2016/03/31
【推量の助動詞『めり』『なり』『らし』】
「推量と推定の差はいかがかな『…だろう』の度合い強き推定()」
「推定の『めり』『なり』『らし』の助動詞は『めり』と『なり』とをセットで覚える
(めり:視覚による推定
,なり:聴覚による推定
)」
「『めり』の意味推定、婉曲あるけれど実作にては婉曲はなし
(推定:…ノヨウダ、…ニミエル
=視覚による推定
,婉曲:………ノヨウダ)」
「『なり』の意味推定、伝聞あるけれど実作にては伝聞はなし
(推定:…ノヨウダ、…ラシイ
=聴覚による推定
,伝聞:…トイウ、…ソウダ、…トキイテイル
)」
「『めり』と『なり』ラ変活用するけれど接続するは終止形なり
(めり:○・めり・めり・める・めれ・○
,一般接続は終止形だが、ラ変接続は連体形
,なり:○・なり・なり・なる・なれ・○
,一般接続は終止形だが、ラ変接続は連体形
)」
【『めり』『なり』の例句】
「玉霰夜たかは月に帰るめり(一茶/終止形)」
「日盛りに蝶のふれ合ふ音すなり(松瀬青々/終止形)」
「筒鳥を幽かにすなる木のふかさ(水原秋桜子/連体形)」
【推量の助動詞『らし』『まし』】
「『らし』セット意味・接続に活用は以下の通りで簡単である
(意味:根拠のある推定=…ラシイ
,一般接続:終止形接続
,ラ変接続:連体形接続
,活用:○・○・らし・らし・らし・○
)」
「推定の助動詞『らし』と『らしい』には微妙な違いあるといいたり
(本来終止形接続・連体形接続すべきが、名詞・体言に接続している
,『らし』:鎌倉・室町の中世にいったん消滅
,江戸中期に現代につながる助動詞の『らしい』が出てきた
=歴史の中で、いったん断絶がある)」
「夫婦らし酸漿市の戻りらし[]
、助炭の絵どうやら田舎源氏らし[阿波野青畝]
、目輝きはつしとかかる鶇らし[星野立子]
、キャンプ出て月に髪梳スく少女らし[岡田日郎]
(現代語は体言+『らしい』と使われ、『名詞+らし』は混用の可能性がある)」
【『らし』の例句】
「月の出や印南野に苗余るらし(永田耕衣/終止形)」
「夏来るらし貝がらのストラップ(黛まどか)」
「『まし』の意味いくつかあれど俳句では収まりきらず使われぬもの
(反実仮想:モシ…デアッタラ、…デアルダロウニ
,悔恨・希望:…デアレバヨイノニ
,ためらい・不安:…シヨウカシラ
,推量・意志:…ダロウ
,)」
「世の中にたえて桜のなかりせば春のこころはのどけからまし
(和歌ではあるが、俳句では用例なし)」
「助動詞の『まし』の接続・活用は以下のようだが馴染み少ない
(接続:未然形接続
,活用:[ませ]ましか・○・まし・まし・ましか・○
)」
2016/03/31
「一輪のアマナの花をくわえたる使者めく鳥が飛び立ちゆけり(鳥海明子)」
「ユリ科なり甘菜と書いて白い花暗紅色の細い線あり
(花言葉:運が向いてくる)」
「鯡には春告げ魚の異名あり春に産卵岸辺に来たり
(『春告魚の鯡』)」
「春になり東北地方の農夫・漁夫漁獲のひとで道に渡れり
(『渡り漁夫』なる季語もある)」
「一番の渡り漁師や雪解風(碧梧桐/気重なり)」
「雲充ちて荷ぐるみ黒く渡る漁夫(千空)」
2016/03/30
【打消推量の助動詞『じ』『まじ』】
【助動詞の『じ』】
「助動詞の『じ』の意味として二通り打消し推量・打消し意志と
(打消し推量:…ナイダロウ、…マイ/二人称、三人称の時
,打消し意志:…スルツモリハナイ、…マイ/一人称の時
)」
「馬方は知らじ時雨の大井川(芭蕉)」
「鶏頭の芽を踏まじ鶏頭の芽を踏まじ(岸本尚毅)」
「助動詞の『じ』の活用は『』のみで接続するは未然形なり
(活用:○・○・じ・じ・じ・○
,接続:未然形
)」
【『じ』の例句】
「神棚の灯は怠らじ蚕時(蕪村/終止形)」
「冬に負けじ割りてはくらふ獄の飯(秋元不死男/)」
【助動詞の『まじ』】
「助動詞の『まじ』の意味には四通り推・意・適・可の打消である
(打消し推量:キット…ナイダロウ、…ナイニチガイナイ、…ハズガナイ、…マイ
/例句:春鴉野に悪声は嘆くまじ[河野南畦]
,打消し意志:ケッシテ…ナイツモリデアル、…スルキハナイ、…マイ
/例句:原爆許すまじ蟹かつかつと瓦礫あゆむ[金子兜太]
