(写真は桜祭能 『綾鼓』のパンフレットの一部です)
初心者の能楽記録
桜祭能 『綾鼓』 いかるがホール
能楽『綾鼓』 植田恭三
仕舞『八島』 金剛龍謹
狂言『佐渡狐』 安東伸元
四月一日。奈良のいかるがホールで桜祭能を拝見させていただき、楽しい時間を過ごさせていただきました。
桜には一、二日早い小春日和。
ぽかぽかした日差しは心地よく、地元の方たちは散歩がてら、歩く姿や自転車姿も方も多くいらっしゃったようです。
列を並んでいると、植田恭三先生に能を習っているという、聡明そうな小学生に出会いました。彼女は目を輝かせて能楽部の様子を離してくれます。中学受験がおびただしい昨今、こういった子どもの経験も素晴らしいのかも知れないと感じてしまいました。彼女は将来お医者さんになると教えてくれました。私は彼女の趣味と希望の両立を、第三者ながら願っております。彼女の素直な心は、七分先の桜にも勝る素敵な和みを感じ、会場入りをしました。
今回は通路を挟んだ真正面に座ることにいたしました。この席は少し距離はあったのですが、全体が見渡せ、初心者の私にも少しは分かりやすい位置でした。
舞台の右上には大きな枝振りの満開の桜。なんて素敵な舞台に作られているのでしょう・・・私は思わず息を飲んでしまいました。桜はピンクで艶やかな香りが会場中に香るがごとくの錯覚を覚え、幸せな気分に浸ることができます。
隣席したご婦人は毎年この桜祭能を楽しみにされているとのこと。王寺からJR。駅からはタクシーで来られたと、にこやかにお話して下ださいました。
徳島出身ということもあって、三味線が好きとか。今も触っておられるそうです。御祖父様がその昔は裃を着て、舞台で弾いておられたとのこと。人形浄瑠璃は教えていただき、カブキの話では盛り上がりました。次の日の薬師寺の『百華能』(能楽や千之丞さんの狂言)の予定を知らせますと、恐縮するほどお喜びになり、こちらが嬉しくなってしまいました。隣席させていただきました○○さん、楽しい時間をどうも有難うございました。
『綾鼓』は筑前木の丸殿に仕える庭掃の老爺の面が上品で素敵でした。この面は私にとっては、とても落ち着き、好きな顔でした。ところが、この翁。実は女性に恋慕います。
そうと知った女は、
「綾(絹)張りの鼓を鳴らすならば、思いをかなえましょう。」
と難問を吹っかけます。
翁がどんな思いを込めて打とうとも綾の鼓は鳴らず、老人は池に身を投げるのです。
再び悪鬼と化して現れた翁の霊。
白頭の百毛(能楽ではどういうのでしょうか・・・)と白っぽい能装衣は素敵で、面は興奮するほど格好の良いものでした。私は心の中で思わず『素敵・・・』とささやいておりました。
女に鼓を鳴らせと迫る動きは迫力があり、初心者の私にも感じるものが多く、息をのむことさえはばかれます。
愛おしさが憎さや恨み、悲しさ、切なさへと変わり、私の心をとらえて離ししません。
この『綾鼓』という曲目は実際には鼓は手には持たず、正面の木(何の木でしょう…)に添えられています。
この鼓の存在は非常に華やかで、置きなの感情に比例したように感じました。
初心者ですので、今はここまでしかわかりませんでしたが、大変興味深く拝見させていただき、楽しい時間を過ごすことができました。有難うございました。
最後になりますが、私は能楽初心者ですので間違いなどが多いと思います。何かお気づきや間違い、失礼な点がございましたら、お教えいただけましたら、嬉しいです。どうぞ宜しくお願いいたします。