人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

東京春祭チェンバー・オケのヴィヴァルディ「四季」、モーツアルト「ト短調交響曲」を聴く

2013年03月21日 06時59分38秒 | 日記

21日(木)。昨日、午後3時からのコンサートまで時間があったので、上野の不忍の池付近を散歩しながら桜見物をしました 大寒桜は満開でした

 

          

 

池の近くでは餌を求めてカモメが群れ飛んでいました。池に浮かんでいる小さい鳥はカモね

 

          

 

上野の山は七分咲きの桜見物の人波で混雑していました。なかなか前に進めません

 

          

 

昨日午後、東京・春・音楽祭のコンサートをハシゴしました 午後3時から上野の東京文化会館小ホールで「東京春祭チェンバー・オーケストラ」によるコンサートを、次いで午後6時から同じく上野の旧東京音楽学校奏楽堂で「ピアノ・トリオ」を聴きました 今日は「チェンバー・オーケストラ」コンサートの模様を書きます

プログラムは①ヴィヴァルディ「ヴァイオリン協奏曲集”四季”」、②ワーグナー「ジークフリート牧歌」、③モーツアルト「交響曲第40番ト短調K.550」です

自席はD列19番、かなり前の席で演奏者の表情がよく見える位置です。会場は文字通り満席です ここで失敗に気が付きました。筆記用具を忘れてきたのです ブログを書く者にとっては無くてはならない必需品です。これで、すべてを頭に記憶させなくてはならなくなりました。すごいプレッシャーです。自業自得です

東京春祭チェンバーオーケストラは、コンマスの堀正文(N響コンマス)をはじめ伊藤亮太郎(vn)、佐々木亮(va)、藤森亮一(vc)、吉田秀(cb)らN響の主要メンバーを中心に、ヴィオラの篠崎友美(新日本フィル)、漆原啓子、川田知子、小林美恵といった独立系のヴァイオリニストなどが加わった臨時編成のオーケストラです

1曲目のヴィヴァルディ「四季」の演奏のためメンバーが登場します。コンマスの堀氏がソロを務めるのかと思っていたら、島田真千子さんがセンターに登場しました。(プログラムの写真では島田さんか、内山優子さんか判らないのですが、前者の方が似ているのでそうしておきます。間違ったらゴメンナサイ)。彼女をソリストとしてヴァイオリン協奏曲の「春」を演奏します。彼女はピンクのドレスです。春をイメージしているのでしょう。ちょうど上野の桜も満開です。春らしい清々しい演奏でした

「春」が終わると、島田さんの役割は終わりのようです。代わりに川田知子さんがブルーのドレスでセンターに。「夏」の青い海 をイメージしているのでしょう。島田さんは川田さんの席に着きます。「夏」は川田さんらしい力強いノリにノッタ演奏でした

次に小林恵美さんがセンターへ。彼女はゴールドのドレスです。実りの「秋」、麦の黄金色をイメージしているのでしょう。彼女らしいスケールの大きな演奏を展開しました

最後に漆原啓子さんが白のドレスでセンターへ。もちろん「冬」の雪 をイメージしているのでしょう。彼女の演奏ぶりはヴァイオリンの女王のようです

バックを務めるオケは、さすがに一人一人がソロを務められる実力者揃いのプロ集団です。素晴らしいアンサンブルを聴かせてくれました

 

          

 

2曲目はワーグナー「ジークフリート牧歌」です。弦楽器に加えて管楽器が登場します。フルートは高木綾子、オーボエは新日本フィルの古部賢一、ファゴットは読響の吉田将といった錚々たるメンバーです ワーグナーが1870年に、妻コジマの誕生日のお祝いに作曲したこの曲を、オケのメンバーは穏やかに感動的に演奏しました 指揮者がいないのでコンマスの堀氏がヴァイオリンの弓で合図をしながら演奏しました

最後のモーツアルト「交響曲第40番ト短調K.550」も指揮者なしでの演奏なので、コンマスの堀氏がヴァイオリンを弾きながらメンバーに合図を出します。そのため、チェロを除いて彼だけ高さの調節が出来る椅子に座り、座る位置を高くしています

チェンバーオーケストラ(室内合奏団)ですから人数が少ないのですが、一人一人の実力が並みではないので、フルオーケストラに勝るとも劣らない迫力で迫ってきます 前方の席で聴いたのでなおさらそう感じたのかも知れません

鳴り止まない拍手にモーツアルトのディヴェルティメント第17番ニ長調K.334から第3楽章「メヌエット」を演奏しました 途中、コンマスによる独奏があるのですが、堀氏の演奏を間近で聴いて、この人は本当に素晴らしい演奏をするなぁ、と感心しました。音色が美しく輝いています さすがはNHK交響楽団のコンサートマスターを長く務めているだけある、とあらためて認識しました

この後、軽く食事をとって、午後6時から上野公園内にある旧東京音楽学校奏楽堂で開かれた「ピアノ・トリオ」コンサートを聴きましたが、その模様は明日のブログに書くことにします

 

          

           (192ページもある「東京・春・音楽祭」の共通プログラム)

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チョン・ミュンフン+フランス国立放送フィル+アリス=沙良・オットのコンサートに行くぞ!

