人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

「サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン」のチケットを14枚取る / 女性指揮者・沖澤のどかさんのインタビュー記事 / ジェフリー・ディーヴァー「スキン・コレクター(下)」を読む

2019年02月10日 07時20分07秒 | 日記

10日(日)。昨日の朝日朝刊「ひと」欄に、昨年秋の「東京国際音楽コンクール〈指揮〉」で優勝した沖澤のどかさんのインタビュー記事が載っていました 超訳すると

「青森の警察官の家庭に育ち、子どもの頃は内気で人と話すのが苦手だった 音楽好きの伯父の影響でピアノ、チェロ、オーボエに夢中になった 姉がチェロで音大に進み、お金がかかると知っていたので楽器を買ってと言い出せず東京藝大の指揮科を受験し、1学年2人の狭き門を通った そこで壁にぶつかる。独りでは実践練習ができず、オーケストラを振るのは文化祭と試験の年2回ほど。手をどう動かせばどんな音が鳴るのかも分からなかった 転機は23歳の時に参加した指揮者向けの講習会で、音楽が体から自然に出ていくような感覚を味わった 講師の井上道義氏から『モーツアルトの音がした』との言葉をもらった 4年前にベルリンへ留学した。コンクールに挑みオケを振る機会を増やしたいが、皮肉を感じることもある 人と話さずにすむ音楽の道を選んだのに 指揮は奏者とのコミュニケーションがすべて。『いまでも時々つらくなって、こもりたくなる』」

たしかに、学生にとっては「文化祭と試験の年2回ほど」しか実践のチャンスはないのが実情でしょう それは国内にいても海外に留学しても同じことかも知れません。それでもベルリンに飛び立ったのは 彼女自身”閉塞感”を感じ 海外に希望を託したのかも知れません

日本人の女性指揮者は、私が知っている範囲では、古くは松尾葉子(ブザンソン国際指揮者コンクール優勝)から、宝塚歌劇団花組トップ並みの容姿でイルミナート・フィルを率いる西本智実(国際コンクール入賞歴なし)、新田ユリ(ブザンソン国際指揮者コンクール・ファイナリスト)、三橋敬子(トスカニーニ国際指揮者コンクール第2位)、田中祐子(ブザンソン国際指揮者コンクール・セミファイナリスト)、齊藤友香理(ブザンソン国際指揮者コンクール・最優秀)まで何人かが活躍しています 沖澤さんはどんなタイプの指揮者になるのでしょうか? 将来が楽しみです

ということで、わが家に来てから今日で1591日目を迎え、タイのワチラロンコン国王は8日夜、姉のウボンラット王女が総選挙でタクシン元首相派の政党の首相候補になったことについて、「王室の高位の者が政治の世界に入ることは、いかなる理由や方法であれ、非常に不適切だ」と批判した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      「なんで僕じゃなくてお姉ちゃんなの?」と ダダをこねないところはさすが国王!

 

         

 

いつもは、土・日に夕食作りはしないのですが、昨夜はあまりにも寒かったので豚肉と白菜を中心とした「鍋料理」にしました 初めて餃子を入れてみましたが、これが本当に美味しくて病みつきになりそうです 風邪を引いたら餃子を食べると良いと聞いたことがありますが、多分ニンニクが入っているからかも知れません

 

     

 

〆はラーメンです

 

     

     

         

 

昨日は6月1日から16日までサントリーホール「ブルーローズ」で開かれる「サントリーホール  チェンバーミュージック・ガーデン」のチケット会員先行発売日だったので、午前10時ジャストにWEBサイトにアクセスし14公演押さえました

 

     

 

確保した公演チケットは次の通りです。

①クス・クァルテット「ベートーヴェン・サイクルⅠ~Ⅴ」(6月2日、5日、8日、11日、13日)=5公演セット券

②ENJOY!室内楽アカデミー・フェロー演奏会(6月8日)出演=練木繁夫(P)、トリオ・デルアルテほか

③同(6月15日)出演=トリオ・ムジカほか

④エラールの午后(6月9日)出演=トマシュ・リッテル(P)、新倉瞳(Vc)ほか

⑤プレシャス1pm「クラリネット五重奏の深淵」(6月5日)出演=コハーン・イシュトヴァ―ン(Cl)、渡辺玲子(Vn)ほか

⑥同「服部百音の室内楽」(6月7日)出演=服部百音(Vn)、青柳晋(P)ほか

⑦同「親密な至極のデュオ」(6月12日)出演=小山実稚恵(P)、堤剛(Vc)

⑧同「第一人者の華麗な交歓」(6月14日)出演=吉野直子(Hp)、池松宏(Kb)

⑨アジアンサンブル@TOKYO(6月10日)出演=ハン・スジン(Vn)、宮田大(Vc)、パヴェル・コレス二コフ(P)

⑩フィナーレ2019(6月16日)出演=原田幸一郎(Vn)、毛利伯郎(Vc)、福川伸陽(Hr)、クス・クァルッテットほか

 

     

     

 

上記のうち①クス・クァルテット、④エラールの午后、⑨アジアンサンブル、⑩フィナーレ2019は「指定早割」対象公演になっており、①5000円⇒3500円(5公演セット17500円)、④4500円⇒4000円、⑨6000円⇒5000円、⑩7000円⇒6000円と格安の料金設定になっています

 

     

 

多くの公演が学生@1000円となっていますが、サントリーホール主催公演ならではの良心的な対応だと思います

 

     

 

「サントリーホール・メンバーズ・クラブ先行発売」は下のパンフレットの通り2月22日(金)まで、一般発売は3月2日(土)からとなっています 公演によっては先行発売で完売するケースが予想されます 是非聴きたい公演があれば、先行発売で確保することをお勧めします

 

     

 

         

 

ジェフリー・ディーヴァ―著「スキン・コレクター(下)」(文春文庫)を読み終わりました ジェフリー・ディーヴァーは1950年シカゴ生まれ。ミズーリ大学でジャーナリズムを専攻。雑誌記者、弁護士を経て40歳でフルタイムの小説家となる。本書「スキン・コレクター」をはじめとする科学捜査の天才リンカーン・ライムのシリーズなど、出す作品が全世界でベストセラーとなっている

 

     

 

ニューヨークの地下で女性が拉致され毒針で刺青を刻まれて死亡していた事件は、その後も繰り返される 過去の「ボーン・コレクター」事件の被害者で当時3歳だったパム・ウィロビーは現在19歳になっていたが、犯人は彼女に迫る ライムとサックスら捜査グループと犯人との智恵合戦が繰り広げられるが、犯人は事故で死亡したと思いきや、そう簡単には死なない 犯人の本当の目的は単なる毒針殺人ではなくアメリカ全土を揺るがすスケールの大きなものだった ライムたちは犯人を追い詰めることが出来るのか? アメリカを大混乱に陥らせる企みを阻止することが出来るのか

まさに「どんでん返しのデパート」ジェフリー・ディーヴァーの真骨頂の長編小説です 途中、犯人が地下の水道管の事故で死亡する場面では、「随分あっけなく死んでしまったなあ」と思っていたら、そこはディーヴァーです。犯人は先を読んで危険を回避します

ところで、物語の終盤で犯人が、サックスのバッグの中に入っている鎮痛剤のボトルを毒入りのものと素早く交換するシーンが出てきますが、そこには次のように書かれています

「どこにでもある用途の広い元素で、現在もさまざまな産業で活用されている しかし、アンチモン、元素記号Sb、原子番号51は、古くから人々に激しい苦しみを伴う死をもたらしてきた もっとも有名な犠牲者の一人はウォルフガング・アマデウス・モーツァルトだろう(彼の死は殺人だったのか否か。その最大の疑問はいまだに解決されていない。真実はアントニオ・サリエリに確認するしかないだろう)」

この記述は、知らない人が素直に読んだら本気にする恐れがあります 著者が言っているのはサリエリによる「モーツアルト毒殺説」です この説が広く知られるようになったのは、ピーター・シェーファー原作・脚本、ミロス・フォアマン監督による映画「アマデウス」(1984年)です。その概要は

