(写真は大阪。えべっさんの日にショウチク座近くで)
大阪ショウチク座 新築開場十周年記念
第四回浪花花形カブキ 平成19年4月1日(日)~8日(日)
第三部一、
なつまつり浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)
並木千柳作
三好松洛作
竹田小出雲作(三人合作)
桜の侯、夏芝居で水芝居、大阪芝居。
なんともユニークで素敵とは思うだろうが、全く違和感は無い。会場は熱気が感じられ、『なつまつりなにわかがみ』を待つ人々で緊迫感さえ感じられた。
以前にも書いたような気がするが、大坂・堺での実話殺人事件。
これをもとに、延享二(一七四五)年、大坂・竹本座で人形浄瑠璃として初演され、翌月歌舞伎化。
なんといっても殺しの『泥場』場面は印象的。
キサブロウさんとアイノスケさんの演技は緊迫感があり、見ごたえがあった。もう一度観たい!
今回観たアイノスケさんのダンシチは迫力があって好きだった。
この役は男前で、目力のあるニザエモンさんやアイノスケさんのような役者さんの方が 似合う気がする。彼は小粋で、首抜き衣装も良く似合う。
キサブロウさんの形相も怖くて身震いした。
民話の『見るなのパターン』をやぶって、地獄絵図を除き見たような気がした。
いつもながら、「悪い人でも姑は親。」の台詞は好きだ。
ただ今回は 『奴』→『人』に台詞が変更されていた。
『泥場』の姑殺しのバックにはなつまつりの風情で情緒がある。神輿(みこし)が担がれる。
高津宮の賑やかな祭り囃子。陰惨な悲劇をより深衣印象に導く。神輿が舞台の左から右にいくつも担がれる間、「ちょうしゃじゃ~ ちょうしゃじゃ~」の掛声が掛かる。しかし以前観た時はバックでニザエモンさんらしき声が聞こえてきた。今回はそういった遊びは無かった・・・・・・
カンジャクさんは釣船三婦役。ガトウさんの演技に似させておられ、迫力もある。関西弁も完璧で観ていて好感が持てた。素晴らしい。白地に墨絵の龍柄の着物は小粋で素敵だ。
タケサブロウさんも印象深く、素敵だった。
また、タカタロウさんは上品で、彼らしい演技で好きだった。
大切な役のオタツのセンジャクさんも今回は割合に良かったような気がする。ちなみに、以前に観た時は、私の好きなトキゾウさんで品良く、小粋だった。
顔を白塗りにされ、頬や目の周りの紅は控えめ。小粋に仕上げられていた。
顔を焼くシーンはつばを飲むほどに迫力があった。
「これで、ようござんすか。」といった台詞はすんなりと次の場面にうつる。台詞よりも、絵として素晴らしい出来であった。
芝居も終え、夫も私も満足感に酔いしれていた。
誰からとも無く拍手が巻き起こり、そのリズムは止むことが無い。
『なつまつりなにわかがみ』のような殺しの芝居ではあったが、鬘を変え、こぎれいに身をまとめられたアイノスケさんがカーテンコール。
観客はそれぞれに名前や屋号を呼び、アイノスケさんは照れておられた。
観客は立ち上がり、彼をたたえ拍手の渦。
幕は降りたが、客が帰らない。
アイノスケさんは困り果てた顔で、再び登場。
申し訳なさそうに
「もう先輩方の役者さんは帰ってしまわれて、私一人しかおりません。」
彼は困り果てたようで、大阪締め(二度たたき)でお開きとされた。
千秋楽に観劇。たまたま彼は何かの理由でカーテンコールに出てくださった。
私は得したような気がする。
彼の困り果てたような顔と『ダンシチ』の迫力のある演技が同一人物かと思うと、かえって役者としての厚みを感じるのであった。
ところでこの日のショウチク座。サカタトウジュウロウさんと扇千影さんご夫婦が来られていたと、夫が教えてくれた・・・
芝居が終わって、この日はお気軽感覚で、二人でがんこ寿司のろばた(二階)に立ち寄る。冷酒のビンには がんこと記されていた。
夫が料理を見繕って、色々と頼んでくれる。
中でも季節の山菜の天婦羅が美味かった。素朴だが、たらの芽や舞茸が酒に合っていた。ささやかな酒の宴を終え、二人は心地よく、帰路に向かった。
芝居が良いと、酒が飲みたくなる。
芝居にほろ酔い、料理や酒にほろ酔う。いたってノーテンキな夫婦である。
↓ 2006年7月15日 『なつまつりなにわかがみ』の感想とあらすじ(トウジュウロウ襲名披露)
http://blog.goo.ne.jp/usuaomidori/e/a0a48eb59cd64393990267648d02920a