博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『歌舞伎と浄瑠璃』

2012年08月18日 | 日本史書籍
田口章子『歌舞伎と浄瑠璃』(吉川弘文館歴史文化ライブラリー、2004年)

歌舞伎と、今話題の人形浄瑠璃(文楽)がお互いにどう影響しあって発展してきたかについてうまくまとめた好著です。ただ、本書で論じられている歌舞伎と浄瑠璃の「男性原理」「女性原理」については、正直なところ何を言ってるのいまひとつよく分からないのですが、スルーしちゃってかまわないのでしょうか……

本書に見る歌舞伎の歴史。

「遊女歌舞伎が大人気だお!」
→当局「いかがわしい!こんなのほとんどストリップと変わらないではないか!けしからん、禁止!」
→「じゃあ男でやるわ。若衆歌舞伎っ!」
→当局「男優に変えてもやってることは同じではないか!禁止!」
→「じゃあ芸術っぽく見えればいいんだねっ!人形浄瑠璃から台本をパクってストーリー性を持たせるよっ☆」
→当局「……」

まあ、このあとも松平定信やら水野忠邦やらにあれこれ難癖をつけられて取り締まられるわけですが……

そして浄瑠璃で人気の題材となった心中についても、心中が社会現象となっていることを苦々しく思った八代将軍吉宗は、それなりに美しい響きがある(らしい)「心中」という呼び方を嫌い、法律用語の「相対死」という呼び方を使用させることに。何かDQNネームと呼ぶかキラキラネームと呼ぶかみたいな不毛な議論ですが(^^;) そして心中物というジャンル自体も禁止の対象となってしまいます。

本書を読んでると、文化というのは流行ったら流行ったで、今の文楽みたいに流行らなかったら流行らなかったで、どっちにしろ当局にあれこれ難癖を付けられるものなのかとしみじみ……

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