「サリエリは音楽への愛と敬虔な信仰心に生き、作曲家として人々から尊敬されていた しかし、彼の前にモーツアルトが現われたことからサリエリの人生は大きく変わってしまう モーツアルトは類まれな音楽の才能を持っているが、天真爛漫かつ下品で礼儀知らずな人間性しか持ち合わせていない そんなモーツアルトを見たサリエリは『モーツアルトの才能こそが神の寵愛を受ける唯一最高のものだ それに比べ、自分はモーツアルトが天才であることが分かる才能しか持たない凡庸な人間に過ぎない』と思い知らされる。彼はモーツアルトへの激しい嫉妬心を抱き、精神を病んで病院に入院する。彼は病床で『許してくれ、モーツアルト、君を殺したのは私だ』と言い続けた」

モーツアルトの死因については諸説があります。Wikipediaによると「実際の死因は『リューマチ性炎症熱』だったと考えられている モーツアルトは自分自身がアクア・トファーナ(別名ナポリ水とも呼ばれた亜砒酸が主成分の水溶液)で毒殺されかけていると考え、それを妻コンスタンツェに伝えている」と書かれています。しかし、それを実行したのがサリエリだったかと言えば、そういう”噂”はあったものの、本当に彼が毒殺したという根拠はどこにもありません 毒を盛ったとしたら、もっと身近な人物でしょう したがって、ディーヴァーが「真実はアントニオ・サリエリに確認するしかないだろう」と書いたのは、必ずしも正しくありません ”真実”は誰にも分らないというのが本当のところでしょう

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ベルイマン監督「叫びとささやき」、アコルカール監督「リヴ&イングマール」を観る ~ ショパン「マズルカ・イ短調作品17-4」、J.S.バッハ「無伴奏チェロ組曲第5番」のサラバンドが流れる

2019年02月09日 07時22分58秒 | 日記

9日(土)。今朝窓の外を見たら、屋根が白くなっていました。夕べのうちに雪が降ったようです ただ道路には積もっていないので量的には少なかったようです。これくらいなら風情があって良いのですが、あまり多く降ると交通に影響が出たりしてユキ過ぎになるので困ります 今は止んでいるようですが、今日は油断できませんね

昨夕、西新橋のK亭で元の勤務先OBによる遅めの新年会を開きました 当初 1月25日に開く予定でしたが、不覚にも私が風邪を引いてしまったため昨夕に変更したのです  OBのS氏とE氏に加え現役のT君、K君も参加し、私を含め5人となりました    生ビールで乾杯した後は、主に 不動産管理業務を行っている元勤務先会社の現況を現役のT君、K君から聞き、相変わらず厳しい経営環境にある会社の現状に、OBとしては手出しが出来ないもどかしさを感じるとともに、とくに現役の若手社員は限られた人数の中で仕事をやりくりしなければならないにも関わらず基本給が思うように上がらない現状に同情を禁じ得ませんでした どんな職場でもそうですが、上に立つ人間は、日ごろから従業員とのコミュニケーションを密にし、下から改善提案があったら 前向きに取り入れるなど 広い度量を示してほしいと思います

ということで、わが家に来てから今日で1590日目を迎え、アパート建設大手「レオパレス21」が建てたアパートに建築基準法違反の疑いが出ている問題で同社は7日、法令違反の物件が新たにのべ1324棟あったとの調査結果を発表した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

       『レオパレス21』じゃなくて 『ゼロパレス21』じゃね? 信用ゼロだし

 

         

 

昨日、夕食に「鶏のトマト煮」と「野菜とハムのスープ」を作りました 昨夕は私が飲み会だったので、娘のために好物の料理を作りました

 

     

 

         

 

昨日、池袋の新文芸坐で「叫びとささやき」と「リヴ&イングマール」の2本立てを観ました

「叫びとささやき」はイングマール・ベルイマン監督・脚本による1973年スウェーデン映画(白黒・91分)です

舞台は19世紀末のスウェーデンのある地方。広々とした大邸宅で37歳の女性アグネス(ハリエット・アンデルソン)と30歳前後の召使いのアンナ(K.シルバン)がひっそりと暮らしていた アグネスの両親はすでに他界しており、姉カーリン(イングリット・チューリン)と妹マリア(リヴ・ウルマン)も結婚して家を出ていた。子宮がんで死の床にあるアグネスを見舞うため、カーリンとマリアが屋敷にやってくる ある日、アグネスの容態が急激に悪化しそのまま息を引き取った カーリンとマリアがアグネスの日記を読むと、友情や神の恵みについて書かれていた 二人には、アグネスがそれらを心から感じていたのか、それともそれらに飢えていたのか知る由もなかった アンナは子供のような泣き声を聞きつけるが、それは死の床にあるアグネスの泣き声だった 死んだはずのアグネスはカーリンに救いを求めるが 彼女は「あなたを愛していないから、あなたの死に関わりたくない」と言って冷たくあしらう。マリアは見捨てないと口では言うもののアグネスに顔を近づけられると怖くなって逃げだしてしまう アグネスは最後に アンナの膝に頭をもたれて永遠の安息の時を待つのだった。葬式が済むとカーリンとマリアはそれぞれの夫とともに別々の方向に去って行った 後に残されたアンナは形見にもらったアグネスの日記を読み返す   そこには「姉妹3人が昔のように集まったので、久しぶりに庭を散歩する。明るい日光、明るい笑い。世界中で一番近くにいてほしい人が、皆そばにいてくれる。わずかな数分間のたわむれだが、私にとっては楽しかった 人生に感謝しよう。人生は私に多くのものを与えてくれた」と書かれていた

 

     

 

「叫び」は病床につくアグネスの身体を蝕むガンの苦しみからくる絶叫であり、すべてがうわべだけの夫が信じられず 二人の妹にも心を開けない長姉カーリンの鬱積した孤独感から出る叫びでもあります そして、カーリン、マリア、アンナの顔がクローズアップされるたびに誰かのささやき声が聞こえ、画面が赤く反転しフェイドアウトします。何がささやかれているのかは分かりません アグネスは日記に「姉妹3人が揃って楽しかった。人生に感謝しよう」と書いていますが、本心はどうだったのでしょう? そこに書かれていたのはアグネスの希望であって、本当に心を開いたのは召使いのアンナだけだったのではないか、と思います

エンドロール直前に「かくして 叫びとささやきは 沈黙に帰した」というフレーズが映し出されます   ベルイマンは「沈黙」という言葉がお気に入りのようです

この映画では何カ所かで、フレデリック・ショパンの「マズルカ・イ短調作品17-4」とJ.S.バッハの「無伴奏チェロ組曲第5番ハ短調BWV.1011」の第4曲「サラバンド」が効果的に使われています また、序盤でオルゴールから流れてくるのはヨハン・シュトラウス2世のワルツ「皇帝円舞曲」です

 

     

 

         

 

「リヴ&イングマール」はディーラージ・アコルカール監督・脚本による2012年 ノルウェー・スウェーデン・イギリス・チェコ・インド合作映画(カラー・84分)です

この映画は、スウェーデンの巨匠イングマール・ベルイマンと、彼のミューズ的な存在となった女優リヴ・ウルマンの愛と友情を映し出したドキュメンタリーです 1964年の「仮面/ペルソナ」で出会って恋に落ちたベルイマンとウルマンは5年間ともに暮らし、娘をもうける その後、カップルとしては破局を迎えるが、40年にわたり友情を分かち合う関係を築き上げ、監督と女優として「叫びとささやき」「ある結婚の風景」「秋のソナタ」など傑作を送り出していく 2007年に89歳で他界したベルイマンへの思いを語るウルマンのインタビューや、映画のカットなどによって構成し、強い絆で結ばれた二人の姿を捉える

 

     

 

もう相当の年齢に達したリヴ・ウルマンが、生前のベルイマンが自分を褒めてくれた時のことを語るシーンは印象的です

「イングマールが、私のことを『君は僕のストラディヴァリウスなんだよ』と言ってくれたの。これほどの褒め言葉が他にある?」

5年間同棲生活を送って、子どもまで作って別れたのに、映画製作の上では40年もの間、監督と女優の立場で友情を育んだというのは信じ難いことですが、二人とも並みの人物ではないのでしょう

