椿山課長の7日間
満足度 ★★☆☆☆
感動度 ★★★☆☆
話の展開 ★★★☆☆
2006年 日本
原作 浅田次郎「椿山課長の7日間」
監督 河野圭太
キャスト
西田敏行
伊東美咲
西田敏行さんの仕草を真似られていたので、いつもの美しさが少しマイナス。
西田敏行さんの口調を女の姿を借りてといった設定であったため、いつものよさが出ていなかった。
服と髪型と彼女の顔立ちは好きだな!
成宮寛貴
結構演技的にもよく、彼の存在はぴりりと光輝いていた。
余
ゆとりのある品のある演技に満足。彼女無しではこの映画はありえない。
藤村俊二
喫茶店のマスター役で出番は少ない。しかし伊藤美咲が「ウインナーコーヒー」といった時点で椿山課長の存在に少し気づいたその余韻のもっていき方が上手かった。
小金字
淡々とした心優しい役柄が今回彼の演じ方にぴったりしていた。
志田未来(子役)
かわいくて上手い子だな。
和久井映見
他
招待券を二枚頂いていたので一枚追加して家族三人で『椿山課長の7日間』をみた。
梅田ピカデリーにて五時五十分、予定通りに予告。
予告終了予定は6時分である。
ところが…
予告の途中から音声が出ない。
たまたま『武士の一分』の予告からの為、劇場内のみんなは、主人公が目が不自由なことを強調の為の演出だとばかり思っていた。
予告を追えいざ本編に入っても音声はない。
会場はあちらこちらからざわめき、ついには席の通路側の親切な方が係員に知らせに行ってくださった。
「皆様には大変ご迷惑を…」とどこかで聞きなれたような乾いた説明。
数分ほどで映像は再開。
ところが…
またもや音声が出ないで映像だけが駆け足で場面を追い払う。
怒り出す人、あきれ返る人、笑い転げる人。
起こって振り返る人、文句を言う人、トイレに行く人…
反応はさまざまではあったが、結構始まる前からしらけてしまったのは確かだ。
人々の反応は時間がたちにつれ、怒りをあらわにする人と笑い転げる人に二分化しつつあった。
四度目の正直で音声は正常にスピーカーを通ってくれた。
気を取り直すために映像が始まるや否や、拍手が巻き起こる。
拍手は会場に連鎖した。
映画そのものは予想通りにまるで『釣り場か日誌』のようなのりで楽しく笑いを加えながら進む。
ただ脚本に少し無理があったせいか、伊藤美咲の美しさはかき消されていた。
また説明部分がくどく感じるのは監督或いは演出家のせいなのだろうか。
原作は浅田次郎。
私はこの大衆小説家の作品を読んだことがない。正確に言うと読みかけたり手にしたことは何度かある。しかし実際には読むことができないといった分類に属する作家の一人だと気づくまでに時間はかからなかった。
ただこの『椿山課長の7日間』においては映画化するよりも原作の方が一般的には楽しめるのではないだろうかと思う箇所が何度も出てくる。
先ほども書きかけたが、胃が突起を荒立てるくらいにくどい箇所が多い。
その際たるものがラストのこれからあの世に戻ろうとするシーン。
現世を去ろうとする女の形を借りた椿山課長。心でつながっていたデパート野婦人服売り場の椿山を思い慕う女との別れの場面では、二人の合言葉の愛してるといった言葉を置き換えたゼスチャーだけでよかったのだが、伊藤美咲の顔を西田敏行に置き換えることによって、会場全体に笑いが巻き起こる。
まるでカブキのしっとりとした山場の広がりのある場面で、突然カブキ役者が下駄を踏み外して蹴散らかし、花道付近の客の頭にこつんをあたり、大爆笑が起こったぐらいにバツが悪い。
芝居や映画が台無しである。
あそこまで説明しなくても、『鼻の仕草』だけで充分であった。
ラストだけではなく一事が万事 くどい説明の連続で、どこまで観客を小ばかにするのかなと興味を持ってみていた。
ハンカチを取り出して周りに聞こえるほどにおいおいと大無きして涙を拭う方たちもいらっしゃれば、同じラストの場面で声をたてて大笑いする方もいらっしゃる。これぞこの作品の真の狙いだと痛感する。多様性のとんだ万人に楽しめる作品作りに終始一貫されている監督或いは作品にたずさわる人々に拍手を送りたいと思います。
独断と偏見による私的感想をお許しください。