乱鳥の書きなぐり

遅寝短眠、起床遊喰、趣味没頭、興味津々、一進二退、千鳥前進、見聞散歩、読書妄想、美術芝居、満員御礼、感謝合掌、誤字御免、

恩頼堂文庫旧蔵本 『仁勢物語』 84 三十七丁裏 三十八丁表 と、『伊勢物語』岩波古典文学大系9

2020-10-23 | 在原業平、そして、伊勢物語 と、仮名草子 仁勢物語
恩頼堂文庫旧蔵本 『仁勢物語』 84 三十七丁裏 三十八丁表 と、『伊勢物語』岩波古典文学大系9

富田高至 編者

和泉書院影印業刊 65(第四期) 1998年

 

 

下 84 三十七丁裏 三十八丁表

 

三十七丁裏

◯をかし、男有りけり、身ハ膝行(イタカリ ママ →いざり)なから、母なん神子也

けり、その母、長鬼(ママ 長岡)といふ所に住けり、子ハ京に乞食しけれハ、

やしなふとしけれと、一さい衛(ママ 得)やしなハす、人もたのまねハ、占

もせさりけり、さるに しハすはかりに、橡(トチ)の実(ミ)とてふん

したる紙より、うれしくあけてみれハ、歌より、

   老ぬれハ 枝のわかれのありといえむ

   おそるなみたハ とちのみのごと

かの子ゐざりなかりなきて、よめる、

   世の中に 枝のわかれのなくもかな

   千世もといのる 人の団栗(ドンクリ)

 

 

 

 

『仁勢物語』和泉書院影印業刊       

   老ぬれハ 枝のわかれのありといえむ

   おそるなみたハ とちのみのごと

『伊勢物語』岩波古典文学大系9より写す

   老(い)ぬれば さらぬ別れのありといへば

   いよ/\見まく ほしき君かな

 

『仁勢物語』和泉書院影印業刊

   世の中に 枝のわかれのなくもかな

   千世もといのる 人の団栗(ドンクリ

『伊勢物語』岩波古典文学大系9より写す

   世の中に さらぬ別れのなくも哉

   千世もといのる 人の子のため

 

 

膝行(イタカリ ママ)

 膝行(いざり)(しっこう)

膝行(いざり)《動詞「いざ(躄)る」の連用形から》

 1 ひざや尻を地につけたままで進むこと。

  膝行(しっこう)。

 2 足が不自由で立てない人。 

 

神子

 みこ 

 

長鬼(ママ)といふ所

 長岡といふ所

 

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恩頼堂文庫旧蔵本 『仁勢物語』 83 三十七丁表 三十七丁裏と、『伊勢物語』岩波古典文学大系9

2020-10-23 | 在原業平、そして、伊勢物語 と、仮名草子 仁勢物語
恩頼堂文庫旧蔵本 『仁勢物語』 83 三十七丁表 三十七丁裏と、『伊勢物語』岩波古典文学大系9

富田高至 編者

和泉書院影印業刊 65(第四期) 1998年

 

 

下 83 三十七丁表 三十七丁裏

 

三十七丁表

◯をかし、信濃にかよひ給ひし維茂将軍、れいの

狩しにおハします、共に馬乗ると、大勢にて狩しけ給へり、

一尾へてみるに、假屋打ちけり、女おほうして、とくよ

バんとおもふに、大勢をとゞめて、ろくならん所まてとて

乗打をせさり、女此馬のくらをとりけれハおりて、

   枕とて 草引むすふこともせし

   誰かつまとたに たのまれなくに

 

三十七丁裏

とよみける時ハ、九月晦日なりける将軍おほきに

酔て、赤顔し給ふてける、かくして舞つ謡つ飲ける

を思ひの外に御烏帽子も落ちてける、無理に鬼ともくひ

奉らんとて、大勢ましてよるに、八幡山の麓なる

甲ら(ママ かわら)、足いとはやし、強くて、戸隠に参りてみ奉るに、

づぶ/″\と鼾(イビキ)かきておハしけれハ、やゝ久しくおこして、仰

の事なと御博士とり出て消にける、さてもさふら

ひしかなと思へと、大鬼小鬼とも有りけハ、えためら

はて、無理切に切てかゝれバ、鬼、

   わるくして 太刀ハあらんと思ひきや

   弓ふみおれハ 君をくはんに

   

 

 

『仁勢物語』和泉書院影印業刊       

   枕とて 草引むすふこともせし

   誰かつまとたに たのまれなくに

『伊勢物語』岩波古典文学大系9より写す

   枕とて 草ひき結ぶこともせじ

   秋の夜だに たのまれなくに

 

『仁勢物語』和泉書院影印業刊

   わるくして 太刀ハあらんと思ひきや

   弓ふみおれハ 君をくはんに

『伊勢物語』岩波古典文学大系9より写す

   忘れては 夢かぞと思(ふ)思ひきや

   雪ふみわけて きみを見むとは

 

 

