ベンベエの詩的つぶやき

世の中をちょっと斜めに見て・・・

2005-06-30 12:44:43 | 
          馬
          馬
          馬
          馬
          馬

          馬が五頭
          一列に走っている

          パカラ
          パカラ
          パカラ
          パカラ
          パカラ
 
          休日の馬場は
          うららかに
          三周目の直線コース
          そのまま春の空へ
          駆け上がっていった


萱草の花

2005-06-30 12:34:25 | 
     H.Y氏に捧げる

          やさしい心を否定する人がいる
          それだけならまだしも
          やさしい心を壊したがる人がいる
          妬みか 悪意か
          それともおせっかいか
          本意を知るのはむずかしい
          その人にもやさしい心はあるから

          自分よりもやさしい心が
          まぶしい耀きとなって
          おおきく広がるのが怖くて
          壊してしまわないと
          不安でたまらないのかもしれない

          今日 やさしい心が一つ消えていった

          萱草の花のように
          無防備なひとに
          ことばの辛らつは
          まさに背後からの一突きであった
          一通の手紙をぼくにくれて
          やさしい心は
          抗うことをためらい
          ばらばらに壊されたまま
          八溝にひきこもってしまった

          そのやさしさをいいことに
          病魔さえもが我がもの顔で・・・・

          萱草の花に見送られ
          照りかげりしながら
          八溝の野辺に消えていった
          ひとつのやさしい心

          かえりの山路に迷いながら
          そのときはじめて
          萱草の花の色をさびしいものだと知った


照り翳り

2005-06-30 10:51:08 | 俳句
          志半ばを鮎の釣られけり

          ゴッホの色とも麦秋の那須野原

          この世とは寂しきところ野菅草

          靴一つ路肩に灼かれゐたりけり

          照り翳りして関東平野梅雨に入る


殺生石夢境

2005-06-30 10:33:04 | 
          草履なんてだめ!
          白のスニーカーがいい
          三角巾もいや!
          チロリアンハットがいい
          きれいな羽のついたやつ

          大きい石
          とがった石
          ごつごつの火星のような
          殺風景を
          いつまでもどこまでも
          さすらうなんて
          ぞっとする
          だから楽しく行こうじゃないの

          万年筆とノートちゃんと入れてくれ
          吟行しながら行きたいから
          携帯電話もたのんだよ
          緊急のとき困るし
          おんなたちの様子も知りたいし
          銭は多めにね
          いまどき六文なんて
          脱衣婆だっていい顔しない

          ほんと約束したよ
          あのみっともない格好で
          送り出さないでくれよ
          おわりが肝心だし
          それが始まりにもなるからね
 
          硫黄ふきだす賽の河原
          かわいた音をたてて
          風車が回っている


     短詩四篇

2005-06-30 00:50:07 | 
                雪
          あとからあとから
          かなしみのようにふってくる
          羽毛
          闇のかなたで
          なにが起きているのだろうか

                雲
          雲のほんとうの仕事は
          ひとが天を見上げるように
          いろいろの形をして
          見せているのです
          象になったり
          船になったり
          ときには
          かあさんになったりして
          うつむき歩くひとに
          声をかけているのです

                蝉
          なあむほーしいつくつく
          なあむほーしいつくつく
          お上人が
          なつめの木を揺すっている
          夏のおわり

                柿
          たいした理由も無くて
          おんなを叱った
          黙って柿をむいている
          さむい夜