6/30
「二上の彼面此面に網さして吾が待つ鷹を夢に告げつも(#17.4013)」
「二上のあっちこっちに網を張りわが待つ鷹を夢で告げらる()」
「松反ガヘりしひにてあれかもさ山田の翁ヲヂがその日に求めあはずけむ(#17.4014)」
「変色の松は痴れ者山田家の爺ジジイその日に探さざるのか()」
「心には緩ユルぶことなく須加の山すかなくのみや恋ひわたりなむ(#17.4015)」
「心では緩ユルむことなく須加の山心塞いで恋続けるでしょう()」
「大黒は射水郡イミズノコホリでつかまえて雉キギシ鷙トること群に秀れたり(右、射水イミズ郡古江の村にて蒼鷹オホタカを取獲たり。形容美麗ウルハしくて、雉キギシを鷙トること群に秀れたり)」
「養吏タカカヒの山田君麿調教で時を間違え天気も無視す(時に養吏タカカヒ山田史君麿、調試テウシ節トキを失ひ、野猟候に乖ソムく)」
「風にのり高く飛び立ち雲隠れ腐鼠フソの餌食べず戻す術なし(風に搏る翅ツバサ、高く翔カケり雲に匿カクる。腐鼠フソの餌、呼び留むるに験靡シルシナシし。)」
「しかたなく網張り設け神様に幣を飾りて帰りを待てり(是に羅網アミを張り設けて非常を窺ひ、神祇カミに奉幣ヌサして虞らざるを恃タノむ。)」
「夢の巫女諭して言うに悩むなと逃がした鷹はすぐに戻ると(粤ココに夢裏ユメに娘子有り。喩して曰く、使君キミ苦念クルシミを作して空に精神を費すこと勿れ。逸放ソラせる彼の鷹、獲り得むこと未幾チカケム。)」
「すぐに起き驚きうれしと歌を詠み恨み除いて効果高める(須叟シュユありて覚寤オドロキして、懐に悦びて、因カレ恨みを却ノゾクす歌をよみ、式て感信を旌アラワす。)」
「(守大伴宿禰家持。九月二十六日ニ作メリ。)」
「( 右、射水郡古江の村にて蒼鷹を取獲たり。形容美麗ウルハしくて、雉を鷙トること群に秀れたり。時に養吏タカカヒ山田史君麿、調試節を失ひ、野猟候に乖く。風に搏る翅、高く翔り雲に匿る。腐鼠の餌、呼び留むるに験靡し。是に羅網を張り設けて非常を窺ひ、神祇に奉幣して虞らざるを恃む。粤ココに夢裏ユメに娘子有り。喩して曰く、使君キミ苦念を作して空に精神を費すこと勿れ。逸放ソラせる彼の鷹、獲り得むこと未幾チカケム。須叟ありて覚寤して、懐に悦びて、因カレ恨みを却す歌をよみ、式て感信を旌す。守大伴宿禰家持。九月二十六日ニ作メリ。)」
6/30
「二階へと上がればそこはガス室か席につっぷし若者ら寝る(日曜日の朝早く)」
「ぎこちなく注文をするカップルの遠くも近い夜過ごせるか()」
「盗み聞く彼らの会話共通の名が出てこなく旅行の話()」
「片隅でカップル会話始めればしだいに喧騒拡がっていく()」
「万葉は山田の翁が鷹逃がすところを訳す四千十五()」
「八時なり水槽清掃立ち会いで今から会社出勤をする()」
「夏越えの茅輪くぐりの季節なり楠公さんもされているかな()」
6/29
「鷹逃げて無念と思うが夢に見て鷹帰りたる悦び詠める(放逸ソラせる鷹を思シヌひ、夢に見て感悦ヨロコびよめる歌一首、また、短歌)」
「雪深い越で雛ゆえ山高み川透きとおり広野に草が(大王の遠の朝廷ミカドと御雪降る越と名に負へる天ざかる夷にしあれば山高み川透白トホシロし野を広み草こそ茂る)」
「鮎走り夏も盛りで鵜養ウカヒする清瀬で篝カガリ火鮎捕り上る(鮎走る夏の盛りと島つ鳥鵜養ウカヒが伴は行く川の清き瀬ごとに篝カガリさしなづさひ上る)」
