人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

ベートーベン「第14番SQ」とシューベルト「ます」を聴く~新日フィル室内楽シリーズ

2011年07月22日 07時03分24秒 | 日記
22日(金).昨夕,すみだトリフォニーホール(小)で新日本フィル室内楽シリーズ2010-
2011の第8回公演を聴きました プログラムは前半がベートーベン「弦楽四重奏曲第14番嬰ハ短調」,後半がシューベルト「ビアノ五重奏曲イ長調”ます”」の2曲.早いもので今シーズン最終回です.

ベートーベンは1824年5月に交響曲第9番を初演しましたが,その後3年しか生きられませんでした この間に集中して書かれたのが弦楽四重奏曲第12番~16番でした.このうち第14番の「嬰ハ短調」という調整はピアノ・ソナタ「月光」と同じです.こちらも第14番です.全7楽章から成りますが,第1~4楽章,第6~7楽章が休み無く演奏されるので,3楽章形式のような構成になっています.誰の依頼も受けずに作曲したと言われており,純粋な芸術的な欲求から生まれたようです

演奏は新日フィル第2バイオリン主席の吉村知子が第1バイオリンを務め,ほかに第2バイオリン,ビオラ,チェロの編成ですが,全体を通して,どうもすっきりこないのです とくに第五楽章「プレスト」はアンサンブルがうまくいっていないように思いました オーケストラのピックアップ・メンバーによる臨時編成四重奏団による演奏の限界を感じました.6月12日にサントリーホールで聴いたアメリカの「パシフィカ・カルテット」で同じ第14番を聞いた時とまったく違った印象を受けました.パシフィカの方は,何の違和感もなくすんなり音楽が響いてきました.それに比べると今回の演奏は日光の手前でした.ん?・・・イマイチでした

休憩後のシューベルト「ます」は小中学校の昼食時間を知らせるテーマ音楽としてお馴染みですね この曲は第4楽章で歌曲「ます」のメロディを主題に使っているため,この副題で呼ばれています.バイオリン,ビオラ,チェロ,コントラバスとピアノによる演奏ですが,第1バイオリンを務めるのは,このシリーズで毎回「プレトーク」を担当する第2バイオリンの篠原英和です.コンサート開始が午後7時15分ですが,その前の15分間,ベートーベンの生涯についてわかり易く解説してくれます.この人のトークは一流です.よく音楽家や歴史を知っているし話し方も上手です 演奏で印象に残ったのはピアノの出久根美由樹(いずくね・みゆき)です.長い指を生かして軽快にシューベルトを演奏していました.全体的に,シューベルトの方は全メンバーが生き生きと演奏し,楽しんでいるように見えました

篠原が「この編成でのアンコール曲はこれしかありません」と言って「ます」の第4楽章を途中から演奏しました.演奏する側も聴く側も楽しめたのではないかと思います

このシリーズの次のシーズンは9月から開始されますが,ベートーベンに代わってブラームスが取り上げられます.すでにシリーズ・チケットは入手済みです.プレトークを含めて今から楽しみです

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ソーシャル・ネットワーク,ウォール・ストリート~最近観た映画から

2011年07月21日 07時21分56秒 | 日記
21日(木).昨夕は記者クラブの試写会で新藤兼人監督「1枚のはがき」を観る予定だったのですが,「役員会も終わって新しい社長も決まったし,一区切り,ということで30分だけ!」とE部長に誘われて,地下の串揚げRで飲みました.店を出たのは10時でした.4時間30分飲んでいたようです.”30分だけ”というのは4時間を四捨五入して省略していたことになるのかな?そんなアホな というわけで,今日は最近観た映画から.早稲田松竹で「ソーシャル・ネットワーク」と「ウォール・ストリート」の2本立てを観ました

「ソーシャル・ネットワーク」は世界最大のSNS”フェイスブック”を,ハーバード大学寮の一室から始めたM.ザッカーバーグの物語.2010年アメリカ映画です.「事実の基づいて脚色した」とコメントがありましたが,コンピュータを駆使してSNSを軌道に乗せビジネスに結びつけようとする若い男と友人との、友情と裏切りが描かれています.主人公の友人役で出ていた男優はどこかで見たような気がしますが思い出せません

