人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

コンサート中止相次ぐ~3月中は全滅か?!

2011年03月16日 21時16分28秒 | 日記
16日(水)。これまでの5公演に加え、あらたに3月中の3公演の中止が明らかになった。19日(土)ミューザ川崎で公演予定のチョン・ミュンフン指揮チェコ・フィル、23日(水)サントリー・ホールで公演予定のロン・ティボー・コンクール・ガラ・コンサート、27日(日)横浜みなとみらいホールで公演予定のヒラリー・ハーン・バイオリンリサイタル。いずれ払い戻しになる。手元に残るチケットは24日(木)に東京芸術劇場で予定されている新日本フィルと、26日(土)にサントリーホールで予定されている東京交響楽団の定期演奏会の2公演だ。これらも中止は時間の問題か?3月中の公演は全滅になる可能性が強い。これだけ長い間、ナマのコンサートを聴けないのは本当につらい。

今日予定されていたわが社の臨時株主総会も中止になった。19日(土)に予定されていた記者クラブ主催「戦火のナージャ」試写会も中止となった。記者クラブ関係の会合はほとんどがキャンセルになっているようだ。夕べも、今日も地震があり、極めて不安な毎日を強いられている中では公演・会合の中止も止むを得ないだろう。残念だ。





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新国立オペラ「マノン・レスコー」も中止

2011年03月15日 21時46分12秒 | 日記
16日(火)今日予定されていた新国立オペラ「マノン・レスコー」(プッチーニ)が中止になった。これで5公演連続キャンセルとなった。この5公演で聴けなかった公演曲目は以下の通り。
3月10日 宇宿允人指揮フロイデ・フィル  ベートーベン第5交響曲、ショスタコービチ第5交響曲
3月11日 秋山和慶指揮東京交響楽団   モーツアルト「ハフナー交響曲」「バイオリン協奏曲第3番」
                           「第41交響曲(ジュピター)」
3月12日 ダニエル・ハーディング指揮新日本フィル ワーグナー「パルジファル」前奏曲
                                マーラー「第5交響曲」
3月14日 大友直人指揮東京交響楽団   モーツアルト「ピアノ協奏曲第27番」、ホルスト「惑星」
                            ピアノ:小川典子
3月15日 フリッツア指揮東京交響楽団  プッチーニ「マノン・レスコー」

いずれも楽しみにしていたコンサートだったので非常に残念だ。しかし、東北地方太平洋沖大地震の被災者のことを想うとしかたがない。チケット代金の返金手続きが各コンサートごとに違うので非常に煩瑣だ。「お買い求めのプレイガイドへ」「銀行振り込みするのでチケットを送って」「後日、文書で通知するので待って」。まだ1件しか払い戻してもらっていない。

いずれもホームページを見たから、会場に行かないうちに事前にキャンセルがわかったが、見ていなければ現地に行って初めて気が付いた!という結果になった。パソコンない人はどうするのだろう?



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がんばれ新聞社!!~東北地方太平洋沖地震報道

2011年03月15日 21時10分51秒 | 日記


本日付の「新聞協会報」によると今回の東北地方太平洋沖地震の影響で、地元新聞社の新聞発行に大きな影響が出ている。一面のトップ記事は宮城県仙台市に本社を置く新聞社について書く。「河北は本社の制作システムが作動しなくなった。このため災害援助協定を結んでいる新潟に記事データを伝送し、併せて整理記者2人を新潟に派遣した。12日付朝刊は8ページ建て。新潟が組み上げ、到着した河北の記者が確認した上で、河北の印刷センターに送った。予備電源を使い、47万2千部を印刷。紙面は避難所にも届けた」。

同紙のH編集長は「週間メモ」に書く。「被災地の最前線で取材している記者たちは筆舌に尽くしがたい困難と闘っているに違いない。交通網の寸断、通信の途絶、停電、余震、寒さなどなど。電気が絶たれた避難所では、届けられる新聞やラジオだけが頼りだろう。伝える使命に駆り立てられるように、皆が奮闘している」と。

「ネットの時代」と言われる。速報ではネットは一番だろう。しかし、どこまで信用していいのか?今回の未曾有の大地震のニュースにおいてはなおさら信頼できるニュースが求められる。どこまで自社取材で自信をもって発信しているのか?そもそも信頼できるネットのニュース・ソースは新聞ではないか!