「露霜の秋になったら野に鳥も多くなりたり友と鷹狩り(露霜の秋に至れば野も多サハに鳥多集スダけりと大夫の友誘イザナひて鷹はしも)」
「矢形尾の吾が大黒オホクロは いい鷹で獲物逃さず自在に動く(あまたあれども矢形尾の吾が大黒オホクロに 白塗シラヌリの鈴取り付けて朝猟に五百イホつ鳥立て夕猟に千鳥踏み立て追ふ毎に免ユルすことなく手放タバナレも還ヲチも可易き)」
「この鷹に比べる鷹などないだろうこころに思い笑みがこぼれり(これをおきてまたは在り難しさ並べる鷹は無けむと心には思ひ誇りて笑まひつつ)」
「狂タブれたる醜シコつ翁が大黒を連れだし雨に狩りをしたると(渡る間に狂タブれたる醜シコつ翁の言だにも我には告げずとの曇り雨の降る日を鳥猟トガリすと名のみを告りて)」
「三島野を背に二上を飛び越えて雲隠りす咳して告げる(三島野を背向ソガヒに見つつ二上の山飛び越えて雲隠り翔カケり去イにきと帰り来て咳シハブれ告ぐれ)」
「こうなってする術もなく燃えるごと思い募らせ溜め息をする(招ヲくよしのそこに無ければ言ふすべのたどきを知らに心には火さへ燃えつつ思ひ恋ひ息吐ヅきあまり)」
「鳥網トナミ張り見張りをつけてちはやぶる神に祈らん鏡を供えて(けだしくも逢ふことありやと足引の彼面此面ヲテモコノモに鳥網トナミ張り守部モリベを据ゑてちはやぶる神の社ヤシロに照る鏡倭文シヅに取り添へ乞ひ祈ノみて吾が待つ時に)」
「巫女の娘が夢で告げたり汝が鷹は松田江の浜暮らしていたり(少女ヲトメらが夢に告ぐらく汝が恋ふるその秀ホつ鷹は松田江の浜ゆき暮らしつなし捕る)」
「氷見ヒミの江や多古の島飛び徘徊す昨日一昨日舊江フルエにいたよ(氷見ヒミの江過ぎて多古の島飛び徘徊タモトホり葦鴨の多集スダく舊江フルエに一昨日も昨日もありつ)」
「遅くとも七日ナヌカのうちには帰り来る安らかに待てと夢に告げたよ(近くあらばいま二日だみ遠くあらば七日ナヌカのうちは過ぎめやも来なむ我が背子ねもころにな恋ひそよとそ夢に告げつる)」
「鷹逃がす醜シコつ翁は腹立たし狂っていると言うは当然
家持は霊感あるか鷹帰る夢を見るとは感心をせり
(大王の 遠の朝廷ミカドと 御雪降る 越と名に負へる 天ざかる 夷にしあれば 山高み 川透白トホシロし 野を広み 草こそ茂き 鮎走る 夏の盛りと 島つ鳥 鵜養ウカヒが伴は 行く川の 清き瀬ごとに 篝さし なづさひ上る 露霜の 秋に至れば 野も多サハに 鳥多集スダけりと 大夫の 友誘イザナひて 鷹はしも あまたあれども 矢形尾の 吾が大黒オホクロに 白塗シラヌリの 鈴取り付けて 朝猟に 五百イホつ鳥立て 夕猟に 千鳥踏み立て 追ふ毎に 免ユルすことなく 手放タバナレも 還ヲチも可易き これをおきて または在り難し さ並べる 鷹は無けむと 心には 思ひ誇りて 笑まひつつ 渡る間に 狂タブれたる 醜シコつ翁の 言だにも 我には告げず との曇り 雨の降る日を 鳥猟トガリすと 名のみを告りて 三島野を 背向ソガヒに見つつ 二上の 山飛び越えて 雲隠り 翔り去にきと 帰り来て 咳シハブれ告ぐれ 招くよしの そこに無ければ 言ふすべの たどきを知らに 心に
は 火さへ燃えつつ 思ひ恋ひ 息吐ヅきあまり けだしくも 逢ふことありやと 足引の 彼面此面ヲテモコノモに 鳥網トナミ張り 守部モリベを据ゑて ちはやぶる 神の社ヤシロに 照る鏡 倭文シヅに取り添へ 乞ひ祈みて 吾が待つ時に 少女ヲトメらが 夢に告ぐらく 汝が恋ふる その秀ホつ鷹は 松田江の 浜ゆき暮らし つなし捕る 氷見ヒミの江過ぎて 多古の島 飛び徘徊タモトホり 葦鴨の 多集スダく舊江フルエに 一昨日も 昨日もありつ 近くあらば いま二日だみ 遠くあらば 七日ナヌカのうちは 過ぎめやも 来なむ我が背子 ねもころに な恋ひそよとそ 夢に告げつる #17.4011)」
