人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

ダニエル・ハーディング+新日本フィルでマーラー「交響曲第7番ホ短調」を聴く

2013年11月10日 07時50分59秒 | 日記

10日(日)。昨日、すみだトリフォニーホールで新日本フィル第517回定期演奏会を聴きました プログラムはマーラー「交響曲第7番ホ短調」で、指揮はダニエル・ハーディングです

オケは向かって左から奥にコントラバス、前に第1ヴァイオリン、右にチェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対向配置、言わばハーディング・シフトを採ります コンマスはチェ・ムンス。舞台のど真ん中はチェロですが、上森祥平の隣にソリストや室内楽で活躍する辻本玲がデンと構えています

マーラーはこの曲を1904年から05年にかけて作曲、08年9月にチェコ・フィルを自ら指揮して初演し、その後09年にオーケストレーションを一部改訂しています 5つの楽章から成りますが、第2楽章と第4楽章が「夜の音楽」と題されているのが特徴です そして、最後の第5楽章が昔から「マーラーとしては失敗作ではないか」と言われてきた「ロンド・フィナーレ」です

ハーディングのタクトで第1楽章が始まります。アダージョからアレグロに移りますが、時に木管が咆哮し、弦楽器、そして打楽器さえも圧倒します。2つの「夜の音楽」のうち興味深いのは第4楽章「アンダンテ・アモロ―ソ」です ギターとマンドリンが加わって”セレナーデ”を奏でるのですが、オケを抑え気味に演奏しても、90人以上のフル・オーケストラの中では、音の小さいギターとマンドリンの音は消されてしまいます。2つの楽器がはっきりと客席に聴こえるのはほんの1分あるかないかです

マーラーはそういうことを理解しながらも敢えてこの2つの楽器を使ったのだと思いますが、「やがて私の時代が来る」と予言していた彼だけに、「いつか録音技術によって、ギターやマンドリンの音も明確に聴き取れる時代が来る」と考えていたのかも知れません

ハーディングの指揮でマーラーの第7交響曲を聴いていると、90分近くかかる大曲がそれほど長く感じません 同じ大曲でもブルックナーの交響曲はすごく長く感じます。おそらくブルックナーは同じメロディーの繰り返しが多いからだと思われます マーラーは次々と目先が変わり飽きることがありません もっとも、マーラーの曲でも指揮者によっては長く感じることもあるので、一概には言えないかも知れませんが

  閑話休題   

プログラムのプログラム・ノートのことを再度取り上げます。11月号でもトりフォニーシリーズは評論家A氏が書いています。3ページにわたるプログラム・ノートの最後に次のように書いています

「サイモン・ラトルは終楽章を『もっとも悲劇的なハ長調の音楽』と語ったそうだが、それは勝利や幸福の達成の不可能を告知する虚無的な意味からだろう。バロック組曲であれば祝祭も空騒ぎも可能だが、マーラーが前2作の純器楽交響曲で力強く示したドラマの構成法とは異なる。むしろ曲自体がその陰画のようだ。古典的な形式観を採って交響曲の伝統との格闘を内的に劇化した第6番の先にみえてきたのは、バロック時代の形式や新旧の音響空間の画布を借り、さらに前衛的で虚無的に、明朗快活な哄笑が通う脱構築の場であった」(原文のまま)

またしても、これが何を言いたいのか分からないのです 何となく分かったような気がしますが、よく考えるとさっぱり分からないのです 同じプログラム・ノートでもサントリー・シリーズを担当しているM氏や新クラシックの扉シリーズを書いているO氏の解説は非常に分かり易いのです。やはりA氏の個性の問題なのでしょう 

プログラム・ノートや曲目解説に芸術はいらない と再度言っておきます。あくまで聴衆がコンサートを聴くのに助けになることを分かり易く書いてほしいと思います  

〔追伸〕これを書いている最中の午前7時38分頃、関東地方で震度3の地震がありました

 

          

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『音楽の友』11月号を読んで思ったこと~『音友』は『ぶらあぼ』に勝てるのか!?

2013年11月09日 07時01分29秒 | 日記

9日(土)。2~3日前に「豊島区都市整備部地域まちづくり課」というところから「地域のまちづくりに関するアンケート調査ご協力のお願い」という大型封書が届きました 防災対策の観点から木造住宅が密集する地域を対象に現況の課題や建て替え意向などを聞く内容で、対象が「池袋本町、上池袋二、三、四丁目の区域」となっています。そしてアンケート対象者として①調査対象地域内に住んでいる人②同・営業活動をしている人③同・土地または建物を所有している人を挙げています

私は同じ豊島区でも巣鴨に住んでいるし、調査対象地域で営業活動もしていないし、土地も建物も所有していないので、なぜ自分にアンケートの依頼がくるのかさっぱり分からないので、ほったらかしにしておきました すると、昨日「『地域のまちづくり関するアンケート調査ご協力のお願い』の誤送についてのお詫び」という封書が届きました。やっぱり手続き上のミスだったようです

豊島区では現在、新庁舎を建設中ですが、こういう区民税の無駄遣いをしているようでは賛成できません。それ以前に個人情報の管理はどうなっているのか、非常に疑問です。猛省を求めます

 

  閑話休題   

 

ここ十数年、月刊誌『レコード芸術』と同『音楽の友』を買っていません かつては”生演奏派”ではなく”レコード・CD派”だったので『レコード芸術』は毎月定期購読していました 自宅の靴箱の上に1995年から2000年まで6年間の『レコード芸術』が並んでいます この間に、雑誌の付録としてサンプラーCDが付くようになりました その号で紹介されているCDの聴きどころを抜粋・収録したものです。それを聴いてよくCDを買ったものです。当時は年間300枚くらい買っていました

一方、『音楽の友』の方は、どちらかと言うとコンサート・ガイド的な性格が強かったので、ほとんど買ったことがありませんでした 数年前にレコード・CD派から生演奏派に転換してからも、ほとんど買ったことはありません

久々に『音楽の友』を買いました。11月号の特集が「名ホールが名オーケストラの音を作る」となっていたので興味が湧いたからです 国内外のコンサートホールを紹介していますが、興味深かったのは「国内・海外のオーケストラとその本拠地ホール」という記事です

 

          

 

例えば「新日本フィルハーモニー交響楽団&すみだトりフォニーホール」は、「開館年:1997年、席数:1801席、残響:満席時・約2秒、音響設計:永田音響設計。ホール建設前から新日本フィルと墨田区が契約を交わし、フランチャイズを前提に設計された。新日本フィルはサントリーホール定期も含め基本的にすべて練習はこのホールの舞台で行い、楽器庫も備えられ、事務局も同一ビル内である」と紹介されています