この映画でも、最後の場面でJ.S.バッハの「無伴奏チェロ組曲第5番ハ短調BWV.1011」の第4曲「サラバンド」が流れましたが、ベルイマン監督への敬愛の念を表したのでしょう

新文芸坐の「ベルイマン特集」も、あとは5時間11分の超大作「ファニーとアレクサンデル」を残すのみとなりました 私は明日午前10時からの部の前売り券(入場整理番号18番)を取ってあります 今から楽しみです

 

     

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ヒュー・ウルフ ✕ 重松希巳江 ✕ 新日本フィルでコープランド「クラリネット協奏曲」「市民のためのファンファーレ」「交響曲第3番」を聴く / METライブ、ヴェルディ「椿姫」の座席指定を取る

2019年02月08日 07時21分05秒 | 日記

8日(金)。わが家に来てから今日で1589日目を迎え、フランス紙フィガロ電子版は6日、日産自動車元会長カルロス・ゴーン被告が2016年に同国のベルサイユ宮殿で結婚披露宴を開いた際、会長兼最高経営責任者を務めていたフランス自動車大手ルノーの資金を不正に使った疑いがあるとして、ルノーが同国の検察当局への通報を検討していると報じた というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     ベルサイユのバラならぬ ベルサイユのハラで私腹を肥していルノーって驚きだ!

 

         

 

昨日、夕食に「塩だれ豚丼」を作りました COOKPADのレシピですが、作るのは簡単でとても美味しいです

 

     

 

         

 

METライブビューイング、ヴェルディ「椿姫」の座席指定を取りました 会場は新宿ピカデリーで、2月12日(火)午前10時開演の部です あらかじめ特別鑑賞ムビチケカード3枚セット(9300円)を買っておいたので、座席だけ指定しました 単券で買うと1枚3600円なので3枚セットだと1枚当たり500円の割引です

 

     

 

         

 

昨夕、サントリーホールで新日本フィルの第600回定期演奏会(ジェイド)を聴きました 新日本フィルは1月24日の定期演奏会を風邪のため聴けなかったので、私にとって昨日は今年初めての定期公演でした

オール・コープランド・プログラムで、①市民のためのファンファーレ、②クラリネット協奏曲、③交響曲第3番です ②のクラリネット独奏は首席の重松希巳江、指揮はヒュー・ウルフです

指揮者のヒュー・ウルフは1997年から2006年までフランクフルト交響楽団首席指揮者を務め、2017年9月からベルギー国立管弦楽団音楽監督を務めています

 

     

 

1曲目は「市民のためのファンファーレ」です この曲はアメリカの作曲家アーロン・コープランド(1900-1990)が1942年に作曲した金管楽器と打楽器による作品です 当時シンシナティ交響楽団の音楽監督を務めていたイギリスの指揮者サー・ユージン・グーセンスが、1942~43年のシーズンの各コンサートの開幕を飾る新作のファンファーレを、アメリカを中心とする18人の作曲家に委嘱したものの1曲として書かれました

ホルン、トランペット、トロンボーン、テューバ、ティンパニ、大太鼓、タムタム(ドラ)の各奏者が配置に着き、ヒュー・ウルフの指揮で、ティンパニと大太鼓の強打による迫力のある音楽が会場に鳴り響きます 続いてトランペットが 輝かしいアメリカの将来を象徴するかのように華やかな音楽を奏でます   いかにもアメリカらしい親しみやすく明るい音楽です。スカッとしました

2曲目は「クラリネット協奏曲」です この曲はスウィング・ジャズを代表するクラリネット奏者ベニー・グッドマン(1909-1986)の委嘱により1947~48年に作曲された作品です    緩・急の2楽章から成りますが、その間をクラリネットのカデンツァがつなぐ構成になっています

ハープ、ピアノと弦楽奏者が入場し配置に着きます。弦は左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、その後ろにコントラバスという、いつもの新日本フィルとは違う編成。コンマスは豊嶋泰嗣氏です   いつものように、第2ヴァイオリンに注目します。篠原英和氏を確認 しかし松崎千鶴さんの姿が見えません。どうやら降り番のようです。寂しいです

満場の拍手の中、マリン・ブルーのシックな衣装を身に着けた首席クラリネット・重松希巳江がヒュー・ウルフとともに登場し、さっそく演奏に入ります   重松さんは暗譜で演奏します   第1楽章はゆったりとした美しい音楽で、私はこの曲を聴いていてマーラーの「交響曲第4番」の緩徐楽章を思い浮かべました 本当に気持ちの良い音楽です。重松さんは音を慈しむように丁寧に音楽を紡いでいきます 高音から低音まで見事なカデンツァを経て軽快な第2楽章に入ります この楽章はジャズのイディオムが取り入れられているので、聴きながら足で拍子をとってしまうところもありました 重松さんの演奏は本当に素晴らしかったです 何度もカーテンコールが繰り返され、アンコールに、コントラバスの竹田氏とともにモートン・グールドの「ベニーズ・70th・バースディ」をスイングしながら演奏し、再度満場の拍手とブラボーを浴びました 聴衆のみならず、オケの楽員もみな、首席クラリネット奏者としての重松さんの実力をあらためて思い知った演奏だったのではないか、と思います


     

 

休憩後のプログラムは「交響曲第3番」です この曲は1944年にクーセヴィツキ-財団からの委嘱により1946年に完成し、同年クーセヴィツキ-指揮ボストン交響楽団によって初演されました 第1楽章「モルト・モデラート、ウイズ・シンプル・エクスプレッション」、第2楽章「アレグロ・モルト」、第3楽章「アンダンティーノ・クアジ・アレグレット」、第4楽章「モルト・デリベラ―ト」の4楽章から成ります

ここでオケはフル・オーケストラ態勢に拡大します ヒュー・ウルフの指揮で第1楽章が開始されます。この楽章を聴いていて、私は「アメリカ版ショスタコーヴィチ」みたいな音楽だな、と思いました 「社会主義リアリズム」に即した大衆に理解し易い音楽と言われた作品みたいだな、と 第2楽章はトランペットとトロンボーンの咆哮が半端なく、耳にビリビリと響いてきました 第3楽章は冒頭、ヴァイオリンの最弱音が美しく響きました 第4楽章は、1曲目に演奏された「市民のためのファンファーレ」のメロディーによって開始されます その後は、アメリカの明るい未来を予言するかのようなエネルギッシュな音楽が展開します この楽章を聴きながら、この精神がバーンスタインに受け継がれていったんだな、と思いました

終始テンションが高かった金管楽器は言うまでもなく、木管楽器、弦楽器、打楽器、ハープ、ピアノなど、それぞれが持てる力を出し切った”総力戦”で、20世紀を代表するアメリカ音楽を輝かしく演奏しました 今回の熱演を聴いて、コープランドという作曲家の音楽が好きになりました 今度CDショップに行った時は、「クラリネット協奏曲」と「交響曲第3番」を買おうと思います

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イングマール・ベルイマン監督「野いちご」「冬の光」を観る ~ 難解なベルイマン作品の中では分かり易い映画 / ワイシャツ6枚のアイロンかけ14分32秒は 速いか 遅いか 標準的か?

