蜻蛉のストップモーション鼻の先
台風一過迷子の迷子の風小僧
目玉ひんむきニアミスの鬼やんま
ちちろ啼く念(おもひ)静めて生きよとも
雨ぽつとちちろの顔にかかりけり
蜻蛉のストップモーション鼻の先
台風一過迷子の迷子の風小僧
目玉ひんむきニアミスの鬼やんま
ちちろ啼く念(おもひ)静めて生きよとも
雨ぽつとちちろの顔にかかりけり
ほたる追ふこゑ馥郁と草の闇
いつまでも灯のともりたる盆の村
ほうたるの俄かに殖ゆる盆の村
手のひらに蛍の鼓動つつみけり
盆なれや見知らぬ縁者訪ね来し
魚屋の手並みに見とれゐて寒暮
煮凝りやわれ中流の中辺り
ここちよく切れぬういろう冬ごもり
魂のぬけがらここに日向ぼこ
どこから死どこからが生日向ぼこ
ふて寝これ丸太ごときが掘炬燵
他人妻の風邪声耳に残りけり
セーターを脱ぐときおんな発光せり
情死てふ真はむかし梅の花
浜焚き火波音暮れて誰も居ず
住所録にふえし赤線賀状書く
淑気立つ帳場の闇の胡蝶蘭
おめでとさんはいおめでとさんお年玉
犬小屋に大きすぎたる初飾り
去年の実をのこして梢ふくらめり
初風呂や怠惰の腹のぷかりぷかり
百合根煮る背後に風邪の妻現るる