私は「国連邦人職員との連携を推進し、その活動を支援する議員連盟」の会員でもある。この議連にも関わっている知人の国連職員が「国連で働く日本人を増やす」ことをテーマにした資料を持って来てくださったので、その資料を参考に私自身の考えを書いてみたい。
私自身は国際協力活動に関わる最初のきっかけになったのが国連ボランティアとしての活動だった。カンボジア、およびモザンビークで計約2年、平和維持活動(PKO)の文民要員として選挙を実施するための地域の責任者(監督者)として活動した。長年の紛争によって統治能力を失った国家の代わりに国連が選挙を実施するオペレーションの現場要員として現地の人々と生活を共にした経験は、何物にも代えがたい経験になった。特に私が活動した地域はどちらも山岳少数民族が住む地域で、電気や水道のない村で、平和の実現のために活動したことは私自身の価値観にも大きな影響を与える経験だった。
国連には、紛争地での平和構築や、難民の支援、貧困に苦しむ人々に教育や就業の機会を作るなど、地球社会の課題解決に貢献する尊い仕事が沢山あり、様々な場でより多くの日本人にチャレンジしてもらいたいと思う。
私自身は、「日本人の国連職員を増やす」ことだけに特化するのではなく、国際協力NGOで働く人々が希望を持って任務に打ち込めるような環境作りや、ソーシャルビジネスなど、新しい手法で地球社会の課題の解決に貢献する仕事への後押しも自分自身のテーマと考えている。
日本が国連に払っている分担金の額と比較すると、日本人の国連職員は本来あるべき数の4分の1程度でしかない。全体の職員数を増やすことの中で、特に幹部職員を増やすこと、民間企業などで経験を積んだ人が中堅のスタッフとして活躍できる機会をつくること、また、若い人々が国連機関で働くチャンスを増やすことなどが、議連のテーマと私は考えている。
特に国連の幹部職員を増やすことによって、日本が国際的にイニシアティブを取って進めているプログラムを効果的に進め、またアピールすることができる。UNTAC(国連カンボジア暫定統治機構)のトップであった明石康氏の存在や、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の緒方貞子氏の存在は日本に大きなメリットをもたらした。個人的には日本で、例えば外務大臣などの経験を積んだ人が国連機関のトップを目指す戦略があってもいいと思う。
また、マネジメント、特に予算の使い方などに日本の経験やノウハウを反映させることで、チームワークや仕事の成果よりも個人の自由や権利を優先する国際機関の仕事の文化に影響を与えることもできる。実際に、国連は仕事における義務を果たすよりも権利を主張する人が多く、恐ろしく非効率的な官僚組織でもある。遥かに安い報酬で、当事者意識を持って現場でスピード感のある活動しているNGOの方々からすると、不条理を感じることも多い。民間企業出身の方にとってはあり得ないと思うことも多いはずだ。
私自身、東ティモールの選挙支援にNGOであるインターバンド&ANFREL(Asian Network for Free Elections)の一員として関わったことがある。住民に対する教育プログラムを提案するため、当時選挙を技術的に支援していたUNDP(国連開発計画)に何度も通ったことがあったが、責任者が延々と休暇を取り続けていたせいで、提案書が処理されず、せっかく調査をして書いた努力が台無しになった。
「仕事よりもまずは自分の休暇」というメンタリティー、また、地道に仕事をするよりも自分の仕事の成果をプレゼンテーションする能力に長けた人が生き残る。そんな国連の文化は日本人には合わないとの声を聞くことも多い。日本が多くの分担金を払っている以上、こんな文化は変えていかなければ納税者としての国民の理解は得られない。そのために、使命感を持ってしっかり仕事をする日本人職員を増やす戦略を持ち、その職員を通して、日本が様々な面で国連においてイニシアティブを発揮する戦略を持つことも重要だと思う。国連では、ポストに空席が発生すると国連の内外から公募する方式が採られているが、ポジションが上になるほど政治力も必要だ。世界中から集まる優秀な人材との競争に勝ち抜き、日本人が職員、特に幹部職員に採用されるためには、戦略に基づいた側面支援が必要である。地味なテーマだが、国連に関わった一人としては当事者意識を持って取り組んでいきたい。