さて,例によって映画で興味があるのは音楽です この映画で使用されていた唯一のクラシック音楽は(記憶に間違いなければ)ボート競走のシーンで流れていたグリーグの「ペールギュント」の「アニトラの踊り」です.何故この曲なのか意図はわかりません

「ウォール・ストリート」はサブプライム・ローン問題を抱えた金融界で復活を賭けるかつてのカリスマと,その娘,そしてその恋人の行く末を描いた愛と欲望をテーマとした物語.2010年アメリカ映画です.娘役を演じた女優は確か先日観た「わたしを離さないで」に出ていた女優さん,そういえば,「ソーシャル・ネットワーク」で,主人公の友人役で出ていた男優も「わたしを離さないで」に出ていたのでは・・・・と思って,あらためて映画のチラシを見ると,たしかに女優はキャリー・マリガン,男優はアンドリュー・ガーフィールドの名前がそれぞれの映画の出演者として載っていました.というわけで,無知をさらけ出してしまいました

こちらの映画で使用されていた唯一のクラシック音楽は,舞踏会のシーンでピアニストが弾いていたベートーベンの「ピアノソナタ”悲愴”」です 

それにしても,コンピュータの世界でも,金融の世界でも、アメリカが中心になって動いているのだなと,あらためて納得させられてしまいました
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エメリッヒ・カールマンのオペレッタ「チャールダーシュの女王」

2011年07月20日 06時41分30秒 | 日記
20日(水).昨日,会社に着いてケータイを見るとメール受信の点滅がありました 早速チェックしてみると,1通目が息子からで午前8:31「音楽つけっ放しでいいの?」,2通目が娘からで同9:18「音楽かけっぱなしでいいの?」でした.どうも部屋のFMラジオをつけっ放しで家を出てきたようです

いつもは新聞2紙を読みながら,一番近いコンサートの予習のためにCDをかけて聴いているのですが,昨日はたまたま7:20からのNHK-FMの「クラシック・カフェ」という番組をかけていました.CDならば演奏が終われば音が出なくなるので,子どもたちもアンプやCDプレーヤーのスイッチがつけっ放しでもわからないはずですが,FM放送だと延々と音が出続けるので気がついたのでしょう 遅く家を出る娘の方に「消しておいて」と返信しておきました

クラシック音楽を聴き始めたころはレコードやCDを買うお金も限られていたので,よくFM番組をエア・チェックしてテープに録音していました.ただ,一度録音したものは,安心してしまうせいか,二度と聴かないケースが多く,テープを無駄にしたものです また,CDからカセット・テープにダビングして,よくウォークマンで聴いたものです

ダビングといえば,新聞協会に務めていた頃,多くの人からダビングを頼まれました.思い出に残っているのは欧州駐在をされたこともあるNさんから頼まれたものです.Nさんは協会の仕事以外にハヤカワ・ミステリーの翻訳などもされていていました(いわゆる”二束のわらじ”を履いていた).ある時私に「いま翻訳している推理小説の中にエメリッヒ・カールマンという人が作曲したオペレッタ「チャールダーシュの女王」という曲が出てくるのだが,チャールダーシュとはどんな音楽なのか,聴いたことがないので翻訳するのにイメージがつかめない.ついては,君ならCDを持っていると思うのでダビングしてくれないか」と言うのです.