,不適当な事態:…テハナラナイ、…ナイホウガヨイ
/例句:踏むまじき沙羅の落花のひとつふたつ[日野草城]
,不可能の推量:…デキソウニナイ
)」
「助動詞の『まじ』の活用二つあり形容詞的とカリ活用とあり
(形容詞型:○・まじく・まじ・まじき・まじけれ・○
,カリ活用:○・まじかり・○・まじかる・○・○
)」
「接続は要注意して使うべし通常終止でラ行は連体()」
「この『まじ』の接続するに著名なる俳人さえも間違うという
(『負くまじく』が正解:歌留多とる皆美しく負けまじく[高浜虚子]
,『老ゆまじく』が正解:白地着ていましばらくを老いまじく[中尾寿美子]
)」
【『まじ』の例句】
「美しく残れる雪を踏むまじく(高浜虚子/連用形)」
「優曇華やしづかなる代は復と来まじ(中村草田男/終止形)」
「あせるまじ冬木を切れば芯の紅(香西照雄)」
「鴬や雨やむまじき旅ごろも(水原秋桜子/連体形)」
2016/03/30
【推量・当然の助動詞『べし』】
「『べし』の意味『西瓜止めて』と記憶せよ全部で六つなんとかなるさ
(ス:推量=キット…ダロウ
,イ:意志=…シヨウ、…スルツモリダ
,カ:可能=…デキル、…デキソウダ
,ト:当然=…ハズダ、トウゼン…スベキダ
,メ:命令=…セヨ
,テ:適当・勧誘=…ノガヨイ、…ノガテキトウデアル
)」
「大夕焼消えなば夫の帰るべし(石橋秀野/推量)」
「行々子殿に一筆申すべく(波多野爽波/意志)」
「初富士を隠さふべしや深庇(阿波野青畝/可能)」
「鰯雲人に告ぐべきことならず(加藤秋邨/当然)」
「シュウセンは漕ぐべし愛は奪うべし(三橋鷹女/命令)」
「山吹や笠に指すべき技の形ナリ(芭蕉/適当・勧誘)」
「活用は二種類ありてク活用・カリ活用の用法があり
(『ク活用』:○・べく・べし・べき・ベケレ・○
,『カリ活用』:べから・べかり・○・べかる・○・○
)」
「接続は基本は終止もラ行のみ連体形に接続される
(終止形=一般:行くべし、死ぬべし
,連体形=ラ行:あるべし
)」
【『べし』の例句】
「逢ひ別るべく来て冬の虹淡し(小林康治/連用形)」
「花は葉に人はしづかに読むべかり(下村梅子/連用形)」
「茄子の花巧言令色滅ぶべし(沢木欣一/終止形)」
「邯鄲の冷たき脚を思ふべし(長谷川櫂/終止形)」
「鶏頭の十四五本もありぬべし(子規/終止形)」
「眠る山狸寝入りもありぬべし(茨木和生/終止形)」
「この梅に牛も初音と鳴きつべし(芭蕉/終止形)」
「梅雨の川こころ置くべき場とてなし(飯田龍太/連体形)」
「返すべき鍵が小箱に星祭(片山由美子/連体形)」
2016/03/30
【推量の助動詞『らむ』『けむ』】
「まとめれば『らむ』には三つの意味ありて今がどうかを推し量るなり
(現在推量:イマゴロハ…シテイルダロウ
,現在の原因推量:ノタメ…ダロウ、ドウシテ…ダロウ
,現在の伝聞・婉曲:…トイウ、…トカイウ
)」
「憶良らは今はまからむ子泣くらむそを負ふ母も吾を待つらむそ(山上憶良)」
「吹くからに秋の草木しをるればむべ山風を嵐といふらむ(文屋康秀)」
「活用は簡単なりし『らむ・らめ』で終止接続ラ行連体
(活用:○・○・らむ・らむ・らめ・○
,接続:終止形接続=書くらむ、散るらむ
,ラ行:連体形接続=あるらむ
)」
「下二段・上二段には要注意連体でなく終止接続
(謝った例
=×:暮るるらむ/○:暮るらむ
=×:過ぐるらむ/○:過ぐらむ
=×:消ゆるらむ/○:消ゆらむ
)」
「烏賊噛めば隠岐や吹雪と暮るゝらん(石橋秀野/正解は『暮るらむ』なので五音にしたかったのか)」
「鰯雲故郷の竈火いま燃ゆらん(金子兜太/終止形)」
「月明かし人を待つらむ藪虱(相生垣瓜人/終止形)」
「まとめれば『けむ』には三つの意味ありて過去がどうかを推し量るなり
(過去推量:…タダロウ、…ダッタダロウ
,過去の原因推量:…タトイウワケナノダロウ、トイウノデ…タノダロウ
,過去の伝聞・婉曲:…タトトイウ、…タソウダ
)」
「活用は簡単なりし『けむ・けめ』で連用形に接続したり
(活用:○・○・けむ・けむ・けめ・○)」
「幾人をこの火鉢より送りけむ(加藤秋邨/終止形)」
「春曙何すべくして目覚めけむ(野澤節子/終止形)」
「万葉の男摘みけむ蓬摘む(竹下しづの女/終止形)」