夫婦喧嘩
少し車を走らせてると、農家の倉庫か何かの屋根の上に、烏が二羽。
なにやら、、大声を出している。
「ぐわぁあ~。ぐわ!」
「がぁ!ぐわぁっ、がっ!」
挑発やお誘いではなく、よくみるとどうも夫婦らしい。
『狐の嫁入りならず、烏の夫婦喧嘩か・・・』
私はくだらないことを考えながら、ゆっくりとブレーキ。
烏はまだ、喧嘩を続けている。
『はてさて、向かって右が旦那、左が女房ってところか・・・?』
私の妄想は終わり無きかな・・・
右下の雀は、
『我関せず。』
といった無表情な面持ちで、横を向いている。
人間界では度々繰り広げられる子の構図は、烏界でも繰り広げられているらしい・・・
そもそも烏は利口だ。
上手いものだけを掻っ攫って言ったり人間のことばも覚える。
赤子の頃から飼いならすと、人間にも懐くらしい。
以前 京都の桂付近で見たのだが、農家のおじさんが畑で箱を開けた。
すると二羽の烏が、ぱっと空に飛び立った。
カラスたちは畑で遊美、ゆっくりとした時間を過ごしていた。
十分ほどして おじさんがなにやら大きな声で唱えると、二羽の烏は箱に舞い戻ってきた。
蛇使いならず、烏使いのおじさんだ。
畑を見ただけでも幸せな気分に浸ることができる京都の中心地に育った私の 烏の懐き方は、今も楽しい思い出の一つとして、心に刻み込まれている。
そういうと、あの優しそうなおじさんは、今はどうしているのだろうか・・・
額に深い皺の、農家のおじさん。いい顔をされていたなぁ・・・
あれから二十年。私はあのおじさんのように、いい人生を歩めているのだろうか・・・