このほか20のオーケストラとレジデンス・ホールが紹介されていますが、面白いと思ったのは、21のホールのうち11ホールが「永田音響設計」という会社による設計だということです

ところで『音楽の友』には「コンサート・ガイド&チケット・インフォメーション」という付録が付いてます。その月のコンサートの予定が掲載されており、アーティスト別の索引も付いています

 

          

 

しかし、今は「ぶらあぼ」というクラシック専門のフリー情報誌が出ており、相当充実した内容を誇っています 私など、会社の引き出しに1冊、自宅の卓上に1冊、ベッドサイドに1冊置いてあり、いつでも見られるようにしています それぞれに、栞代わりに「チケットぴあ申し込み書」が数枚挟んであり、聴きたいコンサートがあったら、忘れないうちに記入できるようにしています

 

          

          

 さて、『音楽の友』には「コンサート・レヴュー」というコーナーがあります 自分で聴いたコンサートをどのように批評しているかと探してみたら、9月30日のチョン・ミュンフン指揮フランス国立フィルハーモニー管弦楽団のコンサートについてN氏(たぶん評論家)が書いていました。1曲目のラヴェル「マ・メール・ロワ」について次のように書いています

「冒頭から各楽器がデリケートに音を紡いでいく。弱音の音色の多彩で幅拾いグラデーション、透徹したテクスチャー、快い沈黙と静寂等オーケストラのソノリテに対する優れた感性には瞠目すべきものがあり、魔法のような効果をもたらす」(文章のまま)

私にはNと言う人が何を言おうとしているのか、さっぱり判りません。音楽評論家によるクラシック・コンサート評を読んでよく感じるのは、上記の文章にもあるように、「グラデーション」、「テクスチャー」、「ソノリテ」などいわゆる”専門用語”的な言葉を多用し、いかにも自分は一般の聴衆とは違うのだと”上から目線”で読者を見下す態度が透けて見えるケースが少なくないことです

一般の聴衆が言葉にするのが困難なことを、分かり易い言葉で表現して伝達するのが批評家の役割のはずです 第一「幅拾い」は「幅広い」の間違いでしょう。これはお金を取って売っている雑誌としては恥ずかしい校正ミスです。最終的には著者自身による”著者校正”があったはず。更生して欲しいです

上記のことを踏まえて定価970円の月刊誌『音楽の友』は、クラシック音楽無料情報誌『ぶらあぼ』に勝てるのか 私の結論は出ています

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2014年都民芸術フェスティバル(来年1~3月、オーケストラと室内楽)8公演のチケットを買う

2013年11月08日 07時01分14秒 | 日記

8日(金)。昨日のブログに書いた、11月15日の東響オペラシティシリーズ公演のピアニスト、アンドレ・ワッツの代演者決定のハガキが届きました ハガキによると、「ワッツ氏は転倒した際に手首を負傷、医師の判断により12月末まで公演を全てキャンセルすることになった」とのこと。本物のワッツが転倒するなんて「本What's転倒」ですね・・・・・・ちょっとムリがあるか まさか「練習不足」が本当の理由ではないと思いますが、もしそうだとしたら医師の問題ではなく意志の問題です お後がよろしいようで・・・

ということで、代演者は「複数の音楽事務所に問い合わせた結果、クン=ウー・パイク氏にブラームスの第2ピアノ協奏曲を演奏してもらうよう依頼した」とのことです 確か、クン=ウー・パイクは今夜あたりトッパンホールでシューベルトだけのリサイタルをやるはずです。以前からこのピアニストは興味があったのですが、チケットを買うまでには至らなかったので、今回の代演はいいチャンスです

 

          

 

  閑話休題  

 

先日、サントリーホールの入り口で配られていたチラシの束に「2014都民芸術フェスティバル参加公演」のチラシが入っていました これは毎年1月から3月まで、公益社団法人日本演奏連盟の主催により在京オーケストラと室内楽を低料金で提供するものです

 

          

 

このうち第45回オーケストラ・シリーズは次の8公演から成っています(会場はすべて東京芸術劇場)

①1月14日(火)19時。アンドレ・デ・リッダー指揮都響。①ドヴォルザーク「チェロ協奏曲」(Vc:堤剛)、②チャイコフスキー「第4交響曲」

②1月23日(木)19時。飯守泰次郎指揮東響。①ワーグナー「ニュルンベルクのマイスタージンガ-前奏曲」、②グリーグ「ピアノ協奏曲」(P:居福健太郎)、③ドヴォルザーク「第9交響曲”新世界より”」

③1月30日(木)19時。藤岡幸夫指揮日本フィル。①モーツアルト「ドン・ジョバンニ序曲」、②同「ピアノ協奏曲第20番」(P:萩原麻未)、③シベリウス「第2交響曲」

④2月4日(火)19時。川瀬賢太郎指揮読売日響。①ベルリオーズ「ローマの謝肉祭序曲」、②メンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲」(Vn:志茂美都世)、③ベルリオーズ「幻想交響曲」

⑤2月21日(金)19時。下野竜也指揮新日本フィル。①ヴェルディ「運命の力序曲」、②ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」(P:小山実稚恵)、③ムソルグスキー/ラヴェル「展覧会の絵」

⑥3月9日(日)14時。渡邊一正指揮東京フィル。①ボロディン「イーゴリ公よりダッタン人の踊り」、②シューマン「ピアノ協奏曲」(P:今野尚美)、③チャイコフスキー「第6交響曲”悲愴”」

⑦3月13日(木)19時。ラルフ・ライケルト指揮N響。①モーツアルト「ピアノ協奏曲第21番」(P:パスカル・ロジェ)、②ブラームス「交響曲第1番」

⑧3月26日(水)19時。矢崎彦太郎指揮東京シティフィル。①スメタナ「モルダウ」、②モーツアルト「ヴァイオリン協奏曲第5番”トルコ風”」(Vn:米元響子)、③シベリウス「フィンランディア」、④ラヴェル「ボレロ」

以上8公演のうち是非聴きたいと思ったのは③1月30日のモーツアルト「ピアノ協奏曲第20番」です 言うまでもなく萩原麻未がピアノを弾くからです さっそく手帳で予定を確かめると、新国立オペラの「蝶々夫人」が入っていました。非常に残念です

次の候補は3月9日のシューマン「ピアノ協奏曲」です。これは演奏家というより演奏曲目が魅力です シューマンの「ピアノ協奏曲」大好きです。手帳を見ると、やはり新国立オペラの「死の都」のゲネプロ見学が入っています。無念です