維茂将軍

 平維茂

 平繁盛の子として誕生。

『今昔物語集』によると二話とも平貞盛の弟・陸奥守平繁盛の孫で上総介・平兼忠の子とされているが、伯父・貞盛の養子となった。貞盛は多くの養子を取っており、子としては15番目だったことから余五(十を超えた余りの五)君、また後に将軍となったと伝えられることから余五将軍と言われる。

 

 平維茂(これもり)

 平安時代中期の武将。

 平将門の乱平定で名を馳せた平 貞盛の甥で養子となり15番目の子として余五将軍と呼ばれた平維茂の墓とされています。

「鬼女紅葉伝説」 戸隠村(現長野市戸隠)で一党を組織して富豪の家々を襲うようになった紅葉。

 その噂は京都にも届き、紅葉討伐のために派遣されたのが平 維茂。平 維茂は苦戦するも、別所温泉の北向観音の加護によって紅葉を討ち取ったといいます。

 しかし、維茂も戦いに傷つき別所温泉での湯治も虚しく亡くなったとされています。

 

鬼女紅葉伝説

 平安の頃、紅葉という高貴な女性が京の都から水無瀬(鬼無里)に追放されてきました。

 村人は美貌と教養溢れる紅葉を敬慕し、内裏屋敷を造って敬愛しました。

 しかし、紅葉は山里の暮らしに物足りなさを感じ、昼は村人に読み書きなどを教えていたものの、夜は変装して他村を荒らし回る生活を始めます。

 やがて紅葉は鬼女と呼ばれるようになり、更に鬼女が京を狙っているという噂が流れました。

 朝廷はその噂を聞き、平維茂(たいらのこれもち)に鬼女退治を命じました。維茂は多くの兵を連れ急ぎ討伐へ向かいましたが、紅葉の妖術を前に太刀打ちできず、失敗に終わります。

 紅葉の妖術を破るためには神仏の力にすがる他ないと、維茂は別所北向観音に17日間参籠し必勝祈願をし、降魔の剣を授かりました。

 剣の力で妖術は無効化され、ついに紅葉は征伐されました。

 

れいの

 例の

 

一尾(いちお)へてみる

 或る山裾の延びた所を通り越して。

 

女おほうして

 女多うして

 

女おほうして、とくバん

 疾く(とく)副詞

 ①すぐに。早速。急いで。

  出典土佐日記 二・五 「船とく漕(こ)げ」

  [訳] 船を急いで漕げ。

 ②すでに。とっくに。

  出典源氏物語 夕顔 「息はとく絶え果てにけり」

  [訳] 息はすでにすっかり絶えてしまった。

 

ろくならん

 陸ならん

 平らな土地まではと思って。

 

枕とて 草引むすふこともせし

誰かつまとたに たのまれなくに

  枕にしようとして草を引いたと云ったこともせず、

  誰が夫(つま)とだに、頼まれなくに。

 

甲ら(かわら)

 かうら

 謡曲『紅葉狩』では、「かわら」と謳う。

 鬼女紅葉伝説に関係する。

『紅葉狩』は何度か楽しんだことがあるが、印象深い能楽である。

 

えためらはて、

 得ためらわで

 

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『年中行事絵巻』日本絵巻大成 8-33 【巻四 射遣(いのこし)、賭弓(のりゆみ) 門前の様子】一紙〜四紙 中央公論社 小松茂実編

2020-10-23 | 絵巻物、縁起絵巻、巻物、絵解き掛け軸、屏風

絵図は二巻

 

 

 

『年中行事絵巻』日本絵巻大成 8-33 【巻四 射遣(いのこし)、賭弓(のりゆみ) 門前の様子】一紙〜四紙 中央公論社 小松茂実編

 

 

日本絵巻大成 8 巻四 一紙〜四紙

 

 射遣(いのこし)、賭弓(のりゆみ)

 

 妻飾り

 白壁

 茅葺の屋根には、鴟尾

 

 門前には、檳榔毛車(びろうげのくるま)や文車(もんのくるま)

 

 少年や、仕丁

 

 

  (『年中行事絵巻』日本絵巻大成 引用)

  

  

 

鴟尾

 宮殿・仏殿などの大建築の大棟(おおむね)の両端に取りつけた鳥の尾の形の飾り。

 沓形(くつがた)。

 

檳榔毛車(びろうげのくるま)

 牛車(ぎっしゃ)の一。

 白く晒(さら)した檳榔の葉を細かく裂いて車の屋形をおおったもの。

 上皇・親王・大臣以下、四位以上の者、女官・高僧などが乗用した。

 びろうぐるま。びりょうのくるま。

檳榔(びろう)

 檳榔(びろう)は別名蒲葵(ほき)、コバ、アジマサとも呼ばれ、記紀神話の時代より神木として登場しています。

 その葉で作られた団扇(うちわ)や笠、牛車や馬の装飾品などは高貴なものとして重宝がられていました。   

 また山伏修験者も峰入の時にはその団扇を腰にさし、護摩焚きの時には必ずこれを用いるといわれています。

 沖縄では世の始まりのことを、クバヌファユー(蒲葵の葉世)と言って、そこでは男も女もコバの葉で作った衣を腰にまとっていたと語り伝えられています。

 

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