新聞各社はそれこそ命を懸けて記事を書いているのだ。テレビやネットは事実を伝えているかもしれない。しかし、新聞はそれに加えて真実を伝えている。少なくともそうするよう日々努力している。他人のフンドシで相撲を取るようなマネはしていない。

最初に紹介した記事にあるように新聞各社は自社の発行態勢が危うくなった場合に備えて、他社と報道・印刷協定を結んで、自社の原稿を他社の印刷工場で印刷してもらう態勢を組んでいる。そうまでして地元の住民には真実の報道をするよう務めている。彼ら一人一人の記者に対し敬意を表し声援を送りたい。がんばれ新聞!がんばれ記者


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サイクリング族増える!?いいえ、出勤族でした~交通機関麻痺

2011年03月14日 20時50分37秒 | 日記
   

14日(月)今朝も新聞の1面は東日本大地震のニュース。先日発表されたマグニチュードは9.0に上方修正された。世界歴代4位の規模という。発表される死者・行方不明者の数が日ごとに増えていく。何とも言いようのない重苦しさだ。

今朝8時少し前、自宅マンション前の白山通りを板橋方面から神保町・大手町方面に向けて自転車の列がひっきりなしに続いていた。サイクリングではない。交通機関が麻痺しているため、当てにならない電車はあきらめて自力で自転車を漕いで出勤することを決意した面々だ。地震には体力に自信をもって挑むということか。 時差をつけて1時間後にダメ元で三田線・西巣鴨駅に行ってみたら、通常どおりの混み具合だったので乗ることができた。

今日出勤したのは全社員の4割。出勤時間もまちまちで、それぞれが、防災センターやビルメンテナンス担当者と出勤態勢について打ち合わせをしたり、テナントさんからの様々な要望を聴いたり、ビルとしてテナントさんに節電の協力依頼をしたり、明後日の臨時株主総会の準備に追われたり、1日中あわただしく過ごした。2人は帰りの交通機関が心配なため3時頃帰宅した。残ったT君と通常業務のほか「計画停電」の内容などをネットで調べたりして過ごした。東京電力は「やる」といってやらなかったり、どうもハッキリしなかった。

わずかな昼休み時間に近くの郵便局に行って、朝日新聞厚生文化事業団あてに「東日本大震災救援募金」の義捐金を送金した。いまのわれわれには出来ることをやるしかない。子供たちと決めたことだ。

今夜予定されていたミューザ川崎での東京交響楽団「英国音楽の夕べ」は公演中止になった。これで日曜をはさんで4日連続でコンサートがキャンセルになった。もっとも川崎で地震に遭遇して帰宅できなくなることを考えると中止になってよかったのかもしれない。明日は新国立オペラ「マノン・レスコー」がある。さてどうなるか?
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一家族でできることを!~東日本大地震の被災者へ

2011年03月13日 18時49分31秒 | 日記

13日(日)午前中は明後日に新国立オペラ:プッチーニの「マノン・レスコー」を観るので予習をした。マリア・カラスのマノン、ジュゼッペ・ステファノのデ・グリュー、トリオ・セラフィン指揮ミラノ・スカラ座管弦楽団による決定版CDだ。このCDは十数年前に買ったものの一度も聴くことなくホコリを被っていたものだ。曲を聴いている最中も、体に感じる地震が何度かあった。知人とメールで「まだまだ油断できないので、お互いに気をつけよう」と連絡しあった。

午前中に近所の生協に行ったが、すでにパンや水、ウーロン茶などは売り切れていた。午後に巣鴨駅近くの西友に行ったが、レジは長蛇の列。パン、水はもちろん、納豆、豆腐、卵、肉類がすべて売り切れていた。カレーを作ろうと思ったので、駅の反対側のサミットに行ったら、かろうじて細切れがあった。鶏肉は入荷がないというアナウンスがあった。