毎年のことですが、本当に聴きたいコンサートは、すでに別のコンサートの予定が入っています。本当に皮肉なものです

第3候補は2月21日のラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」です。これはオケとソリストに期待です。手帳で確かめると、やっと空いていました

第4候補は3月13日のモーツアルト「ピアノ協奏曲第21番」です。これはピアニストが魅力です。予定は空いています

ということで、涙をのんで第1候補の「日本フィル+萩原麻未」の公演と第2候補の東京フィルのシューマン「ピアノ協奏曲」の公演は諦め、新日本フィル室内楽シリーズと日程がダブっている3月26日の公演を除いた5公演のチケットを買いました

 

          

 

さて、第13回室内楽シリーズのラインアップは以下の通りです(会場はすべて東京文化会館小ホール)

①1月28日(火)19時。ピアノ三重奏の夕べ。①ベートーヴェン「ピアノ三重奏曲”街の歌”」、②スーク「ピアノ三重奏曲」、③ベートーヴェン「ピアノ三重奏曲”大公”」(P:田部京子、Vn:大谷康子、Vc:岡本侑也)

②2月13日(木)19時。弦楽四重奏曲の夕べ。①ハイドン「弦楽四重奏曲”ひばり”」、②ベートーヴェン「同”ラズモフスキー第3番」、③ドヴォルザーク「同”アメリカ”」(Vn:徳永二男、Vn:漆原朝子、Va:川崎和憲、Vc:毛利伯郎)

③3月11日(火)19時。ヴァイオリン&ピアノの夕べ。①モーツアルト「ヴァイオリンソナタK.304」、②ベートーヴェン「同”春”」、③R.シュトラウス「ヴァイオリンソナタ」、④エルンスト「6つの多声的練習曲第6番”夏の名残のバラ”」(Vn:周防亮介、P:清水和音)

手帳で予定を確かめると、何とラッキーなことに3日間とも空いています。すべて買いました

入場料はオーケストラが1回A席=3,800円、B席=2,800円、C席=1,800円。A席のみ8公演セット券26,000円(300組限定)もあります。一方、室内楽は1回3,000円です

昨日から一般発売が開始されました。東京都の助成金が出ていることで、上記のように通常のコンサートの半額程度の料金設定になっています。プログラムも「名曲」ぞろいです。クラシック音楽に普段馴染みのない方には絶好のチャンスです 東京芸術劇場は約2000席、東京文化会館小ホールは約650席です。とくにオーケストラ・シリーズの1/30日本フィル、、2/21新日本フィル、3/13NHK交響楽団と室内楽シリーズ2/13「弦楽四重奏の夕べ」、1/28「ピアノ三重奏の夕べ」を聴きたい人は早めにチケットの手配をしましょう。低料金のためかすべての公演が毎年、満員御礼です

 

          

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

萩原麻未+成田達輝デュオ・リサイタルを聴く~最高の演奏!

2013年11月07日 07時01分11秒 | 日記

7日(木)。昨日の朝日朝刊にカジモトの「アンドレ・ワッツ来日中止のお知らせ」広告が載っていました 中止の理由は「本人の手首の負傷による」としています。11月19日、同21日、同23日のリサイタルはすべて中止で、払い戻しに応じるとのこと。私の関心は次の2行にあります

「なお東京交響楽団11/15(金)東京、11/17(日)新潟公演についてはソリストを変更して行う予定です」

ワッツは11月15日の東響オペラシティ・シリーズ定期公演でブラームスの「ピアノ協奏曲第2番」を弾くことになっていました 近々、東京交響楽団からワッツの代演者についてダイレクト・メールが届くと思いますが、11月か12月に他のオケでブラームスの「第2ピアノ協奏曲」を弾く予定のピアニストがいればその人が選ばれるような気がします。誰かいるか

 

  閑話休題  

 

昨夕、浜離宮朝日ホールで萩原麻未(ピアノ)と成田達輝(ヴァイオリン)のデュオ・リサイタルを聴きました プログラムは①ベートーヴェン「ヴァイオリン・ソナタ第5番ヘ長調”春”」、②ストラヴィンスキー「協奏的二重奏曲」、③酒井健治「カムス」、④グリーグ「ヴァイオリン・ソナタ第3番ハ短調」です

 

          

 

萩原麻未は2010年の第65回ジュネーヴ国際コンクール・ピアノ部門優勝者、成田達輝は2012年のエリザベート王妃国際コンクール第2位という実力者コンピです

会場は8割方埋まっている感じです。自席は1階13列14番、センターブロック右通路側席です。拍手に迎えられて萩原麻未が黒を基調にシルバーのベルトラインを配したオトナチックなドレスで登場します もちろん成田君も上下・黒です

1曲目のベートーヴェン「ヴァイオリン・ソナタ第5番ヘ長調”春”」(スプリング・ソナタ)は、1800年から翌年にかけて作曲された傑作です ベートーヴェンというと、小学校の音楽教室に飾られた肖像画のように、しかめ面した小難しい音楽を想像しがちですが、この曲は明るく、優しく、聴いていると幸せになる、そんな名曲です

伸び伸びとヴァイオリンを弾く成田に対し、ビロードの上を水玉が転がるような鮮やかなピアノを弾く萩原麻未が対等に対峙します モーツアルトの時代の「ヴァイオリン・ソナタ」は、あくまでも「ヴァイオリン伴奏を伴ったピアノ・ソナタ」という性格の曲でしたが、ベートーヴェンのそれは「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ」で、両方の楽器が対等に演奏されます この二人の演奏を聴いていると、そうしたことがよく分かります

私は萩原麻未ファンなので、どうしても集中的に彼女の演奏を聴いてしまいます 彼女の演奏をひと言で言えば「直感的に弾き切る躍動感」です。一つ一つのフレーズが生き生きとしています。いま生まれたばかりの音楽がそこにあります

2曲目のストラヴィンスキー「協奏的二重奏曲」は1931年から翌年にかけて作曲されました。1913年のバレエ音楽「春の祭典」の前衛的な音楽づくりから、新古典主義に転じた時代の所産と言われる5楽章構成の曲です

第1曲「カンティレーネ」はせわしない動きの曲で、「これが新古典主義?まるで古典音楽に殴り込みをかけるような曲じゃないか」と思うほど刺激的な音楽です。第5曲「ディティラム」は酒神バッカスへの賛歌ですが、題名と違って静かで清らかな曲で、さすがは皮肉屋のストラヴィンスキーだな、とほくそ笑んでしまいます 成田はベートーヴェンよりもストラヴィンスキーの方が個性を発揮しているような気がします

 

          

 