「はいわかりました.週明けにはお持ちします」とカッコよく答えたのはいいのですが,実はLPもCDも持っていなかったのです クラシック音楽に関して私を頼ってくる人に”出来ません”とは言えないのです.こうなったら意地です さっそくCDショップに行って2枚組CDを購入し,ダビングしてお渡ししました.大変喜ばれましたが,”意地”のための投資額は7,000円でした.でも,ものは考えようで,そのお陰で今まで聴いたことがなかった曲を聴くようになったわけですから,今となってはとても感謝しています

ちなみに「チャールダーシュ」とは,ハンガリーの郷土色豊かな民族舞曲で,昔からジプシーの間で踊られている情熱的で激しい2/4拍子の踊りです ウイーンからはウインナ・ワルツが,ハンガリーからはチャールダーシュが生まれたわけです 

下の写真がその時のCDです.ルドルフ・ビーブル指揮ウィーン・フォルクスオーパー管弦楽団による1985年4月6日・東京文化会館でのライブ録音です.聴くと思わず踊りだしたくなるようなウキウキした音楽です

   
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ワーグナー楽劇「トリスタンとイゾルデ」を観る~音楽と映像の総合芸術~新日本フィル定期公演から

2011年07月19日 06時47分22秒 | 日記
19日(火).昨日,すみだトリフォニー・ホールで新日本フィル第480回定期公演=ワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」を観ました 油断していました.こんなに時間が長いとは プログラムに挟み込まれたスリップによると開演14:00.第1幕:約80分,休憩25分,第2幕:約65分,休憩25分,第3幕:約75分,終演予定19:00とあります.要するに5時間かかるわけね 話の筋は,要するに毒薬を飲んで死ぬはずだったトリスタンとイゾルデが,イゾルデの侍女ブランゲーネの気転によって媚薬を飲んだために愛し合うようになり,苦しんで,結局は死んでいくという他愛のないもの.それに5時間かけるわけです,ワーグナーという人は

配役はトリスタン=デッカー(テノール),マルケ王=クリステンセン(バス),イゾルデ=ヨハンソン(ソプラノ),ブランゲーネ=藤村美穂子(メゾ・ソプラノ)ほか,指揮はクリスチァン・アルミンクです.

オペラ劇場ではないので,コンサート形式での上演です.舞台にオーケストラが乗り,背景には巨大なスクリーンが掲げられています.有名な前奏曲が始まるとスクリーンに海の波が映し出され しばらくすると船の舳先が現れて,登場する歌手やオーケストラ,さらには聴衆までもが船に乗って航海しているような錯覚を覚えます 歌手は舞台の最前列,舞台中央,舞台奥(スクリーンの前)の3箇所で歌うことになります

第1幕からイゾルデ役のヨハンソンは全力投球 それに比べてトリスタン役のデッカーは押さえ気味です 特筆すべきはイゾルデの侍女ブランゲーネ役の藤村美穂子の素晴らしさ ワーグナーの楽劇では歌手陣は絶叫に近い圧倒的な迫力のある歌声が求められます どうしても荒っぽくなりがちですが,この人はどんなに絶叫しても歌声が美しいのです ワーグナーの聖地バイロイトで認められた実力者であればこそでしょう.この第1幕を観る限り,紅白歌合戦をやったら文句なく”赤の勝ち”です

第2幕は,スクリーンに森の情景が登場.次いで大きな木が真ん中に鎮座します.ここでマルケ王が登場しますが,クリステンセン(バス)の声の素晴らしさ.まさに王に相応しい威厳のある声です.ここで紅白引き分けか

第3幕は,スクリーンに宇宙に浮かぶ惑星(たぶん地球)が登場.この場はトリスタンの独白が聞きものです.テノールのデッカーは椅子の上に置かれたカップの水を,演出の一つと言わんばかりに時々飲みながら絶叫して歌っていました 彼が第1幕で押さえ気味に歌っていたわけがここでわかりました.この第3幕に賭けていたわけね 全体を通しての評価は,やっぱり女性陣の方が凄かったと言うべきでしょう

ところで,ワーグナーの楽劇(オペラとは言わない)はいずれも長いことで有名です.昨年3月24日(水)に新国立劇場で観た「神々の黄昏」は,休憩時間を含めて6時間半でした 当日はウイークデーだったので,5時半に仕事が終わってから初台のオペラパレスに駆けつけましたが,なにせ開演が午後4時ですから最初から遅刻覚悟でした.それでも途中から入れてもらえることを期待して,5時10分に会場に着いたのですが,何と第1幕が終わるのが6時15分ということで,”休憩時間まではロビーのモニター・テレビでご鑑賞ください”と冷たくあしらわれてしまいました つまり第1幕の2時間15分の開演中は途中から入場は出来ないわけで,15分遅刻した人は゜丸々2時間もロビーで画面を観るしかないのです 2時間もあれば通常のコンサート1回分が終わってしまいます.