多くの人が生まれて初めて経験しただろう一昨日の大地震が、人々の不安心理を掻き立てている。また、あの大きな揺れがあるのではないか、1分後かもしれない、1時間後かもしれない、1日後かもしれない。誰にもわからない。
そうした不安感を抱きながらこの瞬間を生きている。しかし、東北地方の被災者たちは極限状態にある。

子供たちと昼食にマックのハンバーガーを食べながら、「東北の人たちは大変な目にあっている。ここにいたら何もできないが、自分たちのできる範囲のことをやろう」と話し合った。ちょうど今日の朝刊に「救援募金 受付中」という記事が載っていたので、これに応募することにした。一家族のできる範囲の金額ではあるが、明日「朝日新聞厚生文化事業団」に送金する。

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3日連続コンサート中止に!~三陸沖大地震の影響

2011年03月12日 13時37分54秒 | 日記


昨夜11時50分ごろ、新聞協会のT経理主管が事務所を訪ねてきて「新橋で1時間半もタクシー待ちしたが、まったくつかまらないので、あきらめた。地下鉄都営三田線にいってみたが、人が押し寄せていて大混雑だった。駅員の話では終電時間は変えない予定だということだった。もう諦めた」と教えてくれた。終電を逃すと泊まるか歩いて家まで帰るかしかない。余震のことや子供たちのことが心配なのでダメ元で地下鉄にトライすることにした。

内幸町駅は人でごった返していて、電車が入ってきても中々乗れない。やっと乗車できたと思ったら大手町、神保町、春日といった乗換駅で多くの人が待ち受けており、ギュウギュウ詰めの状態だった。巣鴨駅で降りようとしたが、車両の中央近くにいたので中々ドアにたどり着けず、やっとの思いでホームに降りた。

マンションに着くと、当然ながらエレベーターが止まっていたので、9階まで階段を昇った。息子は、お風呂に水を張り、さらに大きな鍋にも水を確保して待っていた。よく気が付いてくれた。娘は、会社から何度も電話やメールで連絡をとろうとしたが、まったくつかまらなかったが、弟のケータイに「新宿で足止めをくったのでカラオケで時間をつぶしている」というメールが入ったということで安心した。今夜泊まる友達といっしょにもう帰っていた。

食器棚の食器がかなり割れて床に落ち被害甚大だった。子供たちがひと通り片付けておいてくれたので、ぬれ雑巾でこまかいガラスをふき取り全面的に掃除機をかけておいた。また、上の方においてあるCDケースから約70枚のCDが下に落ち散乱したが、幸いにもすぐ下がソファーだったこともあり、ケースが割れたのは1枚に止まった。

今日午後の新日本フィルの定期公演については、昨日のホームページでは今日10時時点で山手線が動いていなければ公演は中止となっていたが、今朝10時52分頃、楽団事務局から電話があり「本日の公演は中止する。今後の対応は文書で通知する」とのことだった。

これで3日連続コンサート中止となった。来週も3日間コンサートの日程が入っている。今後大きな余震がないことを祈るばかりだ。



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いまだ帰れず

2011年03月11日 23時44分29秒 | 日記
まだ帰れない。三田線は動いているようだが、その後、緊急対応があったりしてまだ事務所にいる。

新日本フィルのホームページによると、明日のコンサートは午前10時の時点でJR山手線が運転していなければ中止するとのこと。
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東北大地震M8.8~きょうもコンサート中止

2011年03月11日 21時01分37秒 | 日記
11日(金)午後2時46分ごろ東北地方で、国内の観測史上最大のマグニチュード8.8と推定される大地震があった。19:38分時点で死者39人と報道されている。事務室にいたが、すぐに会議室のテレビを見に行ったところ非常に大きな揺れが、長時間続き、机の下にもぐり込んだ。これほどの揺れは生まれて初めてだ。エレベーターが止まっているので、階段で全館を回って点検をした。防火扉は全階で閉鎖されており、一部壁にひび割れがあった。10階のレストランの厨房では棚からビンやグラスが落ちるなど広く損害が出ていた。その後、1階に降りて玄関周りを点検しているとき、今度は茨城沖で大きな地震が起きた。ビルの前の路上にいたが、街路樹が大きくゆれていた。