休憩後の1曲目は、成田達輝がオーロラを題材とした曲を若手作曲家・酒井健治に依頼して出来た「カスム」です。プログラムに書かれた作曲者自身の解説によると「カスムは古代ローマではオーロラを意味していたが、現在では亀裂を意味する。それに触発されて、美しいビロードのような音楽というよりも、静寂をつんざく短いパッセージをモチーフに書いた」としています。5分程度の短い曲です

それぞれ独奏によるカデンツァがありますが、成田のヴァイオリンは七色に輝き、萩原麻未のピアノは自由自在に躍動します 演奏後、二人が客席にいる作曲者に舞台に上がるよう促しますが、若き酒井氏は「いや、こんな格好だから」と普段着を指差して遠慮します。結局、成田に引き上げられ、一緒に拍手を受けていました

さて、最後のグリーグ「ヴァイオリン・ソナタ第3番ハ短調」は1886年から翌年にかけて作曲された3楽章から成る曲です 第1楽章は冒頭から情熱がほとばしる力演です。第2楽章はファンタジックなピアノ独奏で始まります。第3楽章は舞曲風の変化のある曲です

私がこの曲を聴くのは今回が初めてです。グリーグってこんな激しい情熱的な曲を書いたのか、とあらためて感心しました

鳴り止まない拍手 とブラボーに、アンコールを2曲演奏しました。1曲目はストラヴィンスキー「ペトルーシュカ」から「ロシアの踊り」を鮮やかに、2曲目はグリーグの「抒情小曲集」より1曲を静かな感動とともに演奏しました

終演後、ロビーでサイン会があったので列に並びました 「本日CDをお買い上げの方に限ってサイン会に参加できます」ということだったのですが、賢い私は10月11日に池袋の東京芸術劇場で開かれた「エル・システマ」のコンサートの際に買ったCD(萩原麻未の初CD)を持っていたので、それを持参してきたのです あの時、彼女はグリーグ「ピアノ協奏曲」を演奏しました(CD収録曲)。終演後、指揮者のパレデスと萩原麻未のサイン会があり、二人からサインをもらったのですが、最初にパレデスがど真ん中にデカデカとサインをしたので、萩原麻未のサインするスペースが狭くなってしまいパレデスを恨みました 下の写真がそのCDジャケットで、彼女のサインは左上の太字です

 

          

 

サインの順番は5番目くらいだったのですが、係りの人が「萩原麻未さんのサインの方はこちらにお並びください」と案内してくれたので、何と私がトップ・バッターになりました 2人のアーティストが所定の位置に座りいよいよサイン会が始まりました

前回、池袋でもらったサインが分かるようにCDジャケットを見開きにして、裏面にあたる写真にサインをしてもらうことにしました。

tora:(CDジャケットのサインを見せて)これは池袋でいただいたサインです。

麻未:(自分のサインを見て)あ~。ありがとうございます。

tora:(サインを)ありがとうございました。

彼女はニコッと笑ってくれました それにしても彼女のサイン、音符のマーク以外は1カ月前とほとんど違いますね 

長蛇の列を後に気分よく家路に着きました。素晴らしいコンサートでした

 

          

           

          

 

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

藤堂志津子著「隣室のモーツアルト」を読む~看板倒れの印象大

2013年11月06日 07時01分03秒 | 日記

7日(水)。昨夕、地下のRで3人で飲みました 以上。

藤堂志津子著「隣室のモーツアルト」(文春文庫)を読み終わりました タイトルに「モーツアルト」を掲げているので、かなりの部分をモーツアルト、あるいは彼の音楽について触れているのではないか、と期待して購入したものです

てっきり長編小説かと思って目次を見ると「おもかげ」「彼女の晩年」「好きよ。好きなの」「わたしの叔母さん」「隣室のモーツアルト」の5編から成る短編小説集でした。最初に結論を書きます。まったくの期待外れでした

著者の藤堂志津子は北海道生まれ。広告代理店勤務を経て作家に転身し、平成元年「熟れてゆく夏」で第100回直木賞を受賞しました。この本に集録されている5つの小説は2009年8月から2010年9月までの「オール読物」に書かれた作品です

 

          

 

 この作品に登場する主人公は現在60歳台半ばの著者の過去における”実話”か、実話に多少の脚色したものが中心だと思われますが、読んでいて、どこが面白いのか、さっぱり分かりません 単なる実話を書くだけでは面白みがないのは分かりきった話です。それを”人に読ませる”小説に仕立て上げるのがプロの小説家であるはず。しかし、残念ながら、この本に集録されたどの作品を読んでも「ひらめき」や「スパイス」といったものが感じられませんでした

例えば、期待して読んだ「隣室のモーツアルト」です。癌で入院中の主人公が、たまたま隣の部屋に”昔の男”が入院していることが分かり、見舞客との話を盗み聞きして、過去のことを思い出すという話です。

ある日”昔の男”が、朝9時にモーツアルトの交響曲第40番を大音響で鳴らした。「どう考えても非常識きわまりない行動だった。ここが入院病棟なのを頭から無視してかかっている」。看護婦から「いくら注意しても止めない。しばらく我慢してくれ」と言われた。しかし、第40番が終わると、すかさずピアノ協奏曲第20番に切り替わった。

モーツアルトが出てくるのはこのシーンだけです。なぜ他の作曲家でなくてモーツアルトなのか、さらに、なぜ他の曲ではなく交響曲第40番であり、ピアノ協奏曲第20番なのか クラシック音楽好きの小説家ならそこに”必然性”があるはず。しかし、この作者はそうではないらしく、入院病棟に大音響で鳴り渡る”非常識きわまりない”象徴としてモーツアルトを選んだのです

クラシック音楽愛好家ならモーツアルトの交響曲第40番が「ト短調」であり、ピアノ協奏曲第20番が「ニ短調」であることは調べるまでもありません。あえて”短調”を2曲も取り上げたこの小説は、あまりにも”単調”でした

全体を通して感じるのは、高齢の女性作家特有の”書き方”です。男性の作家には書けない文章です。同じ女性作家でも、向田邦子のような素晴らしい感性の持ち主で、見習いたくなるような素敵な文章を書く人もいます

残念なことですが、藤堂志津子という人の作品は二度と手に取ることはないでしょう

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

東響第615回定期演奏会でシベリウスとブルックナーを聴く~2日連続同じプログラム・同じ演奏家で

2013年11月05日 07時01分04秒 | 日記

5日(火)。昨日、サントリーホールで東京交響楽団の第615回定期演奏会を聴きました 昨日のブログにも書いたように、実はこの演奏会は3日にミューザ川崎で開かれた東響「名曲全集」とまったく同じプログラム・演奏者なのです。一昨日初めて気が付きました

