ベンベエの詩的つぶやき

世の中をちょっと斜めに見て・・・

愛の二重唱

2009-01-25 22:47:42 | 日記・エッセイ・コラム

詩誌『馴鹿』の新年会があった。
1時間弱、「詩人と宇宙」という茫漠なテーマで卓話したが
新会員も参加してくれて愉快な半日を過ごした。

夜、N響アワーで楽劇「トリスタンとイゾルデ」を聴く。
ワーグナーの指揮では第一人者のイルジー・コウト。
前奏曲は重苦しく
禁断の愛の鬱屈した様子がいらいらするほどつづくが
第二幕になると
   ああ、私のトリスタン!
   おお、ぼくのイゾルデ!

歓喜と恍惚の愛の二重唱が華麗に炸裂する。

   嫉妬深く意地悪な偽りの昼よ
   消え去れ!
   聖なる夜は唯一つ
   愛のよろこびが微笑みかける
   聖なる夜よ
   私たちをこの世から解き放っておくれ
   永遠に一つになり
   目覚めることなく愛に包まれ
   ただ愛にのみ生きるため!

遙かのむかし
こんな風に不安とよろこびの日々に包まれていた自分が
あったような、なかったような・・・・・・

冬の夜のひととき、
青春の残像に小さく炎が燃え上がるのを覚える。

それにしても、リンダ・ワトソンの熱唱がすばらしかった!

       
木々の間を夢紡ぎゐる冬の月


二つの玉子焼き

2009-01-23 14:27:22 | 日記・エッセイ・コラム

春が来たか、と思うほどの陽気。
陽だまりではカゲロウが飛び交い
ベンチや石の上では猫たちが身体を伸ばしている。

暖房を消し窓を開け、
久しぶりに家中の空気を入れ替えると
気のせいだろうか、体の隅々まで酸素が満ちてくる。

-----------しかしそれも今日一日だけで
明日からは再び強い寒気が押しよせてくるという。

大相撲初場所を観て来たという人から
つきぢ松露の玉子焼きを土産に戴く。
そのすれ違いにもうひとりの方から
同じ松露の玉子焼きを戴く。
国技館に近いこともあって
大相撲見物の土産として広く人気がある。

二つの玉子焼きを前にして暫し思案-------------
賞味期限もあることだし
もったいないので知り合いにおすそ分けとなる。

ところで日本の国技大相撲も
あと20年もしたら幕内はほとんど
外国人力士で占められてしまうかもしれない。

今や柔道も寿司も国籍を失くし
そうしていづれ世界は一つになる。

       
ダンディズム暫し返上着ぶくるる


母からの譲りもの

2009-01-22 11:13:30 | 日記・エッセイ・コラム

友人の歯科院で奥歯をいっぽん抜いてもらう。
虫歯ではない。
アサリの殻をうっかり噛んだため根がぐらぐらしてしまった。

この年齢になってもぼくには一本の虫歯もなく
歯医者がおどろくほどである、
これはぼくの唯一誇れることであって
小学5年生のとき
歯のコンクール郡大会で入賞し
一年分の歯磨き粉を賞品に頂いた。

母親がなかなか贅沢〈グルメ〉なひとで
ぼくを身ごもっているときも
トンカツを食べに度々隣町まで出かけていったそうだ。
昭和16・7年のころ
そのような勝手は許されない社会情勢の中でも
世間知らずの母は食べたいものを自由に食べていたようだ。
そのお蔭もあって丈夫な歯が作られたのだと思う。

「抜いた歯はねんごろに処分させて戴きます」 と
笑いながら歯医者がジョークを飛ばしたが
思えば、この奥歯は母から譲りうけたもの・・・・・・
粗末に放り棄てられては確かに申し訳ないような気がする。

従弟が今日、フランスに帰っていったが
さよならはいつだって寂しいものだ。


     
いのちとは丸きものなり寒卵


Changeのとき

2009-01-21 01:11:37 | 日記・エッセイ・コラム

病院からの帰り道、警察官に停止させられた。
いつも通るところで、いつものとおり走っていたので
停められた理由がしばらく判らなかった。

21kmのスピード・オーバー、
その場で違反書に署名させられて
15000円の反則金となる。

腰痛治療の効果に浮かれていたらしく
もし、停止されずにそのまま走っていたら
大きな事故に遭っていたかもしれない。
ここでも誰かに守られたような気がしている。

第44
代米国大統領の就任式が迫っている。
200万の人々がワシントンの米国連邦議会前に集まってくるという。
これほど大きな注目と期待を浴びる大統領は
米国史上でも稀な方ではないだろうか。

善きにつけ悪しきにつけアメリカの問題は世界の問題であり
オバマ新大統領は果たして世界の救世主になりえるだろうか。

まさしくChange・・・・・
今、この地上の人類に偉大な変化のときが到来している。
これまでの価値観や常識では人類の生存が成り立たないような
全く新しい『第4の波』がやってくるだろう。

    
 大寒の山一市二町をふところに


大根の味

2009-01-18 13:26:27 | 日記・エッセイ・コラム

人ごとにご馳走し、
更に継ぎ足していくうちに
おでんの汁が一流店をしのぐほどの深い味わいになってきた。

料理には足すことで深まる味わいと
引くことで高まる味わいがある。

----------思えば人生も然り
なにもかも貪欲に吸収して深まっていく時代と
そぎ落とし、そぎ落として高まっていく時代。

さても人生の第四楽章をどう演奏しようか

おでんのような煮込みの人生は
もはや沢山のような気もする。

シンプル イズ ビューティフル
-------引くことの人生。

わずらわしい下世話の事柄には関わりを持たないように
静謐で孤高の世界。
若葉を吹いてくる風の囁きに耳を傾け
落葉の辛夷の幹を滴る雨の祈りに心を寄せ
ひたすら流れ消え行く雲の行方に人の生涯を重ね見て
大根という存在そのものの醍醐味を知りたいと思う。

駄菓子まころんを齧りながらラフマニノフを聴いていると
一編の穏やかな詩が生まれそうな気がしてくる。

     
大根やあかぎれの母夢のごとし