「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

2014・07・31

2014-07-31 07:00:00 | Weblog


今日の「お気に入り」。

 新しき時刻表買ひにゆく踏切にながながと我は塞止められつ

 かぎろひを纏(まと)へるわれはゆらめきて他界者めくや 犬がおどろく

 循環機能今日はいささか活潑にて老女・老鷄水しきり飲む

                               (齋藤史)

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2014・07・30

2014-07-30 07:10:00 | Weblog


今日の「お気に入り」。

 老はいかにさびしきものぞ 抽出(ひきだし)のもの整理されておほかたは空(から)

 光りつつ水吸ひ落す放水路あくたも花も共に一瞬

 先の世にも予約席買はぬ我にして微笑しつつながくうろうろとせむ 

                           (齋藤史)


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2014・07・29

2014-07-29 07:55:00 | Weblog


今日の「お気に入り」。

 わがうちに在る火山群いただきのみな欠けしまま冷ゆるほかなし

 しだいに長き列となりつつ走者らの川に沿ひゆく春のマラソン

 磁石もてわづかの砂鉄吸ひ寄するあそびしてゐることありにけり

                        (齋藤史)

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2014・07・28

2014-07-28 06:55:00 | Weblog


今日の「お気に入り」。

 適量の毒のことばのよろしさは風俗ドラマより胸が透く

 何の故に今日はかくさびしきか大根おろしに人参が卸されてゐて

 昼テレビ音を消しゐて競技者の白き姿が吊輪(つりわ)にかかる

                         (齋藤史)

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2014・07・27

2014-07-27 07:50:00 | Weblog


今日の「お気に入り」。

 日露戦に父が持ちたる双眼鏡敵にあらざるものも映しき

 モネの睡蓮咲く古風なるひるさがりピアノ、ピアニッシモにて弾けり

 見おろしに鳥が瞰(み)てゆくわが庭のこぶしあんずの樹は切りがたし

                           (齋藤史)

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2014・07・26

2014-07-26 06:10:00 | Weblog


今日の「お気に入り」。

 村と村とをへだててひとすぢの河黒し橋のかかりしことなき歴史

 金婚は来ることのなき寡婦がつくる日々お手軽なゴールドカレー

 われの眼のとても届かぬあたりにて樅は雌花を結実させぬ

                         (齋藤史)



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2014・07・25

2014-07-25 06:35:00 | Weblog


今日の「お気に入り」。

 更に十年記憶ずらせばこの道をゆく牧水の後姿(うしろで)も見ゆ

 摘みためしサフランの蕊乾きゐて吹けばとぶほどの老いしくれなゐ

 銀の食器黒変しをり密封より翔びたちしは何の透明体か

                         (齋藤史)

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2014・07・24

2014-07-24 07:50:00 | Weblog


今日の「お気に入り」。

 総立ちの紅夏葵 何にしも思ひ燃やしてかく咲きのぼる

 前世後世ただ茫々とあるなれば溶けぬうち召しあがれ抹茶入り氷菓

 足音をひそめて入りし夜の厨 きのこは昼間より伸びて居り

                         (齋藤史)

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2014・07・23

2014-07-23 04:25:00 | Weblog


今日の「お気に入り」。

 天命とならば素直に命終受けむ 素直ならずとも何としやうぞ

 支柱して立たすをがたまの苗一本 魂(たま)衰ふる齢(よはひ)に生きて

 一死もて抗ふことのすがしさを 熱湯浴びて割れたるグラス

                            (齋藤史)

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2014・07・22

2014-07-22 07:20:00 | Weblog


今日の「お気に入り」。

 歴史とてわれらが読みしおほかたもつねに勝者の側の文字か

 瞳(め)はただの穴にしておく木彫面(きぼりめん)小さくふかき千年の穴

 蒼然として老鶏は立ちてゐき双眼すでに今生を見ず

                                 (齋藤史)

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