年末に娘がLINEで
「人間に向いてない」って読んだことある?
と聞いてきた。
新聞の読書欄で年末になると今年読んだお薦めの本とか特集されるけれど の本は宮部みゆきさんがお薦めとして挙げていたらしい。
18年6月に初版発行されたもので、私は未読だった。というか、その本自体を知らなかった。黒澤いずみ という作者も知らなかった。この作品でメフィスト賞を受賞したという。
子供が虫に変身してしまう という書き出しと聞き、浮かんだのはカフカの「変身」
読んでみたいと思い、早速図書館に予約を入れたが、当市図書館での所蔵は一冊しかなく私の順番は24番目。手元に来るには一年もかかりそう。
娘も読むのなら買っても良いと思ったけれど、行って見た書店では見つけられなかった。車で10分くらいのところにブックオフがあるので、そこに行ってみようかと思ったが行けずにいるうちに隣市の図書館で借りることが出来た。
数年前から突如として発生した奇病がある。それは、人間がある日突然に異形の姿へと変貌してしまうという恐ろしい病だ。
異形性変異症候群と名付けられたその病は瞬く間に全国に広がった。それは引きこもりの若者に多く発生した。その姿は虫であったり小動物であったり、また植物であったりしたが人間の一部を保持していて、とても気味の悪いものであるために保健所に持ち込まれ殺処分とされるもの、また親族に殴り殺されるものもあった。しかし人間としては死亡したものとして扱われるために罪に問われることは無い。
美晴の息子は虫に変貌した。夫は息子は死んだのだから虫は処分しようと言ったが、美晴は承服できない。異形になった子供を持つ親の会を知り、そこに参加したりもした。夫が息子を山の中に捨ててきたのを探しに行くという事もあった。夫が虫に物を投げつけ傷つけたのを契機に美晴は家を出る。
やがて奇病は引きこもりの若者だけでなく、社会生活を営んでいる大人も発病するようになる。
ここで思う。夫も異形に変化して物語は終わるのではないか。
だが、それだけではなかった。息子は脱皮し、また変わる。
物語としては面白かったと言えるが、最後に来て子供たちの独白らしきものがあり、不必要に話が浅くなったような気がする。
もし定価購入(1500円)した本であれば「失敗したな、一年待っても良かったかな」と思ったかもしれない。