向田邦子 心の風景

2020年09月14日 16時11分23秒 | 社会・文化・政治・経済

松田 良一 (著)

向田邦子の実像に迫る!
少女期から死去するまでを編年体で追求。幅広い取材と文献渉猟、新資料の発掘などで、向田邦子の人と文学を解明する書下ろし評伝。

著者について

昭和23年愛知県生まれ。愛知県立大学文学部国文科を経て立教大学大学院卒。著書に『散歩の詩学サンポロジー』、『永井荷風オペラの夢』ほかがある。現在、椙山女学園大学文学部教授。
 
 
 
「心の風景」いいタイトルですね。松田良一 著「向田邦子 心の風景」、1996.6発行。父親思いの向田邦子さん、父親と娘、昭和という時代を改めて振り返りました。家庭が優しい温もりと人間修行という二律背反的な役割をもっていた時代。
父親の向田敏雄は、毎日妻に会社まで弁当を運ばせ、さらに、昼過ぎに再び弁当箱を取りに来させた。すごいの一語です。その父親が末の娘和子を疎開先に送る時持たせた「字のない葉書」、そして病気になって帰ってきた時泣きながら抱きしめた・・・。向田邦子さんの作品には、人情の機微がさりげなく・・・。
 
 
 
松田良一は私の近代文学研究の道を開いてくれた恩師である。松田が、その文学講義の中で「作家の原風景が大事なんですよ」と言っていたのを事あるごとに思い返す。『なつかしい時間』に頻回に登場する「風景」とも符合すると思う。
松田は学生に、物事を見る時、文学を味わう時に、その表面だけでなくその時代の風物や地理など、作品を読むときには必ず現地を歩くことを勧めていた。文学研究だけでなく散歩の楽しみや、敗残の美学というのも松田がよく好んで使っていた言葉だ。心の軸がぶれる時、師匠の本を読みたくなるのはなぜか、
 
 
 
読むと、文学を語る時の松田の静かな熱情と、学生を育てようとする気持ちの温かさを思い出すからだ。死してなお、蘇るのは、いつも温かい雰囲気のゼミや松田の懐かしい研究室の風景を思い出すからだ。
 
 
 
 

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