今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。
「むかし四ページだった新聞が三十なんページになったのはもっぱら大企業の大広告のためである。新聞は広告が命である。ただし広告が半分以上を占めると、それは広告であって、新聞ではないと見なされる。故に広告収入で半ば以上を経営している新聞は、記事を半分以上にしなければならない。増ページに次ぐ増ページをした。
本来雑誌にまかせていい記事を載せた。政治経済の記事は分らない。ある日突然新聞は要らないものだと分った。新聞もとってないのは恥ずかしいと思うのは誤りだと分るに至った。あれは隣家がとっているからとっていたのだ、隣家がとらなくなれば皆々とらなくなる。こうして新聞は総くずれになる。キオスクはがらがらになる。
〔ⅩⅠ『三千円でもやっぱり金』平13・8・30〕」
(山本夏彦著「ひとことで言う‐山本夏彦箴言集」新潮社刊 所収)