最近、雪崩など山の遭難が多発しているが、気候やコースを選べば、そうそう遭難することはない。
ということで、雪崩の危険の無い樹林帯の登下降コースの『蝶ヶ岳』に思い切って行くことにした。
蝶ヶ岳は槍穂高の展望台として有名な山。夏なら初級登山の山だ。しかし危険の少ない山といっても残雪期、しかも標高差1,000m以上となるとやはりあなどれない。
お天気のいいこと、これは絶対条件だ。
コースは上高地~徳沢~長塀尾根(ながかべおね)~蝶ヶ岳(ヒュッテ泊)~横尾~上高地。
今回は新宿からの夜行バス『さわやか信州号』。
上高地行きはバス7台だそうだ。前日予約だったので最後の一つの座席に滑りこむことができた。
が、隣は男女5人グループの中の男の人と隣り合わせになりガックリ。あ~、電車のレディスカーにすればよかった。
しかしおばさんの図々しさで隣が誰であろうとお構いなしだ。
早朝5時半上高地到着。予報通りの快晴。
井上靖『氷壁』の宿『徳沢園』まで約二時間の歩き。今年は雪が多くまだ融けずに遊歩道脇に積み上げられている。
雪解けで道は所々ぐちゃぐちゃになっている。
徳沢で少し腹ごしらえをし、身支度を整え出発する。
『徳沢園』の脇から、いきなりの急登。雪もまだついているので斜面のトラバースはちょっと恐くアイゼンをつける。
少し行くと土道になりアイゼンをはずし、また雪道になるとつけ、と繰り返し面倒なことだ。
アイゼン無しでも登れない事はなかったが、キックステップやズルッと滑ったりすると結構体力を消耗する。長いコースなので、余計な体力消耗は避けようと最初からアイゼンをつけて登ることに決めていた。
登り始めはトレースはついているもののちょっと迷う所もあったが、目印の赤いリボンを探しながら、また前を行く男の人の後をついて行く。まだ雪は1メートル以上はあるようだ。うまくトレースの跡に乗らないと時々ズボッと雪を踏み抜き腿の辺りまでもぐってしまう。
かなり高度も上げ、樹林の間から白い穂高がちらちらと覗けるようになり、それを励みに頑張る。
中間ぐらいからは槍穂から焼岳、中央アルプスまで見えるようになる。素晴らしい眺めだ。
無風快晴、紺碧の空。何も言うことはない。
しかし、予想以上に長大なコースであった。
抜きつ抜かれつしていた人と『こんなにかかるコースだったですかね~』と愚痴りながら登る。
ようやく稜線の彼方にヒュッテが見えるようになったが、まだまだ先は長そう。
中央右側稜線上に
ヒュッテが見える。
(クリックで大きくなります)
地図上では徳沢から夏道4時間半のコース、雪道なので6時間ぐらいかかるかな、と思っていたが休憩も含め7時間もかかりヒュッテに着いたのは午後4時を過ぎてしまった。
実は小屋に着くのがあまり遅くなると夕食が食べられないのでは?と心配していた。
「遅くなってすみません」と言うと、小屋の女の人は『大丈夫ですよ。まだ早いほうですよ。』とにこやかに対応してくれとても感じがいい。聞けば昨日も6時頃登ってくる人もいたと言う。
早く小屋に着きたくて蝶ヶ岳山頂はパスしてきたので、荷物を置いて空身で往復する。
まだまだ登ってくる人がいた。
蝶の稜線は槍沢側からの風が強く、そのためかあまり雪が残っていない。
雪解けが遅く、まだ沢からポンプが引けないとかで、飲料水は150円。手洗いや洗面の水などは勿論なし。トイレは『バイオトイレ』が設置されていた。
カイコ棚の寝床は8人収容?今回は5人でゆったりだ。しかし食事は2回に分けて食べる事になるなど、夏並みの混み具合だ。
蝶ヶ岳からのながめ
左から、大キレット、南岳、中岳、大ばみ岳、槍ヶ岳
左から、前穂高、奥穂高、涸沢岳、北穂高岳、大キレット
二日目。
今日も快晴。蝶槍への稜線は風が強く、吹きっ晒しで手袋をつけていてもじんじんとしてくる。毛糸の帽子を被っていたがそれでも寒くてフードを広げ被る。顔は冷たく風が痛い。
蝶槍はその名の通り尖ったピーク。常念岳から表銀座の稜線、北鎌尾根から槍穂高、ぐるっと360度の眺めで本当に素晴らしい。
常念岳への稜線。常念岳とその左手奥に大天井岳(おてんしょうだけ)
いくら見ていても見飽きない。
横尾への分岐少し下から樹林帯になりアイゼンをつけピッケルの用意をする。
『3点支持歩行』を心掛け下って行く。かなり急下降でやはりしっかりしたピッケルは心強い。
それにしても登ってくる人はこの急登は大変だ。分岐から夏時間2時間のコースだが、どのぐらいかかるものか?
槍見平で最後の槍穂の眺めを堪能し、いよいよ横尾へと下る。
だんだん沢の音が聞こえてきてようやく横尾に到着した。2時間半で下ってこられた。
雪がまだたっぷり残り、道標の首まで雪で埋もれていた。
お腹も空き、ゆっくりと休憩する。
あとは上高地まで3時間近くのだらだら歩き。山から下りてきた身にはこれが結構つらい。
上高地は観光客でごった返していた。
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