「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

2006・12・31

2006-12-31 08:25:00 | Weblog
 今日の「お気に入り」は、江戸時代の川柳ひとつ。

 「元日はことしもあるぞ大晦日」
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2006・12・03

2006-12-03 20:51:00 | Weblog
 久し振りの「今日のお気に入り」は、萩原朔太郎(1886-1942)の詩一篇と俳句一句。「乃木坂」の旧名は「幽霊坂」、ご存じでしたか。


  乃木坂倶楽部

   十二月また来れり。
   なんぞこの冬の寒きや。
   去年はアパートの五階に住み
   荒漠たる洋室の中
   壁に寝台(べつど)を寄せてさびしく眠れり。
   わが思惟するものは何ぞや
   すでに人生の虚妄に疲れて
   今も尚家畜の如くに飢えたるかな。
   我れは何物をも喪失せず
   また一切を失ひ尽せり。
   いかなれば追はるる如く
   歳暮の忙がしき街を憂ひ迷ひて
   昼もなほ酒場の椅子に酔はむとするぞ。
   虚空を翔け行く鳥の如く
   情緒もまた久しき過去に消え去るべし。

   十二月また来れり
   なんぞこの冬の寒きや。
   訪(と)ふものは扉(どあ)を叩(の)つくし
   われの懶惰(らんだ)を見て憐れみ去れども
   石炭もなく暖炉もなく
   白堊の荒漠たる洋室の中
   我れひとり寝台に醒めて
   白昼(ひる)もなほ熊の如くに眠れるなり。


 
 冬日暮れぬ思ひ起せや岩に牡蠣(かき)


   (河上徹太郎編 「萩原朔太郎詩集」 新潮文庫 所収)
   
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