2013年03月20日 07時51分36秒 | 日記

20日(水・祝)。昨夕、隣のHKビル地下にオープンした韓国料理店Pで、I社のKさん、Tさん、当社X部長と4人で飲みました 最初はビールで乾杯し、その後は韓国名物マッコリを飲みました 火曜日だけの特典でアルコール類はすべて半額なのをいいことに、2種類のマッコリをしこたま飲んだので結構いい具合に酔っぱらいました その後は、いつものようにX部長とタクシーで都内某所(上野ですけど、なにか?)に行き、カラオケ歌合戦を繰り広げました ということで、今日も朝から頭が痛いのです。コンサート2つハシゴするのに・・・・

 

  閑話休題   

 

昨日の日経朝刊「文化欄」に、シリーズ「音楽が生まれる情景 10選」の9選目として、ピアニストの鶴園紫磯子さんが、クレーの「リズミカルな森のラクダ」を取り上げています

「音楽家の家庭に生まれ、10代のころからベルン交響楽団でヴァイオリン奏者を務めた  彼はロマン派の音楽をあまり評価していない。理想はバッハとモーツアルトであった。高度に積み上げられたポリフォニー(多声部)書法が澄み切った空間を作っている境地にあこがれていたようだ 大小さまざまな樹が五線譜の中の音符とも見える 真ん中のらくだが悠然と歩く、このらくだは音の森の中を右へ向かっている

この文章で注目したのは、ラクダが左から右へ向かって歩いているというところです 五線譜の音符は左から右へ演奏されます。絵から音楽の流れを感じますね

 

          

 

   も一度、閑話休題  

 

飯野ビルが毎月第3木曜日に1階玄関ロビーで開催している「ランチタイム・コンサート」が明日21日(木)12:05から12:50まで開かれます

今回の出演者は土屋絵葉さん。1988年生まれ。桐朋学園大学を経て、現在同大学研究家2年在籍しています

プログラムは①モーツアルト「ピアノ・ソナタ第4番K282」、②ドビュッシー「月の光」、③ラフマニノフ「幻想的小品集」より「鐘」、④リスト「ダンテを読んで」です。

内幸町界隈の皆さま、お昼休みのひと時、ピアノ音楽に耳を傾けてはいかがでしょうか

 

          

 

  さらに、閑話休題  

 

前日に続いてチケットを2枚買いました 1枚目は9月30日(月)午後7時からサントリーホールで開かれるフランス国立放送フィルハーモニー管弦楽団のコンサートで、指揮は韓国のチョン・ミュンフンです プログラムは①ベルリオーズの序曲「ローマの謝肉祭」、②ラヴェル「ピアノ協奏曲ト長調」(ピアノ独奏:アリス=沙良・オット)、③サン=サーンス「交響曲第3番ハ短調”オルガン付”」です チョン・ミュンフンとアリス=沙良・オットの組み合わせです。「いつ買うの?」と訊かれたら「今でしょ!」と答えます

 

          

 

2枚目は、4月27日(土)午後2時から東京文化会館小ホールで開かれる「都響メンバーによる室内楽トークコンサート」第15回公演です プログラムは①フンメル「木管八重奏のためのパルティータ変ホ長調」、②モーツアルト「セレナーデ第11番変ホ長調」、③ドヴォルジャーク「管楽セレナーデ ニ短調」です。これはモーツアルト狙いです。とにかくモーツアルトの室内楽は1曲でも多く生で聴きたいのです

 

          

 

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イリヤ・ラシュコフスキー、「ダンス・ダンス・ダンス」、古典四重奏団のチケットを購入!

2013年03月19日 07時02分23秒 | 日記

19日(火)。17日の朝日朝刊の広告企画「朝日求人」の”仕事力”でヴァイオリニスト・諏訪内晶子がインタビューに応えています 今回は4回シリーズの3回目で、見出しは「忘れ去られてはならない」です。彼女は次のように語っています

「演奏家は、その人らしさをどう表現できるか、それを生涯にわたって問われる仕事です。作曲家が書いた楽譜は一つ。長い時を隔てて向かい合いながら、現代のこの私が弾く意味を探すわけですね それは、つまり自分を探すこととも重なります。とくに、日本人であり女性でもあることが、どんなふうに反映されるのか。これが何より大変であり、だからこそ挑む価値があるとも言えるでしょう・・・外からの評価に侵食されない。でも、求められる水準を維持し、忘れられないように実力を磨いておく 強がっているけれど、私もくじけそうになることがあります。それでも私にはこれしかない、そう思うことが支えです」

オーケストラの一員ではなく、ソリストとして生きていく覚悟が伝わってきます。すべての責任は自分が負うことになるのですから厳しい世界です。”忘れられたらおしまい”なのです

東洋人が、中でも日本人が、西洋音楽を演奏する意味については、かつて、単身ヨーロッパに渡って苦労しながらウィーン国立歌劇場の音楽監督という世界の頂点に登りつめた小澤征爾が自ら問い、一つの答えを出したテーマです ベルリン・フィルだろうが、ニューヨーク・フィルだろうが、世界のオーケストラは今や、人類の坩堝と化しています。アメリカの名門ジュリアード音楽院は、いまアジア系の学生に席巻されつつあると聞きます。クラシック音楽の担い手は時代とともに変わっていくのでしょうが、変わらないものがあってもいいと思うのですが、どうでしょうか

 

  閑話休題  

 

昨日、チケットを3枚買いました。1枚は7月11日(木)午後7時から浜離宮朝日ホールで開かれる「イリヤ・ラシュコフスキー・ピアノ・リサイタル」です イリヤ・ラシュコフスキーは昨年の第8階浜松国際ピアノコンクール優勝者です

