MEMENT メメント
満足度 ★★★★☆
話の展開 ★★★★★
神秘性 ★★★★★
楽しめ度★★★★★
2000年 アメリカ
監督・脚本 クリストファー・ノーラン
原案 ジョナサン・ノーラン
キャスト ガイ・ピアース
キャリー・アン・モス、
ジョー・パントリアーノ 他
彼は新しい記憶を10分間保つのが限界。いわゆる前向性健忘症。
元保険調査員の几帳面な彼はポラロイドカメラや刺青やメモによって、記録をつなぎ合わせて事実を探ろうとする。
主人公の記憶障害は精神的なショックによって引き起こされた物で、時にはその記憶は自分の都合のよいように置き換えられていることがありますが、これらは意図的作為的なものではなく、無意識の意識下で組み替えられた彼にとっては真実であろうと思われます。
映画の中ではこのような状態を『時間を逆行する』という表現方法で表現していますが、小学校一年生の言葉遊びに似ています。例えば『りんご』『みかん』『バナナ』を一字づつ区切って上、真ん中、下の文字それぞれを切って組み合わせて新しい文字を作る(時には意味のある言葉ができる場合もあり、子どもたちは沸きあがります。)って遊び(授業)があります。
一例として『りんご』『みかん』『バナナ』→『バかナ』『りナん』『みんご』
『バかナ』『りナん』『みんご』→『バカな りなんちゃん ビンゴ』といった風に記憶は自分中心に置き変えられていきます。
主人公の彼にとっても妻の美しい悲劇と 保険調査中の某奥さんの記録が置き換えられ、自分のいい具合に無意識に交差します。このあたりが心理学の面白いところでしょうか…
つまり平たく言うとA→B→Cがメメントの場合はA,B,Cと断片的な既得に区切られ、C→B→Aと逆行したり、時にはC→X(Bとは全く別のもの)→Aと記憶が置き換えられるのでしょう。
この映画は記憶という抽象的な曖昧ナモチーフを取り上げながら無意識における人間の罪悪や格闘を描きたかったのでしょうか。
安部公房氏の『善意?の中にはいつも殺意がこめられている』(言葉は忘れてしまいました。)といった内容が少し思い出されます。
この映画の感心した所はこの主人公の特殊な病状にとどまることなく、記憶の曖昧さは我々一般の病気を意識してない私たちにもあてはなるといったところではないでしょうか……
それが証拠にこの映画を初めから最後まで順を追って筋道を立ててあらすじを言える方が何人いらっしゃるでしょうか…少なくとも私の場合は大筋はいえても細部にわたっての順番などは途中が混乱いたします。
10分といった短い記憶ではありませんが、誰しもが無意識のうちに自分の都合のよいように記憶を置き換えるといった怖さが伝わってくる、そんな映画でした。
取り上げられた内容的にはこの手のものはとても好きで、原案を練られたジョナサン・ノーランの作品があれば読んでみたいと感じました。
また映画ももう一度じっくりとみてみたいと感じました。
内容の楽しめる秀作の一つだと思います。
最後に・・・
今日書いた内容は医学的に間違っている可能性もあります。
もしお気づきの点がございましたらお教えいただければ・・・と思います。