博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

林語堂『中国=文化と思想』

2011年02月08日 | 中国学書籍
林語堂著・鋤柄治郎訳『中国=文化と思想』(講談社学術文庫、1999年)

小説『北京好日』の著者として知られる林語堂が戦前にアメリカで出版した中国文化論です。複数の方面でお薦めの評を聞いたので読んでみたのですが、結構頁数があって内容が多岐に亘っている割には、正直ピンと来る部分が少ないと言うか、自分の体験と照らし合わせてみてもあんまり「あるある」感が感じられないなあと…… つーか林語堂先生、ナマの中国人を語るより『紅楼夢』の登場人物について語っている方が、明らかに文章が生き生きしてますよね。

ということで、以下に本書で面白かったポイントを挙げておきます。

○「豪侠」は中国版の騎士道精神。中国では強い者のみが公共の精神を持つことができる。公共心を持つ人間は常に官吏や警官と衝突し、身内に災いをもたらすことになるので、そう言う人間は一族や世間から爪弾きにされて緑林に身を投じるほかはなくなるのである。

……これは武侠物を見てると何となく納得できるなあと。侠客というのは限りなくお節介な人種なんですよね。で、助けたはずの人々がそれによって却って破滅に追いやられることもままあると。

○中国の学術は論理性よりも常識を重視する。

……これについてはもういくらでも思い当たるフシが。で、その「常識」というのがまま我々の常識と違ってたりするわけですが(泣)

○中国人は遊んでいる時の方が、真面目なことをしている時より遙かに愛すべきである。中国人は政治上はでたらめで、社会的には幼稚である。しかし余暇の時間には非常に聡明で、理知的である。

……NHKの紀行系のドキュメンタリーなんかに登場する中国人というのは、大体こういう「遊んでいる時の」中国人なんですかね。

○『水滸伝』の著者(とされる)施耐庵の故郷江陰では、施耐庵が朝廷から『水滸伝』の提出を命じられた際に、筆禍から逃れるために替わりに『封神演義』を書き、皇帝に提出して事なきを得たという伝説がある。

……その『金瓶梅』バージョン(『金瓶梅』の作者が筆禍から逃れるために『封神演義』を書き、これを替わりに朝廷に提出したという話)を別の本で見たことがあるのですが、どちらが元になった話なんでしょうか。

○『左伝』の生き生きとした戦争の描写には当時の口語が混ざっている。司馬遷の文章も当時の口語に近い。

……『左伝』に関しては野間先生も似たようなことを言ってたなあと。まあ、今後はこのことを念頭に置きつつ『左伝』を読むことにします。

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