特に孤独のグルメのファンというわけでもないのだが
Youtubeで流れてくるとついつい観てしまう。
おっさんが飯を食うだけでこんなにも面白いという革命的な発明。
タイパに追われる時代にゆったりできて、終わったあとに満足感も大きい。
料理漫画の王道としては、なぜその料理が美味いのかを長々と説明して納得させ、
同時にそれが漫画としての醍醐味でもあるのだけれど
それをあえて思考停止で「美味いものは美味い!」と断ずる潔さ。
高級な料理の味を想像させる方向へは行かずに、
誰でも手が届く食べ物を美味そうに食うだけで共感を集めてしまう。
テーマが「食」だからこそ可能な離れ技。
なぜ長い漫画の歴史のなかで誰も気づかなかったんだろうなw
松重豊のチョイスも本当に神。
個人的にグルメ映画として邦画史に残ると思っている『刑務所の中』で
大食いの受刑者を演じていたことからゴロー役の声がかかったのだろうなあ。
いまや自分も独身のまま旅行であちこち飛び回るリアルゴローになってしまった。
いまだにガラケーを使っているところまで同じ!!
とりあえず映画館で腹を鳴らしてはかなわんので
定食屋でしっかり腹を膨らませてから観に行った!!
~あらすじ~
フランス在住の顧客へ絵画を持って行った際に
かつて母親が作ってくれた「いっちゃん汁」をもう一度飲みたいと頼まれ、
ゴローはその故郷である長崎の五島列島へと向かう。
松重豊本人が監督・脚本。
ドラマの新シリーズが始まるごとにその制作発表の場で
作品をディスりまくるツンデレっぷりが毎回話題になっているが
本当にこの作品が大好きなんだなw
いきなりフランスへ向かう飛行機の機内食から始まり
到着してすぐのビストロ飯。
のっけから飯テロの攻撃力が高すぎるw
お馴染みの「腹が減った」から遠景へ移るストップモーションも最高w
フランスから即座に長崎へ移動してちゃんぽん。
フェリーが出航しないことを知って
数百メートルの距離をパドルボートで渡ろうとして遭難するスペクタクル。
いかにもこの作品らしい小物っぽさが面白すぎるwww
そして漂流して打ち上げられた島での自力食材サバイバル鍋。
孤独のグルメで自前飯って過去にあったっけw
あっさり助けられた韓国領の食材研究所でのもてなしから、
送還前に定食屋での韓国オードブル飯。
韓国料理はあまり一人では行かないけれど、
やはり映像で観るとものすごく美味そう……。
日本へ戻り、集めた食材を元にして
ラーメン作りを辞めてしまったラーメン屋にスープ作りを頼む流れ。
ここまでの全てでゴローのコミュ力が遺憾なく発揮されるのも面白いし
美味そうに食べることで好印象を与えてしまう展開も面白いw
最後におっさんたちが並んでラーメンを食らうシーンは
『たんぽぽ』のオマージュなのかなあ、と思ったり。
本来は無味無臭なドラマである『孤独のグルメ』と異なり
劇場版として様々なストーリーが盛り込まれたものの、
映画としては全編かなりフラットな内容。
ストーリー自体はトントン拍子にご都合主義の連続で
難しいことを考えずにひたすら美味そうなものを堪能させる眼福っぷり。
美味い食い物はみんなを幸せにする、という誰ひとり否定できないテーマ。
こういうのでいいんだよ!! と声を大にして快哉を送れる映画だった。
ちなみに。
序盤に流れるクロマニヨンズの書きおろし曲がすごい。
「腹減った!! オイオイオイ!!」という力強いフレーズのリフレイン。
これがたまらなく空腹中枢に刺激を送り込んで、
2時間の本編が最後までずっとダレずに楽しめる。
歌の力を久しぶりに実感できた。かなわんな!!
22時開始のレイトショーだったが、5人ほどの観客がすべて自分と同類の
見るからに独身男性とおぼしきおっさん。
帰りは全員がゴローのような歩き方になっててくそわらた。
やっぱ劇場で観る映画はこのシンパシーが最高なんよ。
たぶんみんなコンビニで酒とツマミを買って帰ったんだろうなw