今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から平成14年1月の「ならば来世も女に」と題した小文の一節です。
「昨今は夫婦別姓の時代、離婚の時代、キャリアウーマンの時代だという。タレントならいざ知らず凡夫凡婦の離婚に莫大な慰謝料なんかとれないのに、近くとれるようになるだろうと思って、そしてそれは近くなるのである。夜学生だの苦学生だのと言わなくなった。みんなアルバイトになった。『男女雇用機会均等法』は公布された。
セクハラは訴えられるようになった。それでいて自分の体は自分のものだと言うようになった。何より女は自立できるようになった。女の助平は公認されるようになった。子を生むのも生まないのも女の勝手になった。女と男の助平度が量れるとしたら、男は女の敵ではない。いいとか悪いとかではない。有史以来圧せられていた女の正体が、晴れてあらわれるようになったのである。」
(山本夏彦著「一寸さきはヤミがいい」新潮社刊 所収)