ベンベエの詩的つぶやき

世の中をちょっと斜めに見て・・・

かぐわしきものたちへ

2010-03-27 14:52:33 | 日記・エッセイ・コラム

高野山からお線香を取り寄せる。
白檀と沈香の二種類。
わが家の宗派は真言宗なので高野山ご本尊の香りがする。

日本人とフランス人は匂いに敏感で
共通の匂い文化をもっている。
現代のような入浴の習慣がなかった平安時代、
体臭を隠すために香が用いられた。
フランス人もそれによく似て香水(コロン)が使われた。
料理においても特に日本料理とフランス料理は
香りを大事にしている。

匂いとは不思議なもので
いちど嗅いだ匂いは何年経っても記憶している。
あるとき ふと、その匂いが蘇えることがある。
交叉点ですれ違うひとに・・・・・
色づいた麦畑の匂いに・・・
柿若葉を吹いてくるそよ風に・・・・・
懐かしさに立ち止まることもある。

雨上がりの杉苔の匂い
書き上げたばかりの墨硯の匂い
日中、何処かで焼く餅の匂い
真夏日のあおみどろの匂い
夜気にただよう沈丁花の匂い
畳の匂い 焚き火の匂い・・・・などなど
匂いは道端の石ころにもあり
それぞれ過ぎし日のほろ苦い記憶を思い出させてくれる。

とりわけ女性の髪の毛から立ちのぼるフェロモンの匂いには
爆裂の青春時代へ一気に引き戻される。

      花もひとも三分あたりが宜しけれ


クリスマスローズ

2010-03-22 12:47:03 | 日記・エッセイ・コラム

黄砂のせいだろうか
それともスギ花粉だろうか。
葛根湯を飲んでもくしゃみと鼻水が止まらない。

向かいの農家の軒先で咲いている花に
興味をそそられ その名前を訊ねると
クリスマスローズと言う。

灰紫色の地味な花だが
妙に惹かれる。
 「持ってく?」
ぼくの思いを察してか
背中の曲がりはじめた農婦が
三本ほど切ってくれた。

フラスコ型の透明なガラス瓶に挿し窓ぎわに置く。

きょうはお彼岸。
ちらし寿司を食べながら
花に眼をやると
それまでの灰紫色が俄かに桃色を帯びて
花芯が一斉にぼくの方に向きを変えた。

 母さんだろうか? そこに来ているのは・・・・・

      仏壇へ報告ひとつ草団子


三文の徳

2010-03-21 11:20:46 | 日記・エッセイ・コラム

きのうは早起き(5時)して
3ヶ月ぶりに日光足尾病院へ腰痛の治療に出かけた。
開院は9時半だが、
できるだけ早い時間に行って受付の順番を待つ。
それでも既に福島や群馬の方からやってくる人たちが居て
なかなか5番以内にはなれない。

 春はあけぼの・・・・・・
病院に向かう途中
おぼろな朝もやの中から
男体山と日光連山がその威容を現わす。
見慣れている筈の景色が
なんとも厳かで神聖な気分になってくる。
三文の徳とは
このような心持ちを言うのだろう。

午後からは
宇都宮にてとある役員会に出席する。
この会にはいつもイライラ・ムカムカさせられるが
きょうの私はちょっと違う。
三文の徳が効いており
くだらない意見にも耳を傾けることができた。

終始ニコニコ とても寛容であった。

わたしが「ぼく」ではなく「私」と自分を言うときは
比較的おだやかな心境であり
「ぼくはネー」なんて言うのはわたしが不安定なときである。


     
 椿屋敷物音立てず暮らしゐる


サラに夢中

2010-03-16 13:40:23 | 日記・エッセイ・コラム

好きになると、のめりこんでしまう癖があって
つぎつぎ取り寄せているうちに
サラ・ブライトマンのCDが10枚を超えた。

それに関連して
アンドレア・ボッチェリ、ノラ・ジョーンズのCDまで加わり
この春は朝から晩まで音楽三昧。

3時のティータイムには武平饅頭など頬ばりながら
抹茶をすすったりするが
想いはひたすらサラ・ブライトマン。
優しく、そして、か細く消え入るような歌声に胸しめつけられる。

どのCDも美しい歌ばかり収められていて嬉しいが
中でも「アテッサ」という曲は
サラの総てが表現されていてとてもいい!
ことに高音は気がとおくなりそうだ。

しばらくはサラに夢中、くびったけ・・・・・

一方、イタリアの盲目のテノール歌手アンドレア・ボッチェリもいい。
ドミンゴら三大テノールは強すぎてぼくには合わない。
オペラのように大きな劇場ではその強さが必要なのだろうが・・・・
ボッチェリの慈愛に充ちたやわらかな歌声は
ホームコンサートとして鑑賞するのに
とても相応しく思える。
カンツオーネとファドとの二重唱や
サラとの共演にも好感度が高い。

那須のハーブの店でお香を買う。
お灸のための点火の火が必要で
仏壇の線香でも間に合うのだが
体中、仏さん臭くなるのでハーブを練りこんだお香を使う。
とちゅう、雑木林の街道沿いのパン屋に寄るが
ここの窯焼きパンはおみごと!
予約しておかないと昼過ぎには売り切れてしまう。

       
風出でて冬と春とがもみ合へる


サラと一緒

2010-03-12 18:40:31 | 日記・エッセイ・コラム

あれからすっかりサラ・ブライトマンにめろめろ。

CDを流したまま、
蕎麦を茹でているときも トイレで考える人になっているときも
一編の詩を書いているときも
家のどこにいてもサラと一緒。
サラに会いたくてロータリクラブの例会も
寄り道せずに急いで帰ってくる。

人間の声がこんなにも優しく清らかであったとは・・・・
いろいろバージョンの違うものを5・6枚取り寄せては
聞き比べているが、どれも心に染み入ってくる。

神の使いとして
美貌と美声のニ物を与えられたサラブライトマン。

感動を共有したいと思い
妹たちにも同じCDを送ってやった。
よろこんでくれたようで
音楽の影響力について今更ながら認識を深くしている。

今朝は両隣りからトマトが届く。
桃太郎という銘柄の高価なトマトと
地元農家で作っている無名で不揃いのトマトだが
だんぜん、不揃いトマトのほうが旨い!

夕方、高原山ろくで花や野菜を栽培しているひとから
摘みたてのフキノトウと菜の花を戴く。
さっそく、新鮮なうちにと、てんぷらに揚げる。

芽吹きどきの野菜はほんのり苦く、
生きるもののいのちとは苦い味がするのだろう。

    
 粗品ほどの天与でありし春の雪