そのままVon

おもに31文字の語呂合わせ日記

新春詠

2023年01月05日 | 三十一文字
2023/1/05
新春の読売歌壇の選者らの歌味わわんお手本として
小池光<霜柱踏む>
 ①新春の庭に降り立ちちからある霜柱踏む善きことあれな
 ②胃ふくろの中に容れたりいただきし会津みしらずの大柿ひとつ
 ③息つめて一気に抜きしいつぽんの白毛鼻毛をわれは凝視す
栗木京子<風を聴く兎>
 ①浅草に人にぎはへり密集を恐れし日々を忘れをらねど
 ②長き耳もつゆゑ兎はしんしんと風を聴くのか庭に動かず
 ③かたまりてゐるときあたたかさうに見ゆ黄の水仙も白き兎も
俵万智<口ぐせ>
 ①仙台の日ざし優しく柔らかく長命草に水をやる朝
 ②人生は長いひとつの連作であとがきはまだ書かないでおく
 ③傘寿過ぎて人は変われる「ごめん」から「ありがとう」になる母の口ぐせ
黒瀬珂瀾<再生について>
 ①死者多き齢あらたまるうすやみに三日月宗近あわれきらめく
 ②交差点の根雪凍てたるあさかげや触れてよかつた首筋なのか
 ③なつかしきひとりと別れ新春の京と伏見区羽束師に雨


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栗木京子

2022年12月10日 | 三十一文字
2022/12/10
「栗木氏の最新歌集に十首みる短歌の叙情少なく思う
 [けもの感、子育ての思い出、介護、ウイルス、マスク専門店、積乱雲、ミサイル、人道回廊、戦争犠牲、移動式火葬炉][]」
「東灘ペタンク行くもまちがえて2週3週混乱をせし[][]」
「加古さんの短歌ことしを追加してすべての歌を対象にせし[][]」
「1.今日われは手負ひのけもの地下鉄の吊革にぎりながら目を閉づ[][]」
「2.みづからが安堵したくて子育てていにのめり込みし日われにもありき[][]」
「3.座すままに車椅子から便器へと移され母は苦しかりしか[][]」
「4.『京』は眠り『富岳』の動くこの国に新型ウイルス広がりやまず[][] 」
「5.東京駅にマスク専門店できて下着売り場のごとく華やぐ [][]」
「6.一万個分のプールの水収め積乱雲は朝をかがやく [][]」
「7.東京ドーム大改修の成りし日に都市ハルキウをミサイル襲ふ[][]」
「8.道はすべて人道回廊であるべきを国境にいま火の手のあがる[][]」
「9.戦局は消耗戦に入りしと力尽きゆくは幼児や老い人[][]」
「10.移動式火葬炉現はれ犠牲者を葬ハフるとぞ二十一世紀の戦[][]」