プログラムは①シベリウス「ヴァイオリン協奏曲」、②ブルックナー「交響曲第4番」で、指揮は音楽監督のユベール・スダーン、①のヴァイオリン独奏はレイ・チェンです

 

          

 

一昨日と同様、譜面台の右脇には指揮者用の椅子(多分バス・イス=コントラバスの座る椅子)が置かれています スダーンに伴われてレイ・チェンが登場します。1曲目のシベリウス、ミューザの時と同様に、レイ・チェンは慎重に入っていきます 第1楽章の確かな実力に裏付けられたカデンツァは聴きごたえがありました

第2楽章は繊細な中に静かな情熱を湛えた演奏で、しみじみと聴かせてくれます そして、最終楽章の躍動感溢れるフィナーレは、彼の独壇場です うねるように変化する曲想を圧倒的な技術と感性で弾き切ります。額の汗が光ります

4度目のカーテンコールで、ミューザの時と同じように、日本語で明るく元気にあいさつしました

「ありがとうございました わたしの演奏は、わたしのオ・モ・テ・ナ・シです」(会場)。「パガニーニ、カプリース、ナンバー・トエンティワン」と言って、パガニーニの「24のカプリース」から第21番をいとも鮮やかに演奏して、拍手をかっさらっていました

サントリーホールでも、前を向いて一礼、後ろを向いて一礼、左を向いて、右を向いて一礼をして舞台袖に引き上げていきました ステージマナーが抜群です。彼は演奏が一流ならマナーも一流です。応援したくなる逸材です

休憩後はブルックナーの交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」です。他の交響曲と同様に、何度も改訂された経緯があるので複数のバージョンがあります いったいブルックナーは最終的にどうしたかったのでしょうか。また、「ロマンティック」という呼び名はブルックナー自身が付けたものですが、「絶対音楽」に対する「標題音楽」の意味ということだとは言え、むしろ「ロマンティック」の標題を消して絶対音楽として聴く方が自然のような気がします

それにしてもブルックナーの交響曲は繰り返しが多いし、それだけに長い 同じオーストリア人の先輩作曲家シューベルトに似てしまったようです あの「ザ・グレイト」の繰り返しと長さは、まさに「グレイト」です

第1楽章の途中、曲がフォルテになった時、隣席のオジサンが身体をピクンと震わせていました あなた、寝てましたね それが、第4楽章の途中でも、急にガクンと肘を椅子から外していました。あなた、また寝てましたね 普段から仕事に、子どもの保護者会に、趣味の盆栽に、新聞への投稿に、地元の消防団の活動に、大活躍でお疲れなのでしょう・・・・ということでよろしかったでしょうか

管楽器にとっても、弦楽器にとっても、打楽器にとっても、ブルックナーの交響曲は長く、同じことの繰り返しで、飽きが来るのではないかと思うのですが、演奏する側の皆さんはどうなんでしょうか? 終演後のブラボーと拍手は「こんなに長い曲を最後まで我慢して演奏してくれて、ありがとう。ご苦労様でした」という気持ちが多分に含まれていると思います。少なくともワタシ的には。とは言えブルックナーは決して嫌いではありません。ワタシ的には

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

東響交響楽団「名曲全集」第91回公演を聴く~レイ・チェンの弾くシベリウスのヴァイオリン協奏曲

2013年11月04日 09時00分03秒 | 日記

4日(月・休)。昨夕、NHKスペシャル「至高のヴァイオリン ストラディヴァリウスの謎」という番組をやっていました ちょうど息子が日本シリーズ第7戦「巨人対楽天」を見ていたので諦めていたのですが、そのうちパソコン・ゲームをやりだしたので、これ幸いにチャンネル権を奪いました 番組が始まってすでに20分が経過していました

ストラディヴァリはバロック時代の弦楽器職人ですが、300年前に作られたヴァイオリンが、なぜ今もなお人々を魅了して止まないのか、科学的なアプローチによってその魅力に迫ろうとする番組です

番組では、音楽関係者を集めてブラインド・テストが紹介されました。会場にいる音楽関係者は、スクリーンの向こう側で演奏されるストラドが本物か偽物か判らないようになっています つまり演奏者の影絵を見て音だけで判断するのです。解説によると、音楽を専門にする人たちでさえ、本物を聴き分けられるのは2割から5割しかいないとのことです それほど偽物が本物に近づいているということでしょう

興味深かったのは日本人の研究家による42チャンネル同時録音です。無音室の真ん中に設置した42本の集音マイクの前で、諏訪内晶子ら3人のヴァイオリニストが一人ずつストラドを演奏して、それを録音しコンピュータで音の志向を調べる実験です

実験の結果、他のヴァイオリンが均等に音が広がっていくのに対して、ストラドは特定の志向性をもっているということが解ったとのことです グラフで言えば、右の上の方に向かって音が広がっていくような図になっています。つまり、より遠くへ音が届くようになっているということです これを裏付けるように、ストラド「ドルフィン」を所有する諏訪内晶子は「ストラドは音が会場の奥まで飛んでいくような気がする」と語っています

また、アメリカの研究者は病院のCTスキャンでストラドを透視し、物理的に分析します。その結果、上板も底板も、箱の中の中央にある根柱(こんちゅう)でバランスが取れている、つまり重さが均一になっていること、同時に上半分と下半分で容積が同じになっていることを証明します

もう一つの謎、ニスについては「木の葉や鉱石が混じっているのではないか」「女性の血が混じっているのではないか」など過去からいろいろと言われてきましたが、分析の結果は、今とまったく変わらない成分であることが判明したということです

番組では、本物のストラドと、分析の結果を総合して作られたストラドの完全コピーを続けて演奏しましたが、まったく違いが分かりませんでした 科学的には相当本物に近づいていることが分かります

しかし、それはあくまでもコピーであって本物ではない。観ていてますます疑問が湧いてきました

 

  閑話休題  

 

昨日、ミューザ川崎で東京交響楽団の「名曲全集」第91回公演を聴きました プログラムは①シベリウス「ヴァイオリン協奏曲ニ短調」、ブルックナー「交響曲第4番変ホ長調”ロマンティック”」で、指揮は音楽監督ユベール・スダーン、①のヴァイオリン独奏は2009年エリザベート王妃国際コンクール優勝者レイ・チェンです

 

          

シベリウスのヴァイオリン協奏曲は、先日入手したばかりの「2012年エリザベート王妃国際音楽コンクール・ヴァイオリン部門セミ・ファイナル&ファイナル・ライブ」(CD4枚組)にシン・ヒョンスの演奏が収録されていたので、聴いたばかりです 図らずもこの日の予習になりました