2019年02月07日 07時21分37秒 | 日記

7日(木)。昨日、ウィーン室内合奏団によるベートーヴェンの「七重奏曲」のCDを聴きながらワイシャツのアイロンがけをしました いつもの通りのやり方・速度で6枚のシャツにアイロンをかけたのですが、終わったのは第2楽章の5分10秒でした 第1楽章が9分22秒なので、合計で14分32秒、1枚当たり2分25秒強かかったことになります これは速いのか 遅いのか 標準的なのか 比較するデータがないので何とも言えません お手元のリモコンで 「速い」と思う方は赤の、「遅い」と思う方は青の、「標準的」と思う方は緑のボタンを押してください

 

     

 

ということで、わが家に来てから今日で1588日目を迎え、トランプ米大統領は5日、北朝鮮の金正恩委員長との2回目の首脳会談を2月27,28日にベトナムで開くと表明した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     下院の「ねじれ議会」のもと 功績を求めて安易な妥協をしなければいいけどなぁ

 

         

 

昨日、夕食に「厚揚げとシイタケの煮物」と「野菜とワンタンのスープ」を作りました 「厚揚げ~」は新聞の「料理メモ」に載っていたレシピです 

 

     

 

         

 

昨日、池袋の新文芸坐で「野いちご」と「冬の光」の2本立てを観ました

「野いちご」はイングマール・ベルイマン監督・脚本による1957年スウェーデン映画(白黒・91分)です

医学の老教授イサク(ヴィクトル・シェストレム)は50年に及ぶ業績を認められ、名誉博士号授与式に赴く前夜、自分が死ぬ夢を見る 彼は義理の娘マリアンヌ(イングリット・チューリン)とともにストックホルムから授賞式場のあるルンドまで車で向かう。途中、青年時代を過ごした旧宅に立ち寄り、野原の野いちごを見て、若いころ婚約者サラ(ビビ・アンデショーン)を弟に奪われたこと、妻がイサクの無関心に耐えられず不貞を働いたことなどを思い出す そして、マリアンヌから、イサクの息子エヴァルドと彼女の間に子どもが出来ないのは、イサクを見て育ったエヴァルドが家庭というものに絶望しているからだと告げられる 研究者としての名声とは裏腹にイサクの人生は空虚だということを自覚する イサクは途中でヒッチハイクの3人組を拾うが、女学生のサラ(ビビの二役)は昔の婚約者にソックリで、イサクは思い通りに行動しなかった自らの青春を悔やむ 次に、運転を誤って彼らの車と事故を起こしかけた夫婦を乗せるが、夫婦喧嘩があまりにも煩いので車から降ろす 授与式を終えたイサクはその夜、エヴァルドと家族のことについて話し合う。そこで初めて親子の心が通じ合う 昼間に出会ったヒッチハイカーたちは歌でイサクの栄誉を祝福してくれた 満ち足りた気持ちで眠りにつくイサクが見る夢は、青春の頃に戻りサラに再会する幸福なものだった

 

     

 

この映画は「青春と老い」「親と子=家族」について考えさせられる作品です。この2つのテーマは人間だれもが直面する問題です これまでの人生を振り返ってみて、「あの時 ああしておけば良かった」「ああしなければ良かった」と後悔することは2つや3つでは収まりません しかし、「あったかも知れない別の人生」を想像しても何も生まれません。だからこそ、数年後に現在を振り返った時、「あの時 ああしておけば良かった」とか「ああしなければ良かった」と言わないで済むように、後悔しない人生を生きよう この映画はそんな風に思わせてくれる作品です

 

     

 

         

 

「冬の光」はイングマール・ベルイマン監督・脚本による1963年スウェーデン映画(白黒・82分)です

スウェーデンの漁村で牧師をしているトマス(G.ビョルンストランド)は、最愛の妻に先立たれてから失意の底にいた 新しい恋人の教師マルタ(I.チューリン)との関係もギクシャクして疲れ果て、牧師としての自信も失っている そんなある日、深い悩みを抱えた夫を助けてほしいという信者のカリン(G.リンドブロム)の相談を受ける。トマスはその夫ヨナス(マックス・フォン・シドー)と話をするが「神を信じなさい」というありきたりの言葉しかかけてやれない やがてヨナスは拳銃で自殺してしまう。マルタ以外の信者が誰も来ない教会の聖堂で、トマスは型どおりの礼拝の儀式を進めるのだった

 

     

 

この作品は「鏡の中にあるが如く」(61年)、「沈黙」(62年)とともに「神の不在」を描いた三部作の一つですが、難解と言われるベルイマンの作品の中では比較的分かりやすい映画だと思います 主人公のトマスは「親から牧師になれと言われたから」という理由で牧師の道を選んだに過ぎない したがって、妻が死んでも「なぜ神は沈黙するのか」と落胆するしかないし、一人になった彼を何とか助けようとするマルタの気持ちを理解することもできないし、助けてほしいと信者から頼まれても結果的に自殺に追いやることしかできないのです その根本は、神父でありながら神の存在を信じていないからです 信者でなければ「神は存在しない」と公言しても誰からも非難されることもないでしょう。しかし、神父であるトマスは立場上それが言えない トマスの不幸は神父として生きなければならないことです

「冬の光」は海外用の題名で、原題は「聖体拝受者」だそうです。ベルイマン特有のアイロニーでしょう ベルイマンは神の存在を信じていません

 

     

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読響アンサンブル・シリーズでモーツアルト「オーボエ四重奏曲ヘ長調」、シューベルト「八重奏曲ヘ長調」を聴く ~ 小森谷巧リーダーによる極上のアンサンブル

2019年02月06日 07時21分04秒 | 日記

6日(水)。わが家に来てから1587日目を迎え、米ニュースサイト「アクシオス」は、トランプ大統領が執務時間のうち約60%を何の予定もなく自由に使える通称「エグゼクティブ・タイム」として過ごしていると報じた というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      そんなに時間があるから言いたい放題ツイートきるんだ! 制限した方が良くね?

 

         

 

昨日、夕食に「筑前煮」を作りました フライパンで作りましたが、鶏と野菜の料理は健康的ですね

 

     

 

         

 

昨夕、よみうり大手町ホールで読響アンサンブル・シリーズ「小森谷巧リーダーによる室内楽」を聴きました プログラムは①モーツアルト「オーボエ四重奏曲ヘ長調K.370」、②シューベルト「八重奏曲ヘ長調D803 」です

出演は、ヴァイオリン=小森谷巧(コンマス)、太田博子、ヴィオラ=柳瀬省太(ソロ・ヴィオラ)、チェロ=遠藤真理(ソロ・チェロ)、コントラバス=大槻健(首席)、オーボエ=辻功(首席)、クラリネット=金子平(首席)、ファゴット=岩佐雅美、ホルン=日橋辰朗(首席)です

 

     

 

プログラム前半はモーツアルト「オーボエ四重奏曲ヘ長調K.370」です この曲はウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)が25歳の時、1781年にミュンヘンに滞在した頃に作曲されたと言われています 第1楽章「アレグロ」、第2楽章「アダージョ」、第3楽章「ロンド:アレグロ」の3楽章から成りますが、第2楽章は37小節しかありません

左からオーボエの辻、ヴァイオリンの小森谷、チェロの遠藤、ヴィオラの柳瀬の並びでスタンバイします 辻氏の合図で第1楽章が明朗快活な主題で始まります 弦はオーボエの引き立て役に徹します。第2楽章はモーツアルト特有の哀しみの旋律が支配します。メロディーこそ異なるものの、10年後に作曲する歌劇「魔笛」のパミーナのアリアを思い浮かべます 第3楽章は一転、何事もなかったかのように明るく楽し気な旋律が続きます 4人の首席による極上のアンサンブルでした


     


休憩後のプログラム後半はシューベルト「八重奏曲ヘ長調D803 」です この曲はフランツ・シューベルト(1797‐1828)が27歳の時、1824年に作曲しました 良く知られているように、シューベルトは心の底からベートーヴェン(1770-1827)を尊敬していましたが、この曲はベートーヴェンの「七重奏曲 変ホ長調」(1800年完成・30歳)の編成に第2ヴァイオリンを追加し、ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、クラリネット、ファゴット、ホルンという弦+管の混成アンサンブルとして作曲した作品です

第1楽章「アダージョ~アレグロ」、第2楽章「アダージョ」、第3楽章「アレグロ・ヴィヴァーチェ~トリオ」、第4楽章「アンダンテ」、第5楽章「メヌエット:アレグレット」、第6楽章「アンダンテ・モルト~アレグロ」の6楽章から成ります

