住職のひとりごと

広島県福山市神辺町にある備後國分寺から配信する
住職のひとりごと
幅広く仏教について考える

四国遍路行記35

2014年11月08日 19時36分29秒 | 四国歩き遍路行記
済世橋を通って、第七十五番善通寺に入り、高野山の専修学院で同期だった炭田師を訪ねた。その頃善通寺の役僧をされていた炭田師は、来訪を殊の外よろこんで下さった。すぐに宿坊に案内してくれて、荷物を置き、弘法大師を祀る御影堂の奥に案内してくれたので、そこでまずは理趣経一巻。それから、地下法場・戒壇巡りへ。真っ暗な中、手探りで御大師様の身元に参り、あたたかい温もりを感じ取ることができた。それから宝物館に参り、大師が師の恵果和尚から授けられた国宝の錫杖などを拝観した。

その後宿坊の部屋でしばし休息をとり、夕食までまだ間があったので、しばし、寺内諸堂をお参りして歩いた。さすがは善通寺、どこに行っても人があり、地元の信徒とお遍路さんが絶えることはない。善通寺は、言わずと知れた弘法大師空海生誕の地である。大同元年(806)、唐から帰った大師は、自家佐伯家の先祖を祀る氏寺建立を発願。父田公から譲られた土地に唐の八大霊場の土砂を撒いて、唐の青龍寺を模した伽藍を造営した。自ら薬師如来を刻み、金堂に安置、七年がかりで弘仁四年(813)、七堂伽藍が完成する。背後に聳える香色山、筆山、我拝師山、中山、火上山の五峰に因み、山号を五岳山とし、寺号は父田公の名前から善通寺としたという。

善通寺は、東院と西院に分かれている。東院は、金堂、釈迦堂、五重塔、五社明神社、それに樹齢千年を越えるという楠の大木があり注連縄で荘厳されている。西院は、御影堂、地蔵堂、本坊、それに、護摩堂や、親鸞堂があり、昔日の賑わいの様を想像しながら夕刻の日が暮れだした伽藍を一人散策した。

翌朝は6時から御影堂で勤行があった。遍路姿で参ると、なぜか執事さんから内陣に入るように言われ、善通寺のお坊様方と共に座ってお勤めさせていただいた。このとき、途中の遍路道で何度かお会いして見覚えのある中年のお遍路さんが手を振っていた。思えば、そうして記憶に残るその方は、実はその十年ものちに、この地に来て再会を果たした平野の先達さんだった。今も毎月のお護摩にお参り下さることを思うと、誠に不思議なご縁と言えようか。

宿坊で朝食をいただき、釈迦堂へ。釈迦堂には私の母親ほどの年の尼さんが勤務されていて、つい時間を忘れて話し込んでしまった。修行の話からお堂のこと、行者さんたちのことなど。余りに長話をして遍路の予定を大幅に遅らせてしまったからと、その尼さんがその後、ありがたいことに郷照寺まで車のお接待をして下さった。

善通寺から次なる七十六番金倉寺は三.五キロの道のり。車なので、あっという間に到着。仁王門をくぐり正面に本堂、鎌倉様式の入母屋造り、赤みがかったカナダ檜をつかった新しい建物だが、この様式では四国随一と言われるように優美な美しさを醸し出していた。左手に大師堂。弘法大師の姪を母にもち、天台宗寺門派の開祖・智証大師円珍の生誕地。比叡山での修行のあと唐に渡り密教を学び、弘法大師と同じように青龍寺を模して伽藍を造営したといわれる。宝亀五年(774)長者和気道善の開基で当時は道善寺と号した。

鶏足山という山号をもつが、ちなみに鶏足山とは、もともとインドのマガダ国にあった山で、お釈迦様の第一弟子摩訶迦葉尊者が入滅した地と伝えられている。また、中国雲南省大理には、前に三つの峰、後背に一つの峰がありその形が鶏の足に似るところから鶏足山と名付けられた山があり、中国の仏教名山である五台山、峨眉山、普陀山、九華山と並び中国五大仏山の一つとされている。

金倉寺は、建武の争乱(1334~1336)、天文(1532~1555)の兵火に遭い焼失、寛永年間(1624~1644)讃岐の松平公により再建。現在の本堂は昭和に入ってから改築された。明治時代、乃木希典将軍が善通寺第11師団長の頃2年7ヶ月にわたって金倉寺の客殿を宿泊所としたことがあり、様々な遺品が残されている。車で待つ人があるので、手早く本堂で理趣経一巻、大師堂で心経を唱え、足早に失礼した。

そして、次なる七十七番道隆寺は、金倉寺を開基した和気道義の弟道隆が創建した。ある日道隆が桑畑で光る桑の木に矢を放ったところ、そこには矢が当たり倒れている乳母がいた。悲嘆に暮れた道隆は、桑の大木を切って薬師如来を刻んでお堂を建てた。その後弘法大師が巡錫の折、改めて薬師如来を刻み、道隆の仏像を胎内に納め本尊として安置。道隆の子朝祐が七堂伽藍を整え寺号に父の名をつけたという。この薬師は目なおしの薬師といわれ、眼病に霊験ありと有名である。小ぶりながら均整のとれた多宝塔に合掌して、本堂、大師堂に参る。


(よろしければ、クリックいただき、教えの伝達にご協力下さい)

にほんブログ村 哲学・思想ブログ 仏教へ
にほんブログ村
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 法話・しあわせに日々生きる... | トップ | 聖徳太子とは »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

四国歩き遍路行記」カテゴリの最新記事