40代からでも目指せる公務員。活発化するコロナ禍での転職の選択肢としても注目される

2020年10月02日 03時08分41秒 | 社会・文化・政治・経済

10/1(木) 15:33配信

HARBOR BUSINESS Online

CORA / PIXTA(ピクスタ)

 2020年9月、民間企業の新型コロナウイルス関連倒産は500件を上回り今後も減少の兆しは見えない。未知のウイルスの流行により、年齢問わず雇用環境は不安定になり、管理職クラスだからといって転職を考えなくてよいという時世ではない。そんな中で、安定した収入と高い社会貢献が見込める転職先として、40代以上で公務員を目指すという選択肢が今注目されている。

ほとんどの自治体が年齢制限を撤廃
 社会人を対象にした公務員試験面接アドバイザーの安達瑠依子氏は、40代以上で公務員試験に挑戦する人についてこう話す。

「受験者は増えていると思います。昨年19年から30代後半~40代前半のいわゆる就職氷河期世代を対象にした特別枠採用が始まったこともあり、それに応募する人もいますが、全体的に私のところにアドバイスを求めて来られる受講者の年齢上限も、上がっているという実感はあります」

 新卒以外の公務員採用枠「社会人経験者採用」は、国家公務員を含め都道府県や横浜市や名古屋市など政令指定都市の大半が59歳まで受験可能な自治体がほとんどだ。

 「2000年代から民間の経験やノウハウを行政の中で活かしていこうという『公務員改革』が叫ばれるようになったこと。即戦力の優秀な人材を採用したいと考えるなら、学歴だけで能力は未知数の新卒採用では限度があります」

 民間で経験を積んだ人の能力をもっと活用していこう、という考えに行政がシフトしていっていると安達氏は指摘する。

 公務員試験は通年6~9月に筆記、10~11月に面接というところが多い。国家公務員は狭き門だが、地方公務員の試験内容は高卒程度の一般教養と小論文とやや易しめになっている。それを突破したら、小論文や面接で自身の経験をしっかりアピールすることが重要となる。

 「面接に関しては、ほとんどの人が何をすればいいのか分からないままで受験して、その結果うまくいかない方が多いです。実をいうと、私のところにいらっしゃる人も一度面接試験で失敗してくる方が多いです」

面接で問われるのはマネジメント能力の有無
 せっかく筆記が通って面接にコマをすすめても、そこで落とされてしまうのは非常にもったいない。

 「要は面接官に対して新卒が話すようなことしか話せていないのです。社会人の面接になれば、やはりマネージメントのことも聞かれます」

 一例を出すとこんな問題だ。

 面接室に入り、席に座ったらそこにシチュエーション課題がおいてある。「あなたは4人のチームで働いています。上司は病気がちでなかなか仕事に出てこられません。自分の部下は2人いて、自分より年上の人と勤続2年目のモチベーションが落ちている人。あなたは主任としてこのチームをまとめて目標達成するために、何といいますか?」

 そんな問題にその場で答えることになる。

 加えて民間企業と違って、公務員試験の場合、マネージメント職や営業職といった、どんな人材のどんな技術がほしいのかということが、面接の段階にならないと分からない。その対策として、少なくともそこの自治体の抱えている問題に精通して「自分ならその問題に対してどのように取り組むか」をアピールできる必要がある。

公務員試験ではマイナスに働く「転職経験の多さ」
 転職が当たり前の昨今ではあるものの、民間企業と違って大学からプロパーでそのまま働いている人の方が多いのが、公務員職の特徴だ。

 「残念ながら、公務員の面接では『転職経験の多さ』は非常にマイナスに働きます。根気がないとか、嫌なことがあったらすぐに辞めるんじゃないかという、負のイメージを持つ人が多いです」

 ある40代の受験者の体験では、面接時間40分のうちほとんどの話が20代のときの転職についてで、やりたい仕事も志望動機も一切聞かれなかったという人もいるほどだ。

 「ただ、転職というと全部マイナスかといわれると、プラスであることもたくさんありますよね。自分のスキルアップや新しいことへのチャレンジ。あといた仕方ない転職、例えば事業の撤退や、結婚や出産などの生活環境の変化などです。ちゃんと納得のいく説明ができるということが必要になってきます」

 また「上司が悪かった」「会社の待遇が悪かった」などの、以前いた会社に対しての悪い発言は、面接官の心象を悪くする要因だ。

 「他責的な言いまわしではなく、合理的な転職の理由をつくっていくことを意識してください」

 自分のことを先方にうまくプレゼンできれば、面接官の転職に対するマイナスイメージも払拭できるはずだという。
 
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 部署が決まったらその部署にずっといる印象が強い公務員だが、行政の中での異動は意外に多い。

 「国家公務員だと1年ぐらいで異動。自治体でも2~3年で異動です。いろんな部署で新しい仕事にチャレンジしないといけないので、それなりのヒューマンスキルが求められます」

 コミュニケーションスキル、対人的な調整、交渉スキル、新しいことに意欲的であるなどのスキルだ。

 「あとはこの人を採用したら、ここで活躍できるかもしれないという、今の行政組織にはない経験スキルがあるかどうかも求められます。いわゆる自分の武器を持っている人はすごく貴重です」

 マーケティングで事業企画をやっていた人、営業でも技術職でも産学連携をやっていた人など、あらゆる分野で培ったものを武器にして活躍している人材はいると安達氏はいう。自分がこれまでやってきたことが行政機関の中でうまくマッチングできれば、安定した公務員生活も夢ではないのだ。

【安達瑠依子氏】
公務員面接試験指導を専門とする講師。特に社会人経験者や既卒の面接対策を得意とし、2018年より『公務員面接の達人』を監修。民間企業数社の人事部長を経て、評価制度や採用の人事コンサルタントに転身後、2012年、首都圏の自治体の面接官を経験。その経験を契機に、公務員試験における面接対策のセミナー、個人指導、面接対策プログラムの開発に従事。

<取材・文/武馬怜子(清談社)>

ハーバー・ビジネス・オンライン

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