因みにベートーヴェンの「七重奏曲」は、第1楽章「アダージョ~アレグロ・コン・ブリオ」、第2楽章「アダージョ・カンタービレ」、第3楽章「テンポ・ディ・メヌエット」、第4楽章「主題と変奏:アンダンテ」、第5楽章「スケルツォ:アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ」、第6楽章「アンダンテ・コン・モート・アラ・マルチャ~プレスト」となっています    全体的な構成がよく似ていますね

8人の奏者が登場し配置に着きます。左から小森谷、太田、柳瀬、遠藤、大槻、日橋、岩佐、金子という並びで、弦楽器が左、管楽器が右です   女性陣は大田さんがブルー、遠藤さんが淡い緑青と白に花模様、岩佐さんがグリーン系の衣装での登場です

コンマス小森谷氏の合図で第1楽章に入りますが、上の比較でも分かるように、アダージョから入ってアレグロに移るスタイルはベートーヴェンを意識したものです    これはスタイルだけでなく、楽章によっては何となくメロディーが似ているところもあります   「八重奏曲」で最もシューベルトらしいと思うのは第3楽章「アレグロ・ヴィバーチェ~トリオ」のスケルツォです   また、今回この曲を聴いて初めて感じたのは、最終楽章の冒頭、チェロとコントラバスによって激しく弾かれるトレモロは、まるでベートーヴェンの交響曲第6番”田園”の第4楽章「雷雨・嵐」と同じ音楽ではないか、ということです ベートーヴェンの第6番はそのあと、嵐の後の喜びと感謝の気持ちが奏でられますが、シューベルトの「八重奏曲」でも、そのあとは不穏な雰囲気は消えて明るく快活な音楽が展開します

満場の拍手に8人は今演奏したばかりの「八重奏曲」の第3楽章のスケルツォをアンコールに演奏し、再び大きな拍手を浴びました

この日の演奏は、誰が良かったかと言うよりも、全員のアンサンブルが素晴らしかったと言うべきでしょう 一つだけ付言すれば、プレトークで小森谷氏が語ったところによると、コントラバスの大槻健氏は東京藝大在学中に読響首席コントラバス奏者の試験に合格し、卒業と同時に2018年から首席コントラバス奏者として活躍を始めたとのことです この日のコンサートでは、8人のど真ん中に堂々と構え、まるで10年選手のような面構えで演奏していました 楽しみな逸材です。応援したいと思います

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瀬々敬久監督「友罪」~連続児童殺傷事件の犯人の再犯か?、「菊とギロチン」~女相撲とアナーキストの交流 ー の2本立てを観る~早稲田松竹 / 朝日の社説「中国の人口」を読んで思うこと

2019年02月05日 07時21分50秒 | 日記

5日(火)。昨日の朝日新聞の社説は「中国の人口 人権に配慮した政策を」というタイトルでした 「中国は人口が多いから色々な面で大変だろうな、現在中国の人口はどれくらいいるんだろう」と思って最後まで読んでみたのですが、どこにもその数値が見当たりません   社説の中で人口に関して出てくる数値は「昨年の出生数は前年比200万人減の1523万人」と「昨年末での65歳以上の人口は全体の11.9%にのぼる1億6658万人」の2つだけです つまり、中国全体の人口を知るには1億6658万人÷0.119の計算によって約13億9983万人を算出しなければならないのです   「中国の人口は驚異的なスピードで増減し続けているので明確な数値は出したくない」という意識が働いているのかもしれませんが、タイトルに「中国の人口~」と謳っているからには最新データによる総人口を表記すべきではないかと思います 「習近平政権はすぐにでも産児制限の制度を撤廃すべきである。そのうえで、人口問題にどのように取り組んでいくのか。人権問題に十分配慮したうえで、持続可能で透明性をそなえた政策を示さなければならない」という朝日の主張は立派ですが、その前に読者が知りたい基礎データを示すべきではないか タイトルに託せば「朝日の社説 読者に配慮したデータを」と言いたい

ということで、わが家に来てから今日で1586日目を迎え、麻生太郎副総理兼財務相は3日、支持者らを集めて開いた地元・福岡での国政報告会で「子どもを産まない方が問題だ」と発言した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      麻生氏の辞書には「反省」と「人権意識」という言葉は載っていないようですよ

 

         

 

昨日、夕食に「野菜と挽肉のドライカレー」を作りました 娘も私も大好きなので時々作りますが、すごく美味しいです

 

     

 

         

 

昨日、早稲田松竹で瀬々敬久監督「友罪」と「菊とギロチン」の2本立てを観ました

「友罪」は薬丸缶原作、瀬々敬久監督・脚本による2018年製作映画(129分)です

ジャーナリストの夢を諦めて町工場で働き始めた益田純一(生田斗真)は、同じ時期に入社した鈴木秀人(瑛太)と出会う 無口で影のある鈴木は周囲との交流を避けている様子だったが、同じ年齢の益田とは少しずつ打ち解けていく そんな中、児童殺害事件が起こり、17年前に日本中を震撼させた凶悪事件との類似性が囁かれる 当時14歳だった犯人の少年Aはすでに出所していて、今度も彼の犯行ではないかという。ある出来事をきっかけに、益田は鈴木が17年前の連続児童殺傷事件の犯人・少年Aなのではないかと疑いを抱くようになり、調査を始める しかし、それは17年前に自分が犯した罪に向き合うことにも繋がることだった

益田と鈴木の物語と並行して、交通事故で3人の子供の命を奪った息子と、彼の罪を背負う父でタクシードライバーの山内修司(佐藤浩市)の物語が描かれる 結婚して子供が生まれそうだという息子に対し、山内はそれが許せず、他人を不幸にした者は幸せになってはいけない、と言うのだった

 

     

 

映画を観終わって分かるのは、再犯ではないかと疑われていた鈴木は しっかりと更生して生きており、まっとうだと思われていた益田こそ17年前、いじめに苦しんでいた親友の自殺を食い止めることが出来なかったことで罪の意識に苛まれていた、ということです

この映画を観て一番感じたのは、交通事故で子ども3人の命を奪った人間は刑務を務め上げた後においても、人並みの人間らしい生活=結婚も子供を持つことも許されないのか、という重いテーマです

益田がカラオケで歌う鈴木の動画をスマホで録った映像を、益田の週刊誌記者時代の同僚の女性記者に見せたのが、結果的に週刊誌に写真が載せられてしまったことに対し、益田は出版社に抗議に行きますが、その時の編集長のセリフは「我々は読者が求めているものを報道するんだ」というものでした。これに対し益田は怒りをぶつけるわけですが、週刊Bや週刊Sなどの週刊誌はそのような”編集方針”で報道しているんだろうな、と想像します 報道される側のプライバシーがどんな風に暴かれようが、その家族が不幸になろうが、要は”雑誌が売れれば良い”という方針です 雑誌記者も生活がかかっているので、大変なのでしょうが、”こんなくだらない記事を載せて恥も外聞もないのか”と思う時が少なからずあります

 

         

 

「菊とギロチン」は瀬々敬久監督・脚本による2018年製作映画(189分)です

時は大正末期。人々が閉塞感にあえぐ関東大震災直後の日本。ある日東京近郊に、女力士たちに交じって元遊女などワケあり娘が集う女相撲の一座「玉岩興行」がやってくる 新人力士の花菊ともよ(木竜麻生)は、夫の暴力に耐えかねて家出して女相撲に加わり、「強くなって自分の力で生きていきたい」という一心で厳しい練習を重ねていた 興行当日、会場には師と仰ぐ思想家の大杉栄が殺害され、その復讐を画策するためにこの地に流れ着いた中濱鐵(東出昌大)と古田大次郎(寛一郎)らアナーキスト・グループ「ギロチン社」の若者たちの姿があった 「格差のない平等な社会」を標榜する彼らは、女力士たちの戦いぶりに魅了され、彼女たちと行動を共にするようになる

 

     

 

タイトルの「菊」は言うまでもなく、主人公の新人力士・花菊の「菊」ですが、ギロチン社=無政府主義者集団との対比で考えると、「菊」=「天皇家の紋章」を象徴しているように思えます それを裏付けるように映画の中で、「天皇陛下万歳」を何度も叫ぶシーンが出てきます。それにしてもギロチン社の構成メンバーは、中濱にしても古田にしても何と格好悪い奴らだろうと思います 頭の中で革命とか無政府主義を唱えていても、すぐに殴られて倒れてしまう その点、女相撲の力士たちは頼もしい

