生誕100年記念
創造する多面体 ダリ展
三月末。夫、息子、私の家族三人で、サントリー・ミュージアム『ダリ展』に行く。娘は一足早く、ダリを楽しんでいたため、今回三人。
ここは天保山の海遊館近く。
花曇り。潮風が心地よい。
三人でダリ展会場をうろついていたとはいえ、各人ばらばらに鑑賞。いつものことである。
大体の展覧会は三人とも二、三時間かかるので、最後には連れだって、食事ということになる。
このダリ展のサントリーの案内を見ると、大体次のように記されている。
会期: 2007年3月8日(木)~2007年5月6日(日)会期中無休 開館時間: 10:30~19:30(最終入場は19:00まで) 入場料 ※( )内は前売券大人 1,300円(1,100円)高・大学生、シニア 1,000円(800円)※シニアは60歳以上。小・中学生 600円(500円) ※前売券は、電子チケットぴあ(Pコード:687-095)、ローソンチケット(Lコード:57767)、ほか主要プレイガイド、コンビニ、イープラスなどで発売中です。 ※身体障害者手帳、療育手帳をお持ちの方とその付添者1名は当日料金の半額。 ※5月5日(こどもの日)は、小・中学生のお客様は、ギャラリー、シアターとも入場無料です。
独自の内面世界を写実的技法によって克明に描き出した20世紀を代表する画家サルバドール・ダリ(1904-1989)。
生まれ故郷のスペイン・カタルーニャを思わせる荒涼とした大地を背景に、見方によって違った姿に変化する「ダブル・イメージ」などの技法を駆使して描かれた作品は、溶けた時計や群がる蟻といった忘れがたいモチーフを通して、私たちの心の底に横たわる非日常の世界を呼び覚まします。その夢と現実が白昼夢のように融合したダリの芸術は多くの人々を魅了し続けてまいりました。
2004年はダリの生誕100年にあたり、世界各地でこれを記念する展覧会が開かれました。
本展は、「ダリ生誕100年記念」プロジェクトの一環として、スペインのダリ財団およびアメリカのダリ美術館の全面的な協力のもとに開催されるものです。油彩画約40点に加え、今回特別に展示されるダリ財団秘蔵の手稿やドローイングを交えた約180点の作品を通して、絵画のみならず、あらゆるものに対して稀有な才能と熱情をもって取り組んだダリの多面的な世界をご覧いただきます
(サントリーHP参考、転載)
この展覧会の正式名は『創造する多面体 ダリ展』である。
多範囲に渡る作品群。『創造する多面体』とはうまくいったものである。
会場は『創造する多面体 ダリ展』にふさわしく、適切な明るさの美術館。作品の並び方も申し分ない。
まず初めにキュビスムを思わせる作品の数々。
その後はダリらしさを感じさせる 油絵や立体、衣装や家具、書簡、イラストなどに目を奪われる。油四十点。全体で二百点ばかりが展示されている。
中にはレプリカ。会場で再現されたものも多い。
映像は二箇所。小さな映像はこのほかにも作品の横に置かれているものもある。
書簡も古書も雑誌も面白い。手紙にはピカソを意識してか、名などの記されていた。
全てをゆっくり見要ものなら、少なくとも五時間はかかりそうだ。
挿絵は全体に質が良かったように感じる。
好きな油絵作品が数点。写真は『帆船の動きを真似る女たち』(1940)である。好きな作品だったので。絵葉書を購入。透明色のオーレオリンと不透明なホワイトが効果的に使われている。天才だ。この作品は立派な無料パンフに載せられている作品『壊れた橋と夢』の近くにある。壁面ど真ん中。素晴らしい。後で聞くと、子どももこの絵は興味深かったとのこと。
夫と共通で好きだった絵は『地質学的反響 ラピエタ』 この画もテーマ、構図、色彩などがとても興味深い。
『奇妙な廃墟の中の彩色?を心配でふさぎがちに歩き回る妊婦に形を変えるナポレオン』といった長ったらしい理屈屋のダリが伺える作品も好きな作品だった。
『パラディオのタリア柱廟』(1938)は構図変形。左上にとってあり、素人の私にはトリミングしたくなるが、これも天才ダリのねらい目か・・・まるで最前列、左から舞台を眺めたような構図。興味深い。
一点集中の主は、骸骨のような白い主が輪を持って踊っていた。ガラか、あるいは自分の苦悩なのだろうか・・・一点集中の主に向かって二列のギャラリーはてを差し伸べて見守る。前列左の人物だkrはそのてを主にではなく、右に伸ばす。構図をこの手で安定させ、ひとまず落ち着く。右としたの無駄な空間はダリ自身のの自問と空虚感からくるものだろうか。或いは単純に、自分以外の客席の観客をあらわしているのだろうか・・・定かではないが、気になる作品だ。
ダリはこのほかにも舞台をあらわす作品を描いており、今回も並べられていた。
このほかにも目をひいたのは、『横たわる女』(1926)や『大きな親指、浜辺、腐った鳥』(1928)などの初期のもの。
先にも書いたが、挿絵は好きだった。『モンテェーニュの随想録』の言葉が好きだった。このモンテェーニュの随想録をダリが11巻(全て)持っていたというからすごい。全ての挿絵を描いたわけではないだろうが、残されている文章を対比させながら、一日中眺めていたいと思うのは、私だけだろうか・・・
『催淫作用のあるタキシード』(1970)はロックグループのピンク・フロイドのアルバムジャケットを思い浮かべさせる。あの有名な電球のついたタキシードの。な~んだ、ダリの真似だったのか・・・
ダリのファッションやメイクは70年代のハードロックやグラムロックに通じるかっこよさ。というより70年代ロックが、若かりし頃のダリの二番煎じだったのかと思うと、ショックを受ける。ダリは好きだが、まねだと思うと裏切られた感じがする。
天井から黒の傘を吊り下げた作品は、原作(写真)の傘のカーブとは微妙に違う。しかし遠くから見ると、目をひくものがある。傘に限らず、ダリの作品は近くで見るよりも極力遠くから見てみたい。近くからと遠くから見るその対比は作品の二面、多面性をあからさまに見せ付ける。
シュールな作品も多くあったが、以前に観たダリ展に比べてダリらしいものが思ったほどは無かった。時計とたまごの作品が少ないのが残念だった。ふふっ、たまごか・・・
小さな4歳と2歳くらいの子どもを連れた親子が絵を見ていた。お姉ちゃんが、
「お父さん。卵の中、何がはいってるの?」
弟は
「ちゃまご、ちゃまご、ちゃまごあた(あった)~~~ちゃまごあた~~~」
とはしゃいでいた。
子どもは素直に作品を楽しんでいて、好感が持てる。作品を読み取ろうとして頓珍漢な自分が恥ずかしい。夫は歴史的な流れの中で作品を味わい、私は好みだけが基準であるが、子どもたちを見ていると、理屈は必要ないのかもしれない。
ダリ或いは立地条件、発券条件などからダリ展は多くの人たちでごった返していた。私は見づらいというよりも、うれしさの方が大きかった。というのも、美術作品をたまたま楽しんだというカップルや親子連れも多く、芸術を身近に楽しむことができるという点において、いい美術館だと感じる。天保山という地に美術館を構えたサントリーに、拍手を送りたい。