高野山からお線香を取り寄せる。
白檀と沈香の二種類。
わが家の宗派は真言宗なので高野山ご本尊の香りがする。
日本人とフランス人は匂いに敏感で
共通の匂い文化をもっている。
現代のような入浴の習慣がなかった平安時代、
体臭を隠すために香が用いられた。
フランス人もそれによく似て香水(コロン)が使われた。
料理においても特に日本料理とフランス料理は
香りを大事にしている。
匂いとは不思議なもので
いちど嗅いだ匂いは何年経っても記憶している。
あるとき ふと、その匂いが蘇えることがある。
交叉点ですれ違うひとに・・・・・
色づいた麦畑の匂いに・・・
柿若葉を吹いてくるそよ風に・・・・・
懐かしさに立ち止まることもある。
雨上がりの杉苔の匂い
書き上げたばかりの墨硯の匂い
日中、何処かで焼く餅の匂い
真夏日のあおみどろの匂い
夜気にただよう沈丁花の匂い
畳の匂い 焚き火の匂い・・・・などなど
匂いは道端の石ころにもあり
それぞれ過ぎし日のほろ苦い記憶を思い出させてくれる。
とりわけ女性の髪の毛から立ちのぼるフェロモンの匂いには
爆裂の青春時代へ一気に引き戻される。
花もひとも三分あたりが宜しけれ