「女相撲」は山形で発祥し、かつて実際に日本全国で興行されていたそうです それを考えると、つい最近まで「土俵に女を上げてはならない。神聖な場所が汚れる」とか言っていたのは時代に逆行しているのではないか、と思います 日本人横綱が一人もいないのも情けないけど、「女を土俵に上げるな」というのも情けないと思います

新人力士・花菊を演じた木竜麻生は本作が映画初主演とのことですが、全体の雰囲気が広瀬すずに似ています これからの活躍を期待したいと思います

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チャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番、第2番、第3番」を聴く ~ 秋山和慶 ✕ ミロスラフ・クルティシェフ、福原彰美、奥井紫麻 ✕ 東京交響楽団:名曲全集

2019年02月04日 07時24分59秒 | 日記

4日(月)。昨日、コンサート帰りに最寄駅のアトレに寄って夕食の食材を買ったのですが、普段は寿司を扱っていない焼き鳥屋や総菜屋までが「恵方巻」を売っていたので閉口しました 「儲かれば良い」という資本主義の論理でしょうか 新聞・テレビでは売れ残った「恵方巻」が毎年廃棄処分されていて「食品ロス」が問題になっていると報道しているのに、懲りないようです 私は焼き鳥屋で焼き鳥を買って帰りました

ということで、わが家に来てから今日で1585日目を迎え、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業は、米中西部ウィスコンシン州で進める液晶パネル工場の建設を 市況の悪化などで凍結していたが、トランプ米大統領からの直接の要請を受けて継続すると発表した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      世界平和のためには トランプは大統領よりビジネスマンに戻った方がよくね?

 

         

 

昨日、カルッツかわさき(川崎市スポーツ・文化総合センター)で、ミューザ川崎&東京交響楽団主催による「名曲全集」第145回公演を聴きました 会場はいつもはミューザ川崎シンフォニーホールなのですが、ホール改修工事(1月15日~6月30日)に伴ってカルッツかわさきに変更になりました この会場は初めてです。JR川崎駅から徒歩で約15分でした

プログラムはチャイコフスキーの三大ピアノ協奏曲(第1番~第3番)です ピアノ協奏曲第3番のソリストは福原彰美、第2番はミロスラフ・クルティシェフ、第1番は奥井紫麻です。バックを務めるのは秋山和慶指揮東京交響楽団です

 

     

 

自席は2階5列35番、センターブロック右通路側です。ホール内は何となく東京国際フォーラムのホールBを思い浮かべます。コンサートホールというより多目的ホールと言った方が適切でしょう

オケは左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという、いつもの東響の並び。コンマスはグレヴ・二キティンです

1曲目は「ピアノ協奏曲第3番変ホ長調作品75」です この曲はピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840‐1893)が死の約2週間前に完成した作品です 元々この曲は交響曲として作曲が始められたのですが、途中で中断し、交響曲第6番”悲愴”の作曲に取りかかり、1893年に第6番を完成させた後、作曲を再開しましたが、この時、ピアノ協奏曲として完成させようと方針転換したようです さらに当初 3楽章の作品として構想していたようですが、第2、第3楽章が気に入らず第1楽章だけの単一楽章の作品として完成させたのでした

ソリストの福原彰美は15歳で単身渡米し、サンフランシスコ音楽院とジュリアード音楽院で学びました 深紅の衣装を身に着けた福原さんがピアノに向かい、秋山和慶氏の指揮で演奏に入ります 曲を聴くと、チャイコフスキーらしさとラフマニノフのような濃厚なロマンティシズムを感じさせる部分が入り混じったような曲想でした 福原さんの熱演を聴いていて、3楽章として完成してほしかったと思いました


     


15分の休憩後は「ピアノ協奏曲第2番ト長調作品44」(原典版)です この曲は1879年10月から翌1880年4月にかけて作曲されました チャイコフスキーはこの曲をモスクワ音楽院の初代校長ニコライ・ルビンシテインに献呈するつもりでしたが、彼が1881年に急死したため、1882年3月18日に彼の兄アントン・ルビンシテイン指揮セルゲイ・タニェーエフのピアノ独奏により初演されました

第1楽章「アレグロ・ブリランテ・エ・モルト・ヴィヴァーチェ」、第2楽章「アンダンテ・ノン・トロッポ」、第3楽章「アレグロ・コン・フォーコ」の3楽章から成ります

ソリストを務めるミロスラフ・クルティシェフはサンクトペテルブルク音楽院で学び、2007年の第13回チャイコフスキー国際コンクールで最高位(第1位なしの第2位)入賞を果たしています

オケでは 首席チェロの西谷牧人氏が第2ヴァイオリンの前に移動し、コンマスとピアニストとの「ピアノ・トリオ」のような配置でスタンバイします

意表を突かれたのは、クルティシェフは白のジャケットで登場したのです 通常、男性ピアニストは上下黒の衣装が”定番”です。夏でもないのに白とは驚きました 驚きはそれだけではありませんでした

秋山氏のタクトで第1楽章が華やかに開始されます クルティシェフのピアノは力強くダイナミックです 2度目の驚きは超高速カデンツァです。目にも止まらぬ速さで弾きまくります

第2楽章は冒頭、二キティン氏のヴァイオリンが美しいメロディーを奏で、次いで西谷氏のチェロがそれを引き継ぎ、二つの楽器が対話し、そこにオケがからんで、さながらチャイコフスキー作曲「ヴァイオリンとチェロとオーケストラのためのダブル・コンチェルト」と呼びたくなるような曲想でした

第3楽章は一転、急速なテンポで演奏が展開します クルティシェフはアグレッシブにピアノを弾き進めます。秋山氏のしなやかな指揮が彼に対応します。ピアノとオケとが渾然一体となって熱いフィナーレを迎えます

すごい演奏でした 会場割れんばかりの拍手とブラボーが飛び交います クルティシェフは秋山氏と、二キティン氏と、西谷氏と握手し お互いを讃え合います   このピアニスト侮れません

15分休憩後は最後の「ピアノ協奏曲第1番変ロ長調作品23」です この曲は1874年11月から翌1875年2月にかけて作曲されました 献呈を予定していたモスクワ音楽院の校長ニコライ・ルビンシテインから酷評され、書き直しを言い渡されたチャイコフスキーでしたが、断固これを拒否しました その後、ドイツの指揮者・ピアニストのハンス・フォン・ビューローが絶賛し、各地で演奏されるようになり、ルビンシテインも認めざるを得なくなりました

第1楽章「アレグロ・ノン・トロッポ・エ・モルト・マエストーソ~アレグロ・コン・スピーリト」、第2楽章「アンダンティーノ・センプリーチェ」、第3楽章「アレグロ・コン・フォーコ」の3楽章から成ります

ソリストを務める奥井紫麻(しお)は2004年5月生まれということで、今年15歳という若さです 2016年モスクワ国際グランドピアノコンクール最年少受賞など入賞歴多数で、2018年からグネーシン特別音楽学校で学んでいます

淡いパープル系の衣装の奥井さんが登場、ピアノに向かいます 若い割に非常に落ち着いた様子で、丁寧に音を紡いでいきます 一番良いと思ったのは、非常に素直な演奏で、どれほど強く弾いても音が濁らずクリアなことです  これは全楽章を通じて言えることです。第2楽章ではフルートの甲藤さち、オーボエの荒木奏美の演奏が華を添えました 奥井さんは第3楽章も堂々たる演奏を展開し、会場いっぱいの拍手とブラボーを浴びました

今回のコンサートはチャイコフスキーのピアノ協奏曲が3曲とも聴けるということで、単発でチケットを取ったのですが、正解でした とくに第2番を弾いたロシアのミロスラフ・クルティシェフの演奏は衝撃的でした また聴いてみたいピアニストです