ここから得た教訓は,ワーグナーを聴くときは絶対に遅刻するなということです.ウイークデーで開演時間が早いときは早退するか有給休暇を取れということです.今日の公演では,隣の席のおばあさんが第1幕に間に合わず,第2幕からお見えになりました.80分をロビーで過ごされたわけですね.お疲れさまでした 

ワーグナーのオペラは楽劇と呼ばれ”音楽と演劇の総合芸術”と言われていますが,今回の公演は”音楽と映像による総合芸術”というべきものかもしれません へたな演出よりもよほどいいと思いました

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人生の終わりの「1曲」~亀山郁夫氏のエッセーから

2011年07月18日 07時17分06秒 | 日記
18日(月・海の日).昨日の日経朝刊文化欄にロシア文学者で東京外国語大学学長の亀山郁夫さんが「人生終わりの”1曲”」というタイトルのエッセーを書いています.

「”離れ小島に1冊だけ本を持っていくことができるとしたら,どんな本を選ぶか”と聞かれれば,ドストエフスキー最晩年の小説「未成年」と答える.それでは”人生の終わりに聴きたい1曲は”と聞かれたら・・・ここで名を明かすことはしない.20世紀ロシアの作曲家が書いた映画音楽,とだけ記しておこう」

20世紀ロシアの作曲家で映画音楽も書いた人といえば,ショスタコービッチしか思い浮かびません フェルゼンシュタインのあの有名な映画「戦艦ポチョムキン」に付けた彼の音楽でしょうか.答えは亀山さんにしかわかりません.

「最近CDを整理し,時代順に聴くことにした.パーセル,バッハ,ベートーベンと時代を下ってきたが,感興らしきものが少しも起こらない.例の「1曲」の順となり聴いてみたが,胸に迫るものがまったくない ケニアで事業を展開する大学の先輩に悩みを打ち明けると”思い切ってレゲエとかヒップホップとか聴いたらどうですか”と言われた.ここ数年,大学と家との往復を繰り返している中で,何か大切なものを見失っていたのだろうか.その間も,小さな”奇跡”を求め,オーディオ装置の前に空しく立ち続ける日々が続いていた」

「先輩は言う”ぼくはね,象がのし歩く草原を眺めながら,グスタフ・マーラーの音楽を聴くんですよ”.自分になにが欠落していたのか思い当たった.そうだ,もう何年も,私は象を見失っている.人間が何かに感動するには,何よりも,満たされていないという心の状態が不可欠なのだ.音楽を,最高のドラマとして経験するには,純粋な音の響き以外に何かを聴き取る飢えた心が必要なのだ.その先輩は私に”あなたは幸せすぎるのですよ,でも,その幸せの感覚こそは,確実に老いを加速させる心の錆なのです”と言おうとしていたのかもしれない

アフリカのケニアで仕事をしていて,時にマーラーの音楽に耳を傾ける.現地の音楽事情はどんなものか,音楽を聴く望ましい環境があるとは思われません.しかし,音楽に飢えていれば,どんな環境にいても聴こうとするでしょう.ラジオだろうが,安価なCDプレーヤーだろうが,聴きたいものは聴くでしょう

「結局のところ,私は,毎晩,書斎に閉じこもるうちに,現実との接点を見失っていたのだろう.音楽が仮にどれほど高貴な美しさを保証してくれるにしても,魂を揺り動かすほどの感動にそれを変えていくには,それこそ何かしら恐ろしく人間くさいものを受け止めようとする持続的な心構えが必要らしい