このヴァイオリン協奏曲は、1902年に交響曲愛2番で成功を収めたシベリウスが、その翌年に書き始めて1904年に完成しました その後1905年に改訂し、その年の10月にリヒャルト・シュトラウス指揮ベルリン宮廷歌劇場管弦楽団、同楽団コンマス、カレル・ハリールのヴァイオリン独奏で改訂初演されました

ソリストのレイ・チェンが指揮者スダーンとともに登場します。1989年台湾生まれと言いますから、まだ24歳の若さです

第1楽章「アレグロ・モデラート」は、さざ波のような伴奏に続いてレイ・チェンの独奏ヴァイオリンが慎重に入ってきます 大袈裟な動作はいっさいなく、自然体で演奏します

第2楽章「アダージョ・ディ・モルト」は、木管楽器の長閑なメロディーに導かれて独奏ヴァイオリンが美しいメロディ―を奏でます 気持ちよく聴いていると、急に身体に揺れを感じました 明らかに地震です。すぐに時計を見ると14時25分でした。第2ヴァイオリン首席のHさんほか何人かの表情に動揺が見られます しかし、スダーンはじめオケのメンバーは、恐らく揺れに気づいていたと思われますが、あくまでもソリストの演奏をバックアップすることに専念するため、何事もなかったかのように演奏を続けます。これは立派でした これがプロというものでしょう

第3楽章「アレグロ・マ・ノン・タント」は、軽快なリズムで始まります。レイ・チェンは次々と曲想が変わる音楽を、躍動感溢れる演奏で見事に弾き切りました

前に一礼、後ろを向いて一礼、右を見て、そして左を見て一礼し、歓声に応えます。4回目に舞台の戻った時に元気な日本語で「ありがとうございました。カプリース、ナンバー、トエンティワン」と言って、パガニーニの「24のカプリース」から第21番を鮮やかに演奏しました 演奏も素晴らしかったですが、ステージ・マナーも素晴らしい将来有望な若きアーティストだと思います

休憩後は大曲、ブルックナー「交響曲第4番変ホ長調”ロマンティック”」です この曲は作曲者が53歳にして初めて交響曲作曲家として認められるきっかけとなった作品です。副題の「ロマンティック」はブルックナー自身が付けたものですが、これは「ロマンチックな夜」というあのロマンティックではありません。「古典的な」に対する「ロマン的な」というような意味で、絶対音楽ではなくむしろ標題音楽に近い意味合いで付けたものです ブルックナーはこの曲の内容について、第1楽章は1日の始まりを告げるホルンの音、シジュウカラの鳴き声、第2楽章は歌と祈りとセレナーデ、第3楽章は狩り、というように周りの人々に語っていたと言われています

譜面台の右側には背もたれのない椅子が置かれています。前回この会場でスダーンの指揮で聴いた時、足を引きづりながら歩いていたので、その後遺症があるのかも知れません。念のためにいつでも座って指揮ができるように準備されたものでしょう

第1楽章は森の中に立ちこめる霧のように弦楽器がトレモロを奏で、おもむろに独奏ホルンがメイン・テーマを奏でます ここで上間善之のホルンが裏返ったりしたら、この演奏は滅茶苦茶になりますが、さすがは首席です。完璧にクリアしオケ全体に安心感を与えます 第2楽章を経て、スケルツォの第3楽章に入ります。ホルンによる”狩り”のテーマが生き生きと奏でられます

そして、厳かに第4楽章が始まります。弦楽器のトレモロにのせて金管楽器の咆哮が展開され、最後は管楽器が”神に捧げる”かのようにコラールを演奏しクライマックスを築き上げます ホルンの6人は音が良く通るように楽器を持ち上げて演奏します。これはマーラーの第5交響曲等のフィナーレで見られる情景ですが、私はブルックナーでは初めて見ました

会場一杯の拍手にスダーンは、まずホルンの上間善之を立たせ、ホルン全体を立たせます 次に金管楽器をグループごとに立たせます。そして、以外にも弦楽器はヴィオラ・セクションのみを立たせました。個人的にはチェロが良かったと思いましたが、指揮者から見てヴィオラが健闘していたのでしょう

スダーンは、あらかじめ用意されていた予備の椅子に座ることなく、タクトなしで最後まで精力的に指揮を続けました 今年度限りでスダーンが契約満了となるのは非常に寂しい思いがします

 

          

 

実は、この日のプログラムと、今日サントリーホールで開かれる定期演奏会とまったく同じプログラム・演奏者なのです 昨日気が付きました。7月の時も「名曲全集」とサントリーシリーズがまったく同じプログラム・演奏家(ミシェル・プラッソン指揮によるフランス音楽)でした。あの時は両方とも聴きに行って、結果的には良かったのですが、さて今回はどうでしょうか

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

METライブビューイング、チャイコフスキー「エフゲニー・オネーギン」を観る

2013年11月03日 08時34分38秒 | 日記

3日(日)。昨日の日経朝刊「文化」欄に日経編集委員の小池潔さんが「吉田秀和 存在感なお~音楽評論の巨人 生誕100年」と題する記事を書いています その中に次のような一節があります

「音楽評論家、諸石幸生氏は『評論は本来、文学の域に達すべきものだが、聴き手は解説としての関心が高い。そうなった責任は評論家側にもある』と語る。」

先日もこのブログで「コンサートのプログラムにおける曲目解説に芸術はいらない」と書いたばかりです曲目解説は、あくまで「これからその曲を聴く人の手助けになる知識を与えるもの」でなければならないと思います したがって、曲の時代背景や性格などを分かり易く解説して欲しいと思います。事実関係を中心に書けばよいのですから、必ずしも音楽評論家が書く必要はないと思います

一方、コンサートにおける音楽評論は「そのコンサートが終わってから、自分がその演奏をどう聴いたかを主観を交えて披瀝するもの」でしょう ここが音楽評論家の出番です。しかし、ネットが発達した現代においては、コンサートに関する感想や批評が音楽評論家を抜きにして日常的に飛び交っています このブログもその一つです。個人的なことを言えば、音楽評論家の専門用語で固めた訳の判らないコンサート評を読むよりも、自分で観て聴いた演奏を自分の視点で書いている方がよほど楽しいのです したがって、私はプロの音楽評論家が書かれたものを含めて他人の書いたブログは見ません

 

  閑話休題  

 

いよいよMETライブビューイング2013-14シリーズが始まりました このシリーズは、今年10月からニューヨークのメトロポリタン歌劇場で上演されたオペラのうち主要な演目をライブ映像で世界に公開するもので、日本では11月2日から来年6月6日までの間に10作品が各1週間ずつ上映されます 今シーズンの幕開けはチャイコフスキーのオペラ「エフゲニー・オネーギン」です