彼は2月27日に井上道義指揮新日本フィルのバックでチャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第1番」を堂々と演奏し、強烈な印象を残しました 次に機会があれば是非聴いてみたいと思っていました

 

          

 

2枚目は7月31日(水)午後7時から東京文化会館で開かれる「響きの森シリーズ”ダンス・ダンス・ダンス”」です プログラムは①バルトーク「ルーマニア民族舞曲(管弦楽版)、②ラロ「ヴァイオリン協奏曲第2番”スペイン交響曲”」、ブラームス「ハンガリー舞曲(全21曲)」です 舞曲を基調とするプログラムから「ダンス・ダンス・ダンス」というキャッチ・フレーズを付けたのでしょう。このキャッチに踊らされてチケットを買ったわけではありません 演奏は広上淳一指揮東京都交響楽団、②の独奏は竹澤恭子。「ハンガリー舞曲」全21曲をまとめて聴けるチャンスは滅多にありません。今回は絶好の機会です 

 

          

 

3枚目は10月26日(土)午後6時から東京文化会館で開かれる古典四重奏団の「ムズカシイはおもしろい!! モーツアルト・レクチャー・コンサート」です プログラムはモーツアルトの①弦楽四重奏曲ト長調K.156、②同イ長調K.169、③同ニ長調K.575、④同ニ短調K.421の4曲です これは以前から是非聴きたいと思っていたコンサートです。本来ならば9月23日(月)と11月4日(月)の同じモーツアルトのレクチャー・コンサートも聴きたいのですが、すでに他のコンサートの予定が入っているので諦めざるを得ません 「レクチャー・コンサート」を聴こうと思ったのは、「シューベルトの巻」を2回聴いて、タイトル通り「ムズカシイはおもしろい」と思ったのがきっかけです

 

          

 

いずれも楽しみなコンサートですが、最近は室内楽のチケットを買うことが多くなったような気がします

 

 

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暗譜で弾く古典四重奏団のチャイコフスキー「弦楽四重奏曲第1番~第3番」を聴く

2013年03月18日 06時59分52秒 | 日記

18日(月)。昨日の日経朝刊に「タイタニック沈没 最後まで演奏 悲劇のバイオリン発見 英で展示後、競売に」という小さな記事が載りました 記事を要約すると、

「英競売会社”ヘンリー・オルドリッジ&サン”はこのほど、1912年に沈没した英豪華客船タイタニック号の沈没間際まで船上で演奏を続けた楽団のバイオリンが見つかったと発表した 避難する乗客らを落ち着かせるために楽団が最後まで演奏を続けたエピソードは有名。バイオリンは楽団長だった英国人ウォレス・ハートリーさんのもので、2006年に英国人男性がアマチュア音楽家だった母親の荷物から発見、専門家の鑑定により本物と断定された ハートリーさんは事故で死亡したが、バイオリンを革のケースに入れ、大切そうに体に結びつけた状態で、海上で発見されたという

私はあの有名な映画「タイタニック」を観ていないので、まったく知らなかったのですが、楽団はタイタニック号が沈没する間際まで、乗客を落ち着かせるために演奏を続けていたのですね 100年も前のことですが、音楽家はいつの世でも”人のために役立とう”と頑張っているのですね あらためて敬意を表するとともにご冥福をお祈りします

 

  閑話休題  

 

昨日、古典四重奏団の「チャイコフスキー氏からの手紙」コンサートを聴きました プログラムはチャイコフスキーの全弦楽四重奏曲(「第1番ニ長調」、「同第2番ヘ長調」、「同3番変ホ短調」)です 公演テーマに「チャイコフスキーからの手紙」を掲げたことについてチェロの田崎氏は音楽情報誌「ぶらあぼ」3月号に次のように書いています。

「チャイコフスキーは筆まめで手紙を多く書いており、そこに自分の内面的なこと、音楽のこと、他人の作品や演奏、自分の作品についてたくさん書いている。弦楽四重奏曲は”内的な告白”の部分が強いので”手紙”という感覚が当てはまるのではないかと思う。作品は、まさに作曲家からの手紙なので、心を込めて読み取って演奏したいと思う」

自席は8列23番と、かなり前のセンターブロック通路側です。会場は5~6割の入りでしょうか。入り口で配られたプログラムには第1ヴァイオリンの川原千真さんによる親切で詳細なプログラム・ノートが掲載されています。作曲家や作品の理解に大きく役立ちます このカルテットは「レクチャー・コンサート」をやっていますが、出来るだけ多くの人に作曲家や演奏曲目を理解してもらおうとする積極的な姿勢があって、いつも感心します 他のオケやカルテットでも見習ってほしいと思います。このカルテットは1986年、東京芸術大学及び大学院卒業生によって結成されましたが、現在のレパートリーは80数曲に及ぶといいます

 

          

 

舞台上には椅子が4つ並んでいるだけで、譜面台はありません。このカルテットは演奏曲目を”すべて”暗譜で演奏するのです それは驚きです。左から第1ヴァイオリンの川原千真、チェロの田崎瑞博、ヴィオラの三輪真樹、第2ヴァイオリンの花崎淳生という態勢を取ります

1曲目の「弦楽四重奏曲第1番ニ長調」は”アンダンテ・カンタービレ”の愛称で知られていますが、それは第2楽章の表記から採られました 初演時にはあのツルゲーネフもパリから会場に駆け付けたとのことです。私がこの曲の全曲を聴くのは初めてです。第1楽章は穏やかな音楽が奏でられます。第2楽章「アンダンテ・カンタービレ」は、よくコントロールされたノーブルな演奏です 決して感情過多になりません。第3楽章と第4楽章は間を置かずに演奏されました。申し分のない見事な演奏でした

