今日の「お気に入り」は、2005年3月4日の記事の再録。
「 昨日に続いて今日も山本夏彦さん(1915-2002)です。
小学4年生のときに『人の一生』おおむねかくの如しと書いた綴方が『最後の波の音』の中に
再録されています。
『人の一生 4年 山本夏彦
おいおい泣いているうちに三つの坂を越す。
生意気なことを言っているうちに少年時代はすぎてしまう。
その頃になってあわてだすのが人間の常である。
あわててはたらいている者を笑う者も、自分たちがした事はとうに忘れている。
かれこれしているうちに二十台はすぎてしまう。
少し金でも出来るとしゃれてみたくなる。
その間をノラクラ遊んでくらす者もある。
そんな事をしているうちに子供が出来る。
子供が出来ると、少しは真面目にはたらくようになる。
こうして三十を過ぎ四十五十も過ぎてしまう。
又、その子供が同じことをする。
こうして人の一生は終わってしまうのである。』
山本少年10歳のときの綴方ですが、『人は5歳にしてすでにその人』です。
86歳になった山本老人はこの綴方について『最後の波の音』の中で次のように書いています。
『もとより十歳の子供のことである。深い魂胆はないが、その直感は小児のときからのものだと
今にして思われる。はたしてその通りだったのは遺憾である。』 」