この曲は1934年4月末に完成されました.この曲もボストン時代の傑作ですが,編成と楽曲規模の点で戦前の日本洋楽史上で最大クラスの作品です   第1楽章「アダージェット」,第2楽章「アンダンテ」,第3楽章「ラルゲット・ノン・トロッポ」の3つの楽章から成ります   今回は80年以上も前にボストンとパリで初演を計画されながら,実現に至らなかった「幻の交響曲」の初演です

3楽章を通して聴く限り,誰にも似ていない曲想で,マーラーも,ブルックナーも,リヒャルト・シュトラウスも,ショスタコーヴィチも,プロコフィエフも,まったく感じられません   強いて言えば,フランスのショーソンの作品が少し近いものがあるかな,と思う程度です.スケールの大きな曲で 大澤壽人独自の世界があります

演奏後,大きな拍手を受けながら,山田和樹は譜面台上の分厚いスコアブックを持ち上げ「この作品にこそ拍手を」と言わんばかりに作曲者の大澤壽人の功績を讃えました   私は積極的に山田和樹指揮によるコンサートを聴く方ではありませんが,彼が日本人の作曲家の作品をジャンルを問わず日ごろから取り上げていることに対しては敬意を表しています   とても素晴らしいことだと思います

 

     

コメント (2)
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