昨日、上映開始時間ちょうどの朝10時に新宿ピカデリーの7階3番スクリーンに滑り込みました 自席は先日予約したJ列4番です。このライブビューイングも世間に知られてきたせいか、会場はシニア層を中心に結構お客さんが入っています

オペラ「エフゲニー・オネーギン」は、チャイコフスキーがプーシキンの原作を基に1877~78年にオペラ化したものです

 

          

 

キャストは、ヒロインのタチヤーナにMETの看板ソプラノ歌手アンナ・ネトレプコ、タイトル・ロールのオネーギンにバリトンのマリウシュ・クヴィエチェン、オネーギンの友人レンスキーにテノールのピョートル・ベチャワ、タチヤーナの妹オリガにメゾソプラノのオクサナ・ヴォルコヴァ他です 指揮はサンクトペテルブルクのマリインスキー劇場を世界的なレヴェルに引き上げたワレリー・ゲルギエフです

演出はイングランド生まれのデボラ・ワーナーですが、公式ガイドブックによると、演出の途中で健康を害し、フィオナ・ショウがワーナーの意向を受け継いで舞台づくりを行ったようです。オーソドックスな演出・舞台づくりで安心して観られます

物語は、社交的な生活に飽きた浮気な性格のオネーギンと、自然豊かな田舎育ちで夢見る文学少女のタチヤーナとの実らない恋を描いたものです この曲は観るのも聴くのも初めてです

このオペラはタイトルこそ「エフゲニー・オネーギン」ですが、本当の主役はタチヤーナであることは明らかです それを確信させるのがアンナ・ネトレプコの歌であり演技です 第1幕ではオネーギンに熱を上げて熱烈な手紙を書きながら歌う無垢な少女を、そして数年後に人妻となって社交界の淑女に変身した大人の女性を、見事に歌い演じ分けます 彼女の最大の特徴は役に成りきるということです

このライブビューイングは、休憩時間に指揮者や歌手にインタビューするのですが、ネトレプコを見出して世に送り出したワレリー・ゲルギエフは、歌手デボラ・ボイトの質問に答えて「彼女が20歳くらいの時に見出したが、その当時、彼女がほんの2~3週間で大きなオペラのヒロイン役をマスターした裏に、どれ程の努力があったかを知る者はいない」と語っています

そして、タイトルロールのオネーギンを歌ったクヴィエチェンの深みのあるバリトンと、見事な”女たらし”ぶりは適役です 彼はMETオペラでも日本の新国立オペラでもモーツアルトの「ドン・ジョバンニ」のタイトルロールを歌っていますが、役柄としては共通しています 要するにイケメンのプレイボーイですが、声にも演技にも魅力がなかったら務まりません。セクシーです

もう一人、レンスキーを歌ったベチャワのよく通るテノールと生真面目な演技 彼は何を歌わせても素晴らしい さきのライブビューイングではヴェルディの「リゴレット」で、女たらしのマントヴァ公爵を歌い演じていました

唯一、事前に聴いて知っていたのは第3幕冒頭の舞踏会シーンの「ポロネーズ」ですが、華やかな舞踏会に相応しい華麗な音楽です 今でもあのメロディーが頭の中をグルグル回っています

ところで、休憩中のインタビューの中に「いま上演中の『ノルマ』の公演~」という発言がありました。ベッリーニの「ノルマ」のことを言っているのですが、「ノルマ」が大好きな私としては滅多に上演されない作品だけに、是非ライブビューイングで取り上げて欲しい演目です 残念ながら今シーズンではパスされているようですが

10分休憩2回、インタビュー等を含めて3時間47分の長丁場、11月8日(金)まで上映中です これから今シーズンの全10作品を観るので、帰りがけに劇場のショップで日本語版の公式ガイドブックを購入しました。これで予習は完璧

 

          

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

シン・ヒョンス「ヴァイオリン・リサイタル」を聴く~ほとばしる情熱

2013年11月02日 07時01分03秒 | 日記

2日(土)。昨夕、紀尾井ホールで韓国のヴァイオリニスト、シン・ヒョンスのヴァイオリン・リサイタルを聴きました 1週間ほど前までこの日に彼女のリサイタルがあることを知りませんでした 朝日に小さな紹介記事が載り、それと前後してコンサート会場入り口で初めてチラシが配られたのです 主催者名を見ると「民音」とありました。つまり、最初は民音の会員向けに発売して、チケットがさばき切れなかったら一般に発売するという方法を採ったようです

幸い昨夕はコンサートの日程が入っていなかったので、もう良い席が残っていないだろうと思いながらも当日券を買うことにしました 開演35分前の6時25分に紀尾井ホール入口の当日券売り場に行くと、1階3列17番、センターブロック通路側という信じられないほど良い席が取れました 間際になってあせって前売り券を買うより、当日券の方が良い席が残っていることが少なくないのだと思います。いい経験になりました

 

          

 

プログラムは①ベートーヴェン「ロマンス第2番ヘ長調」、②ドビュッシー「ヴァイオリン・ソナタ ト短調」、③ラヴェル「ツィガーヌ」、④バルトーク「ルーマニア民族舞曲」、⑤プロコフィエフ「ヴァイオリン・ソナタ第2番ニ長調」。ピアノ伴奏は佐藤卓史です

シン・ヒョンスの演奏を初めて聴いたのは彼女がロン=ティボー国際音楽コンクールで優勝した次の年、2009年2月にサントリーホールで記念ガラ・コンサートが開かれ、プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第1番を演奏した時です その情熱的な演奏に衝撃を受け、それ以来すっかり彼女のファンになりました          

会場は残念ながら半分くらいしか埋まっていない状況です。素晴らしいアーティストの演奏なのに非常に残念です

ピアノ伴奏の佐藤卓史とともにシン・ヒョンスが金のラメ入り、パープルのドレスで颯爽と登場します 今年3月9日に新日本フィルとブラームスの「ヴァイオリン協奏曲」を演奏した際には金髪・パーマで登場して驚かされましたが、この日は黒髪を中央で分け、後ろで束ねており、シックで大人の印象です

 

          

 

1曲目のベートーヴェン「ロマンス第2番ヘ長調」はあいさつ代わりの演奏です。優しいメロディーが軽やかに演奏されます

2曲目のドビュッシー「ヴァイオリン・ソナタ ト短調」は最晩年の作品ですが、シン・ヒョンスは第1楽章「アレグロ・ヴィーヴォ」をうねる様な情念で弾き切ります 一転、第2楽章「間奏曲」は、ピアノとの軽妙なやり取りで和ませてくれます。そして第3楽章「フィナーレ」では再び、ほとばしる情熱で弾き切ります。韓国人特有の”激しさ”を感じさせます