2曲目の「第2番ヘ長調」は第1番から3年後に書かれました。第1楽章冒頭は不協和音が現われ、モーツアルトのカルテットを想起しました。第4楽章は4人の力演で、ほとばしる情熱とでも言うべき曲想を見事に歌い上げました

休憩後の「第3番変ホ短調」は「葬送のアンダンテ」という愛称が付けられています。チャイコフスキーの弦楽四重奏曲などに深くかかわっていたラウプの死を悼んで作曲したものです 第1楽章は深い喪失感に彩られた曲想で、チャイコフスキーの心情がよく表われています。最後の第4楽章になると、一転して活気に溢れた音楽が展開し、深い悲しみから抜け出したかのような印象を受けます

この日はチャイコフスキーの弦楽四重奏曲全3曲をいっぺんに聴いたわけですが、演奏が素晴らしかったので初めての出会いとして幸いでした。チャイコフスキーの室内楽再発見の日となりました

 

          

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忘れられたマルトゥッチ、ブルッフ、スヴェンセンの名曲を聴く~大阪交響楽団第16回東京公演

2013年03月17日 07時12分11秒 | 日記

17日(日)。昨夕、娘が「もんじゃ焼きが食べたい」というので、材料を買ってきました。キャベツを切って、ソースを作って、という準備は子供たちがやってくれたので、皿洗いをやりました ”もんじゃ焼き”にはビール だろうということで、久しぶりに家でビールを飲みました。ビール片手のもんじゃは最高でした 下のホットプレートは15年以上使っている代物です。わが家の電気器具で一番長持ちしているのは「電気卵ゆで器」です。生たまごが5ついっぺんに茹でられる優れもので、友人の母親から27年前にいただいたものです

 

          

 

  閑話休題  

 

昨日、すみだトりフォニーホールで大阪交響楽団の第16回東京公演を聴きました 「忘れられた作曲家たち」と銘打たれた公演のプログラムは①マルトゥッチ「夜想曲」、②ブルッフ「2台のピアノと管弦楽のための協奏曲」、③スヴェンセン「交響曲第2番変ロ長調」です。指揮は同楽団の音楽監督・首席指揮者の児玉宏、ピアノは山本高志、佐藤卓史です

 

          

 

自席は1階10列13番と、かなり前方の中央通路側です。ほとんどの人が初めて聴く曲ばかりのプログラムにもかかわらず、会場はほぼ満席。大阪交響楽団の底力でしょうか

演奏前に指揮の児玉宏氏によるプレトークがありました 要約すると、

「明治維新を”文明開化”と言った。なぜ”文化開化”と言わなかったのだろうか。同じ曲に対して1000人の人が素晴らしいと言うのと、1人の人が素晴らしいと言うのとは比較ができない。文明だったら数が多ければいいが、文化は数では測れない。ベートーヴェンやブラームスはもちろん素晴らしいが、演奏される作曲家、曲があまりにも偏り過ぎている われわれは”別の作曲家もいますよ、こういう曲を書いていますよ”と演奏を通じて紹介している。採算が合わないということもあるが、われわれはそれでも聴く側が選択肢を広げて聴けるようにと務めている

児玉氏の考えには大いに賛同します。前回のヘンゼルトの「ピアノ協奏曲」が素晴らしかったので、またこのシリーズを聴いてみようと思いました。知られざる作曲家、知られざる作品はまだまだたくさんあります。今後も取り上げて欲しいと思います。さらに言えば、こういう活動は在京のオーケストラこそ取り組んでほしいと思います。すみだトりフォニーホールを満席に出来るのですから

オケは左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスというオーソドックスな編成です。第1ヴァイオリン奏者が2人遅れて登場したので、その度に、コンマスと勘違いした聴衆が拍手をしていました 3人目にやっと森下幸路コンマスが登場し、やっと収まりました。何となく”しまらない”ので、奏者の遅刻はやめた方がいいと思います

1曲目のマルトゥッチは、1856年カプアに生まれ1909年ナポリで亡くなったイタリアの作曲家・指揮者です。ワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」をイタリア初演した人とのことです

マーラーの「アダージェット」を想起する曲想が現われたかと思うと、オペラの間奏曲のような顔を見せ、時にワーグナーの音楽のようなうねりが聴こえたりしました。メロディーが美しい曲でした

2曲目のブルッフの曲を演奏するため舞台左袖からピアノが2台、中央に運ばれます。通常は左右に向い合わせに座るのですが、客席側に顔を向けるように並列に並んで、連弾のような配置を取ります この演奏をライブ録音するためか、ピアノを中心に集音マイクが何本か立てられています

児玉宏に伴われて、同じ1983年生まれの山本高志と佐藤卓史が登場します。隣席のおばあさんが「まるで高校生みたいねえ」と言っていました

ブルッフは「ヴァイオリン協奏曲第1番」が有名ですが、1838年ケルンに生まれ1920年にベルリンで亡くなったドイツの作曲家・指揮者です。「2台のピアノと管弦楽のための協奏曲変イ短調」は元々「管弦楽とオルガンのための組曲」として書かれたそうです

第1楽章冒頭からピアノ連弾によるファンファーレが力強く鳴り響きます 最初の10秒で曲の世界に引き込もうとする作曲家の意欲を感じます ダイナミックでロマン的な演奏が展開します。こんなに良い曲が世に出ていなかったのが信じられません

休憩後の「交響曲第2番」を作曲したスヴェンセンは、1840年オスロに生まれ1911年にコペンハーゲンで亡くなったノルウェーの作曲家・指揮者です

第1楽章「アレグロ」の伸び伸びしたメロディーを聴いて、ブラームスの第2番を想い起しました。もちろんメロディー自体はまったく別ですが、明るい力の抜けた軽快な音楽です 第2楽章ではオーボエのソロ、ホルンのソロが素晴らしく演奏水準の高さを裏付けました

プログラムによると、この日の演奏は今年7月に2枚組CDとしてキングレコードから発売されるとのこと。要注意です

 

          

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「総合知」を身につける~「『知』の挑戦~本と新聞の大学Ⅱ」を読む

2013年03月16日 07時00分04秒 | 日記

16日(土)。昨日は休暇を取って、子どもたちと一緒に狭山の実家に行き、父の墓参りをして母を見舞いました 昨年暮れから入院していた満90歳を迎える母は、幸い病状が好転したため自宅で療養しています。私と同い年の義弟から、町内会が高齢化していて役員の成り手がおらず、また自分が自治会長をやることになった、という話を聞きました どこの地方でも同じような状況にあるのではないでしょうか。今住んでいる14階建てマンションの場合は、役員を部屋番号の縦割りで決めています。例えば、601、701~1401で一つの班として、任期2年の輪番制にしています こうでもしない限り、同じ人が何年も役員をやらざるを得なくなります。現に、私は4年以上連続して理事長を務めました この問題は、一戸建てが集まった町内会だろうが、集合住宅たるマンションだろうが変わりないのことです。役員をやっていて一番腹が立つのは、言いたいことは言うけれど、やるべきことをやらない人々です。これはどこでも共通でしょう

そうそう、実家へのお土産に池袋西武でマカロンを買っていきました マカロンと言えば、2年前の高校時代のクラス会の時に、担任の先生へのお土産にマカロンを手渡した時に、「ホカロンです」と言ってクラスメイトから笑われたことを思い出します ホカロンだけに心温まる話でしょ

 

          

 

  閑話休題  

 

「知の挑戦~本と新聞の大学Ⅱ」(集英社新書)を読み終わりました これは、朝日新聞社と集英社が創設した、各分野のエキスパートによる連続講義「本と新聞の大学」の内容を活字化したシリーズの第2部です

 

          

 

第2部は次の5回から成ります。

6. 橋下徹はなぜ支持されるのか 中島岳志

7. OTHER VOICES・介護の社会学 落合恵子

8. グローバル時代をどう読むか 浜矩子 

9. 科学と芸術のあいだ 福岡伸一

10. 日本のこれからを考える 一色清×姜尚中

いずれも含蓄に富む講演の記録ですが、一番印象に残ったのは同志社大学教授・浜矩子さんの講演です 日本の生き残り策を次のように語っています

「要はいかに上手に人のふんどしで相撲を取るかということなのです。実際、世界の小さな国々はそういうやり方で、強そうな人たちを引き寄せて経済活動を支えてもらい、外から人を呼び、工場を誘致したりして、人口の少なさを補うという展開をしています これらの例も、これからの日本のお手本になり得るでしょう

それから第10回の「日本のこれからを考える」の対談の中で朝日新聞出版雑誌統括の一色清氏が次のように語っています

「幅広い教養を身に着けるということは、恐らく激動の時代のなかにあって大事なことだと思いますので、ぜひこれを機会に、総合知を高めるための努力をなさってください

ここで言う「幅広い教養」とは文系、理系の区別なく幅広い知識のことを指しており、それを獲得することが「総合知」を極めることになるのだと思います

 

          

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「おどろきの中国」「『知』のシャープナー」「バイバイ、ブラックバード」「月の恋人」を購入

2013年03月15日 07時00分21秒 | 日記

23日(金)。昨日朝、地下のNクリニックに行くと、待合室の片隅にミニチュア・ヴァイオリンが置かれていました。いいですね。こういうの

 

          

 

  閑話休題  

 

昨夕、10階ホールで日本記者クラブ主催の同クラブ元専務理事・白木東洋氏を「偲ぶ会」が開かれ、出席しました 会には連合赤軍”浅間山荘事件”や全共闘”東大安田講堂立て籠もり事件”などを指揮した佐々淳行氏も出席、毎日新聞の記者だった白木氏に特ダネをすっぱ抜かれた思い出話をされていました。私は元の職場で白木さんの給与計算をしていたという繋がりがあります。あらためて故人の業績に敬意を表します

その後、いつものメンバー4人で、地下のRで40分ほど飲んで、N氏を除く3人でタクシーに乗り上野に向かいました。言う間でもなくカラオケ歌合戦 です。個人の名誉のため、あえて点数は書かないことにします。ということで、今朝も頭が痛いのですね

 

  も一度、閑話休題  

 

本を4冊買いました 1冊は御厩祐司著「『知』のシャープナー」(光文社新書)です。サブタイトルに「人生が変わる知的生産日記」とあります。本の帯に書かれた説明によると「エクセルによって全人生の記録を1枚のシートに収める」というものです。何か面白そうなので買いました

 

          

 

 

2冊目は橋爪大三郎×大澤真幸×宮台真司の「おどろきの中国」(講談社現代新書)です。サブタイトルの「そもそも『国家』なのか?」と、本の帯にある「なぜ日本人の『常識』は彼らに通じないのか?」といううたい文句に魅かれました

 

          

 

3冊目は伊坂幸太郎著「バイバイ、ブラックバード」(双葉文庫)です。伊坂幸太郎の本は文庫化されると必ず買っています。とにかく痛快無比です

 

          

 

4冊目は道尾秀介著「月の恋人」(新潮文庫)です。この人の小説も文庫本化されると必ず買っています。ハズレがありません

 

          

 

これから読むのが楽しみです

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シューマン「ピアノ協奏曲」、モーツアルト「レクイエム」を聴く~高関健+東京都交響楽団

2013年03月14日 07時00分18秒 | 日記

14日(木)。昨日朝、今年初めて桜の花を見ました。西巣鴨の交差点近くの小学校に咲いていました

 

          

 

会社の同僚に話すと、「まだ梅さえ見ていないのに・・・・」と疑いの目で見られましたが、本物です  桜のサクラではありません しかし、同じ巣鴨でも、JR巣鴨駅近くの”染井ヨシノ”発祥の地、染井霊園の桜はまだのようです。小学校の桜は何桜なんでしょうか?さしあたって黄桜ではないな

一転、今朝の肌寒さは何なんでしょうか。要するにまだ三寒四温の真っ最中だということでしょうか

 

  閑話休題  

 

昨夕、池袋の東京芸術劇場で東京都交響楽団のコンサートを聴きました これは「2013都民芸術フェスティバル」参加公演です。プログラムは①シューマン「ピアノ協奏曲イ短調」、②モーツアルト「レクイエム ニ短調K.626」です。指揮は高関健、①のピアノ独奏は小山実稚恵、②の独唱はソプラノ=森麻季、アルト=菅有実子、テノール=中鉢聡、バリトン=福島明也です

 

          

 

自席は1階S-21番。ほぼセンターですが最後列から2番目。会場は9割方埋まっている感じです オケのメンバーが登場します。左から第1ヴァイオリン(その後方にコントラバス)、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対向配置を取ります。これは高関健シフトです

1曲目のシューマン「ピアノ協奏曲イ短調」を演奏するため、ピアニストの小山実稚恵が指揮者・高関健に伴われて登場します。ご存知、ショパンコンクール(4位)とチャイコフスキーコンクール(3位)の両方に入賞している日本で唯一のピアニストです

短い序奏部からピアノがいきなり入ってきます。言ってみればこの曲はロマンティズムの極致をいくピアノ・コンチェルトです 小山も高関も起伏の大きな演奏を展開します

せっかく良い席に座ったのに、すぐ前の席のオジサンが頭を左に傾けているので、ピアニストがまったく見えません こういう人が一番たちの悪い聴衆です。ひとに迷惑をかけているという自覚がまったくないのですから 幸い第2楽章からは、まっとうな人間に戻ってくれて、まっすぐに座ってくれたので一安心しましたが

そんなこともあってか、どうも演奏に集中できず気が散ってなりませんでした それでも、大好きな第3楽章のフィナーレはノリにノッた演奏で、聴く方も身体を乗り出してしまいそうなクライマックスでした

小山はアンコールに同じシューマンの「子どもの情景」から「トロイメライ」を弾きました

 

          

 

休憩後のモーツアルト「レクイエム」のためオケとともにコーラス陣が登場します。プログラムを見ると「合唱/東響コーラス」とあります。「都響に東響コーラス・・・・あれっ、変だなぁ」と思って解説を見ると「東響コーラスは東京交響楽団専属のアマチュア混声合唱団だが、この演奏会は東京交響楽団以外の在京オーケストラとの初共演となる」と書かれていました。総勢100名を超えるコーラス陣ですが、男声を中央にして女声が両サイドから挟む配置を取ります

ソプラノの森麻季が黒とグレーを基調としたロング・ドレスで、アルトの菅有実子が黒のドレスで、テノールの中鉢聡、バリトンの福島明也とともに登場します 曲が「レクイエム」(死者のための鎮魂歌)であればドレスはどうしても黒が基調になるでしょう

モーツアルトの未完の「レクイエムK.626」は長い間、彼の弟子のジュスマイヤーによって補完された版によって演奏されてきました その後の研究により1996年にロバート・レヴィンが新たな解釈に基づく版を出版し、最近頻繁に演奏されるようになりました。この日の演奏も”レヴィン版”によって演奏されました

高関健は全体的に速めのテンポでグングン音楽を前に進めます。現代のモーツアルトと言ってもいいでしょう 聴きなれた耳で「ラクリモサ」(涙の日)を聴くと、思わぬ続きがあるのでびっくりしますここがレヴィン版の特徴でもあります。コーラス陣が「ラクリモサ」を歌っているとき、ソリストの歌う場面ではないのに、森麻季は口パクをやっていました 本当に声を出して歌っていたのかも知れません。この世に別れを告げるモーツアルトの告別の歌を一緒に歌いたかったのかも知れません

歌手陣では森麻季が透明な美しい声でダントツの存在感を示していました 本当に心が洗われるような清らかな声です。男声ではバリトンの福島明也が安定した歌声を聴かせてくれました

東響コーラスは素晴らしい歌唱力でモーツアルトを歌い上げました 今後、他のオーケストラから声がかかる機会が増えるのではないかと思います。私にとって、この日のプログラムは大好きなシューマンとモーツアルトの組み合わせということで、大いに満足できる公演でした

