「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

2008・08・31

2008-08-31 09:20:00 | Weblog
今日の「お気に入り」は、森鷗外(1862-1922)の詩「ねよわがこ」。

   ねよわが子  なれは好き子ぞ  ねよわが子
   夜明けなば  なれにとらせん  好きものを
   好きものは  人形やよき    毬やよき

   ねよわが子  なれは好き子ぞ  ねよわが子
   おひ立たば  なれを添はせん  好き人に
   好き人は   よしとよく見て  定めてん

   ねよわが子  なれはよき子ぞ  ねよわが子
   なが背子は  家をな離(さか)り 年ひさに
   なが世には  戦なかれ     世のなかに

   ねよわが子  なれは好き子ぞ  ねよわが子
   夜明けなば  なれにとらせん  好きものを
   おひ立たば  なれを添はせん  好き人に 
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2008・08・29

2008-08-29 07:55:00 | Weblog
今日の「お気に入り」は、森鷗外(1862-1922)の詩「石田治作」。

   感状を      受けし下士卒
   司令部に     つけられし時
   静岡の      石田治作は
   わが許(もと)に  従者(ずさ)として来ぬ
   戦(たたかひ)の  さまを問へども
   すなほなる    性(さが)にしあれば
   はなじろみ    容易(たやす)く言はず
   強ひられて    やうやく開く
   つくろはぬ    口より出でし
   飾なき      ことばに曰はく
   十月の      沙河(さか)会戦の
   十二日      午前十一時
   十里河の     右岸より撃つ
   砲兵の      陣地に向ひ
   責め寄せし    我大隊の
   辿り来し     凹地(あふち)を出でて
   南辺(みなみべ)の 岸に近づき
   陣地前(ぜん)   七百めえとる
   撃つ砲を     認め得し比(ころ)
   突撃の      令は下りぬ
   幸(さち)ありて  わが属せりし
   大隊の      左翼中隊
   中隊の      左翼分隊
   いちはやく    河を渡りて
   めざしたる    陣地まぢかく
   寄るほどに    味方と離(さか)り
   正面の      我銃丸は
   うしろより    雨とふりきぬ
   かねてより    死をば決しつ
   陣地まで     往きて死なんと
   真先に      わが進むとき
   敵みたり     逃るる見えぬ
   残りにし     ひとりは砲に
   霰弾を      今ぞ籠めたる
   又ひとり     馬ひきよせて
   ゆん手をば    取毛に掛けつ
   わが放つ     銃に中りて
   丸(たま)こめし  ひとり僵(たふ)れぬ
   わが持たる    銃剣の尖(さき)
   偏足を      鐙(あぶみ)にかけし
   将校の      外套にこそ
   あやふくも    触れんとしたり
   将校は      身を翻し
   拳銃を      めてにとりもち
   進むわが     胸に擬したり
   銃握る      わがもろ手には
   身のうちの    力籠れり
   此刹那      何思ひけん
   将校の      拳銃とれる
   右手(めて)垂れて 項(うなじ)も垂れぬ
   おもほえず    われためらへば
   将校は      拳銃すてて
   わが右手を    しかと握りぬ
   かくてわが    擒(とりこ)にせしは
   砲兵の      大尉とぞいふ
   霰弾を      籠めてえ撃たず
   討たれしは    少尉と知りぬ
   遺されし     四門の砲は
   中隊の      えものとなりぬ
   我敵は      撃つべき手中の
   拳銃を      など撃たずして
   棄てけんと    治作語りぬ
   聴け治作     そのよし告げん
   かねてより    死を決したる
   汝こそ      撃たせて刺さめ
   生くる道     求むる敵の
   刺されつつ    いかでか撃たん
   一すぢの     髪だに容れぬ
   勝敗の      機はここにあり
   おしなべて    軍もしかなり
   国もしかなり


   
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2008・08・27

2008-08-27 13:50:00 | Weblog
今日の「お気に入り」は、森鷗外(1862-1922)の詩「扣鈕(ぼたん)」。

   南山の たたかひの日に
   袖口の こがねのぼたん
   ひとつおとしつ
   その扣鈕惜し

   べるりんの 都大路の
   ぱつさあじゆ 電燈あをき
   店にて買ひぬ
   はたとせまへに

   えぽれつと かがやきし友
   こがね髪 ゆらぎし少女(をとめ)
   はや老いにけん
   死にもやしけん

   はたとせの 身のうきしづみ
   よろこびも かなしびも知る
   袖のぼたんよ
   かたはとなりぬ

   ますらをの 玉と砕けし
   ももちたり それも惜しけど
   こも惜し扣鈕
   身に添ふ扣鈕
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2008・08・25

2008-08-25 09:40:00 | Weblog
今日の「お気に入り」は、森鷗外(1862-1922)の詩「我馬痡めり」。


   わが馬やめり
   つねはすぐれて
   足掻き疾き馬
   けふおくれたり

   ひねもすゆきし
   道はいく里ぞ
   黄なる畑土
   かぎりしられず

   丈に満たざる
   高黍ごしに
   つれなる馬の
   とほざかる見ゆ

   ゆきなやみつつ
   わが馬嘶(いば)ゆ
   夕日うすつき
   わが馬嘶ゆ
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2008・08・19

2008-08-19 08:50:00 | Weblog
今日の「お気に入り」。

  浮き板に両手を乗せて足を蹴る
       まつすぐ行かな止まらずゆかな (福原美江)
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2008・08・15

2008-08-15 08:20:00 | Weblog
今日の「お気に入り」。


  慰霊碑は戦後に建ちて立ち続け
      やがて戦前になるか摩文仁(まぶに)よ (古堅喜代子)
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2008・08・09

2008-08-09 08:20:00 | Weblog
今日の「お気に入り」は、北原白秋(1885-1942)の「空に真赤な」と題した詩。


  空に真赤な雲のいろ。
  玻璃(はり)に真赤な酒のいろ。
  なんでこの身が悲しかろ。
  空に真赤な雲のいろ。
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2008・08・08

2008-08-08 07:30:00 | Weblog
今日の「お気に入り」。


  闇市の名残の路地や夏の暮 (小澤實)

  
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2008・08・07

2008-08-07 09:50:00 | Weblog
今日の「お気に入り」。


   夕立の雲迫りきて子ら走る (鶴見松絵)
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2008・08・01

2008-08-01 08:10:00 | Weblog
今日の「お気に入り」。

  この大地震(おほなゐ)避くる術なしひれ伏して
       揺りのまにまに任せてぞ居る (北原白秋)
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