今日は東京交響楽団の東京オペラシティシリーズ「第60回定期公演」が午後7時から予定されていた。オペラシティのホームページを見ると「大規模地震のため公演中止」のお知らせが出ていた。昨日は指揮者の急死で、今日は大地震で、2日連続キャンセルになってしまった。一方、すみだトリフォニーホールのホームページを見ると、今日の公演は予定通りやると出ていた。明日、今日と同じプログラムの演奏会があるが、どうなるのかさっぱりわからない。今夜本当に公演しているのなら明日もやるのだろう。

しかし、JRは早くも午後7時頃には「今日の運転は見合わせる」と発表したし、地下鉄も「全線運転見合わせている」と発表している。開通がいつになるのか、見通しが立っていない。今も余震が時々あるので、完全に復旧するのには相当時間がかかるのではないか。(20:50)

いま都営三田線が運転再開したというニュースが入ったのでこれから帰宅する。さきほど電話でやっとつかまった息子によると「上の方の棚にあるCDと本が落ちて悲惨な状況にある」ということだ。帰ってからが大変だ。

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指揮者の仕事術~最近読んだ本から

2011年03月10日 12時55分10秒 | 日記
10日(木)。今日は昨日のブログに書いたように、予定のコンサートがキャンセルになってしまった。その代わり急きょ飲み会が入ってしまった。飲むと前後不覚・支離滅裂・四面楚歌(?)になるおそれが強いので、昼休みに書いてしまうことにした。

最近読んだ本から。読んだ順に樋口裕一著「音楽で人は輝く」(集英社新書)、伊藤乾著「指揮者の仕事術」(光文社新書)、小林秀雄著「モォツアルト」(新潮社文庫)の3冊。

「音楽は人で輝く」は、ベートーベン以降のブラームス派とワーグナー派の対立を軸に、それぞれの作曲家の創作活動に影響を与えた愛のドラマをからませながら、ロマン派以降の音楽の流れを分かりやすく解説した本だ。「ムリにブラームス派、ワーグナー派に分けることもないのにな」と思うところもあったが、物事は単純な方が分かりやすい、のだろう。5月の連休に東京国際フォーラムで開催される「ラ・フォール・ジュルネ・オ・ジャポン(熱狂の日・音楽祭)2011」の公式ブックでもある。ロマン派以降の手軽な入門書としてお勧めだ。

「指揮者の仕事術」は、作曲家=指揮者の伊藤乾(けん)氏が今年1月に出した本。音を出さない唯一の音楽家=指揮者はいったいどんな仕事をしているのか。そんな素朴な疑問に分かりやすく答えてくれている。

「指揮者ってどうして必要なんですか?」という質問に対しては「仮に社長さんがいなくても、工場で職人さんは製品を作れますね。でも、優れた経営者がいれば、品物の売り上げを百倍にも千倍にも伸ばすことがことができるでしょう?それと同じことです」と答えるという。また、「指揮者は野球の監督のようなもの」とも述べている。何となくわかるような気がする。

例えば、演奏中に弦が切れるとか、打楽器が床に落ちるとか、歌手が歌を間違えるとか、演奏中のオーケストラやオペラはトラブルだらけだという。そうしたアクシデントをどのように納めていくのか、現役の指揮者でもある著者がおもしろおかしく解説している。

オペラ公演で、舞台手前の観客から見えないボックスの中で、歌手に歌詞や動作を指示するプロンプターがいるが、副指揮者が務めていることを初めて知った。また、普段はテンポとリズムの違いなど意識しないで音楽を聴いていたが、解説を見て改めて「あー、そういえば昔そんなこと習ったことあるよなあ・・・」と妙に納得してしまった。私のように満足に音符が読めない音楽好きにはたまらなく面白い本だ。

小林秀雄の「モォツアルト」はこれまで何冊も買い直し、繰り返し読んできた本だ。「クラシック音楽愛好家、とくにモーツアルト愛好家でこの本の影響を受けなかった人はいない」と断言してもよい。読んだこともない人はモグリだ。この本については、いずれ別の機会に書く予定だ。
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追悼 指揮者 宇宿允人(うすき まさと) 