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伊藤一彦最新歌集『言霊の風』

2022年11月10日 | 三十一文字
2022/11/10
「伊藤さん教師もされてヒューマンと思いしところ『言霊』をいう[][]」
「霜月に入り十首を味わえる今日で満願アップをしたり[][]」
「日本列島くちなはならば九州は尾つぽなるらむ淋漓たれ尾は[伊藤一彦『言霊の風』1][]」
「淋漓なる言葉は知らずニュアンスで孤独をよしとする覚悟ありや[][]」
「森の奥の花と鳥との合歓を誰ものぞかず誰も見るなかれ[伊藤一彦『言霊の風』2][]」
「新鮮で合歓をのぞくの使い方吾も使わん『合歓』なる言葉[][]」
「火の中にまなこのごとき炎見つ一瞬にして二度はまみえず[伊藤一彦『言霊の風』3][]」
「焔ヒは生きて 瞬きのまに形変えイメージとして脳ナヅキに残る[][]」
「新しき〈我〉と知り合ふ毎日が老人にもある黒鶫来る[伊藤一彦『言霊の風』4][]」
「湯のやうな柔らかき心失ひしおのれの内へ燗酒注しき[伊藤一彦『言霊の風』5][]」
「冬晴れの空は光のほかはなく光だけある空クウの充実[伊藤一彦『言霊の風』6][]」
「この秋の空は澄みたり雲もなく光だけある空の充実[][]」
「ほろびたる月の都が見ゆるまで日向の月はかがやきてをり[伊藤一彦『言霊の風』7][]」
「ほろびたる都はどれも月にあるじっくりみたる日向の月を[][]」
「闇の奥にごろんと落ちし音せるがたましひに重さあるはずのなし[伊藤一彦『言霊の風』8][]」
「闇のおく介錯の首転がれりこちらをみてはニヤリと嗤う[][]」
「みんなみの香菓カグノコノミのかがやきは今日一日のわれを許さず[伊藤一彦『言霊の風』9][]」
「挿し絵ではザボンのような果物か萎びる吾はお呼びじゃないか[][]」
「神様の御席と記す白き紙ディスタンスのための空席に[伊藤一彦『言霊の風』10][]」
「ディスタンスとる空席に神がいる高千穂からのお出ましなるか[][]」
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歌集「置行堀」永田和弘著

2022年07月10日 | 三十一文字
2022/7/10
「七月にはじまる十首取りあげて検討するも衝撃はなし[][]」
「死後の時間をわれと生きをりよかつたわねとあなたが言った花たちあふひ[1][]」
「花枯れてなにかをしたか裕子さん少し不明も残る歌かな[][]」
「夢を見る余裕がなくて夢にすらあなたに逢へぬ日々かなしむ[2][]」
「永田さん本業忙しく夢にさえ見ないを悔いる歌であるらし[][]」
「ときどきは覗きにおいでこの世には君の知らないをさなごがゐる[3][]」
「紅ちゃんに二子や三子が生まれたるか『ユウコサ~ン』と呼ぶ子が増えたるか[][]」
「ここにゐるべきひと多けれどゐてほしきたつたひとりのひと思ひをり[4][]」
「結社では共に重鎮ご夫婦は歌では妻が神がかりたり[][]」
「見えねども確かに富士を感じつつけふもたなびく煙を眺む[5][]」
「上京の車中で歌作楽しめり『時速十五首』二時間ほどか[][]」
「ねむくてねむくて死ぬほどねむいと言ひながら死にゆくならむわれの場合は[6][]」
「羨望を抱えたままで歌作する二足のわらじ履いて歩けり[歌作は裕子さんに任せればよかったのに。眠いのは当然][]」
「いつかこの階段の下で死んでゐるわたしを見つける子供たちあはれ[7][]」
「わからずも悔いのこらない生き方を模索の半ば倒れることも[][]」
「二人ゐて楽しい筈がわたしを置いて去りにき[8][]」
「未練たらたら二人して楽しむまえに逝ったというか[置行堀の原点か][]」
「コスモスの花群に白き手拭ひの姉さんかぶりがあなたであつた[9][]」
「花咲けと種子撒く人に強力な小道具があり姉さん被り[][]」
「もう長く夢の中にも出てこない早く忘れよと言ふのかきみは[10][]」
「そうなのよ資料提供終えたると吾は思わんよい歌つくれ[][]」


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鑑賞11.主観をどう表現するか

2022年01月31日 | 三十一文字
2022/01/31
「六時間を歩いて帰り来し父は神戸の街の惨を語らず[俵万智][]」
「箪笥の下を必死に抜けし老妻は一瞬笑い次に号泣す[俵万智][]」
「もの言わぬ男の肩の大きくて叩きやすくてときおり叩く[俵万智][]」
「とめどなき遠さにひとは眠りゆく吾を腕カイナのうちに閉ざして[俵万智][]」
「夫の背に馴染みてくぼむ籐椅子にためらふごとく木洩れ日がが来る[俵万智][]」
「サバンナの象のうんこよきいてくれだるいせつないこわいさみしい[俵万智][]」
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