さて「まだまだ本番はこれから」と思わせたのは、3曲目のラヴェル「ツィガーヌ」の演奏です 冒頭から、情感の込もった演奏に思わず引き込まれます 前半は無伴奏で奏でられますが、確かな実力に裏付けられた確固たる演奏が強く印象づけられます 背中から彼女の演奏を見る位置にいるピアノの佐藤が鋭い視線を向けています

途中から佐藤のピアノが入ってきて”対話”が展開しますが、音色の変化が素晴らしく、いろいろな表情を見せます

休憩時間にロビーで売られていたCDを買いました 江口玲をピアノに迎えたCD「PASSION」は、今年3月9日の新日本フィルとのコンサートの際に買ってサインをもらいました 

 

          

 

したがって、買ったのは2012年エリザベート王妃国際音楽コンクール・ヴァイオリン部門セミ・ファイナル&ファイナルのライブ録音盤(4枚組:3,150円)です

 

          

 

プログラム後半を迎えるに当たって、シン・ヒョンスはグリーンのドレスに”お色直し”をして登場です 1曲目のバルトーク「ルーマニア民族舞曲」は、ハンガリーの民族音楽に基づく楽しい曲です。相当技巧を要する曲で、途中でヴァイオリンの糸が切れていました

最後の曲はプロコフィエフ「ヴァイオリン・ソナタ第2番ニ長調」です。この曲は元来フルートとピアノのために作曲されたものです 第1楽章「モデラート」はお馴染みのメロディーがヴァイオリンで奏でられます。第2楽章「スケルツォ」は激しい情念が炸裂します 第3楽章「アンダンテ」は一転、穏やかな表情を見せます。そして第4楽章「アレグロ・コン・ブリオ」では歯切れの良いリズムでピアノとのコラボが展開します

会場一杯の拍手にシン・ヒョンスはアンコールに①フォーレ「夢のあとに」を情感豊かに、②ファリャ「スペイン舞曲」を踊るように、③ドビュッシー「美しい夕暮れ」を本当に美しく優しく演奏しました

終演後、サインの列に2番目に並び、彼女がエリザベート王妃コンクールで演奏したシベリウスの「ヴァイオリン協奏曲」がライブ収録されているNo.1のCDにサインをもらいました 前回の極太のサインと違ってスリムになりましたね

 

          

          

          

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

古典四重奏団、東京藝大チェンバー・オケ、音大フェスティバル・オケのチケットを買う

2013年11月01日 07時01分08秒 | 日記

11月1日(金)。今日から11月 昨夕、飯野ビル地下のベトナム料理YBで4人で飲んで、その後、先日傘を借りてきた新橋のカラオケ・スナックSに傘を返しに行きました。もちろんそれで済むはずもなく、飲んで歌いました

こういう風に書くと、toraとその一行はしょっちゅう近くのビルや新橋界隈で飲みかつ歌いまくっているのではないか、と勘違いする人がいるかも知れませんが、その通りです 皆さん、健康のため飲み過ぎに注意しましょう。健康のため適当に歌いましょう

 

  閑話休題  

 

昨日の朝日朝刊「教育」欄の「おやじのせなか」コーナーに女優・桃井かおりさんが登場していました お父さんは旧防衛庁に勤務し、米ハーバード大学も出た国際政治学者でした

目の前でタバコを吸っても何も言わない。振り向いてほしくて「どう思っているんですか」と抗議の手紙を書いたら「よく歯を磨くようになったので、別に悪いことじゃないと思う」という返事が返ってきたとか 赤い口紅をつけた時も知らんぷりしていて、「嫌じゃないの」と尋ねたら「別にあなたとキスするわけじゃないから」と答えたそうです 2004年に亡くなられたそうですが、ぶっとんだお父さんだったのですね 

桃井かおりと言えば、彼女の出演した「もう頬杖はつかない」という映画を思い出します 元の職場に就職して4~5年くらい経った頃だと思います。当時は隔週土曜日がフルタイム出勤で、記者だった彼女と約束して、上司に早退を申し出て映画を観に行ったのです。もちろん映画を観に行くなどとは言わず、北海道の友人が上京するので合いに行く、とか適当な理由をこじつけましたが

映画のあとで「一番印象に残ったのはどのシーンか」という話になって、主人公の桃井かおりがセロリをかじる場面と、相手の男性に「私の歯ブラシを勝手に使わないでよ」と文句を言うシーンだったことが共通していたことを懐かしく思い出します。あの頃ふたりは若かった

女性がカッコつけてタバコを吸っているのを見ると、「似合わないな」と思います。日本人でタバコの似合う女性はただ一人、桃井かおりしかいない、と今でも確信しています

 

  も一度、閑話休題  

 

チケットを3枚買いました。1枚は12月19日(木)午後6時45分から東京文化会館小ホールで開かれる日本モーツアルト協会の第554回演奏会です。先日、モーツアルトのレクチャー・コンサートを聴いたばかりの古典四重奏団が出演します プログラムはモーツアルトの①弦楽四重奏曲K.157「ミラノ四重奏曲第3番」、②同K.458「ハイドン四重奏曲第4番”狩”」、③同K.464「ハイドン四重奏曲第5番」です。全自由席で入場料は一般4,500円です

 

          

 

2枚目は来年2月11日(火・祝)午後3時から東京藝大奏楽堂で開かれる東京藝大チェンバーオーケストラ第22回定期演奏会です プログラムは①ハイドン「交響曲第94番”驚愕”」、②モーツアルト「ホルン協奏曲第1番K.412+514」、③同「ホルン協奏曲第4番K.495」、④プロコフィエフ「交響曲第1番”古典”」で、ホルン独奏は日高剛です 全自由席で入場料は1,500円です

 

          

 

3枚目は、来年3月28日(金)午後7時から池袋の東京芸術劇場で開かれる「第3回音楽大学フェスティバル・オーケストラ」演奏会です プログラムは①スメタナ「連作交響詩”わが祖国”~高い城、モルダウ、シャルカ」、②ドヴォルザーク「交響曲第9番”新世界より”」です 指揮はチェコ音楽の大家ラドミル・エリシュカ、オケは国立、昭和、洗足学園、東京、桐朋学園、東邦、武蔵野各音楽大学と東京藝大の混合です。全席指定で入場料はS席2,000円、A席1,500円です

学生だからとバカにしてはイケません。彼らはまっすぐです。情熱が伝わってきます

 

          

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする