2/20(土) 7:30配信
スポニチアネックス
雌伏の時を経て完全復活へ着実に歩を進める藤浪。この手で頂点をつかみ取る!
阪神の藤浪晋太郎投手(26)が19日、スポニチ本紙の単独インタビューに応じ、直球に固執しない新スタイルに挑戦していることを明かした。2021年シーズンは、昨季6割以上を占めた直球の割合を5割程度にすることを理想とし、完全復活への「黄金比」とした。(聞き手・遠藤 礼)
【写真】9年目のシーズンへ意気込みを語る藤浪
――昨年11月に「直球が速ければいい時代は終わった」と発言(※1)。今キャンプも直球に固執していないように見える。
「(藤川)球児さんの特殊球とか、ああいうレベルでないとストレート勝負、真っ向勝負は幻想に終わると思っています。勝負においてはバッターに都合のいい話でしかない。もちろん、直球は必要なボールになってきますし、一番操りやすい。その中でいかに変化球でカウントを取れるかを気にしています。今年はそういうテーマを持ってますね」
――昨年も直球の割合は6割超え。今年は変化球の割合を増やして結果的に5割ぐらいになれば理想的か。
「5割、ないし5割弱にできるぐらいに他の球種の精度が高くなればいいですね。5割切るのを目標にするわけじゃないですけど、他の球種の精度が高ければ、勝てる確率も上がると思っています」
――スプリットを決め球だけでなく、カウント球でも使いたい。
「今は自信を持っている球種。カウント球にも勝負球にも使えると思っています。元々、カウント球っていう選択肢がなかった。昨年、お股ニキさんに“もっと勇気持ってカウント球に使ったらどうですか”“いい落ち方してますよ”と言っていただいて。昨年のシーズン途中から意識して投げるようになったんですけど。自分の思っていた以上にゾーンで空振りが取れたり、当てられてもゴロが多かった印象が強かったので。今まで食わず嫌いしてたというか。スプリットって、浮いたら打たれるイメージが強かった。価値観として変わってきたので、自分の引き出しにしたいですね」
――打者により絞らせないことを重視していくのか。
「カットボールを連発しているからこそ、打者は真っすぐに詰まってファウルしたりするわけなので。意識のパーセンテージ、相手の頭の中をどう操作できるかだと思っています。狙えないのが最強ですから。“速ければいい”という時代は終わっても、準備しないと打てないのが150キロ後半のボール。絞らせない配球ができるか。もちろん、直球は自分の武器ですし、生かしながら。当然、変化球の割合が増えれば、(打者は)直球の意識が薄れて効いてくると思います。変化球を生かすための直球であり、直球を生かすための変化球。直球が160キロ出るからといって“オレは真っすぐなんだ”と一辺倒になってもダメ。両方高めることによって、相乗効果が出ればいいですね。自分の中に“真っすぐ投手”と“変化球投手”の2人がいるイメージですね」
――昨年は1勝止まりでも、迷い続けたフォームの土台ができたと感じたが。
「数字以上に自分の中での進歩、内容、納得度で言えば昨年(の前半)、一昨年とは比にならないぐらいでした。充実したとは言えないですけど、これから先、来年、再来年につながっていきそうやなっていう一年でした。感覚的なところが一番大きいのが正直なところで、自分の中でやれそうやな、いけそうやなっていう手応えが一番です」
――土台が固まって、次の段階に進めるイメージか。
「フォーム、技術面も含め、段階が一つ上がったというか。今までキャンプ中、シーズン中も自分の中で探っている状態だったので。これと思いながらやって、違う……の繰り返しから“こういう道で”っていうのが定まりました。じゃあ、これを高めていくにはどうしたらいいかっていう段階まで戻ってこられました。後は技術を高める、勝ってた時のボールを追い求めていくしかない。そういうレベルまでには来たと思っています」
――昨季終盤にセットポジションで手応えをつかんだ。クセや動作の多いワインドアップはハイリスクと思ってしまうが。
「リスクも承知の上で挑戦しています。逆に言えば、セットである程度の自信が持てた。今は、ここなら立ち返れるっていうところがあります。ダメならセットに戻ればいいやん、ぐらいの気持ち。その上でワインドアップのメリットを求めてやっています」
――あえてスラット(スラッター)と呼んでカットボールを投げている。参考にしている使い手はいるのか。
「誰かのスラットが理想の曲がり方とかはなくて。ジャイロ回転が理想ですね。重力で落ちるのが、自分のイメージしている理想のスラットですね。今はブルペンでもトラックマンのデータを見て、自分のイメージと照らし合わせてやっています。高速で急にスッと落ちる感じですね」
――近年の苦闘からの再起は、野球ファンでない人たちからも注目されると感じる。
「すごく応援してもらっているのは感じますね。一般論になりますが、人って一回落ちてまた上がってくるストーリーが好きというか。そういうのも相まってかなと思っています。誰もが好きなストーリーというか。ドラマとか映画の構成にありがちな部分に今の自分の状況が当てはまっているのかなと思います(笑い)」
――ここから復活することで子どもたち、広く見れば、ビジネスマンにも勇気を与えられるかもしれない。
「励みにしてもらえるのはうれしいです。コロナ下で人に会うことは少なくて、直接言ってもらえることはないですけど、そうなってもらえればいいと思いますね。最近は、野球をやっている子どもたち、タイガースのファンはもちろんですけど、他球団のファンの人もそうですし、野球に興味ない人たちにも“藤浪っていう選手がいるんだ”と知ってもらいたい気持ちは、より強くなってますね」
――インスタグラムを開設。ファンとの距離を縮めている印象。
「インスタは前からやりたいなと思いつつ。いろいろ言われそうやなっていうのがあって(笑い)。ずっとやってなかったんですけど。やっぱり、こんな世の中ですし、例年なら宜野座もファンでいっぱいになるんですけど、お客さんがいない中で楽しんでもらいたいなというのが一番の理由。あとは、自分がどういう人間かを知ってもらいたい。今までメディアの中でも、硬い話をすることが多くて、お堅いイメージが強いと思うんですけど、人物像を知ってもらいたいなと。そうすればファンの方のプレーを見る目も、自分の発言のとらえ方も変わるんじゃないかと思っています」
――新人の佐藤輝との対戦が注目を集めた(※2)。気が付けば新星を迎え撃つ立場になった。
「年取ったなと感じますね(笑い)。でも、今までも結構、他球団のドラフト1位とキャンプ中に対戦することが多くて、ありがちやなと思ってたんですけど。そういう年になったんだなと。対戦はおもしろかったですよ。見ている人もそうですけど、自分自身も楽しめた部分もある。何を求められているかは意識してますね」
――ファンは「エース藤浪」の時代を待望している。
「ここ数年、全然成績も残せてないのでエースどうこう言える立場ではないんですけど。自分が成績を出して、勝手にエースと呼ばれるぐらいに数字で示せるようにしたいですね。ただひたむきに野球に取り組みたいですね」
【※1】秋季練習期間の20年11月16日に矢野監督がダルビッシュが操る縦変化のスライダーを習得するよう勧めたことに対し、藤浪が同24日に、先の発言とともに指揮官の期待に応える意思を示した。
【※2】7日の紅白戦に4回先頭で対戦。すべて直球で1ボール2ストライクと追い込むと4球目の真ん中外寄りの155キロで空振り三振に仕留めた。
※インタビューは(下)に続く。