「裁判の非情と人情」

2017年06月29日 11時11分03秒 | 社会・文化・政治・経済
裁判官の一番欠けたところは、世情と人情に疎いことだろう。
勝手な推測ではない。
裁判官を41年間務めた原田国男さんが「裁判の非情と人情」(岩波新書)でそう書いている。
20を超す無罪判決を出した異色の法律家による随筆は、今年の日本エッセイスト・クラブ賞を受けた。
裁判の言い渡しの後のひと言は、刑事訴訟規則で「訓戒」と定められている。
新聞などでは「説輸」と呼ぶ。
説輸について原田さんは、100人のうちたった1人でも再犯を思いとどまるなら大きな価値があると考えていた、と本で語っている。
中村秀明さん(毎日新聞論説委員)

何度、再審請求を出しても、門が閉ざされる事案は少なくない。
無罪を叫び続ける人にとっては、最後の砦であるはずの、裁判官の人情が問われる。

<大崎事件>
鹿児島県大町1979年に男性(当時42歳)の遺体みつかった。
殺人などの罪で懲役10年確定した原口ヤスさん(90)の再審開始を決定した6月28にの鹿児島地裁。
52歳で逮捕され「やってもいないのに、汚名を着せられたまま死ねません」と、無罪の訴えを貫いてきた原口さんは今月15日、90歳になった。
見込み捜査に基づく自白偏重捜査の構図が改めて浮き彫りになった。
捜査機関が自ら描いた筋書きに基づいて<自白>を誘導した疑いを鹿児島地裁は指摘した。
事件から38年。
問われているのは硬直的で人権意識を欠いた捜査のあり方で、警察も検察今回の決定を重く受け止めるべきだ。(毎日新聞解説)

<ある事件>
相手は18歳と言えど、明らかに組織暴力団の売春組織の一員。
性行為は合意であったが、金を払わなかったために、19歳の若者は強姦罪で訴えられる。
ただ乗りが結局、高く付く。
わずか2万円の相手の要求を惜しんだため、大学も退学となり、刑務所へ入ることに。
裁判官は世情に疎く、買収を見抜けなかったのである。
18歳の被害者(相手)は、暴力団員と同棲していたことを、弁護士が突き止めたが、裁判官はそのことを問題にしないし、被害者の言い分を信じ込み、売春も認めなかったのである。
沼田利根