顎鬚仙人残日録

日残りて昏るるに未だ遠し…

瑞穂の国と徳川斉昭

2016年05月12日 | サイクリング
涸沼が細くなって涸沼川になる辺りから、那珂川に合流する辺りまでは、広い田園地帯が続きます。連休の頃になると、近辺は田植えのラッシュで、兼業、専業にかぎらず家族が田んぼに集まって協同作業をしている姿を見かけます。
知り合いの稲作農家の方は、田植えはお祭りだと笑っていましたが、確かに少年時代に実家の田植えの賑やかさを思い出しました。その方は稲作では利益は出ないと言いますが、食料自給率の低い我が国なので、一つの文化としても残しておいていただきたいと思うのは、取り巻く環境を考えると、外部の勝手な思いなのかも知れません。
なお、この田園地帯の一画秋成地区は、江戸時代(1835年)に大場村(水戸市大場町)の大場太衛門が願い出て,藩主の徳川斉昭,郡奉行の吉成信貞により開発された「秋成新田」で、秋成という名前は,斉昭に因んだという説もあります。

その斉昭が八景めぐりで藩内子弟の心身鍛錬と、景勝地での風月鑑賞ができるようにと建てた水戸八景の一つ「広浦の秋月」の碑が、涸沼の出口付近の広浦にあります。建立当時は台座の石は地中に埋められて、地面から直接建てられたようにして自然石の味を出し、周りの風景に調和するように工夫されていたようです。水戸八分という独特の隷書体で書かれた斉昭の書が彫られています。
左側には明治25年に建てられた津田信存撰文、小河政常の書による保勝碑が建っていますが、常陸太田産の寒水石(大理石)のため、風雨に晒され碑面はよく読めないほどになっています。
碑と碑の間に遠く筑波山が見えます。直線距離で約40キロありますが、さすが関東平野の名峰、遮るものはありません。

天の神地の神達に植田澄む   右城暮石
黒南風や八景碑越し遠筑波   顎髭仙人

なお、水戸八景すべてについては、拙ブログ「水戸八景…斉昭公選定の水戸藩内景勝めぐり 2020.8.18」に載せさせていただきました。

5月の山の花  (常陸太田市里美地区)

2016年05月10日 | 山歩き
すみれがいろいろ咲いています。日本では自生種が60種以上、さらに交雑種が数十種と大変多いそうです。4コマ撮りましたがその中でも品種が多分確定?できるのは次の2種だけです。

杉林の中などでよく見かけるエイザンスミレ(叡山菫)、葉の形に特徴があります。和名の由来は、比叡山で発見されたことからきています。


あけぼの色から名前が付いたアケボノスミレ(曙菫)。明るい林の落ち葉の中から顔を出している淡い色彩は、なんとも魅力的です。


ニリンソウ(二輪草)、この若葉を山菜として食される地方があるそうですが、猛毒のトリカブトと似ているので事故がよく起こるようです。


ミツマタ(三椏)の花です。古くから和紙の原料として、楮(こうぞ)、雁皮(がんぴ)とともに使われてきました。現在でもミツマタを原料とした日本の紙幣は、その優秀性を世界に誇っていますが、2005年度以降は国内生産量が激減し、中国・ネパール産の三椏の輸入で不足分を補うようになっているそうです。

山路来て何やらゆかしすみれ草  芭蕉
片雲やこぼしてゆきし二輪草  矢島 渚男
三椏や石橋くぐる水の音  渡邉孝彦

霞ヶ浦サイクリング

2016年05月04日 | サイクリング
連休中の霞ヶ浦湖畔は、ウエアもびっちり決めたサイクリストでいっぱい、調べたら彼らが乗っているロードバイクの場合は、ローディストで、仙人のような自転車の場合は、クロスバイカーというとか…、名前はどうでもとにかく圧倒されます。


湖畔に洪水の碑なるものを発見、昭和13年に周辺の河川洪水の流入により、この一帯も洪水になったとの記述があります。やはり天災は忘れた頃に…でなく、常に警鐘を鳴らしておくためには、このように後世に伝える必要があると思いました。


湖畔で多い若者のスタイル、もう一方の旗頭はルアー釣りのアングラー、これもスタイルが決まっています。虹の塔から吊るした鯉のぼりに見られながらのキャスティング、釣果はイマイチのようですが、太陽の下で健康そのもの、どちらも嬉しくなる光景です。

伽羅蕗

2016年05月03日 | 日記

いつもの散歩道、高速道の斜面には蕗がいっぱい出ています。残念ながらフェンスの中で入って採ることはできないので、フェンス外の数本を摘み摘み歩きしましたが、それでも結構な量になり、3月7日に紹介した蕗の薹、今回はその親である葉っぱも自然の恵みとさせていただきました。


早速伽羅蕗つくりです。洗って水に浸したものを一晩置いてアクを抜き、翌朝約1時間煮詰めて出来上がり。あまりアクを抜き過ぎない、砂糖類は入れないが仙人流、2種の醤油とだしだけの味付けですが、食べていただいた数人の方からは美味しいと過分の評価をいただきました。
ちなみに伽羅蕗は、フキの茎を、醤油で伽羅色(黒茶色)に煮詰めたものという意味です。

蕗を煮る男に鴉三声鳴く   三鬼
伽羅蕗や辛く黒くがオトコ流   顎髭仙人

散歩道の花…ふたたび

2016年05月01日 | 散歩

林の中の道端で秋明菊のような白い大きな花…調べてみると白雪芥子(シラユキゲシ)、耐寒性多年草で、山地の湿ったところに自生していますと出て来ましたが、見るのは初めてです。一茎に数輪の4弁の白花を咲かせ、花より大きな葉は、蕗に似たハート形をしており目立ちます。


いたるところにある山躑躅(ヤマツツジ)、後ろに木下闇を控えて咲いている状況ではなかなかの美人です。
なお、山躑躅(ヤマツツジ)の葉には春葉と夏葉があり、春に出て秋に落ちる葉を春葉といい、夏から秋にかけて出て越冬する葉を夏葉といい、そういうことで、「半落葉」ないし「半常緑」という分類がされているようです。
少年の日、よく花を摘んで食べたり蜜を吸ったりしましたが、今思えば有毒のレンゲツツジと間違うと危険でした。


ヤマブキ(山吹)はバラ科ヤマブキ属で、一属一種の落葉低木、太田道灌の「七重八重花は咲けども山吹の実の一つだに なきぞ悲しき」で有名です。自生のものは一重で園芸種が八重と思っていましたが、この時代、すでに八重のヤマブキがあったことが、この逸話からわかります。

庭芝に小みちはありぬ花つつじ  芥川龍之介 
山吹に ぶらりと牛の ふぐりかな  一茶