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「2019年度 読響アンサンブル・シリーズ」年間会員券を取る / イングマール・ベルイマン監督「鏡の中にある如く」「処女の泉」を観る ~ J.S.バッハ「無伴奏チェロ組曲第2番」が流れる

2019年02月03日 07時20分04秒 | 日記

3日(日)。わが家に来てから今日で1584日目を迎え、トランプ米大統領は1日、ホワイトハウスで記者団に中距離核戦力廃棄条約の破棄通告について「片方の国が順守しなかったからだ」と説明し、ロシアの条約違反を非難した というニュース見て感想を述べるモコタロです

 

     

       これでロシアもアメリカも 堂々とやりたい放題になった 裏で手を結んでんじゃね 

 

         

 

昨日、「読響アンサンブル・シリーズ」の年間会員券を会員優先販売で取りました WEBでのアクセスが出遅れたので通路側席が取れず 通路から2つ目の席になりました。現在の席のすぐ後ろの席です 日程は①7月12日、②11月18日、③1月10日、④2月14日の4回で、開演はいずれも19時30分、会場はよみうり大手町ホールです プログラムは下のチラシの通りですが、楽しみなのは7月度の「鈴木康浩プロデュースによる室内楽」(ブラームス「弦楽五重奏曲第2番」他)と2月度の「上岡敏之と読響メンバーの室内楽」(ショーソン「ピアノ、ヴァイオリンと弦楽四重奏のための協奏曲」他)です 多分、今回も早いうちに完売になると思います

 

     

     

         

 

昨日、池袋の新文芸坐で「鏡の中にあるが如く」と「処女の泉」の2本立てを観ました

「鏡の中にあるが如く」はイングマール・ベルイマン監督・脚本による1961年スウェーデン映画(白黒・89分)です

作家のダビッドは17歳の息子ミーナスや娘のカリン、カリンの夫で医師のマーチンとともに、人里離れた孤島の別荘でひと夏を過ごすことになった 精神的に不安定なカリンを心配するダビッドは彼女の病状を日記に記録する しかし、偶然にもその日記を読んだカリンは、「カリンの病気は治らない。作家として精神が崩壊していく彼女を観察しよう」と書かれていたことにショックを受け、一層心のバランスを崩してしまう 彼女は神が迎えに来ると口走るが、迎えに来たのは病院からのヘリコプターだった

 

     

 

この映画はベルイマンが信仰と欲望をテーマに描いた「神の沈黙」三部作の第1作に当たります 精神を病んでいる人間は神に祈っても救われない、結局人間同士の愛にしか救いは求められないのだ、と言わんとしているのだろうか

この映画の冒頭のタイトルロールで バックに流れるのはヨハン・セバスティアン・バッハの「無伴奏チェロ組曲第2番ニ短調BWV1008 」の第2曲「アルマンド」です  この曲はドラマの中でも何度か、まるでカリンの精神的な孤独を表すかのように流れます   それにしても、前日観た「沈黙」にしても「仮面/ペルソナ」にしても、この「鏡の中にある如く」にしても、ベルイマンはJ.S.バッハの作品をまるでテーマ音楽のように使います 彼の頭の中では、モーツアルトでもベートーヴェンでもダメで、バッハでなければならない必然性があるのだと思います

 

     

 

         

 

「処女の泉」はイングマール・ベルイマン監督・脚本による1960年スウェーデン映画(白黒・89分)です

舞台は16世紀スウェーデンの田舎町。豪農のひとり娘カリン(ビルギッタ・ぺテルソン)は、教会へ向かう途中で3人兄弟の羊飼いに出会う 貧しそうな3人に食事を施すカリンだったが、上の兄弟2人はカリンを強姦したうえ殺害してしまう 娘の悲劇を知ったカリンの父親テーレ(マックス・フォン・シドー)は、復讐心から2人の兄弟を惨殺するが、怒りにまかせて末子も殺してしまう テーレは神の救済を求め、罪滅ぼしに教会を建設することを約束する。テーレと妻メレータが娘の亡骸を抱きかかえたその時、彼女が横たわっていた場所から泉が湧き出てくる。神の恩寵を目の当たりにした一行は、躓いて神に祈りを捧げるのだった

 

     

 

この映画は、黒澤明を敬愛するベルイマンが「羅生門」に深い感銘を受けて、その強い影響のもとに製作した作品だけあって、光と影のコントラストを強調した映像表現のもと、カリンが京マチ子に、兄弟が三船敏郎に重なります

カリンが馬に跨るのでなく 横すわりで乗るのも、「羅生門」で京マチ子が横すわりで馬に乗る姿を思い浮かべます   この映画ではバッハの音楽は使われていませんでした

 

     

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イングマール・ベルイマン監督 「沈黙」 「仮面 / ペルソナ」を観る ~ 両作品ともバッハの音楽が静かに流れる

2019年02月02日 07時22分09秒 | 日記

2日(土)。わが家に来てから1583日目を迎え、参議院は1日午前 代表質問を行い、厚生労働省の「毎月勤労統計」の不正調査で名目賃金の伸び率が下方修正された問題等を巡り 与野党と安倍首相との間で質疑応答があった というテレビニュースを観て感想を述べるモコタロです

 

     

      質問する与野党も答弁する安倍首相も 原稿読んでるだけ  これを予定調和という

     

         

 

昨日の夕食は「牡蠣鍋」にしました 最近、「金曜日は鍋料理」が定着してきました

 

     

 

         

 

現在、池袋の新文芸坐では「イングマール・ベルイマン  101年目の風景」を上映中です ベルイマンと言えば、モーツアルトの歌劇「魔笛」を映画化した作品(1975年:元はテレビ用)を思い出しますが、残念ながら今回の上演作品には含まれていません

 

     

 

昨日、「沈黙」と「仮面/ペルソナ」の2本立てを観ました

「沈黙」はイングマール・ベルイマン監督・脚本による1963年スウェーデン映画(白黒・96分)です

翻訳家の独身女性エステル(イングリッド・チューリン)は妹アンナ(グンネル・リンドブロム)とその息子ヨハン(ヨルゲン・リンドストロム)と共に汽車で旅行中に身体の不調を訴え、見知らぬ町に降りホテルに投宿する そこは夜中に戦車が通り過ぎるような東欧の町のように思われる エステルは部屋で翻訳の仕事に取り掛かるが、虚しさを覚えウィスキーをラッパ飲みし、自慰に浸る。奔放なアンナは夜の町に男を求め、部屋に連れ込んで愛し合う姿を息子に目撃される 甥にそれを聞かされた姉エステルは妹の部屋に忠告に来るが、彼女は受け付けずさらに行為に没頭する。その背景には 幼少時から優等生で皆のお気に入りの姉と、豊かな肉体を持ち行動的な妹との反駁があった。ショックに容態の悪化する姉に構わず妹は息子を連れホテルを後にし先を急ぐ ひと晩で人間の内側を覗いた甥の心中を察した姉は、彼のためにその国の言葉で「精神」と書いた紙片を手渡す

 

     

 

この映画は、ベルイマンの信仰と欲望をテーマとする「神の不在」三部作の終章に当たります 「人間の欲望は神にも止められない。人間は強い精神を持って生きなければならない」ということでしょうか

映画の序盤で、ホテルに投宿した3人が部屋でくつろぐシーンで、エステルがラジオをつけるとチェンバロの独奏曲が流れてきます エステルは言葉の通じないホテルのボーイ(老人)に「バッハ?」と尋ねます。すると老人は「セバスチャン・バッハ」と答えます。メロディーからバッハの曲であることは分かりますが、何の曲かは分かりませんでした しかし、ベルイマン監督が老人にわざわざ「セバスチャン・バッハ」と言わせたのには訳があるように思います 言うまでもなくヨハン・セバスティアン・バッハ(大バッハ:1685-1750)は、次男のカール・フィリップ・エマヌエル・バッハ(1714-1788)、末子のヨハン・クリスティアン・バッハ(1735‐1782)をはじめ多くの音楽家を世に送り出しました 会話から類推すると老人は英語もドイツ語もフランス語も話せないので、おそらく舞台は東欧のどこかの国だと思われますが、そんな見知らぬ国でも大バッハ(セバスティアン)の音楽を聴けば、それと判別できる、それほど彼の音楽は素晴らしいのだ、という意味を持たせていると思いました