視点がちょっとずれるかも知れませんが,私もかつてはCDを買い集めていた時期がありました.コンサートに行けば1回当たり6~7千円はかかるし,1回限りで消えてしまう.CDだったら3~4枚は買えるし,手元に残る そんな考えで,平均すると1日1枚の割合で買いまくっていた時期がありました.それが積もり積もって4,000枚のコレクションになったのですが・・・しかし,一度に何枚もまとめて買うために,それをゆっくり聴いている暇がないのです こうなると,”音楽を聴いて感動する”世界からは最も遠いところにいってしまいます

いつの日か”このままではいけない”という自覚が芽生えました.10枚のCDを買うよりも1回のコンサートを聴きに行こう,と 生のコンサートはやり直しが効きません.まさに真剣勝負の世界です.ひとりひとり生活基盤や考え方が違う人々がそのコンサートを聴くために集まってくるのです そして演奏者と聴衆は音楽を通して時間と空間を共有するのです.演奏が素晴らしければ,そこに同席した聴衆は同じように”魂を揺り動かされる”のです

さて,現時点で”終わりの1曲は?”と問われたら,モーツアルトの「ピアノ協奏曲第23番K488」を挙げます.演奏はマウリツィオ・ポリーニのピアノ,カール・ベーム指揮ウイーン・フィルによる1976年の演奏です

  

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ライナー・キュッヒル,モーツアルトの協奏交響曲でバイオリン弾く~東響第591回定期演奏会

2011年07月17日 07時50分00秒 | 日記
17日(日).昨夕,東京交響楽団第591回定期演奏会を聴きにサントリーホールに行きました.いつも入り口でコンサートのチラシを配っていますが,”今日は随分重いな”と思って数えてみたら何と140枚もありました ”いい重いでになる”なんて洒落ている場合ではありません.まあ,チラシを見るのも楽しみのひとつではありますが

プログラムは前半は1曲目がモーツアルト「交響曲第25番ト短調K183」で,2曲目がウィーン・フィルの第1コンサートマスターのライナー・キュッヒルのバイオリン,東響の主席奏者・西村真紀のビオラによるモーツアルト「バイオリンとビオラのための協奏交響曲K364」です.

1曲目のモーツアルトの交響曲第25番ト短調の第1楽章は,1984年公開の映画「アマデウス」の冒頭で,モーツアルトのライバル作曲家サリエリが自殺する場面で効果的に使われた音楽です.第25番といえば「アマデウス」を思い浮かべるほど人々の心に見事に結び付けられています.指揮者のスダーンはモーツアルトの生誕地ザルツブルク・モーツアルテウム管弦楽団の音楽監督を歴任したこともあるせいか,テンポ感,リズム感が自然でした 第3楽章「メヌエット」でのオーボエの荒絵理子の演奏は素晴らしかった

2曲目の「協奏交響曲K364」では最初から最後までライナー・キュッヒルがその存在感の大きさを見せつけました 最初の出だしからメリハリのある演奏スタイルでストラディバリを駆使して美しいメロディーを奏でていました 西村真紀もよくついていましたが,もう少し前に出ても良かったのではないか,とも思いました.ビオラという楽器の特性でしょうか,遠慮がちに見えました

プログラム後半はシェーンベルクの「浄夜(弦楽合奏版)」です.演奏のためオーケストラの団員が徐々に席に着いていきますが,途中で拍手が起きました.何事か?と思って舞台を見るとコンサートマスターの席にライナー・キュッヒルが座っていました.ウイーン・フィルのコンマスが今日は東響のコンマスを務めるということのようです この曲は弦楽だけで演奏するため,編成が変わります.向かって左から第1バイオリン,第2バイオリン,チェロ,ビオラ・・・とここまではいつも通りです.しかし,コントラバスが舞台中央の後ろの壁に沿って8人が横一列に並ぶスタイルを取っています.かつてブロムシュテットがゲバントハウス管弦楽団を指揮したときに管楽器がいるのにこのスタイルを取っていたのを思い出しました それにしても,弦楽奏者だけ約60名が舞台いっぱいに並んでいるのを見ると実に壮観です

「浄夜」はドイツの詩人デーメルの詩に基づいてシェーンベルクが作曲したもので,当初,弦楽六重奏のために書かれましたが,初演から14年後の1916年にコントラバスを加えて弦楽合奏に編曲されました.「別の男の子供を身ごもった女の苦悩とその子を自分の子として受け入れる男の愛を描いた詩」に基づいた曲です 曲は単一楽章で,デーメルの詩の構造に沿って「月夜ー女の告白ー月夜ー男の告白ー月夜」という5つの部分から構成されています

この曲では各楽器の主席がソロを演奏する箇所がいくつかありますが,キュッヒルはじめ各主席奏者は見事にその務めを果たしました

今日の演奏会はライナー・キュッヒルをヒューチャーしたプログラムだったように思います.そういえば,きょう会場入り口で渡されたチラシの中にキュッヒルのバイオリン・リサイタルのチラシが入っていたのを思い出しました.この道のプロはしっかり,いや,ちゃっかりしていますね

下の写真は東京交響楽団のプログラム最新号の表紙ですが,解説によると,この絵は「Noctune」と題するシェーンベルクが描いた絵だそうです.彼は一流の画家でもあったようですね


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モーツアルト=オペラ「後宮からの誘拐K384」が完成した日

2011年07月16日 10時04分48秒 | 日記
16日(土).今日はモーツアルトのオペラ「後宮からの誘拐K384」が完成した日です.1782年7月16日のことでした.当時オペラと言えばイタリア語によるオペラが常識でしたが,このオペラはドイツ語で書かれました.そして「ジングシュピール(歌と芝居を意味します)」と呼ばれています

このオペラの作曲に関して,モーツアルトが父親に宛てた手紙の中で重要なことを書いています.

「オペラでは,詩がもっぱら音楽の従順な娘でなくてはなりません.そうであるなら,なぜ訳のわからないコミックなオペラが至るところで好まれるのか私にはわかりません」

この発言は同時期のオペラ作曲家グルックの「音楽は詩の忠実な娘」という主張と対比されます.個人的にはグルックも好きですが,やっぱりモーツアルトを支持しますね

ところで,このオペラのヒロインの名前は「コンスタンツェ」ですが,これはモーツアルトの奥さんの名前と同じです(コンスタンツェ・ウェーバー).彼は最初彼女の姉の「アロイジア」にプロポーズしたのですが,振られてしまい妹に鞍替えしたのですね ちなみにウェーバー家は,あの「魔弾の射手」の作曲家ウェーバーの家ですから,血が繋がってはいないもののモーツアルトとウェーバーは遠い親戚にあたります

いま聴いているのはソプラノ=マリア・シュターダー,リタ・シュトライヒほか,フリッチャイ指揮ベルリンRIAS交響楽団による1954年録音による演奏です.一昔前の古き良き演奏です

  

秋に向けてチケットを2枚購入しました.1枚目は9月16日に紀尾井ホールで開かれる紀尾井シンフォニエッタ東京の第81回定期演奏会.先日,芸大オケを振ったウイーン・フィルのコンサート・マスター=ライナー・ホーネックが指揮をしてモーツアルト(ロンドk373,同K269,アダージョk261),シューベルト(第3交響曲),ベートーベン(弦楽四重奏曲14番:弦楽合奏版)を振ります.モーツアルトの曲が珍しいです

もう1枚は11月26日に晴海の第一生命ホールで開かれる「第一生命ホール10周年記念ガラ・コンサート」.オール・モーツアルト・プログラムということと,まだこのホールに行ったことがないということで,いい機会だと思って行くことにしました.

    


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「狩のカンタータ」世俗カンタータ全曲シリーズ始まる~バッハ・コレギウム・ジャパン

2011年07月15日 06時53分11秒 | 日記
15日(金).昨夕,初台の東京オペラシティ・コンサートホールでバッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)の第94回定期演奏会を聴きました これまでBCJは200曲近いカンタータの全曲演奏シリーズを10数年にわたり続けてきましたが,あと数回で完結します.今回から世俗カンタータ・シリーズが始まりました.当初はこれまでのカンタータと併行してコンサートを組み立てていくとのことです.これまで演奏してきたカンタータは教会で演奏するための曲でしたが,世俗カンタータは基本的に機会音楽(例えば誕生日,結婚式)なので,より親しみやすい音楽ともいえます.この「狩のカンタータ」は現存する中で最も古い世俗カンタータといわれています

今日のプログラムは,前半が新年祝賀・セレナータ「日と年をつくる時はBWV134a」.アルト(といっても男性)=ギヨン,テノール=櫻田享ですが,櫻田はしばらくBCJのコンサートに出演していませんでした.干されていたのかと思いましたが,久しぶりに素晴らしいテノールを聴かせてくれました.(※BWVはバッハ作品番号のこと)

後半は誕生日祝賀「狩のカンタータ”心躍る狩こそわたしの歓び”BWV208」 デイアーナ=ユンカー(ソプラノ.ベルギー出身),パレス=ラン(ソプラノ.イギリス出身),エンデュミオン=櫻田享(テノール),パーン=ウイリアムズ(バス.イギリス出身)というメンバーでしたが,4人とも完璧な出来栄え

「狩のカンタータ」はザクセン=バイセンフェルス公クリスティアンの誕生日を祝って作曲されたお祝いの曲です バッハはこの曲を高く評価していたらしく,歌詞を変えて,この曲を少なくとも2回,別の人を讃えるお祝いで演奏したとのこと.それだけでなく,いくつもの楽章をパロディーとして教会カンタータにも取り入れているとのことです.歴史的に見ると,世俗カンタータは宗教カンタータと比べて軽んじられてきたようです BCJのこのシリーズが世俗カンタータの地位を一層高めるのに貢献するといいと思います.

思い起こせば,バッハのカンタータと初めて出会ったのは,10年ぐらい前にBCJの演奏による世俗カンタータ「急げ,渦巻く風ども”フェーブスとパーンの争い”BWV201」を聴いたときでした.まるでオペラを聴いているような楽しく心はずむ音楽でした バイオリン,オーボエ,フルートなど,すべて古楽器による演奏が新鮮でした.そしてソリストとコーラスが何より素晴らしかったです.それ以来BCJの定期会員になり現在に至っています

この曲でパレス(ソプラノ)の歌う「王は良き牧人~羊は心置きなく草をはむ」はNHKのバロック音楽番組のテーマ音楽として使われていました.穏やかな心休まる音楽です.今でも番組は続いているのでしょうか?

BCJは世俗カンタータ・シリーズを演奏会に合わせて全曲録音していくとのことで,今から楽しみです とくにカンタータの世界に引きずり込んだ曲BWV201をもう一度生で聴き,録音したCDを入手したいと思います

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諏訪内晶子,所得隠し事件に思う

2011年07月14日 07時25分11秒 | 日記
14日(木).一昨日の夕刊各紙に「諏訪内晶子さん所得隠し 5年間で7千万円」という記事が載りました.記事を要約すれば,

国際的なバイオリニスト諏訪内晶子さん(39)が東京国税局の税務調査を受け,2009年までの5年間で約7,000万円の所得隠しを指摘された 経理ミスなどを含む申告漏れの総額は約9,000万円で,同国税当局は重加算税など約3,000万円を追徴課税した.諏訪内さんはすでに修正申告した.関係者によると,諏訪内さんはコンサートの報酬など国内で得た収入は申告していたが,海外公演の報酬の一部を申告していなかった 諏訪内さんは「海外所得に対する見解の相違と,事務手続きの不備による申告漏れを税理士から指摘され,3月に修正申告した」とコメントしたーというものです.

こういう記事を見るにつけ思うことは,「世界的に名前の知れた演奏家であろうが,だれであろうが,脱税は違法行為だ.われわれサラリーマンは源泉徴収で自動的に所得税を引かれてしまう.不公平ではないか」「彼女がやっているのなら,他にもやっている演奏家がいるに違いない」ということと,同時に「一流の演奏家はこんなに儲かるのか」という下世話な感想です 一ファンとしては非常に残念なことです

とくに美人バイオリニストで通っている諏訪内晶子の場合は,90年にチャイコフスキー・コンクールで優勝したときの清潔なイメージがあるので,今回の事件は,まるでトイレで内緒でタバコを吸って,生徒指導の先生から「未成年者はタバコを吸っちゃいかん」と叱られて「わたしはスワナイ!」と言い逃れをしている女子高生のような感じがして,どうにも居心地が悪いですね 

はたして”呼び屋”のkajimotoは今後も諏訪内晶子を国内演奏会のソリストとして売り込むでしょうか? 多分,ほとぼりが冷めるまでスケジュールを海外での演奏に搾るのでしょうね 私自身は,といえば,あえて彼女の演奏するコンサートのチケットを購入することは,しばらくないでしょう
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サー・チェンのピアノを聴く~日経ミューズサロン代替公演

2011年07月13日 06時26分21秒 | 日記
13日(水).昨夕,大手町の日経ホールで第390回日経ミューズサロン代替公演を聴きました.もともとアンナ・ゴラーリというピアニストの公演が大震災の影響で中止になったため,演奏者とプログラムを代えて挙行することになったものです 演奏者は中国生まれでドイツ在住の女性ピアニスト,サー・チェン.彼女は四川で音楽の勉強を始め,ダン・シャオイのもとで学んだとのこと.数年前にショパン・コンクールで優勝したユンディ・リと同じ先生だと,どこかで読んだ記憶があります.彼女も2000年のショパン・コンクールで4位に入賞していますので,相当の実力者といってもいいでしょう

どこの会場でも開演に当たってアナウンスがありますが,「座席の前の机のご使用はご遠慮ください」というのは日経ホールしかないでしょう.このホールは講演会も開ける多目的ホールなので,座ってメモが取れるように前の席の背中部分に引き出し状の机が付いています.これを引き出すと奥の席の人が入りにくくなるので「ご遠慮ください」となるのです.ついでに言えば,この会場のトイレは可動式になっています.男女のトイレの境の壁が動くようになっていて,女性が多いときは,女性のトイレが多くなるように壁が男性側に移動するようになっています.日経ホールの杮落としに先立って見学させてもらったとき担当の方に聞きました

さて,プログラム前半は①ベートーベン「ピアノ・ソナタ第17番”テンペスト”」,②リスト「巡礼の年・第1年”スイス”より”ワレンシュタット湖畔で”」③リスト「バラード第2番」の3曲.彼女は黒一色のコスチュームで登場し演奏を開始しました.

最初のベートーベンは,やや固さがあったように思います 実力はあるのに出し切っていないような感じです.第2曲目と第3曲目のリストは,休憩を置かずに演奏しましたが,こちらは”彼女に合っている”と感じました まさに「水を得た魚」といった印象でした.古典派よりもロマン派の方が向いているのではないか,と思いました.

休憩時間にロビーに行くと協賛社のファンケルが「ホワイトアドバンス ドリンク EX」という清涼飲料水を無料で配っていました.日経ミューズサロンでは毎回このサービスがあるようです.1本飲んで1本娘に持ち帰りました.セコイ?

プログラム後半は①ベートーベン「ピアノ・ソナタ第21番”ワルトシュタイン”」②リスト「巡礼の年・第1年”スイス”より”ジュネーブの鐘”」③リスト「ハンガリー狂詩曲第12番」の3曲.

印象は前半と同じで,ベートーベンよりもリストの方が彼女の個性が現れているような気がしました.アンコールは「リストのあの曲だろうな・・・」と予想したのですが,まさにその曲「コンソレーション」を演奏しました このアンコール曲を含めて彼女の演奏の全体的な印象を言えば,どちらかというと優れたテクニックを背景に「力で押し切る」タイプのピアニストではないか,と思います

それにしても,ドイツ人やハンガリー人の作った曲を中国人が演奏して日本人が聴く・・って,インターナショナルというか,グローバルというか,まさに「音楽は時間と空間を超えて」人々の心に訴えかけてくることをあらためて認識しました

  


    

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