2011年03月09日 20時10分17秒 | 日記


手元に1枚のコンサート・チケットがある。第187回「宇宿允人の世界」 指揮:宇宿允人、管弦楽:フロイデ・フィルハーモニー。日時:3月10日(木)午後7時から、会場:サントリーホール大ホール。代表曲目:ベートーベン交響曲第5番「運命」。A席1階4列15番。明日のチケットである。しかし、これを聴くことは叶わなくなってしまった。今朝の朝日の死亡欄に次の記事が載ったからだ。

宇宿允人さん(うすき・まさと=指揮者)5日、腎臓がんで死去。76歳。葬儀は故人の意志で行わない。NHK交響楽団の主席トロンボーン奏者を経て指揮者に。1982年から「宇宿允人の世界」と題した独自企画の公演を続けてきた。

昔の「新聞手帳」をひっくり返して調べてみたら、この変わった名前の指揮者との出会いは、2000年5月2日に池袋の東京芸術劇場で開かれた定期公演だった。開演を知らせるアナウンスに耳を疑った。「プログラムには有りませんが、最初にグルックの歌劇”タウリスのイフィゲニア”序曲を演奏します」という内容だった。何だって?!プログラムにない曲を演奏する?とんでもないコンサートに紛れ込んでしまったな・・・・というのが、正直な感想だった。

白髪の小柄な老人が出てきて指揮を始めた。最初に悲しげなメロディーが流れてきたので、この調子で最後までいくのかな・・・・と思っていると、急に力強いメロディーに変わり、どんどん引き込まれていった。初めて聴く短い曲なのだが、終わったときには感動に打ち震えていた。何という曲!何という演奏!!。この日はベートーベンの第3交響曲「英雄」、第6交響曲「田園」が正規のプログラムだったが、予定外の小曲でぶっ飛んでしまった。覚えているのはこの曲の演奏だけだった。それ以来、年に2~3回程度しかない即席のオーケストラ「フロイデ・フィル」のコンサートに通うようになった。



レパートリーは極めて限られている。ベートーベン、ブラームス、モーツアルト、シューベルトといった所謂ドイツ・オースリア系の古典音楽が中心だ。曲の出だしの指示は非常に分かりにくい。したがってアインザッツが揃わない。しかし、出てくるのは恐ろしいまでに魂が込められた充実した音楽である。「音の塊が押し寄せてくる」とでも表現したらよいのだろうか。その迫力に圧倒される。

彼が常々主張してきたのは「現代のオーケストラは商業主義に毒されている」ということだ。音楽はエンターテインメントに脱落している、ということだろう。そうした中でエンターテインメントから最も遠くにいる音楽家が宇宿允人だろう。彼は腎臓がんを宣告されたこともあり、聴きに行くたびに「今回が最後のコンサートかもしれません」と言っていた。これまで主に東京芸術劇場で演奏してきたが、今回初めてメジャー級のサントリーホールでの公演に挑むはずだった。

彼は音楽に対しては非常に厳しく、前回聴いた昨年5月27日の第185回定期公演では、モーツアルトの「交響曲第39番」の第1楽章が始まって数分したところで、低弦のアンサンブルが乱れた。・・・と思ったら、タクトを下ろし音楽を止めた。そして最初から演奏をやり直した。普通、入場料を取るコンサートでは演奏を途中で止めるなんて有り得ない。しかし、宇宿允人はやる。この日はアンコールにバーバーの「アダージョ」を演奏したが、これも演奏が気に入らなかったようで途中で止めてしまった。これまで数え切れないほどコンサートを聴いてきたが、1回のコンサートで2回も演奏を止めるのを見たのはこれが初めてだ。

昨年秋に第186回の定期公演があったが、その時はプログラムが期待していたものではなかったので、聴きに行かなかった。今となってはそれが彼の最後の公演になってしまった。

舞台に出てくる時には今にも倒れそうな足取りなのだが、いざタクトを握るとシャキッとして、オーケストラから物凄い音を引き出す。そんな宇宿のコンサートがもう聴けない、観られないのは非常に寂しい思いがする。合掌

1993年10月26日 東京文化会館でのライブ録音 宇宿允人指揮フロイデ・フィルによるモーツアルト「交響曲第40番ト短調K550」を聴きながら 

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