 

         

 

「仮面/ペルソナ」はイングマール・ベルイマン監督・脚本・製作による1966年スウェーデン映画(白黒・82分)です

 舞台女優のエリザベート(リヴ・ウルマン)は、仕事も高く評価され、私生活でも夫は理解があり、子どもにも恵まれて何不足ない生活を送っていた しかし、ある日「エレクトラ」の舞台に出演中、突然セリフが喋れなくなり失語症になってしまう。女医からひと夏の転地療養を勧められ、付き添い看護婦アルマ(ビビ・アンデルソン)と共に海辺の女医の別荘を訪れる。アルマはエリザベートをよく理解し、懸命に尽くす やがて二人は患者と看護婦という結びつきを超えたところで親しく接するようになる。ある日アルマは、女医に宛てたエリザベートの手紙を盗み見て驚く そこには、アルマがエリザベートに語った、かつていきずりの男たちと浜で戯れ、その結果妊娠した子を堕胎したことが綴られていた。アルマは怒りエリザベートと仲違いする その頃から、夢ともうつつとも定かでない状態の中で、エリザベートとアルマの肉体は入れ替わり始める。やがてエリザベートは再び口がきけるようになる。彼女は幼い息子のことをアルマに語り、アルマは耐えられない吐き気に悩まされた。それはエリザベートが息子を身ごもった時の苦しみが、アルマの肉体に移ったのだった。また、エリザベートは夫との交わりにおいてもアルマの肉体を感じた。しかし、危機はいつまでも続かなかった。やがてエリザベートは女優としてカムバックし、アルマは病院に戻った

 

     

 

この映画でも、序盤の病院のベッドに横たわるエリザベートのそばで、アルマがラジオのスイッチを入れるとバッハのヴァイオリン曲が流れてきます これはヨハン・セバスチャン・バッハの「ヴァイオリン協奏曲第1番イ短調」の第2楽章「アンダンテ」でした ベルイマンはバッハがお気に入りのようです

 

     

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新交響楽団 第245回演奏会(芥川也寸志 没後30年)のチケットを取る / エイゼンシュテイン監督「イワン雷帝(第1部・第2部)」を観る ~ プロコフィエフの音楽が全編を通して流れる:早稲田松竹

2019年02月01日 07時27分34秒 | 日記

2月1日(金)。わが家に来てから今日で1582日目を迎え、アポロ宇宙船が月から持ち帰った石は、実は昔、地球から月に飛んできた隕石だったことが米航空宇宙局(NASA)の研究で分かった というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

       地球の石を地球に持ち帰ったっていうことね? 君は知っていたのかい R2-D2?  

 

         

 

昨日、夕食に「豚小間生姜焼き」と「もやし豚汁」を作りました 豚肉がダブってるとか細かいことは言わないように、嫌われますよ

 

     

 

         

 

4月29日(月・祝)午後2時から東京芸術劇場コンサートホールで開かれる新交響楽団の第245回演奏会(芥川也寸志没後30年)のチケットを取りました プログラムは①芥川也寸志「オーケストラのためのラプソディ」、②バルトーク「舞踏組曲」、③シベリウス「交響曲第2番ニ長調」です 指揮は湯浅卓雄です

 

     

     

         

 

昨日、久しぶりに高田馬場の早稲田松竹に映画を観に行きました。1月16日から26日まで館内の椅子やカーペットなどの設備更新のため休館していたので久しぶりです  やっぱり 新しい椅子は気持ちが良いものです。昨日はエイゼンシュテイン監督映画「イワン雷帝(第1部・第2部)」を観ました

「イワン雷帝」はソ連の巨匠セルゲイ・エイゼンシュテインの監督・脚本により1944年から1946年にかけて製作された作品(第1部=1944年公開:白黒99分、第2部=1958年公開:白黒・一部カラー88分)です この映画は”イワン雷帝”と呼ばれたロシアのイヴァン4世の生涯を描いた作品で、第1部は時の権力者スターリンから高く評価され 第1回スターリン賞を受賞しましたが、第2部は45年に完成したものの、スターリンを暗に批判したとして「ジダーノフ批判」の対象となり改作を命じられました 第3部は完成されませんでした

 

     

 

物語のあらすじは以下の通りです

【第1部】

舞台は16世紀中葉のロシア。イワン大公は世襲貴族たちの分割政治を打破し、専制君主による帝政の確立を目指す 戴冠式に次いでイワン皇帝はアナスタシアを王妃に迎える。イワンの伯母エフロシニアはその子ウラジミルを帝位につけようと大衆の指導者マリュータをそそのかし、イワンへの謀反を画策する しかし、皇帝の祖国愛にうたれ、マリュータほか暴徒たちは皇帝への忠誠を誓う そして外敵カザンらを下し、イワンは皇帝の地位を確固たるものにする だが、イワンはモスクワ帰還早々重い病床についてしまう。彼には息子のディミトリ―がいたので彼を皇帝の座に就かせようとしたが、エフロシニアはウラジミルを皇帝にしようと必死で画策する しかし、イワンは奇跡的に回復する。イワンはもはや世襲貴族たちを信用しなくなっていた そのことは同時に貴族たちとの離反を招くことになった。エフロシアは王妃を皇帝から奪うため毒殺する。同時に遠征軍の敗北が報らされ、信頼していた部下の裏切りにも遭う。失意のイワンは退位しモスクワを捨てて一旦 田舎に引きこもるが、民衆の熱い要請を受けて再び帝位に返り咲く

【第2部】

モスクワに帰ったイワンは、精力的に旧体制からの脱却を図る政策を計画する しかし、宮廷内ではエフロシニアを中心とする反イワン派の貴族たちが皇帝に抵抗を示す この頃、イワンは王妃の死が毒殺だったことを知る。その張本人エフロシニアは今度はイワンの殺害を目論んでいた ある酒宴の夜、彼女はウラジミルに刺客をつけて宴会に送り込むが、事情を知ったイワンはウラジミルに皇帝の正装を着せたため、刺客は間違ってウラジミルを殺してしまう。エフロシ二アは半狂乱になる 国内の邪魔者を抹殺したイワンは、外敵との戦いを神に誓う

この作品では、イワン大公をはじめとする登場人物の顔のクローズアップが頻繁に見られます エイゼンシュタインは1928(昭和3)年に2代目市川左團次の歌舞伎初の海外公演をモスクワで観劇し、「仮名手本忠臣蔵」等を観て、花道の「見得」に大いに感銘を受け、第1部ではクローズアップ・ショットで主人公に「見得」を切らせるという歌舞伎様式の演出をしています

歌舞伎的な様式美ということでは、黒澤明監督の映画「影武者」などに共通点があるように思います ただし、黒澤監督の場合は、顔だけでなく、どの場面を切り取っても「絵になる」映像表現になっています

また、この映画の大きな特徴は、全編を通してセルゲイ・プロコフィエフ(1891‐1953)の音楽が流れることです

それで思い出すのは、2017年11月17日(金)のN響C定期公演です 当日のプログラムはプロコフィエフ作曲スタセヴィチ編曲「オラトリオ版 イワン雷帝」でした トゥガン・ソヒエフがタクトをとりN響・東京混声合唱団他を振りましたが、歌舞伎役者・片岡愛之助による見事なナレーションと相まって素晴らしい演奏だったと記憶しています(2017年11月18日付toraブログ参照)

第2部は疑心暗鬼に駆られたイワンが貴族たちを粛清する場面が描かれていますが、前述の通り 映画製作当時の大粛清を彷彿とさせる脚本にスターリンは激怒して エイゼンシュテインに改作を命じ、スターリン(1878 -1953)の死後までこの作品が公開されることはありませんでした 権力が文化を抑圧する、嫌な時代だったのですね。それに比べれば、コンピュータ・グラフィックス全盛の現代は 考えようによっては「何でもあり」の時代です しかし、エイゼンシュテインほど面白い映画はそれほど多くはありません

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