 

          

 

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中国とどう付き合うか~「知」の挑戦・本と新聞の大学Ⅰを読む

2013年03月13日 06時59分33秒 | 日記

13日(水)。今日はメンデルスゾーンの有名な「ヴァイオリン協奏曲ホ短調」が初演された日です 1845年3月13日、フェルディナント・ダヴィットのヴァイオリン・ソロ、ニルス・ゲーゼ指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団によって初演されました

ヴァイオリニストの来日公演プログラムを見ると、なぜかこの”メンコン”が多くて、「ほかに演奏する曲はないのかい?」と聞きたくなるのですが、名曲中の名曲には違いありません。嫌になるほどロマンチックでドラマチックな曲です CDの愛聴盤はヒラリー・ハーンの2002年録音かな

 

          

 

  閑話休題  

 

「知の挑戦~本と新聞の大学Ⅰ」(集英社新書)を読み終わりました これは朝日新聞社と集英社が2012年3月に創設し、各分野の第一人者が連続講義を行った「本と新聞の大学」の内容を文字で再現したもので、次の5回から成っています

1.日本はどうなる? 一色清(朝日新聞出版雑誌統括)と姜尚中(東京大学教授)の対談

2.私的新聞論~プロメテウスの罠 依光隆明(朝日新聞編集委員)

3.政治学の再構築に向けて 杉田敦(政治学者)

4.2020年の中国~世界はどう評価するか 加藤千洋(元朝日新聞編集委員)

5.科学と人間の不協和音 池内了(天文学者、宇宙物理学者)

面白いと思ったところをつまみ食い的に抜粋して見ます。

まず、「1.日本はどうなる?」の中で姜尚中氏が「知」のあり方を語っているところです

「私は”知”というものを説明する際、しばしば”生もの”と”干もの”という二つのものを例に使います 生ものの知の代表は新聞を中心とするメディアです。ジャーナリズムです。これに対して、干ものとは大学や本~主に古典ですが~によって担われているような知です。では、生ものと干ものの関係はどうあるべきかというと、私は双方をほどよく関連させて、二つのあいだを行ったり来たりすることが理想だと思います 二つをバランスよく取り入れて、双方をチューニングしつつ、ある種の”総合知”のようなものを身につけたい。これがまた、「座標軸」にもなるわけです

次に「4.2020年の中国」の中で加藤氏が質問に答える形で中国との付き合い方について語っているところです

「中国は国として付き合うとなかなか厄介なんですけれども、一人一人の中国人と友だちになると情も厚い いざという場合には助けてくれる、向こうが困っていたら逆にこっちが助ける、そういう関係になれる。77.8%の人が中国にあまり親しみを感じないという状況ではなかなか難しいでしょうが、そういう困難な状況を打破するには、やっぱり人と人、一人ずつが顔と顔を向け合ってつきあいを深めていくことだと思います 中国に友人といえるような人はいらっしゃいますか?日本にいる中国の人でもいいけれども、友人としてつきあう、そういう試みをされてはいかかでしょうか

最後に「5.科学と人間の不協和音」の中で、池内氏が語っているところです

「科学の将来を考える時、私はよく、”タイムホライズン”のお話をするのです。私たちが景色を遠く見渡すと、地平線が見えるでしょう?そして、その線より先は見えません。それは、地球が丸いから、そして、光がまっすぐ進むからです それと同じように、私は時間にも地平線があると思っています。どのくらい先のことを想像してものごとに取り組むか、そのぎりぎり見通せるライン。それがタイムホライズン(時間の地平線)です 自分の未来としてこういうことをやろうとか、ここまでは頑張ろうとか展望するのに良いのです。ところが、そのタイムホライズンは、いまどんどん短くなっているように思います 余裕がなくなって、近視眼的になっている。それはまずいことでしょう。ひょっとしたら、あなたの会社は長期ビジョンや大きな展望を持って何かに取り組むのではなく、姑息な改良主義のようなものに陥っているのではないでしょうか 日本はいま、失われた20年だか30年だかで色々な側面で焦っていますが、悪あがきしてはいけません。そうではなく落ち着いて、もう1回、本当の基礎のところに立ち返って、10年、20年かけて、きっちりとやり直していかないといけないと思います。なかなかそうなりませんけれども、そうあるべきだと思います

 

          

 

インターネットが世界的に普及している中、あえて新聞と本のメディアが組んで「知」を総合的に捉えようとした意欲的な試みです 久しぶりに”堅い本”を読んで少々疲れ気味ですが、この本で取り上げられている事項は、どれもがあらためて考えさせられることばかりでした

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フランコ・ゼッフィレッリ演出で再びヴェルディ「アイーダ」を観る~新国立劇場

2013年03月12日 06時59分55秒 | 日記

12日(火)。昨日の日経朝刊の文化欄に、ヴァイオリンドクター(製造・修復)の中澤宗幸氏が「震災バイオリン 希望の音~津波にさらわれた流木集め製作、1000人が演奏リレー」というエッセイを書いています

中澤さんは一昨年の3.11の大震災のとき、自宅で昼食を取っていたそうですが、階下の工房で修復中の五嶋龍氏所有のストラディヴァリウスを預かっていたので、真っ先に工房に飛んでいき無事を確かめたそうです 中澤さんは海岸に打ち寄せられた流木を拾い集めて、3挺の「震災ヴァイオリン」を製作し、祈りと再生を願う気持ちを込め、10年かけて1000人にリレーで演奏してもらうプロジェクト「千の音色でつなぐ絆」を始め、ちょうど1年が経つとのことです

