ベンベエの詩的つぶやき

世の中をちょっと斜めに見て・・・

ポエムの窓

2007-02-27 23:41:00 | 

          藪椿

       「鬼が来る!」 と

       押し入ってきては勝手に

       ふとんをかぶり

       中で念仏など唱える女

       ぼくら家族は黙々と

       塩引きで昼ごはん

       女は

       裏の藪に独りで住んでいる

       連れ合いは

       南の島で戦死した

       椿が咲くと

       脳ミソを食いに

       鬼がやってくるという

       ぽとぽとぽとぽと

       藪が血をしたヽらせ

       女だけに見えている鬼のすがた

       白い人たちに連れられて

       居なくなることもあるが

       いつの間にか藪に戻ってきている

       行き先を尋ねると

       「お・に・た・い・じ」と 

       髪を掻きながら仏のように

       やわらかくわらう

       むこう三軒

       あぶない女もお隣さんの戦後の昭和

       だれもが貧しく

       だれもがかなしく

       村のあちこち

       藪椿がたくさん咲いていた


     ほどほど

2007-02-12 13:43:22 | 

聖バレンタインの日が近くなると、
幼稚園児から50・60歳のシルバー世代までがチョコレートの前に並ぶ・・・。                 
バレンタインチョコとして売り出されたのは昭和33年、新宿三越デパートが始まりだった。
第一日目の売り上げは3枚、計170円であったとか。
今や地方のスーパーマーケットでも綺麗にラッピングされたものが山盛りになっている。
ネギや大根売り場の隣りで世界中の有名チョコが買える。
・・・・・・やはり日本は豊かなのだ・・・・・。
振り込み被害など数々の詐欺事件が頻発しているが、これも豊かさの表われではないだろうか。「無い袖は振れず」どれほど巧妙に仕組まれても、持っていなかったら被害に遭うこともない。持っているから出してしまうのだ。
その辺りを政府もまたしっかり見透かして、庶民の税負担を増やしてくる。
かつて、庶民は貧しかった。味噌や醤油を切らしたからとお隣へ駆け込んだ。
うちの沢庵食べてみてと、向う三軒仲良く暮らしていた。
騙し取る物もなく、騙し取られる物もなくみんなが心穏やかに暮らしていた。
ところがいつの間にか庶民が大金を掴み、欲しいものは何でも買えるようになった。
飽食の中にいて、これが究極の幸せだと思い込んでいた。
しかし今どうだろうか・・・・。金銭に振り回される人間たちの殺伐としたこころ。
無差別に他人を騙し、保険金のために肉親を殺し、庶民も役人も企業までもが騙し合って、ほんとうに幸せな社会だと言えるだろうか。

欲に限はない。むずかしいことだが、ほどほどがいい。


てのなるほうへ

2007-02-12 12:14:10 | 

          てのなるほうへ

       「オニサンコチラテノナルホウヘ」

       わらべを鬼に仕立てて

       なんて可哀想なあそびよ

       手を打ってはやしたてるのは

       いつだって大人たち

       「チガウ! コッチ コッチ」

       輪の中を

       あっちにあたり

       こっちにころび

       ぐるぐるぐるぐる

       めがまわる

       「カゴノナカノトリハイツイツデヤル」

       そうやって子供の目をふさぎ

       ほんとうのことも

       ほんとうでないことも

       ぐるぐるぐるぐる

       めがまわる

       「アッチノミズハニガイヨ」

       「コッチノミズハアマイヨ」

       畦のくらがり

       言われるままに

       ちいさな

       いでおろぎいが生れている

       あれこれ

       かたちの見えないまま

       てのなるほうへ

       てのなるほうへ


ナガレ星

2007-02-10 14:00:19 | 

       ナガレ星

       山ノ端ヲ

       カスメ

       星ガ

       ヒトツ

       ナガレタ

       落チテイッタ

       先ハ

       月ノ砂漠

       ソレトモ

       戦場

       アノ

       聖ナル

       ナガレ星カラ

       二千年ガ

       経ッタ

       

       イウノニ

       コトバ

       ハ

       イマダ

       守ラレテ

       イナイ


   ささやき

2007-02-10 00:29:24 | 

           ささやき

       「あれは奇跡だった」

       そう思えることがいくつもある

       屋根から落ちたとき

       手術後の大出血のとき

       危ない人から手を引いたとき

       だれかが傍にいたような気がする

       甍をわたる風だったかもしれない

       枕もとのカスミ草だったかもしれない

       忘れ物に戻らなかったら

       百トンの石の下敷き

       あのときは

       郭公の声だったかもしれない

       かたづけられないことは

       〈偶然〉でかたづけ

       聞こえない声は聞こうとせず

       ひとは

       風が悲しむのを

       雨が嘆くのを

       聞き漏らしてしまう

       医師はありえないと笑ったが

       手術の間

       微かにヘンデルの曲が聞こえていた

       順調に進んでいることを

       ずっとだれかが

       囁いてくれていたのだ