ベンベエの詩的つぶやき

世の中をちょっと斜めに見て・・・

ワインのように

2007-05-30 09:40:49 | 日記・エッセイ・コラム

フランス西部ブルターニュ地方で暮らしている従弟が
ひさしぶりに帰ってきた。
向うに住んで30年になるが、
ペンションを経営しながら好きな絵を描いて生活している。
フランス人の妻との間、3人の子にも恵まれた。

倫理や道徳が荒廃してしまった日本から
遠く離れ ゆったりと暮らしていけるのは幸せである。
カルヴァドス(林檎酒)のように
ブルターニュの透きとおった空気に抱かれ
彼も亦 よく醸成している。

576年前の今日は、
聖女ジャンヌダルクが火刑となった日。
英国との百年戦争の際、オルレアン解放に貢献し
仏国に勝利を導いたが、その後の
コンビエーニュの戦いで捕虜となり処刑された。

オルレアン入城など勇壮な絵画があるが、
牢獄で枢機卿に尋問される場面の作品がいい。
暗闇と赤い法衣との対比、
勇敢な「オルレアンの乙女」も神の前では敬虔なひとりの娘。
二人の人物がとても生き生きと描かれている。
  〈 作者はポール・ドラローシュ 〉


遠い日の匂い

2007-05-27 12:57:18 | 日記・エッセイ・コラム

昼なお薄暗い帳場に
忽然と
青い海が出現した。
一面にやわらかな漣がたち
風がさわさわと吹き抜けていく。

 〈シロアリにやられた畳を新しく替えたのである〉

い草のかぐわしい匂いが鼻腔から延髄をつきぬけ
海馬
(記憶をつかさどる器官)の奥でたゆたうている。

これは・・・・・?!
遠い日々の匂いが今、鮮烈に蘇えってくる。

  永い間ずっと忘れていた。

まどろむ母さんの膝からこぼれて
這い這いしていた懐かしいあの畳の匂い!

光りと好奇と期待を一身に浴びながらも
忽ち赤ちゃんは二本足で立ち上がり
いつの間にか走り出し
あっと思う間もなく還暦を越えた。

  往事茫々
赤ちゃん爺ちゃはこの世に何を残しただろうか。

新しい畳の海に仰向けになって深呼吸すると
肺の奥深くまで
遠い日々の匂いが切々と満ちてくる。

       
吹きぬける風の薫りや畳替え    やす


祈り

2007-05-25 16:24:12 | 日記・エッセイ・コラム

東京焦土化爆撃の総仕上げとして
1945年の今日、
アメリカはB29爆撃機470機の大編隊で東京を襲った。

先導機はM76、500ポンドIBナパーム焼夷弾を搭載。
マグネシウムが高温で燃え、消火不能な大火災を生じさせ
山の手の都区部の大部分が焼失した。

夜半、皇居内にも焼夷弾が落とされ
奥宮殿など20数棟が炎上した。

その日から62年・・・・
日本は平和と豊かさにかまけて戦争の悲惨を忘れてしまっている。
アフガンやイラクの現状を見せ付けられるたびに胸が痛む。
戦争は絶対いけない!
子供達のあの悲しい瞳を見るのは耐えられない。

しかし「戦争反対!」のお題目だけで安心できるほど
世界の情勢は安定していない。
戦争を憎み、平和を望む国民の祈りがそのまま
周囲の国々に理解されていると考えるのは
いかにも安易過ぎる。

戦争を仕掛けない。
戦争を仕掛けられない。
戦争に巻き込まれない。

今こそ
しっかりした規範とシステムの整備が必要ではないだろうか。

     
新緑や体のどこか骨が鳴る   やす



いのちいろいろ

2007-05-24 23:07:55 | 日記・エッセイ・コラム

シロアリ騒動のさ中、
屋敷猫のママちゃんが生れたばかりの仔猫を連れてきた。

二つかと思ったら、石垣の間からつづいて四つ出てきた。
多分、お隣の農家の納屋で産んだのだろう。
連れては来たが、赤ちゃんを盗られまいと
ボスと交代で傍に付いて離れない。

人間は赤ちゃんを棄てるが
彼らは決してそのようなことはしない。

追い出されたり、自ら出て行ったりして
しばらくはボスに仕える四匹だけの静かな庭であったが
またまた賑やかになってきた。
一つ居なくなると、いつの間にか一つやって来て
猫の世界は摩訶不思議。

但し、どれほど可愛くとも抱き上げてはいけない。
なついてしまったら家の中に入りたがるので
距離をもって接することが肝心。
家の中はシロとロクサーヌの姫たちで充分。

毛虫・シロアリ・鴉・尾長・ヒヨドリ・雀・猫に犬にホモサピエンス。

      
  若葉光いのちいろいろ賑やかし     やす


羽アリ

2007-05-23 19:33:19 | 日記・エッセイ・コラム

ついにシロアリとの全面戦争となる。

昨日今日二日間にわたり、畳を上げ床板を剥がし
掃討作戦を敢行。
床下は一面、シロアリの営巣であった。

先日はアメリカシロヒトリを退治したばかりなのに・・・・

2週間ほど前からおびただしい群れの分派がはじまり
その度に噴霧器と3台の掃除機で対抗したが
とても素人の手におえるものではなく
専門業者に頼むことにした。

毒薬をまくので、
姫たちは二階にとじこめ
ぼくは水と本を持って庭のベンチに避難する。
昼食はコンビニのおにぎりで済ませる。

彼らをシロアリと呼ぶが、実はアリ科ではなく
ゴキブリに属しており
木材はもとよりプラスチックさえ消化してしまうという。
3億年前からこの地上に繁殖し
たかだか100万年の人類など新参者に過ぎないのだ。

その新参者と古参との戦い。
今回は一応、わが軍が勝利したが
いつまた、軍を立てなおし逆襲してくるかわからない。

日々、向かいの農家からは
新たな偵察隊がわが陣地にむかって飛んできている。

   
天下り止むことは無し羽蟻飛ぶ    やす