素晴らしい企画だと思いますが、私が彼のエッセイを読んで興味を引かれたのは、流木からヴァイオリンを製造しようと思ったきっかけとなった思い出です

「30年前、欧州で見たあるヴァイオリンの横板に刻まれていたギリシャ語の言葉を唐突に思い出した。”私は森に立っていた時は木陰で人を憩わせ、ヴァイオリンになってからは歌って人を憩わせている”。がれきとして処分される前に、楽器として新たに命を吹き込むことができたらーー。その思いで東北を訪ねた」

われわれはひと言で”がれき”と言って片づけがちですが、それに命を吹き込めば立派な楽器となり、人々を感動させることができるのだということを教えられました。3挺のヴァイオリンによって1000人のリレーが達成することを祈りたいと思います

 

  閑話休題  

 

昨夕、初台の新国立劇場でヴェルディ「アイーダ」を観ました フランコ・ゼッフィレッリの演出ですが、1998年の新国立劇場開場記念公演として上演された演目・演出です。今回の上演は新国立劇場開場15周年記念公演と名打っています 自席の斜め前の席には、前回同様、東京シティフィルの桂冠指揮者・飯守泰次郎氏が座っていらっしゃいます。

キャストはアイーダにラトニア・ムーア(ソプラノ)、ラダメスにカルロ・ヴェントレ(テノール)、アムネリスにマリアンネ・コルネッティ(メゾソプラノ)、アモナズロに堀内康雄、ランフィスに妻屋秀和、エジプト国王に平野和ほかです。指揮はドレスデン生まれのミヒャエル・ギュットラー、オケは東京交響楽団です

物語は、古代エジプト。若き将軍ラダメスは、王女アムネリスに仕える敵国エチオピアの王女アイーダと密かに愛し合っています しかし、アムネリスもラダメスを愛しています。アイーダは父である王の密令によりラダメスから軍事機密を聞き出して、ラダメスは謀反の罪で捕えられます アムネリスは、自分を愛せば命を救おうとラダメスに迫りますが、彼は拒否します 地下牢で死を待つラダメスの前に、事前に牢に忍び込んでいたアイーダが現われ、二人は永遠の愛を誓いながら死を待ちます

 

          

 

アイーダを歌うラトニア・ムーアはアメリカ出身の黒人で、昨年3月のメトロポリタン歌劇場「アイーダ」公演に、ウルマーナの代役として急きょ出演し大喝采を浴びた若手ソプラノ歌手です 今回の公演も、プログラムにはムーアの名前が紹介されていましたが、チラシの段階では別のソプラノの名前が出ていました。小柄ですが体格がよく、悲劇のヒロイン、アイーダをドラマチックに歌い上げます 合唱を突いて彼女の高い声が前面に出てきます。その声の存在感は並大抵ではありません

ラダメスを歌うカルロ・ヴェントレはウルグアイ生まれのイタリア人。ウィーン国立歌劇場、英国ロイヤル・オペラなどで歌っており、新国立オペラでは09年の「トスカ」でカヴァラドッシを歌っています 後半にいくにしたがって声の出もよくなっていき、満場の拍手で迎えられました

アムネリスを歌うマリアンネ・コルネッティはペンシルバニア生まれ。メトロポリタン歌劇場、ウィーン国立歌劇場などで歌っているとのことです。この人は最初から絶好調で、メゾソプラノながら高音も伸びがあり、アイーダには冷たく、ラダメスには愛して欲しいという気持ちを、歌と演技で見事に表現しました

日本人歌手で目立って良かったのはアイーダの父親アモナズロを歌ったバリトンの堀内康雄です。威厳のある声でエチオピア王を歌い、演じました

司祭者たちの長であるランフィスを歌った妻屋秀和は期待通りのバスでいつものように存在感を示していました

今回特筆すべきはギュットラーの情熱的な指揮のもと、素晴らしい演奏を展開した東京交響楽団ですある時は歌手に寄り添ってすすり泣き、ある時は圧倒的な迫力で会場を圧倒しました ちなみに、この日のコンマスは大谷康子でした

それにつけても、ゼッフィレッリの演出・舞台の何と豪華でスケールの大きいことか とくにこのオペラのハイライトとも言うべき第2幕第2場の「凱旋の場」における勇壮な凱旋行進曲の素晴らしさ アイーダ・トランペットが高らかに鳴り響く中、兵士たちが行進していきます。本物の馬が2頭登場します 面白いのはプログラムを見ると、出演者のリストに「馬」の区分があり「チェイン・オブ・ゴールド」と「アル・ロパルナ」という名前の馬であることが分かります

この場では続いて東京シティ・バレエ団とティアラこうとう・ジュニアバレエ団によりバレエが踊られますが、このバレエがまた素晴らしいのです このバレエのシーンは、初演時には非常に短かったそうで、1880年のパリ上演の際ヴェルディが現行の形に拡大したそうです

最後の第4幕第2場、地下でラダメスとアイーダが抱き合いながら死を待つ中、地上ではアムネリスと合唱の祈りの声が静かに響きます。そして、照明が消され、いくつかのロウソクの光だけが暗闇に浮かび上がるフィナーレは印象的です

今回の「アイーダ」の最大の収穫はアイーダ役のラトニア・ムーアとアムネリス役のマリアンネ・コルネッティの2人の女性歌手を知ったことです

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