「矢形尾の鷹を手に据ゑ三島野に猟らぬ日まねく月そ経にける(#17.4012)」
「矢形尾の鷹を手に乗せ三島野に狩りせぬ日まねき月は経ったよ()」
6/29
「夕陽受け葉が光りたる花見つけついシャッターをわれは押したり()」
「同行のワンコは隣でシッピングわれはわれなりおまえはおまえ()」
「積年の庭木の剪定ノコギリでバッサバッサと苅り落としたり()」
「このような庭木もなにか言い分があるやも知れずわれは知らずも()」
「落としたる枝葉を枯らし燃えるゴミまとめて捨てん近いうちには()」
「妻は言う枝葉を刈ればボーナスの分け前あげるとわれを誘えり()」
「あまりに動かぬわれの弱点をついてきたるか敵も然る者(敵もさるもの引っ掻くもの)」
6/28
「都へと旅立つあなたの歌を見て断腸の思いここに極まれる(忽に入京述懐の作を見て、生きながら別るる悲しみ、腸を断つこと万回。怨緒禁ノゾき難し。聊か所心を奉マヲす一首、また二絶)」
「奈良からは辺鄙な雛であるけれどあなたに逢えてこころ和めり(青丹よし奈良を来離れ天ざかる夷ヒナにはあれど我が背子を見つつし居ヲれば思ひ遣る事もありしを)」
「仰せだが旅の支度を整えて群鳥ムラトリのごと朝立ち去るか(大王オホキミの命畏み食す国の事執り持ちて若草の脚帯アユヒ手装タヅクり群鳥ムラトリの朝立ち去なば)」
「吾か君いずれにしても悲しけれ外に出たれば山霍公鳥鳴く(後れたる吾アレや悲しき旅にゆく君かも恋ひむ思ふそら安くあらねば嘆かくを留めもかねて見わたせば卯の花山の霍公鳥音のみし)」
「泣きたいが鳴く憚る礪波トナミ山幣ヌサ奉りわたしは祈る(泣かゆ朝霧の乱るる心言に出でて言はば忌々ユユしみ礪波トナミ山手向タムケの神に幣ヌサまつり吾アが乞ひ祈ノまく)」
「愛おしいあなたが無事に旅を終え撫子の頃見たいものです(愛ハしけやし君が直香タダカを真幸マサくも在り廻タモトホり月立たば時も易カはさず撫子が花の盛りに相見しめとそ()」
「青丹よし 奈良を来離れ 天ざかる 夷にはあれど 我が背子を 見つつし居れば 思ひ遣る 事もありしを 大王の 命畏み 食す国の 事執り持ちて 若草の 脚帯アユヒ手装タヅクり 群鳥ムラトリの 朝立ち去なば 後れたる 吾や悲しき 旅にゆく 君かも恋ひむ 思ふそら 安くあらねば 嘆かくを 留めもかねて 見わたせば 卯の花山の 霍公鳥 音のみし泣かゆ 朝霧の 乱るる心 言に出でて 言はば忌々ユユしみ 礪波トナミ山 手向タムケの神に 幣ヌサまつり 吾が乞ひ祈ノまく 愛ハしけやし 君が直香タダカを 真幸マサキくも 在り廻タモトホり 月立たば 時も易(か)はさず 撫子が 花の盛りに 相見しめと
そ(#17.4008)」
「玉ほこの道の神たち幣マヒはせむ吾が思ふ君をなつかしみせよ(#17.4009)」
「玉ほこの道の神には幣ヌサをして好きなあなたと逢わせてくれよ()」
「うら恋し我が背の君は撫子が花にもがもな朝旦アサナサナ見む(#17.4010 右、大伴宿禰池主が報贈(こた)ふる和歌(うた)。五月二日。)」
「慕わしく思うあなたが撫子の花であったら毎朝逢える()」